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2016年6月27日号(PDF/468KB)

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2016年6月27日号(PDF/468KB)
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2016 年 6 月 27 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
1-3 月期
住宅価格指数(前年比)
今週の注目点
直近
前回
6.80%
8.70%
日付
経済指標・イベント
6 月 30 日 豪州 5 月 民間部門信用(前年比)
前回
市場予測
6.70%
6.70%
金融市場・原油・為替
指数等
2016年6月24日
2016年6月17日
前週比
2015年6月24日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,113.18
5,162.66
-1.0%
5,686.77
-10.1%
S&P/ASX200 不動産投信
1,435.80
1,449.00
-0.9%
1,297.50
+10.7%
豪州 90 日バンクビル利回り
1.95
2.00
-5bps
2.15
-20bps
豪州債券 10 年物利回り
2.01
2.08
-7bps
3.05
-104bps
76.31
76.98
-0.67
95.42
-19.10
0.75
0.74
+0.01
0.77
-0.02
62.30
62.10
+0.2
64.20
-1.9
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
英国民投票で、EU 離脱派が勝利しました。先週、当初は国民投票は EU 残留派が優勢であると見られており、リスクオンモードの動きがありま
したが、(大方の予想を覆し)52%対 48%と離脱派の勝利が確定すると金融市場に激震が走り、市場は急激にリスクオフモードとなりました。
英国の EU 離脱(Brexit)は様々なリスクを提起しました: キャメロン首相が 10 月に辞任することや、EU 残留賛成派のスコットランドが新たに
独立を問う住民投票を要求することが想定されるなど、政治的に不安定な期間に直面することによる英国経済への影響; 他のユーロ圏諸国が
英国に追随する気運が高まることでユーロ圏の安定が脅かされる懸念; 長期的に世界経済成長にネガティブなインパクトを与え兼ねないポピュ
リズムやグローバリゼーションからの反転が起こり、経済的合理主義的な政策から乖離する動きにはずみを付ける恐れがあります。
英国における影響への懸念を反映し、特に欧州金融市場はより際立って大きくリスクオフに傾いており、イギリスポンド(-8%)、英国株式先物
(-8%)、ユーロ(-3%)とユーロ圏株式先物(-11%)と急落し、グローバル株式市場全般が下落し、それに呼応して豪ドルも下落しました。
一方で、債券、米ドル、円や金のなどが安全資産として上昇しました。なんとか落ち着くまでは、この様な動きは短期的には行き過ぎとなる可能
性もあります。安全資産としての需要に応じて米ドルが上昇し、人民元への重石となることや(中国から資本流出という新たな懸念を誘発)、コモ
ディティ価格や新興国市場への重石となることで、我々が年始早々に経験したグローバル成長への懸念が再燃しかねません。
ここで今回の件に関して全体像をまとめてみます。まず第一に、いくつかの市場で金曜日に見られた動きは、先週の最初の 4 日間において残
留派の勝利を予想していた市場が、離脱派の勝利を受けてそのポジションを巻き戻さざるを得なかったことから、過剰反応となったことです。た
とえば、ユーロ圏の株式市場は金曜日に 8.6%の下落となりましたが、一週間では 2.6%しか下落していません。先週一週間では、米国株が
1.6%の下落、日本株が 4.2%の下落、中国株が 1.1%の下落、豪州株が 1%の下落でした。確かに下落していますが、それほど大きな下落で
