講演録(PDF:2004KB)

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講演録(PDF:2004KB)
平成23年度営農推進講演会
「販路拡大に向けて
~ さわやか相談員を目指そう! ~」講演録
講演者:(独)中小企業基盤整備機構
プロジェクトマネージャー
日 時:平成23年12月21日
山根
彰彦
本日は販路開拓というテーマなのでものを売る、販売と言う点にスポットを当て説明していきた
い。また、本日の研修のねらいを私なりに考えてみたが、行政担当者として、具体的な事例よりも
販路拡大とか6次産業化にすでに取り組んでおられる方々の、売り上げがアップするために適切な
アドバイスができるようになる、助言をする際の参考になればと思う。
販路開拓などの研修会で良くあるのは、成功者が事例を発表し、それを参考に応用していこうと
いう内容で、良い点は事業者が非常に生々しく説明されるので、ご苦労などもよくわかることだが、
欠点はすばらしいなと聞いていて、それはそれとして知識にはなるが、別な案件が出てきた時にど
のように応用したらいいかよくわからなくなる点である。また、売上げ拡大、販路拡大について良
くある研修内容は、マーケティング理論に基づいて説明するものである。いろんなケースに対して
もきちんと理論を身につけておけば応用が利くので、ある程度適切な助言ができると思うが、マー
ケティング理論は聞いている人は楽しくないので、事例とマーケティング理論の中間ぐらいの話で、
実際に6次産業化に取り組んでいる100事例を基に分析・整理して、事例に基づいてある程度応用
が利きそうな販路拡大だとか売り上げアップの方法をこれから説明したい。
現在、事業者からの相談にアドバイス等をさせてもらっているが、事業者から良くある相談はほ
ぼ4つである。それに対して上手にどうお答えすればいいのか、営農指導は正にここだと思う。
「私
は何をすればいいの」、「それをやるにはどうやったらいいの」、「それは本当に正しいことなの」、
「やってみたけどうまくいかないのはなぜ」この4つである。本日の研修では、1番目と3番目、
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「私は何をすればいいの」については、助言をする際の判断根拠となるもの、ヒントになるものを
お示ししたい。
「それは本当に正しいことなの」については、ある程度理屈を説明してあげないと、
「何々を栽培したらいいですよ」といっても、なぜそうなのかを答えられないと相手は納得しても
らえない。
今、6次産業化と農商工連携の認定件数を全国で見ると、農商工連携事業は、法律ができた時に5
年間で500件の認定を目指して、地域に波及させたりモデルにしていこうと始まったが、3年半で46
0件の認定状況で、6次産業化は、平成23年3月に施行されて1年経過していないが、すでに400件、
年明けに新たな認定がされる予定で、ずいぶん申請書が提出されているようだ。6次産業化と農商
工連携の認定を目指す事業者が多い状況なので、今後ますます、助言等の機会が増えると思う。実
際に岡山県で農商工連携の認定を受けたいと、事業者から直接電話がかかり説明を聞きたいという
話だった。今まではこういう事はなく、意識の盛り上がりがあるなという印象を持っている。
- 2 -
これは各県別の認定状況だが、四国では各県別に見ても6次産業化と農商工連携の認定がバラン
ス良くされているが、中国地区ではばらばらである。
このグラフは、農商工連携が平成20年度に施行され、事業が順調に進んでいるか21年度にアンケ
ートした結果があったので紹介したい。これを見ると「ほぼ計画通り」が半数、「計画よりも遅れ
ている」が3割、「計画よりも大幅に遅れている」が13%、全体では155事業者から回答があった。
計画よりも遅れている理由は何かとの問いに、販路開拓、売り上げが上がらないという回答が多い。
2番目は連携がうまくいかない、リーダーシップがとれていないなど、人、組織の問題。それから、
想定通りものが作れないと言うケース。他は計画自体に実現性、妥当性がなかったというものだっ
た。中小企業でも新規事業の立ち上げを推進しているが、新規事業がうまくいかない理由は、人、
金、販路と言われている。農商工連携の場合は、販路、人、物である。
