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回復・破綻処理計画 - 新日本有限責任監査法人

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回復・破綻処理計画 - 新日本有限責任監査法人
2011 年 6 月
金融アドバイザリー部
リビング・ウィル
(回復・破綻処理計画)について
本件に関する
お問い合わせ先
新日本有限責任監査法人
金融アドバイザリー部
シニアプリンシパル
谷村 英俊
[email protected]
Tel: 03 3503 1677
または、
マネージャー
眞鍋 陽子
[email protected]
Tel : 080 6770 9144
1. はじめに
金融危機を契機として大きすぎて潰せない(Too-big-to-fail)大規模金融機関の公
的救済の前提としたモラルハザードに対する対応策の一つとして、「リビング・ウィル」
が議論になっている。リビング・ウィル・プロジェクトは、金融機関の抱える潜在的リ
スクを十分に分析する必要があり、各所に展開し、成功させるためには複数のスキ
ルと統制を必要とするものである。また、重要な問題点に対応する点がおろそかに
されて、微に入り細に入り過ぎてしまう危険はいつも伴うことに注意が必要と思われ
る。バーゼルⅢにお いては、グ ローバルにシステム上重要な金融機関「SIFIs
(Systemically Important Financial Institutions)」には対応がせまられることと
なるが、現状では当局の要請は欧米当局も含めたグローバルの動きを睨みつつ検
討している段階と思われる。いずれにせよ、結果としてグローバル SIFIs に要請さ
れる Recovery & Resolution Plan (RRP)の作成により、結果として将来、ビジネ
スモデルを大きく変更する必要性が出てくる可能性が出てくることも少なくはないだ
ろう。実際に、リビング・ウィル・プロジェクトを成功させるための方法と課題について、
考えてみたい。
2. 金融危機管理の枠組み-破綻処理計画
2011 年 4 月 12 日 FRB(連邦準備制度理事会)および FDIC(連邦預金保険公
社 ) が 共 同 で 公 表 し た 「 Agencies Seek Comment on Resolution Plan
Reporting」において、記載されている提出期限および織り込むべきとしている内
容は以下の通り。
„ 提出期限
• 初年度と年度破綻処理計画が必要であり、基準日の 180 日以内に提
出。その後は期末日後 90 日以内に提出
• 1.期中は破綻処理計画に重要な影響を与えるような重要な事象が発生
してから 45 日以内に更新した計画を提出
„ 破綻処理計画
• 重要な事象発生時の迅速で秩序だった破綻処理のための戦略的計画
の主だった要素
• 提出した破綻処理計画からの重要な変更
2
リビング・ウィル(回復・破綻処理計画)について
•
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•
•
戦略的計画
破綻処理計画に関するコーポレートガバナンス
法人組織の事業分離と関連情報
情報システムの管理
グループ会社間の関連と相互依存度
監督規制情報
主要マネジメントコンタクト情報
なお、米国外銀行等持株会社については米国内の子
会社および米国で行うオペレーションに限り破綻処理
計画と信用リスクエクスポージャー報告を提出する。
3. 破綻処理計画作成のためのボトムアップ・
アプローチとトップダウン・アプローチ
リビング・ウィル報告書作成のためのボトムアップ・アプ
ローチは経営の経済機能にわたるすべての主だった機
能を特定し、管財人による破綻処理の際に必要とされる
基礎データを整理するものである。
• ボトムアップ・アプローチ
• 破綻シナリオの事業分離に関して相互依存性
や潜在的な阻害因子の特定ができる。
• つまり、すべての基礎データを収集することで
網羅性が確保され、阻害因子の特定と総合的
な報告書提出が保証される。
• 課題としては、分析に時間がかかり、リスク軽
減策作成にかける時間が短くなる可能性があ
る。
一方、トップダウン・アプローチでは、各経済ユニットの主
