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自動ケーブル切断機「線切れ~る」の製作 ~測長、切断の自動化~
東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 自動ケーブル切断機「線切れ~る」の製作 ~測長、切断の自動化~ Manufacture of automatic cable cutting machine[SENKIREERU]~Automation side length of cut~ 所属科名 電気エネルギー制御科 蔭山 哲也 (*1)山田 勇斗 (*1)江川 遼吾 (*1)河合 利樹 (*1)近藤 恭兵 (*1)柴原 安美 (*1)平成 26 年度電気エネルギー制御科卒業生 [要約] 自動ケーブル切断機「線切れ~る」 (以下、本装置)は、主に屋内配線ケーブル工事にて使用す るケーブルを、自動的に切断することを目的に開発した装置である。本装置は、自動で測長を行 い、指定した長さ及び本数で切断する事ができ、これらの制御にはPLCを用いている。電気エ ネルギー制御科では、PLCを用いた制御方法について長期間にわたり訓練する。本装置は、こ れら訓練にて習得する技術を活かし、その技術の具体的利用を体験しながら製作したものである。 1.はじめに を事前に指導員が準備することがあり、当短大と同じ ように、この作業で多くの時間を要し、これらが負担 現在、流通している機械製品のほとんどが何らかの となっていた。 省力化・自動化がされている。 これらの作業の負担軽減を第一の目的とし、制御方 こうした背景の中で、電気エネルギー制御科では、 法や制御装置の具体的な使用方法などを、より深く理 これらの設計・製作又は保守管理の業務に従事できる 解することができると考え、自動ケーブル切断機の製 ように、1本目の柱として制御技術を身につけるため 作を行うこととした。 訓練を行っている。有接点による電動機制御に始まり、 PLCを使用しコンベアや空気圧アクチュエータの制 2.概要 御、このほか、高機能ユニットを利用して、タッチパ 本装置の動作概要は図 1 の通りである。ケーブルを 装置にセットし、タッチパネルより長さ・本数を入力。 その設定に応じてケーブルを測長・切断する。 装置概要を表1に、主な使用機器を表2に示す。 ネル、他のPLCとの通信、A/D、D/Aによる読 み取りなどについて訓練を行ってきた。また、2本目 の柱となる電気配線工事、また電力管理の保守につい ても同様に訓練を進めており、1学年時には、電気配 線工事による訓練を多く取り入れている。この電気配 ケーブルをセット 線工事の訓練では、ケーブルを指定した長さで準備す る作業がある。この作業に時間を多く費やしたことが タッチパネルで 装置開発のきっかけとなる。この作業では、生徒が中 設定入力 心となり、ケーブルをスケールなどを利用し長さを測 りペンチ等により切断を行っていたが、この長さを測 り切断する作業を自動化することにより、配線練習の 自動で測長・切断 時間を増やすことができると考えた。 また、職業訓練支援センターでも、電気配線工事を 終了のブザー カリキュラムとした実施施設が多くあり、特に仕上が ケーブルを取り出す り像の確認として行う習得度確認課題においては、同 様にしてこのようなケーブルを切断する作業が行われ 図 1 動作概要 ている。習得度確認課題では、時間制限を設けてその 出来栄えや時間などにより点数化するため、ケーブル 20 なり、実際の組み立てもスムーズに行うことができた。 各部品を班員が分担して、作図しそれらを組み合わせ ることで、2D-CADでは見抜くことのできなかっ た、部品同士などの干渉や、工具を使用して組み付け ることが可能かどうかなどを把握することができた。 また、主にカバーとして使用するアクリル部品など については、従前の2D-CADを利用し、レーザ加 工機により加工を行った。 始めに、フレーム部品を作画する方法を示し、それ らを用いた組み上げ方などを説明後、各部品作成にと りかかった。副効果として、部品を正確に仕上げる事 により、干渉を見抜く必要があったため、作図してい くにつれ、互いに責任感が生まれること。また、各自 が作成した部品が組み上げられていくことで、達成感 や一体感が生まれた。 