6次産業化も同じようなことが起きるかもわからない。プランナーの方が入ると実現性、妥当性
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の高い計画が認定されると思う。認定がおりないのは、計画に無理があるのではないか、6次産業
化あるいは新たな事業に取組みたい事業者は、思ったように売れないことがよく起きるのではない
か。そのような状況を踏まえて、6次産業化の100の取組事例を私なりに整理してみた。
中国地区を見ると、ナタマメという新たな作物に取り組んで加工、販売したいとか、ブドウを栽
培してワインを作って売りたいなど、青年グループによる、野菜、牛乳の直売、観光農園を経営し
てツアー客を集客したいなどいろいろなタイプの事業が出てくる。
100事例を整理すると、事業者が新たに6次産業化を作っていくのが65事例あった。農作物を栽培
して加工を行う2次化の事例はゼロ、農作物、水産物を加工しないで売る、新たな売り方に取り組
むケースが25事例で、両方合わせて90事例である。その他、売るだけと言う事例も紹介されている。
注目したいのは、地域6次産業化、一つの事業者は途中までしか対応していないが地域としてみれ
ば6次産業化を行っている事例が36ある。地域の中小企業者、農業者、商業者が一緒になってやっ
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ていく事例も多く見られた。本日は、具体的な売り方を紹介したい。
3次専門というのも地域6次産業化である。産地直売所の設置運営をしている事例が7あるが、株
式会社が3、農協が3、農事組合法人が1で、レストラン併設が2カ所、あるいは直売所の中に地域の
人が使っているような製造設備を設置しているところが1あった。その他では自治体が支援して6
次産業化を進めているケースや、ある地域全体がまとまって取組を行っている事例もあった。酪農
組合による牛乳の製造販売はあまりにも規模が大きいものでその他とした。10事例を除き90事例で
中身を整理してみたい。
個人でやっているところは16、会社組織は56、組合は14、その他は4という形になっている。6次
産業化は誰がやっているかというと、法人、組合、もしくは会社合わせて70社、全体の80%が法人
格を持っており、事例として取り上げられるのは法人が多いのかなとも思う。11事例は女性主体で
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取り組まれている。
農林水産物の取組はどうなっているかというと、6次産業化に取り組む場合、1品種で事業化し
ているか、多品種かを見てみると、1品種で事業化を行う事例が多かった。農林水産物について既
存品、今作っている物をそのまま新たな事業にするケースと、新たな農林水産物に取り組むケース
は30事例あった。新たな取り組みはどんな物があるか、新しい作物にトライして事業化に結びつけ
る事例が多かった。後はブランド化だとか、品質向上が次に多い、その他安心・安全、無農薬・減
農薬の取組が見られた。新しい作物に取り組むか、今取り組んでいる作物をさらに品質向上を図り
ブランド化していく、安心安全をさらに強化して6次産業化に取り組む事例である。
加工食品は包装してある食品だが、1次加工が5事例あった。製品のタイプについて説明すると、
必需品、買回り品などマーケティングでいう商品区分の仕方があるが、必需品は商品を買うために
探したり買うための努力をしない物、買回り品というのは、ある商品を買おうと思った時に買うた
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めにいろいろとお店を探すなどの努力をするもの、別の見方をすると商品に別な特徴を持たそうと
しているもの、必需品は商品に特徴を持たそうとしていないどこにでもある物と考えても良い。具
体的な商品としてはどのような物があるか。必需品としては、餅、漬物、味噌、豆腐、調味品など、
買回り品としてはジャム、ジュース、ジェラート、ハム、米粉パンが多く見受けられた。1次加工
の具体的な商品は、洗浄、カット(つまもの)、ピューレ、真空パックにして鮮度保持する取組。
売り上げが大きいのは1次加工である。この100事例は、個別に相談を受ける場合に参考にならな