要な機能をターゲットに、それまでのリビング・ウィル計
画作成の経験を踏まえた専用の質問からなされるもの
である。トップダウン・アプローチには以下のような、長
所・課題がある。
• トップダウン・アプローチ
• 潜在的な事業分離の阻害要因を素早く特定
し時間の短縮ができる
• 当局への提出に先立って素早く大方の課題
がわかる
• 経営陣はスケジジュールに押されることなく、
適切な破綻リスクプロファイルの削減活動を
行うことができる
• 従って強制的な変更のリスクや資本積み増し
などに繋がらない
• 一方、破綻処理計画にプロアクティブにアプ
ローチするために上級経営陣の大きな協力
が不可欠
破綻処理計画作成においてトップダウン・アプローチを
使うことで、早期に事業分離の阻害因子を特定すること
ができ、これは事業分離可能性を改善するリスク軽減
活動ができることを意味する。これは単なるボトムアッ
プ・アプローチではリスク軽減が当局への提出のあとで
のみ可能なことと対照的である。Ernst & Young のこ
れまでの経験から 85%以上の破綻処理計画作成の努
力はデータ収集となってしまい、事業分離のためのリス
ク軽減策検討の時間がなくなってしまうことが分かって
いる。
4. 回復・破綻処理計画(RRP)がもつインパクト
システム上重要な金融機関に適用されることは明らかだ
が、必要な内容についての当局の考え方はまだ初期段
階にある。金融機関は個別の当局からの要請事項に加
えて、RRP の概念的目的を考慮し、それを念頭に置き
計画を作成しなければならない。
グローバル企業では、それぞれの国の当局の要請も異
なるので、複数の計画作成を見込む必要がある。地元
当局と一緒に、全ての関係当局に受け入れ可能な RRP
の構成でコンセンサスを得る必要がある。
5. これまで学んだ主な教訓
Ernst & Young がこれまで行ったパイロットベースでの
作業等で得た教訓は主に以下の通りである。
•
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•
当初から経営陣が関与することを確保する
最終的な経営モデルの姿を想定してスタートする
分析の優先順序を決定する
情報収集依頼方法を注意深く検討選択する
一貫した粒度水準を目標とする
最初の時点で信頼できる情報源を特定する
結果の分析には時間をかける
適切なスキルを持つ人間を引き入れる
このトピックの大きさ、そして指針や産業界での実績が
限定されていることから、プロジェクトの最初の段階で最
終成果物を明確に定義することが重要である。
6. 本邦における動き
全銀協では、2011 年 6 月 8 日に「米連邦準備制度理
事会(FRB)および米連邦預金保険公社(FDIC)による破
3
リビング・ウィル(回復・破綻処理計画)について
綻処理計画と信用エクスポージャー報告に関するルー
ル案に対するコメント」を公表した。この中で全銀協は
「国際的に活動する金融機関が複数当局に異なる破綻
処理計画を提出する事態を回避するために、国際的に
体系化された実現可能な枠組みに沿った破綻処理計画
の策定を認めることが現実的である」とコメントしている。
7. Ernst & Young のリビング・ウィル関連実
績
グローバル銀行、グローバル投資銀行、大手商業銀行
に対して以下のサポート実績がございます。
• グローバル銀行に対して米国及び英国当局提
出用の破綻処理計画の当初ドラフト作成の支援
• グローバル銀行 に対して、英国 FSA のパイロッ
ト的取組に対応した回復・破綻処理計画策定支援
(回復計画・破綻処理計画)
• 大手商業銀行に対して、当初のリビング・ウィル
提出書類作成の支援 (回復計画・破綻処理計画)
• グローバル銀行とカストディアンに対して、正式な
規制当局からの依頼を想定し、前もって行うリビン
グ・ウィルの当初ドラフトの計画支援 (回復計画・破
綻処理計画)
• グローバル銀行に対して、回復計画の設定及び
規制上要請された規制当局間でシェアされる回復計
画の当初ドラフティングの支援 (回復計画)
• グローバル銀行に対して、コンティンジェンシー・
ファンディング計画の枠組みとコンティンジェンシー・
オプションの再デザインの支援(回復計画)
• グローバル銀行に対して、主要な海外現地法人
及び支店の破綻処理計画の策定支援 (破綻処理
計画)