はありません。信じられないことですが、英国株は実際のところ先週一週間で 2%上昇しています。英ポンドについても、金曜日は 8.1%下落し
ていますが、先週一週間では 4.7%の下落にとどまっています。豪ドルは先週 1%上昇しました。このことは債券市場でも原油市場でも同様です。
金曜日の動きは大きかったものの、一週間を通してみると、それほど大きな動きではありませんでした。
1/3
第二に、英国は Brexit のスタート地点に立っただけで、これから離脱までは長い道のりがあります。まずは新しい首相を選出する必要があり、
その後正式に EU に対して離脱の意思の通知を行い、それに伴って条件交渉プロセスが始まることから、完了までに 2 年の猶予があります。 こ
れによって英国経済への最終的な影響が決まります。人々の自由な移動を認め、EU のルールと規制、EU 予算への拠出を継続して EU との自
由貿易を維持するのか、それとも自由貿易を諦めるのか、ということになります。この段階では、英国がどの方向に進むのかを想定することは困
難ですが、 ポイントとしては英国は、しばらくの間は EU にとどまるということです。
第三に、Brexit の結果がユーロ圏諸国について、どの国が英国に倣って同様の国民投票を実施しようとするのかといった連想ゲームのきっか
けになると思われますが、ユーロ圏諸国が実際に離脱をしようとするかは疑わしいということです。ユーロ圏からの離脱は、新しい通貨制度を採
用し、高い金利を支払うことになるなど、英国の EU 離脱よりもハードルが高いからです。過去数年間にわたる様々な困難にもかかわらず、首尾
一貫してユーロ圏に留まることを選択しているギリシャが良い例です。しかし、イタリアについては、最近の地方議会選挙で欧州統合懐疑派の五
つ星運動が勝利を収めており、注意して見ておく必要があります。
第四に、Brexit は、リーマンショックの時とは経済情勢が根本的に異なることから、類似のものではないということです。リーマンショックは、世
界経済成長とクレジットブームが長らく続き、債務とそのエクスポージャーが不透明になった後に起こりました。今回は違います。Brexit は延々と
議論されてきたことから、リーマンショックの時のようなサプライズはありません。
最後に、各国中央銀行は即座に「必要なことは何でも」実施するスタンスで市場に流動性を供給し、各々の経済を支えてきました。イングランド
銀行(BOE)は、すでに 2,500 億英ポンドを供給するなど顕著な行動に出ています。欧州中央銀行(ECB)は注意深く状況を監視していますが、
現時点での流動性供給(例えば、TLTRO)は恐らく過剰であると思われます。より重要なポイントとしては、グローバルでは緩和的な金融政策が
今後も長く続くであろうと想定されることです。米連邦準備制度理事会(FRB)はもちろん利上げペースを一段と鈍化させるでしょう。安全資産に
対する需要として押し上げられた米国ドルの上昇圧力が、さらに高まるのを望んでいないからです。G7 の過度の通貨変動に対する非難声明は、
ほぼ間違いなく一段の円高抑制のために介入に踏み切ろうとしていた日本に対するものでした。近いうちに日本銀行(BoJ)は日本株市場を下
支えする為に、さらなる緩和策に踏み切ると見られます。
英国は今、経済や政治の問題に直面しており、不透明感が長く続くことを想定すると、英国の資産に対して強い確信は持てません。とはいえ足
元の世界的な“リスクオフ”の動きは、絶好の買い場を与えてくれていると見ています。欧州は再び団結の動きを強める可能性が高く、世界の金
融政策は以前考えられていた以上に緩和的になっており、世界経済は穏やかな成長を続けることが想定されるからです。
豪州の英国に対する輸出は全体の 2.7%に過ぎず、また英国における EU 離脱派の勝利によって英国やその他欧州諸国がすぐに景気後退に
陥る可能性は少ないことから、豪州に対する主な影響は金融市場への影響ということになるでしょう。このことは短期的な市場に対する確信度
に影響を与え、豪州準備銀行(RBA)がもう一段の利下げに踏み切る可能性があります。資金の出し手が警戒感を高めその調達コストが上昇す
ると、銀行が金利低下サイクルを逸脱して、住宅ローン金利を引き上げる可能性があるからです。したがって、我々は RBA がいずれにせよ今年