いのではと思うかもしれないが、これから出てくる相談事例も、今整理したような割合で農作物、
加工などの事例が出てくると思われる。こんな感じで相談がくるのだろうと思ってもらえたらよい。
売り方はどうなっているか。小売りというのはBtoC直接最終消費者へ事業者が販売するケー
スが30。6次産業化は申請者が農作物を作って加工して物を販売するケースの場合、30事例が小売
りである。小売りと卸売りの両方をやっているところが13、卸売りだけが22、ここで私が気がつい
たところは、この事例の中では全て直売として表現されていること。小売りだろうが卸売りだろう
が直売として表現されているが物の売り方は全然違う。卸売りは人に売ってもらう、小売りは自分
で売る、直接お客様に物を売るので違う。直売というのは農協を通さないで販売する物を直売と定
義しているなという印象を持った。農協に販売するのは実態としては卸売りで、業者から見れば卸
売りになる。
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販売エリア、どこに売っているのか、地元か、広域に売っているか、企業か。自分で農作物を作
り、加工して物を売る場合の売り方の割合では、企業に売っているのは全部卸売りで、人に頼んで
売ってもらっている。
3次化は農作物を加工しないでそのままを販売をする物だが、新しい売り方にトライするケース
の場合は小売り、卸売りがそれぞれ多くなっているが、加工して物を売る場合と比較すると小売り
が多くなっている。レストラン、民泊に売っているケースが出てきている。
作物を加工しないでそのままを販売をする物は、企業とかに売るケースが増えてきている。農産
物を直接地元に売る場合、レストランを直営するケースが成果を上げておられた。農産物を自分で
作って、直接売ろうと思ったら飲食店を経営するパターンである。
1次産品はどうするのか、加工はどうするのか、売り方はどういうやり方でどのエリアに売って
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いくかを考えないといけない。考えのよりどころ判断基準は、原理原則から外れているケースは売
り上げが上がらない。売れると思って百貨店にセールスして撃沈して帰ってくるものは多い。
販売のための一般論として横軸を価格、縦軸を販売量にすると、例えば石けんをイメージすると
価格と売り上げはどのような関係になるか。実態はこんな感じのカーブになる。本来は釣り鐘型、
正規分布の形になるのが理にかなった売り上げであるが、ピークがずれる要因としては、消費者は
安くてできるだけ無駄な物は買いたくない心理的な要因が働いているから、私はバイヤーをやって
いたので、バイヤーは小売りでどう見るかというと、お客さんの数が同じで、カーブ線の下の面積
が売上金額なので、ピークを右にずらせていくとお客さんの数は同じでも売上金額は上がる。普通
は、100円、200円、1000円の石けんがあった時に、100円の石けんは少し不安なので200円のにしよ
うかというような買い方である。お客様が商品の内容をきちんと理解して、この石けんはアトピー
の方にも安心ですよなど、石けんの有益な機能の意味を伝えることができれば、限りなく正規分布
か、もっと上手にプロモーションできればグラフ右側にピークができるような売り方をすることは
基本的にできる。
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製品区分は必需品と買回り品と専門品であり、専門品は、その商品を買うためであれば相当の努
力を払っても良いというもので一般的には高額な物が多い。商圏は、必需品など値段の安い物は遠
くまで買いに行こうとは思わない、値段の高い何か特徴を持った専門品などは遠くまで買いに行っ
てもいい。商品が持っている、商品がお客様を引きつける力というのは特徴があればあるほど遠く
からでもお客様を呼び込むことができる。スーパーなどでは値段の安いものから(正規分布の)ピ
ークを過ぎた当たりの値段の品揃えがされていると思う。高級食品スーパーの場合は買回り品の品
揃えもできている。百貨店の場合は、さらに高級品が置いてあるイメージである。ワイン専門店だ
とか健康用の専門店はかなり高い商品まで品揃えしているのではないか。コンビニはおいしいとこ