8. Ernst & Young の強み
【破綻処理計画を当局と策定した実績】
• 破綻処理体制の作成に関する他の裁判管轄権
にある当局への助言
• いくつかのアイスランド金融機関の英国現地法
人の管財人として破綻処理の実施
• アイスランドの銀行の破綻に当たり主要な債権
者への戦略的助言
【回復・破綻処理計画の豊富な経験 】
• 欧州及び米国では他の法人の追随を許さない
多くのグローバル銀行へのリビング・ウィル作成
支援
• 全ての大手金融機関とはリビング・ウィルについ
て定期的対話あり。
• 欧州等の主たる規制当局者との率直な対話
【先進的ツールと 促進ツール】
• Ernst & Young ではプロジェクトの進行を促進
する多くのツールとテンプレートを用意しておりま
す。これを利用することで収集情報と実施分析
の一貫性を図ることができます。
• ツールでは特にリビング・ウィルの主要構成要素
(重要経済機能分析、障害の特定と軽減、プロ
グラム手引きとプログラム管理ツール)に対応し
ています。
文責
新日本有限責任監査法人
金融アドバイザリー部
シニアプリンシパル 谷村 英俊
4
リビング・ウィル(回復・破綻処理計画)について
Ernst & Young ShinNihon LLC
アーンスト・アンド・ヤングについて
アーンスト・アンド・ヤングは、アシュアランス、税務、トラ
ンザクションおよびアドバイザリーサービスなどの分野
における世界的なリーダーです。全世界の 14 万 1 千
人の構成員は、共通のバリュー(価値観)に基づいて、
品質において徹底した責任を果します。私どもは、クラ
イアント、構成員、そして社会の可能性の実現に向け
て、プラスの変化をもたらすよう支援します。
「アーンスト・アンド・ヤング」とは、アーンスト・アンド・ヤ
ング・グローバル・リミテッドのメンバーファームで構成さ
れるグローバル・ネットワークを指し、各メンバーファー
ムは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤン
グ・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会
社であり、顧客サービスは提供していません。 詳しく
は、www.ey.com にて紹介しています。
アーンスト・アンド・ヤング ジャパンについて
アーンスト・アンド・ヤングジャパンは、新日本有限責任
監査法人、新日本アーンスト アンド ヤング税理士法
人、アーンストアンドヤングトランザクションサービス株
式会社およびアーンスト・アンド・ヤング・アドバイサリー
株式会社など、日本におけるアーンスト・アンド・ヤング
の 9 つのメンバーファームで構成されています。各法
人は法的に独立した組織です。
アーンスト・アンド・ヤング FSO(日本エリア)について
アーンスト・アンド・ヤング フィナンシャル・サービス・オ
フィス(FSO)は、競争激化と規制強化の流れの中で
様々な要望に応えることが求められている銀行業、証
券業、保険業、アセットマネジメントなどの金融サービス
業に特化するため、それぞれの業務に精通した約 3 万
5 千人の職業的専門家をグローバルに有しています。
また、各業界の規制動向を予測し、潜在的な課題に対
する見解を提示するため、業種別にグローバル・ナレッ
ジ・センターを設け、規制動向の収集や業界分析を行っ
ています。アーンスト・アンド・ヤング FSO(日本エリア)
は、グローバル・ネットワークと連携して、約 950 人の
金融サービス業に精通した職業的専門家が一貫して高
品質なサービスを提供しています。
© 2011 Ernst & Young ShinNihon LLC.
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般的な参考目的でのご利用に限られるものとし、特定の目的を
前提としたご利用、詳細な調査への代用、専門的な判断の材
料としてのご利用等は行わないで下さい。本書等を利用された
ことにより発生したいかなるトラブルや損害についても、新日本
有限責任監査法人を含むアーンスト・アンド・ヤングのいかなる
グローバル・ネットワークのメンバーも一切責任を負うものでは
ありません。
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