中にもう一段の利下げを実施し、豪ドル安の継続が豪州経済への衝撃を和らげる役割を果たすと予想しています。結論としては、Brexit によっ
て豪州が景気後退に陥るリスクはほとんどないと言えます。
投資家にとってカギとなるのは、Brexit の決定によって生じる短期的なノイズの本質を見極め、売られ過ぎた市場から投資機会を発掘すること
です。
Brexit ほど多くの注目を浴びることはありませんが、ドイツの憲法裁判所が ECB の無制限の国債購入(OMT)プログラムの合法性を基本的に
承認しました。このプログラムは、ユーロを維持するためには「どんなことでもする」とした 2012 年のドラギ総裁のコミットメントの土台の一部を下
支えするものです。この判断は大きな進展です。なぜなら、もし却下されていたら、Brexit の投票結果を受けて欧州周縁国の債券市場が混乱に
陥った場合の ECB の対応能力に暗雲がたち込める可能性が出てくるからです。
豪州でも、一週間後に連邦総選挙という大きなイベントが控えています。与党保守連合(自由党、国民党)と労働党は、政府の役割の大きさに
ついて各々大きく異なるビジョンを出しています:
•
豪労働党(ALP)は、医療と教育により多くの支出を行うことを重視しており、高所得者に対する増税(ネガティブギアリング、スーパーアニュ
エーション、キャピタルゲインなどに対する軽減税率の抑制を通じた財政再建の継続)によって財源を捻出して、政府の役割を増やすことを
標榜しています。ALP はまた、銀行に対する司法調査を進めることが想定されれ、与党保守連合下の政府の時よりも経済の仲介機能が高
まる可能性があります。
•
それとは対照的に、与党保守連合はもっと支出を抑制して、同時に企業に対する減税と穏やかな税制改革を通じて経済成長を促進する方
針です。与党保守連合は、スーパーアニュエーション改革による「公正性」に傾斜した政策を標榜しているにも関わらず、減税をコミットメント
として掲げています。豪州建築建設委員会(ABCC)の復権を計画しているものの、上下両院解散総選挙とはいえ、この計画を推進するのに
十分な票が獲得できるかどうかは不透明です。
この段階の世論調査では、豪州総選挙はかなりの僅差の戦いになることが予想されています。一方で、ALP が再び政権与党に返り咲く為には、
19 議席を獲得する必要があり、政権奪取できるかどうかは大きな疑問です。ブックメーカーの予想では、与党保守連合が優位に立っています。
しかしながら、上院で起こりうることは緑の党と少数政党がキャスティング・ボートを握る可能性が高いため、政権が強い制約を受け、今まで通り
事実上の少数党政府が成立する可能性が高いのです。そのため、今後 3 年間の政府支出の抑制や、経済改革を側面支援する生産性の抜本
的な改革を推し進められる見通しは低いでしょう。
総選挙が表明された時から 7 週間経ち、豪州株式市場は 3.1%下落しました。次の表は、1983 年以降に実施された 12 回の選挙のうち 8 回の
選挙において、選挙後 3 ヵ月で平均 4.8%上昇したことを示しています。これは選挙が終わり、先行き不透明感が解消されたことも影響している
と思われます。
選挙の前と後の豪州株式市場
選挙時期
勝利政党
豪州株 選挙前 8 週間の
変化率(%)
豪州株 選挙後 3 ヵ月の
変化率(%)
1983 年 3 月
ALP
0.6
1984 年 12 月
ALP
0.0
5.4
1987 年 7 月
ALP
3.7
15.9
1990 年 3 月
ALP
7.0
3.5
1993 年 3 月
ALP
連合
9.0
3.2
2.3
2.0
1996 年 3 月
19.8
2/3
選挙時期
勝利政党
豪州株 選挙前 8 週間の
変化率(%)
豪州株 選挙後 3 ヵ月の
変化率(%)
1998 年 10 月
連合
2.6
11.1
2001 年 11 月
連合
5.9
5.4
2004 年 10 月
連合
5.9
9.9
2007 年 11 月
ALP
2.9
11.7
2010 年 8 月
ALP
連合
0.5
5.7
2013 年 9 月
平均
2016 年 7 月
?
?
4.6
1.0
1.6
- 3.1* ?
4.8
?