ろだけを数少ないアイテムで売っていく。それぞれの販売のポイントは、できるだけ価格競争力が
高い、(グラフ)右側の商品を売ろうと思うと差別化、よそよりも何か特徴を持っている事が販売
のポイントになってくる。このようなことを踏まえた上で、卸売りをしたい、人に売ってもらいた
い、例えば食品スーパーで取り扱ってもらおうと思うと、自分たちに低コストで物を作る力がある
程度ないと相手にしてもらえない。百貨店で取り扱ってもらいたいと思うと、自分たちがお客様の
ニーズを把握して商品の魅力度を上げるための、作り方などの商品の特徴を出さないと扱ってもら
えないのは原則である。
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小売りとして自分たちが消費者へ販売する場合は、現在産直がお客様に支持されているので品揃
えの良い産直もあるが、お値段が安くて新鮮という品揃えになっているイメージがある。他では直
営店、農業者の方が自分の店を出すというのは若干特徴があり、値段が少し高くても大丈夫かなと
思う。道の駅はかなり広く商圏を取る力があるので、(正規分布の)ピークからもう少し値段の高
い物を売っても大丈夫かなと思う。自分が販売する場合、移動販売・宅配というケースがあるが、
それは直営と同じような商品を移動販売・宅配するのが考えられる。ものすごく商品にこだわって
いる、特徴がある商品を自分で売りたいとなると、手段は通信販売で、インターネット販売か、カ
タログ販売に取り組んでいく。小売りではないが自分のところで作る加工食品は低コストでうまく
作れない。数が少ないので、ビンにしろシールにしろいろんな包材にしろ、少しの数であれば大手
の会社に対してコスト競争力が高くないので、結果として加工食品を自分で作って売ろうと思うと
何か商品の特徴を出して付加価値を上げて売っていくというような売方になる。自分で売りたい時
のいい方法として、イベント売りがある、イベント売りというのは地域のお祭りにテントを出して
直接に販売する方法や、百貨店の催事イベントで自分で行ってお客様に売るというケースである。
昨日も6次産業化のセミナーで東京新宿百貨店のバイヤーが、「百貨店のイベントはそんなにコス
トがかかる物ではないので、積極的にトライしてみて下さい」と、「売れなくても店が怒ることは
ない。むしろ、売れなかった時に自分たちが何が悪かったのだろうと気がつくきっかけにしてくれ
たらいい」と言われていた。イベント売りはどんな場合でも活用できる売り方である。
商圏エリアの中域とは県内全域という範囲で、広域とは東京、大阪など全国というイメージであ
るが、必需品、買回り品、専門品を自分たちで売ろうと思うと直営か、産直か宅配か、移動販売か
ということになる。特徴を持った商品を広域に売ろうと思えば、道の駅での販売、通信販売などが
考えられる。人に売ってもらう場合、商品の特徴が必需品と買回り品の中間ぐらいで、商圏エリア
が地元、中域ぐらいであれば地元食品スーパー、さらに特徴を持たして中域で百貨店で販売する。
さらにこだわった商品は、通信販売業者に売ってもらう。ここらが販売に関する原理原則なのだろ
うと思う。
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実際に6次産業化の100事例の売り方を見てみたら、自分で農産物を作り、かつ加工食品、1次食
品で売る場合は、加工食品を作って売るケースが60事例ある。買回り品、特徴を出そうとしている
商品については、地元で小売りをしている、全国、広域を対象に人に売ってもらって卸売りをして
いる7事例で、※にしているのは通信販売が4事例で、先ほどの成功事例にかなっている。必需品は、
地元で小売りしているのが多い。卸売業もあったが、地域の学校、病院、介護施設等の給食食材等
で商品を売っていく事例があった。1次加工品は言い方が悪いが作りかけの商品なので、ほとんど
広域か企業を対象に卸売りをしている。いきなりこの図を見ても理解が難しいかもしれない。
3次化タイプの場合、生鮮食品を自分で直接販売する、買回り品として農産物に何か栽培技術な
どで特徴を出そうとしている取組が見られる場合、地元の飲食店、飲食店を直営している。農産物
に安心安全、品質がよい、珍しいなど何か特徴を持たせて、飲食店を自分で開いて売っている。新
