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ホイヘンスは内燃機関の踏み台を作った
矢田技術士事務所 ホイヘンスは内燃機関の踏み台を作った 熱機関が成立することの理論的裏づけは 1824 年カルノー(Nicolas Léonard Sadi Carnot)が発表した論文による。それより 300 年も前 1509 年にレオナルド・ダ・ヴィン チが熱機関としてのエンジンを記述しているらしいが、明らかな根拠はない。これを具体 的な形で示したのはオランダの物理学者ホイヘンス(Christian Huygens)に求められる。 彼は天文学や光学で多くの功績を残していて、土星の輪の発見をしたり、振り子時計や、 ひげゼンマイ式の時計などを作り実用的な機械式時計の元祖とも言われているが、言わば サイドワークのような内燃機関に対する寄与は余り知られていない。 1666 年フランスのルイ 14 世はコルベール大臣に命じて新技術開発プロジェクトを立上 げさせ、科学アカデミを組織した。ホイヘンスはその初代会長として招聘されたが、彼は この組織の研究課題として火薬による動力源の研究と、火力による水蒸気の利用を取りあ げた。このとき考えたのが図に示す火薬エンジンで円筒の下に火薬を置いて爆発させ、ピ ストン D を持ち上げると共に中の空気を追い出すと、内部は真空状態になるので大気圧に よってピストン D が下に降りてくる。これによって水をくみ上げる。この機構は膨張行程 のみでカルノーが提示した圧縮行程がないので、無圧縮エンジンと呼ばれ内燃機関でない とする説もあるが、ピストンを備えていることからホイヘンスは内燃機関の元祖とされて いる。これを Jean de Hautefeuille(神父)と共同で作り 1673 年に公開した。この火薬エ ンジンの欠点は 1 サイクル毎に火薬を装填する手間がいることであったので、Hautefeuille は火薬の替りにアルコールを使うことを提案していた。この考えが後のガスエンジンの開 発につながる。そしてこのとき移動機械への応用の可能性に ついても触れたとされている。一方、イギリスに Samuel Morland 卿という計算機械や水力学で功績のあった人がいる。 彼が火薬エンジンを開発したとの説もあるが、実態はホイヘ ンスのエンジンを改良して水くみの機械を造ったということ のようである。 この無圧縮エンジンは、爆発的に膨脹する燃料とそれを点 火する機構が有れば、シリンダ内の空気を効率良く排気する ことによりピストンを連続的に往復させることが出来る。こ の事からホイヘンスの実験以来、燃料と点火装置の研究がさ れたが、なかなか思うような成果が得られないまま約 100 年が経過した。この間、蒸気機 関はかなり改良されていたが、石炭ガスを用いたエンジンを Philippe Lebon が 1801 年に 開発し、ここで点火装置として電気を用いた。また 1820 年 Rev. W. Ceci は水素ガスを燃料 としたガスエンジンを造っている。そして 1859 年 Jean Joseph Etienne Lenoir がそれま での種々の試みを集大成した実用的な石炭ガスによる 1 気筒 2 ストロークのガスエンジン を完成した。ここではコンデンサーに充電した電圧で放電する火花点火方式をとり、これ を 1863 年に車に載せた。この車は 500 台ほど作られたが、効率が 3%程度であったことも あり、すぐに出現した Otto による 4 ストロークガスエンジンにより、次世代のエンジンの 踏み台になった 1 気筒2ストロークガスエンジンの開発は終わった。 目次へ P.Valenti:http://www.21stcenturysciencetech.com/Articles%202008/papin_steam_engine.pdf http://library.thinkquest.org/C006011/english/sites/gasmotoren.php3?v=2 http://www.eng.cam.ac.uk/DesignOffice/projects/cecil/history.html