*総選挙発表後 7 週間 ASX 全普通株指数 出所:ブルームバーグ、AMP キャピタル
世界経済指標
米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長の議会証言については、特段付け加えることはありません。カギとなるのは、世界中
で不確実性が増している中、米国経済とインフレ動向が予想通りの軌道に乗っているのかを評価する時間を与えるため、FRB が「慎重な姿勢を
維持」していることです。Brexit の国民投票結果を受けた不確実性の拡大と市場の混乱が、FRB の利上げをさらに後ろ倒しにさせる可能性があ
ります。
米国の経済指標はおおむね良好でした。耐久財受注が弱かったものの、6 月の製造購買担当者景気指数(PMI)は上昇し、住宅価格指数も上
昇、住宅販売は堅調な伸びを見せ、失業保険申請件数は大幅減少となりました。米国銀行の上位 33 行が、深刻な経済危機(失業率がおよそ
倍の 10%になったとする想定ケースを含む)に耐えうるのに十分な自己資本を有することを示す FRB の金融ストレステストを通過しました。言
い換えれば、Brexit に絡むあらゆる衝撃への耐性を持つ健全なバランスシートを有しているということです。
6 月のマークイットユーロ圏コンポジット PMI は若干低下しました。Brexit の懸念を反映してサービス業 PMI が低下し、製造業 PMI の上昇を相
殺しました。しかし、緩やかな成長を示す水準は維持しています。
日本の 6 月の日経 PMI 製造業指数は依然弱く、47.8 と僅か 0.1%上昇となり、4-6 四半期は依然不振が続いていることを示しています。
豪州経済指標
豪州では、直近の豪州準備銀行(RBA)の金融政策会合の議事録が公表されましたが、今のところ中立的な姿勢で、状況を判断している最中
であるとし、新たなガイダンスはほとんどありませんでした。しかし、低インフレ率が続いていることや、FRB による利上げの後ろ倒しを受けて豪
ドルが高過ぎる状態にあることから、8 月にもう一段の利下げを行う可能性が高いとの我々の見通しは変更していません。一方で、先週の豪州
経済指標は、目を引くものはありませんでした。オーストラリア統計庁(ABS)の発表によると、1-3 月期の住宅価格は若干下落しましたが、より
タイムリーな民間調査機関のデータでは、特にシドニーで住宅価格が再び上昇していることを示しています。人口の増加率についても、昨年は
1.4%増と直近 10 年間で最も高かった 2%から鈍化していますが、依然として根強い住宅需要を支えています。ニューサウスウェールズ州やビ
クトリア州は人口増加率で最も高い州ですが、これが住宅価格の上昇に拍車をかけています。言い換えれば、これらの州の予算は潤沢であると
いうことです。最後に、熟練労働者に対する求人は緩やかに増加しており、労働市場の底堅い状況が続いていることを示唆しています。
今週の注目点
今週の注目点は間違いなく英国の Brexit 国民投票に対する各国の反応で、特に 6 月 28─29 日に行われる EU 首脳会議が焦点となります。
米国では、住宅価格指数が一段と上昇し、消費者信頼感が若干上昇すると見られ、個人消費は着実な伸びをみせると思われます。しかし、中
古住宅販売仮契約は低下し、ISM(米供給管理協会)製造業景況指数は 51.4 とわずかに上昇する見込みです。
欧州では、銀行与信残高と 6 月の景況感は引き続き緩やかな経済成長を示唆する水準となっています。6 月の CPI コア指数も同じくリリース予
定です。
日本で、鉱工業生産が低下、四半期の短観調査は熊本地震の影響から悪化すると見られ、家計支出は引き続き弱いものの、労働力人口の減
少により雇用市場は引き続き堅調であると見られます。5 月の全国 CPI(除食料エネ/前年比)は若干低下し、前年比 0.6%となる見込みです。
豪州では、今週土曜日の選挙を除けば、5 月の HIA 新築住宅販売(前月比)は引き続き若干の低下、5 月までの過去 3 ヵ月の ABS 求人率は、
月次求人率が上昇していることを反映して上昇、引き続き緩やかに新規融資は伸びを見せ、6 月のコア・ロジック住宅価格指数は、住宅価格が
若干低下傾向にあることを示すと見込まれます。AiG 製造業指数もリリース予定です。
相場見通し
Brexit 国民投票の余波を受け、短期的にさらにボラティリティが高まる可能性もあります。とはいえ、今年は年末に向けて株式市場はさらに上
昇すると見ています。その理由としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に超低金利環境が継続していること、
緩やかな経済成長が続いていることなどが挙げられます。
また Brexit の結果から豪ドルが急落しましたが、まだ適正価格よりは高いことから、長期的には下落基調となるでしょう。というのも、RBA が政
策金利の引き下げを行っている一方で、FRB はいずれ利上げを再開すると見られており、今後、金利差の縮小が見込まれることや、コモディテ
ィ価格が依然低迷していること、豪ドルがフェアバリュー(適正価値)を下回るのも珍しいことではないためです。豪ドルは今後 1 年間で、1 豪ドル
0.60 米ドル近辺まで下落する可能性があると見ています。
3
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