たな品種に取り組んで企業に対して生鮮品を売り込んでいく、これは食品メーカーが7社、都市型
- 12 -
の飲食店、料亭などに売っているケース、変わった作物、あるいは安心安全とか、何か特徴を持っ
た農産物を作って企業に卸売りする事例が多く見られた。
以上のことから、6次産業化のビジネスモデルとしてどんなものが成果が上がっているか類型化
を試みた。1番目はこだわり商品、買回り品、何か特徴を持たせようと思った農作物、商品を地元
で自分で売るか、中域ではなくいきなり広域エリアを対象に自分で通信販売する、あるいは卸売り
で広域に販売していくパターン。2番目は地元をターゲットにして、身近な加工食品、必需品に近
いような食品を作って自分で販売する、自分で飲食店を開く場合もあるし、産直へ持っていく場合
もある。こういうのも結構実績は大きい。なぜ実績が大きいのかを見ると、食品はマーケットサイ
ズが大きいので、結構似たような商品で差別化されていなくても、地元をターゲットに、スーパー
や産直などを利用すればかなり成果が上げられるモデルである。また、最初は弁当や総菜を製造し
て地元で販売していたが、地元の学校、病院、介護施設等からの要望で卸売りが始まったり、今回
の取組事例とは別の岡山の事例だが、特徴が少ない商品を作っていても食品卸売り屋さんから、う
ちのブランドで作ってほしいと要望されるケースもある。マーケットが大きいので、地元なら地元、
企業、商品の特徴にこだわらなくても、「作ることができる」ことに着目して、商談がまとまって
大きな売り上げにつながった事例があり、これはいい事例だなと思う。4番目は地元の主力作物、
生産量の多い作物を1次加工して、食品製造業に卸売りする場合で、産直の売り上げを除くと売り
上げ規模が大きい。4番目は3次化、加工しないケースで、地元の特産品や特徴のある農作物を地元
の飲食店、自分で飲食店を開いて提供する小売りである。(PP資料は誤り)地元で、珍しいトマ
トであったり、無農薬野菜に取り組んで、それを飲食店として自分で提供していく事例。5番目は
特徴がある農作物を食品製造業に卸売りする、これが農商工連携のパターンである。あるいは食品
製造業と契約取引や、連携して新たな商品を作って売っていくケースが見られた。
わかりきった内容だと思われるかもしれないが、わかっているけれど、やってみたらうまくいか
ない事例がある。販路開拓の個別相談をうけて、儲かるビジネスモデルを知っていてやってみたら
うまくいかない場合にかなり有効な方法がある。相談者に「どのような販売方法を行ったのか」と
聞くと、「展示会、商談会に行ったら、問い合わせもあったし引き合いもあった、名刺交換もした
が、なかなか注文の電話がかかってこない」など商談が進まないケースが多い。「それは何が問題
なのか」と聞くと、値段が高い、商品の品数を増やしてほしいと要望されて商談が成立しないよう
だ、その時にアドバイスするのは、「相手に質問して下さい」ということ。展示会、商談会ではバ
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イヤーさんに農薬を使っていないなどと自分のいいところばかりを伝えている。バイヤーさんはじ
っと聞いて値段が高い、品質、生産量はどうかと聞いてくる。商談が決まったか決まらないかわか
らないまま、なし崩しになっていく、バイヤーさんに質問したかと尋ねたらほとんどしていない。
だから「どうしたらいいんですか」と聞いて下さいと助言している。私もバイヤーをやっている時
に、そう尋ねられると弱い。「僕はあなたの店で商品を売りたいと思っている、どうしたらこの商
品をあなたの店で取り扱ってくれるのか」というと、私の経験では、「本当にそんなことを言って
もいいのですか」となる。例えば、「値段を安くすれば、品質を高めれば、生産量を確保したら扱
ってもらえるのか」と尋ねて、パッケージのデザインが悪いなど改善点を聞きだして宿題を持帰り
回答すること。私がバイヤーだった時に、気に入った商品でもいきなり初めての取引先からこれが
気に入ったから購入するということはない。商品は気に入ってもその会社が信頼できる会社か、ど
のような対応をしてくれるのか見極める必要があるので、結論が出せない。だからこのような質問
をしてもらうと弱い。値段を安くしてほしい、パッケージをきれいにしてほしい、こんな商品をこ
