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血液の悪性疾患に認められる肝臓障害 【ホジキンリンパ腫】 【非ホジキン
血液の悪性疾患に認められる肝臓障害 Liver in systemic disease. World J Gastroenterol. 2008 ; 14: 4111–4119 Hepatic Manifestations in Hematological Disorders. Int J Hepatol. 2013: 484903. 【ホジキンリンパ腫】 ホジキンリンパ腫の患者の 45%にリンパ腫細胞の肝浸潤が存在 し,肝腫大はステージⅠ/Ⅱ期の 9%,Ⅲ/Ⅳ期の 14%に認められ た,と報告されている.リンパ腫細胞の浸潤や肝外胆管の閉塞によ って,AST/ALT が軽度上昇し,ALP が中等度上昇することがある. 上記の様な肝外胆管の閉塞やリンパ腫細胞の浸潤とは関係ない, 胆管消失症候群を原因とする,ゾーン 3 の肝内胆汁鬱滞も報告され ている.ホジキンリンパ腫の約 3‐13%の患者が黄疸を呈する. リンパ腫細胞が肝臓に浸潤すると,類洞が圧迫されて二次性に虚 血に陥り,急性肝不全を起こすことがある. 【非ホジキンリンパ腫】 1.非ホジキンリンパ腫の肝浸潤 非ホジキンリンパ腫の 16‐43%にリンパ腫細胞の肝浸潤が存在す ると言われ,その割合はホジキンリンパ腫より多い.肝外胆管の閉 塞も非ホジキンリンパ腫の方が多い.なお,ハイグレードリンパ腫 (diffuse large B‐cell, T‐cell histiocytic)に比べて,低悪性度 B 細胞リ ンパ腫(小細胞性)の方がより肝浸潤を来しやすい. 2.非ホジキンリンパ腫による急性肝不全 非ホジキンリンパ腫でも,類洞にリンパ腫細胞が広範に浸潤して 急性虚血を起こし,肝細胞がリンパ腫細胞に置換されるために,急 性肝不全を発症することがある. 非ホジキンリンパ腫による急性肝不全や黄疸では肝腫大や乳酸ア シドーシスが見られる点が,ウイルス性肝炎や薬物性肝障害との区 別上で役立つ. 3.非ホジキンリンパ腫における肝機能異常 血清 ALP の軽度から中等度の上昇などの肝機能検査と,肝腫大が 見られることがある.血清 LDH の上昇は多くの場合,リンパ腫細胞 の量が多く,肝臓に広範に浸潤していることを反映し,さらに免疫 性溶血性貧血も示唆するため,予後不良な指標である. 1 4.非ホジキンリンパ腫の肝画像診断 低悪性度リンパ腫ではびまん性の肝脾腫がよく観察されるが,肝 機能検査は正常のことが多い.一方,高悪性度リンパ腫では肝腫瘤 性病変を認めることがある.ただし,非ホジキンリンパ腫の患者で 認められる肝病変がすべて,リンパ腫のためであるとは限らない. 414 名の連続した非ホジキンリンパ腫の患者を調査した報告では, 発症時に検出された肝腫瘤性病変のうち,リンパ腫病変は僅か 39% であり,58%は良性病変であった.しかし経過観察中に検出された 病変の場合は 74%がリンパ腫病変であり,15%はリンパ腫以外の悪 性病変(肝細胞癌や転移性肝がん)であった. 腹水が見られることもあり,リンパ管閉塞によって乳び腹水が貯 留することがある. 【慢性リンパ性白血病(CLL)】 慢性リンパ性白血病患者の多くに,軽度から中等度の肝腫大と, グリソン鞘に広範なリンパ球浸潤が認められ,進行すると肝機能障 害が表われる. 【ヘアリー細胞白血病】 白血病細胞は多くの場合,肝内の門脈域と類洞の両方に浸潤す る.ヘアリー細胞白血病の患者の最大 40%に肝腫大が観察される. 【急性白血病】 急性白血病の診断時において,白血病細胞の肝浸潤は通常軽度で 症状も少ないが,死後の剖検では,ALL 患者の 95%,AML 患者の 75%に肝浸潤が確認された.ALL では白血病細胞の浸潤は門脈域に 限定されるが,AML では門脈域と類洞の両方に白血病細胞が浸潤す る.肝臓に広範に白血病細胞が浸潤すると,急性肝不全を起こすこ とがある. 急性白血病の患者では,薬物性肝障害,細菌や真菌感染による肝 障害が起こることもある. 2 【多発性骨髄腫】 多発性骨髄腫の患者の 15%‐40%に肝腫大が認められ,時には脾 腫を伴うこともある. 【原発性骨髄線維症】 原発性骨髄線維症の患者では肝臓に病変が及ぶことが普通であ り,肝腫大はほぼ全ての患者に見られる.その肝病変は髄外造血, 頻回の輸血による肝血流の増加とヘモジデローシスである.こうし た患者の 7%に,門脈圧亢進症による腹水と食道静脈瘤が認めら れ,肝門脈枝の閉塞による肝臓の結節性再生性過形成によって,更 に門脈圧が亢進する可能性もある. 原発性骨髄線維症に患者に最も多い肝機能異常は ALP の上昇で 40%〜60%に認められ,類洞の拡張の程度に相関する. 【真性赤血球増加症】 肝臓が直接障害されることはまれであるが,一部の患者が急性ま たは慢性のバッド・キアリ症候群を呈することがある. 【慢性骨髄性白血病(CML)】 CML 患者の約 50%は,発症時に軽度から中等度の肝腫大を呈する が,肝機能異常は見られない.しかし,急性転化時には,芽球が肝 類洞に浸潤して,肝腫大と血清 ALP の上昇を起こすことがある. 【骨髄異形成症候群】 鉄芽球性貧血や不応性貧血の患者では,頻回の輸血や骨髄におけ る鉄利用の減少のために,肝内に鉄が沈着することがある. 3 リンパ節 リンパ腫に続発した肝門部グリソン鞘のリンパ節腫脹 肝臓の左右両葉で門脈周囲のハローが認められる(矢印).僅かなリンパ節腫脹が大網リンパ節(曲が った矢印)とグリソン鞘のリンパ節(矢頭)に認められる. DLBCL 自験例 DLBCL 自験例 4