表1 装置概要 大きさ H530×W800×D520[mm] 電源 AC100[V] 対象 VVF1.6-2C、1.6-3C、2.0-2C 長さ 200~2000[㎜]誤差+20[㎜]以内 加工速度 1 分間に 2m ケーブル 4 本切断 ・作業終了時、電線不足の際はブザーを鳴らす。 ・安全性に配慮し、全体をアクリルで覆う。 表2 主な使用機器 機器 平行開閉形エアチャック 型番 個数 MHZ2-25D-M9BWV 2 US425-401+4GN9K 1 CDM2E25-200Z-B59W 1 スピードコントロールモータ 4.駆動部 +ギヤヘッド エアシリンダ 5名体制の元で実施を行うため、人数の割り振りを 行った。この他、加工速度を上げることや人為的なエ ラーを少なくするために、レーザ加工機に専属1名、 機械加工に1名、3D-CADの責任者を1名として 割り当てた。制御の主となる駆動部は、電線を送る機 構と、切断する機構に分け設計・製作を行った。 RCP3-SA3C-I-28P 電動シリンダ 1 -4-150-P3-P CPU ユニット Q02HCPU 1 高速カウンタユニット QD62 1 タッチパネル AGP3500-T1-AF 1 4-1 切断機構 動力としてエアシリンダとモータを使用する案があ ったが、実習を通して得た技能・技術を活かして製作 したかったこと、ビニル被覆から銅線まで一度に切断 するため、材質の違いによる力の加え方を、空気の圧 縮性を用い切断すること、また、ケーブルを固定する 機構を同じく空気の圧縮性を用いて把持するために空 気圧源を使用することとしたため、エアシリンダを使 用することにした。 ケーブルの切断には、電子ばねばかりを使用して計 測し、マージンを1.5倍とした約1200[N]の 力が必要であることがわかった。この出力が得られる エアシリンダは口径が大きく、装置が大きくなってし まうため、10倍のリンク機構を使用することでトル クを得ることにした。これにより必要な出力は120 [N] 、ストロークは200[mm]以下となり、これ を補うことのできるSMC社製のクレビス型エアシリ ンダCDM2E25-200Zを使用することにした。 カッターは、調達が容易な市販のケーブルカッタを 使用した。リンク機構とするには長さが足りないため、 柄の部分は砥石切断機により切断後、ワイヤー放電加 工機により取り付け穴を設け、加工が行い易いSS4 00の板を固定した。 砥石切断機は、フレームを任意の長さに切断するこ とができるため、使用方法を説明後、この柄について も切断を行った。また、柄を固定するためのSS40 0の機械加工には、生産技術科の指導員の指導のもと、 半自動のフライス旋盤により穴あけを行った。 3.設計 当初は2D-CADソフトのECAD DIOを使 用して設計し、骨組みや部品の配置などを行っていた。 しかし、各部品の前後や重なり方など、部品間の干渉 がわかりくいため、パソコンの環境的に構築の行い易 い無償の3D-CADソフトであるGoogle S ketchup(図2)を使用した。 図2 Google Sketchupによる設計例 このソフトでは、使用している部品を一覧表示する 機能や、フレーム間を固定するブラケットの個数、同 サイズのフレームの使用数など、使用部品点数を表示 することができる。このため、部品発注ミスも少なく 21 4-3 ケーブルの位置決め機構 ケーブルの送り・切断の際に、それぞれの機構での 4-2 送り機構 柄の穴開け時に使用したワイヤー放電加工機からヒ ントを得て、ローラによる送り機構とした。2つのロ ーラを使用し、一方のローラを固定し、もう片方のロ ーラはバネで、固定されたローラ側に力を加え、ケー ブルを挟み込む機構とした。また、ローラを抑える力 は、ばねにより行うが、この調整が可能なようにねじ の先端にばねを取り付ける方法とした。それぞれのロ ーラなどは、2枚のアクリル壁にシャフトを通し固定 する方法とした。 ケーブルの測長方法は、ケーブルを挟むローラをさ らに一組設け、片方のローラにロータリーエンコーダ を用いることで、測長を行う仕組みとしている。装置 の写真を図3に示す。 ケーブルの位置決めが重要であることが分かった。こ のためケーブルを送るために必要な部品や機構を調べ、 フレアによる方法とすることとした。 本装置では切断対象である3種類の大きさのケーブ ルに対応しなければならず、市販のものではないため、 アクリル板のレーザ加工と3D-CADであるCAT IA(図5)を使用し、3Dプリンタを用いて製作し た部品とを組み合わせて製作した。 