の納期でこのようにしてほしいと言った時に、それを守りますと言われたら仕入れるしかなくなる。
商談が決まらないケースではそのステップがない。卸売りの場合を紹介したが、小売業でも同じだ
と思う。お客様にどうしたら購入してもらえますかとは聞きにくいが、基本的にはなぜ購入しても
らえないのかを探り出していくしかない、それをアドバイスしてあげるとかなり納得してもらえる。
販路開拓のステップについて私からの提案は、特徴がない加工食品、加工食品で必需品の場合の
販路開拓をしていくステップとして、物を作る力もないし作り慣れていないので、まずイベントで
試し売りを行ってみる。地元のお祭りに出店して、まず物を売ってみる事に取り組んでいただいた
らどうかと思う。ある程度手応えを感じれば産直に持ち込み出品したらどうか、それでお客様の反
応を見て手応えを感じれば直営店を開設する、次のステップとして移動販売や宅配というのも検討
してみる。さらに事業規模を大きくする時には、店舗の集客力を上げるために店舗に飲食設備を持
たせる、店舗自体を増やしていく方法もあるかと思う。特徴のない物を作っていても、地元のニー
ズに対応する方法もある。学校、病院、介護施設などにニーズがある、食べ物を作って下さいとい
うニーズを見つけて、規模拡大していく、食品の小売業、卸売業が新たな商材を探しておられるの
でそこに向けて生産していく。
加工食品で特徴を持ったこだわりの商品を売っていきたいという時も、イベントを通じて地元で
販売してみて、売れなくてもお客様の反応を確認する、百貨店等でもイベントに参加してみる、そ
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こらで手応えを感じた上で、これは売れそうだと感じれば通信販売や、イベント売りという手もあ
る。展示会や商談会に出て行って、食品スーパーだとか百貨店、通販業者に商談していこうという
ケースが多いが、私が見る限り、何か新しい商品、特徴のある商品を作りました、まだ、試し売り
もしていないのに、いきなり商談会に持ち込んでバイヤーに厳しいことを言われて、もう二度と行
きたくないというケースが多い。いろいろな販路を拡大していくステップや売り先など必要なこと
があるのに、あまりにも商談会に集中、特化しすぎているのではないかと思う。販路開拓という言
葉自体が、展示会や商談会に出て行って人に売ってもらうという意味合いが強すぎるように思う。
ここはハードルが高いし、事業になったとしてもあまり儲からないので最後の手段として考えたら
どうかと思う。
必需品の場合は、商品ラインナップをどんどん充実していくことが課題になる。買回り品、特徴
のある商品では、商品の特徴、製造技術、商品パッケージ、売り方のノウハウが必要になる。
私がこの3年間、農商工連携、6次産業化の事例を聞いたり、事業者さんの相談を受けた中で、い
い事例だなと思った事例を紹介したい。1事例目は馬路村の事例である。ボランタリーアドバイザ
ーになられた後で6次産業化フォーラムの時に、私自身が組合長にお会いして、今まで本、講演会
ではお話を聞いたことがあったが、疑問に思っていることがあったので食い下がって聞いてみた話
をご紹介したい。昭和55年から63年までは1億円足らずの売り上げがあったが、その後急激に売り
上げが伸びて30億円まで到達した。その要因のひとつはごっくん馬路村というヒット商品がでたこ
と、それから、馬路村としてのブランドイメージが高まるデザインが確立してきたこと。馬路村と
いう名前は高知県内でも知らない時に東京とか大阪では売れないから、村自体のイメージをあげて
いく取組が必要だと気がついて、東京の電車の中に馬路村のポスターを掲載して共感を生んだ。こ
れですぐジュースが売れるわけではないが、地域の知名度をまず上げようという取組を電車、テレ
ビ等で行われた。その成果がどんどん上がりだして、村の知名度が上がったので観光を強化してい
る。東京だとか大阪の人が観光に来た時に見てくれる立て看板を立てて、お客様が馬路村に来て一
番喜んでくれるのは、馬路村は狭い道がグニャグニャしている所で、そこからジュースを送っても
らっていることを実感してもらうこと。だから、馬路村では道幅を広くしないと村議会で決定され
たようだ。私が聞きたかったのは、1億円から30億円になった話ではなくて、ゼロから1億円には
どうやってなったのかと言うこと。どのような売り方をしたのかをかなり食い下がって尋ねた。創
業から1億円まではどういう売り方でやっていったのか、当時からポン酢、ジュースはあり百貨店、
スーパーにも商談に行ったようだ。値段がネックで、この値段であれば売ってあげるという事にな
ったが、その値段で売ればいくら売っても工場で働いている方、農業者の方にお金が払えないので、
これが一番苦労したんだと。でもこのままではいけないからと、年間200日程度イベント販売を行
った。人に頼んで販売してもらっても儲からないので自分が直接出向いていって販売した。簡単に
言われたが、やろうとおもえば無茶な話で大変なことだっただろうと思う。直接、東京の百貨店の
イベント売りを年間200日程度行っていた。経費もかかるが徐々に元が取れるようになって、お客
様から手紙やはがきでおいしかったのでと注文が来るようになった。そこで通信販売を始めていっ
た。通信販売の請求書に色付いた季節の葉っぱを同封するとさらにお客様が喜ばれる。オリジナル
の地域新聞で馬路村をPRしつつ、お客様を固定化し拡大して行かれた。ご苦労された話を聞いて
これはいい話だなと思って紹介させていただいた。
もう一つ、これも実際にお会いしてお話を聞いてびっくりした話である。鳥取県にひよこカンパ
ニーという採卵専門の養鶏業者がおられる。経営者は45、46才で事業を開始して16年ほどの会社だ
が、創業時から卵が1個100円である。事業立ち上げの時はご苦労があったようだが、今は100%通
信販売である。開業以来毎年会員数が増加して、売り上げも上昇中である。1個100円という値段
は、この事業を始めた時に卵の値段が1個10から15円ぐらい、ブランドの卵が20円、創業当時養鶏
卵ヒカリというのが高級品で1個50円だった。その当時に最初から1個100円で売り始めた。ペッ
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トボトルのお茶が130円程度で販売するマーケットがある中で、いきなりこのペットボトルを1500
円で売ることである。鳥取県八頭町という山間の町で、現在喫茶店も経営しておられ、店内ではバ
ームクーヘン、プリン等を販売されている。女性客が多く、わざわざここに買いに来られる。私の
解釈であるが、ブランド化が図られて、口コミでお客様が広がっている。社長はブランド化を図り
たいからある取組を行ったわけではない。ブランド化というのは企業の名前を付けたり、独自の商
品名を付けて高く売るだけでブランド化になるわけではもちろんない。ブランド化を図るためには
会社、あるいは自分がお客様に何を約束するか、自分がお客様に約束することを自分で決める。そ
れを明確にして、そしてお客様に対する約束事を必ず守って、期待に応え続ける。こういう事を継
続して少しずつブランド化していく。ひよこカンパニーは5つのこだわりがあって、飼育方法は平
飼いである。創業当時はゲージに鶏を入れて少ない面積で大量の鶏を飼うのが主流であったようだ
が、創業から現在まで平飼いを続けている。それから、鶏は病気になりやすいので、病気になると
かなり多くの鶏が一気に死んでしまう。それを回避するために養鶏業者は餌に薬などを混ぜるよう
だ。ただ、ひよこカンパニーではそれを行わず天然の海藻、カニ殻など地域で取れる物だけで給餌
している。そこに多少のノウハウがあると話をされた。3番目は鮮度へのこだわりで、通信販売で
お客様にお届けするが、お届けするのはその日にとれた卵でないと発送しないと社内で決めている。
そのルールがあるために、百貨店でも、スーパーでも売らせてほしいと要請がくるが断っている。
それは、このルールに反するからという答えだった。5番目は、安心安全にこだわりましたという
キャッチコピーの中身は何かと問われると結構曖昧なことが多いなかで、この会社は第三者機関に
よる毎月一回、鶏舎などを検査を行い報告書をネット上で公開されている。創業時からこの5本の
約束を守ってきているが、年々その基準を高めていると社長が話されている。昨年よりは今年のほ
うが厳しい基準をと、こだわりを持ってやっているとお話しされた。この会社が会員様へだすダイ
レクトメールは、自社の商品の紹介がない。普通だと通信販売で物を購入したら、こんなキャンペ