図5 CATIAによるモデリング 図3 ローラによる送り機構 ケーブルを送る為に必要な力を、図4の簡易的な装 置を作成後、電子ばねばかりを用いて計測しローラ半 径から算出した。また、理想回転速度は、目標とする 加工速度より算出し、50[min-1] 、必要なトルク は0.45[N・m]とし、販売されているモータか ら選定した。 さらに速度が速い場合での調整が行えるよう、10 ~133[min-1]までの速度可変が可能な、出力 0.72[N・m]のオリエンタルモータ社製スピー ドコントロールモータUS425-401を使用する ことにした。 図6 制作したフレア 図6のように、入り口の部分がケーブルごとに大き さを調整しており、上から順にVVF1.6-2C用 VVF1.6-3C用、VVF2.0-2C用に対応 している。 組み上げる方法についても検討を重ね、できるだけ 部品点数の少ない形となるように、Google S ketchupによる設計を重ね、最終的にこれらを CATIAへ移し替えて製作を行った。また、同様に 図4 簡易トルク計測装置 切断部にもフレアを製作した。 22 ルを送ることが出来なかった寸法部分である。 また、ケーブルを把持する部分においては、アクリ ルを加工し、図7のようにケーブルを把持する機能と ケーブルを持ち上げ、ケーブルを送る際にケーブルカ 表3 指示値との誤差 ッタの刃に引っかかってしまうことを防止した。 ケーブル長さ[mm] ※送り速度 50[min-1]の時 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 1.6-2C +15 +20 +18 +10 +10 +10 +12 +10 +10 +11 1.6-3C +13 +18 +10 +12 +10 +11 +10 +15 +15 +11 2.0-2C +20 +10 この他、2000 ミリメートルほどの長いケーブルの取 り出しがうまくできずに、エラーを起こしてしまうこ とがある点、安全面の配慮ではまだ不十分であるとい 図7 ケーブル把持部のフレア う点において改良が必要であると考える。 5.制御部 6.おわりに PLCには、ロータリーエンコーダ接続のための高 今回の設計、製作を通して、社会に通じる実践技術 速カウンタ、タッチパネルとの接続に使用するシリア 者になるように基礎的な知識、技術・技能を定着及び ルコミュニケーションユニットのほか、入出力点数が 向上させること、また、コミュニケーション能力を向 制作過程において増えることを考慮し、ビルディング 上させることができた。そして物作りの大変さ、楽し ブロックタイプの三菱電機社製Q02Hを使用するこ さを伝えることができた。装置の目的が当初からはっ ととした。 きりとわかりやすいものであったため、取り組みとし 測長には、1回転あたり2000パルスを出力する ては良かったものだと考えている。一方で、今回の装 ロータリーエンコーダのパルス数及び、ケーブルを送 置が、電気エネルギー制御科として初めての製作とな るローラの直径により、ケーブルの長さを求めた。 り、また、同様に私自身も初めての総合製作実習であ ケーブル長= ローラ直径 2000 π ったため、1年を通しての時間配分など進め方には苦 出力パルス値 労をし、生徒にも遅くまで残らせてしまうなど様々に この他、加工が終了した後や、ケーブルがなくなっ 反省する点があった。進め方や管理の仕方など多くの た場合、ケーブルを送ることができなくなった場合に 収穫があり、次年度以降の取り組みの中に反映してい ブザーを鳴らすようにした。また、操作方法を示すた きたい。 め、装置の立ち上げから切断までの工程をタッチパネ 最後に、自動ケーブル切断機の製作にあたり、アド ル画面にて示し、操作方法をわかりやすくした。 バイスを下さり、加工指導、道具提供までしてくださ った機械系指導員の皆様に感謝申し上げます。 6.結果 装置を稼働させ、実測を行った結果を表3に示す。 [参考文献] 数値は、加工されたケーブルの長さの平均で、制御方 熊谷英樹「新実践自動化機構図解集」日刊工業新聞社 2010 年 法を、ケーブルの送り値が指示された値より+10 ミリ 熊谷卓/西田真美「自動化機構 300 選」日刊工業新聞社 2011 年 メートル大きくなった時に、モータを止めるようにし 高橋徹「空気圧の基礎と応用」東京電機大学出版局 1995 年 ている為、いずれの場合でもケーブル長に+の誤差を生 じさせる結果となった。色のついた部分には、ケーブ 23