ーンを始めるので良かったら購入下さいとか、買ってくれ買ってくれと言うDMが多いと思うが、
全然商品が載っていないパンフレットを送り続けている。社内の女性職員が鳥取県西部の大山地区
に行きましたなど、景色の美しさや地域の食べ物や有名なお店を紹介する記事を作成してお客様に
送っている。お客様は、電話を受けてくれる女性はこんな顔をしているか、こういう事が地域で行
われているのかなどすごく喜ばれるらしい。私も不思議だったので、社長になぜ自分の所の商品を
載せないのかと尋ねたら、お客様のアンケートやレスポンスを見ると、今回の食べ物の記事はおも
しろかったね、鳥取県内の観光情報は良かったねと言う声しか帰ってこない。お客様が読まれるの
がうれしいからどんどんそのような記事を増やしていると。
販路開拓で有利販売という面では、馬路村、ひよこカンパニーの事例では自分でお客様を開拓し
て、維持管理してお客様と直接にやりとりをしていることが、利益が確保できるための一つの販売
方法なのかなと、極端な例かもしれないが非常に印象に残っている。両者に共通するのは消費者へ
の情報提供、考え方やこだわり、誠実さ、まじめさ、正直さ、あるいは田舎の生活そのものを都会
の方々や、そういう価値観を持っておられるお客様に対してどんどんコミュニケーションを積極的
に図っておられる。会社とお客様の接点に差別化のポイントを置く。お客様との出会い、つながり、
購入後のお客様とのコミュニケーション、商品もさることながら、それ以外でもお客様とのコミュ
ニケーションに非常に力を入れて、しかもお客様に喜んでいただけるという取組は、なにかヒント
になるかもわからないし、すばらしいことだなと私は思っている。
- 16 -
まとめとして、販路開拓、売り上げ向上のために、まず自分で売ってみる。他人に売ってもらう
のはその後でよい。自分で販売してお客様の声を聞いてみる。事業を新たに始めた時に、お客様の
ニーズを把握する。人に売ってもらっていたらいつまで経ってもお客様の感触はつかめない。昨日
も百貨店バイヤーの方が、「何の調査もしていないで、売れると思った」と商品を持ち込むケース
があまりにも多いというお話をされていたが、対面販売を行い失敗、改善を加えた上で事業を大き
くしたり方向性を見つけていく。消費者ニーズ、地域ニーズという言葉もあり、企業、食品事業者
ニーズ、食品小売業ニーズに対して私たちが応えられないかなど、大きなビジネスチャンスがある
のではないか。自分の生産能力、品質、商品の特徴、事業の実施体制を踏まえた上で販売エリアだ
とか、販売方法を決定していく。商談会、展示会へ行くことだけが販路開拓ではなくて、いろいろ
な方法、いろいろなビジネスがあるので、自分の現状、能力等を踏まえた上で、理にかなった方法
で販売していくことを考えたらどうか。3番目で大切だと思っていることは、事業の推進責任、企
業なのか団体なのか、これを明確にすることが大切ではないか。新規の事業を行うことは、リスク
を取るということである。損する可能性が高いと言うこと。誰が損するのかが明確になっていない
と、事業は立ち上がっていかない。例えば一番良くないのは協議会を作って総花的に方法だけは決
めるけれども、やってみようという段階で損するかもとみんな腰が引けて前に進めなくなってしま
う、足並みがそろわないでうまくいかないケースがある。これはリスクを取る人がいない事が原因
である。その地域にあった事業の方向性は、専門のプランナーから見つけ出しているが、責任を取
るものがいないので事業が立ち上がらない。
最後に一番大切なのは、ここに来るまでに営農指導、中小企業で言えば経営戦略、要するに新た
らしい事業だけを考えるのではなくて、既存の事業をどうするのか、3年先5年先、新しい事業は
どういう位置づけにするのか、農地はどうするのか、作物はどうするのか、全体の枠組みをまず相
談に乗ってあげて、その後が本日の話で、そこは皆さん方が一番得意な分野だと思う。企業で言え
ば3年なり5年の経営戦略、成長ストーリーをはっきりした上でこういうものを考えていったらど
うかと、本日いろいろと提案させていただいた。ご静聴ありがとうございました。
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以上
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