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「アルコールと健康」(PDF形式 267 キロバイト)
「 アルコールと健康 」 今日はアルコールと健康についてお話を伺います。 Q 「アルコール健康障害対策基本法」が新たに制定されたそうですが、どの ような法律ですか? A はい。 「アルコール健康障害」とは、アルコール依存症をはじめとする不適 切な飲酒(例えば多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒など)の影響に よる心や身体の健康障害のことをいいます。これらの健康障害は、ご本人だ けでなく、飲酒運転、暴力、虐待、自殺など、家族への深刻な影響や重大な 社会問題を生じさせる危険性が高いと言われています。 そこで、国・地方公共団体・国民・事業者などが総合的に対策を推進し、 国民の健康を保護するとともに、安心して暮らすことのできる社会の実現を めざして、今年の6月1日から「アルコール健康障害対策基本法」が施行さ れています。 Q 忘年会や新年会など飲酒の機会が多くなる時期ですが、上手にお酒と付き 合うためにどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。 A 飲酒は気分をリラックスさせ、血流をよくするなどの効用がありますが、 飲み過ぎは体への負担となります。上手なお酒との付き合い方を知り、適量 を守りましょう。 適量とは、個人差があり、同じ人であってもその日の状態によって酔い具合 が異なるため、一概にいうことはできませんが、ほろ酔い程度までです。度を 超して飲むと、昏睡状態となり死に至ることもあります。 厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節 度ある適度な飲酒」は1日平均純アルコールにして約 20g程度とされていま す。これは、ビールは中びん1本(500ml) 、日本酒は1合(180ml)、ウィス キーはダブルで1杯(60ml)、焼酎は0.6合(110ml)、ワインはグラス1. 5杯(180ml)に相当します。ただし、お酒に弱い人、女性や高齢者はこれよ りも少なめを適量と考えてください。 また、適量とはいえ、毎日飲むことは体に負担をかけてしまいます。週に2 日はお酒を飲まない日を設けましょう。 もちろん、未成年者や妊娠中または授乳中の女性は、身体に悪い影響を及ぼ すため、飲酒しないでください。 Q 個々に見合った適量を守ることが大事なのですね。過度な飲酒を続けると 体にどのような影響がありますか? A アルコールは肝臓や膵臓、血管に負担をかけ、生活習慣病を中心に様々な 病気を招きます。肝硬変や肝臓がん、膵炎、高血圧や不整脈、心疾患などの 病気の危険があり、食道や胃など様々な臓器にも悪い影響があります。また、 妊娠中の飲酒では、胎児にもアルコールの影響が及び発育障害などを引き起 こします。 さらに、脳にも影響を与え、脳の萎縮や認知機能などに異常が生じる場合も あります。さらに、うつ病などの精神疾患の引き金になることもあります。こ のように過度な飲酒による健康障害は全身に及びます。 過度な飲酒が続いたことにより、アルコール依存症に陥り、様々な問題を抱 える方もいます。 Q アルコール依存症とはどのような病気ですか? A アルコール依存症とは、飲酒に関する行動を自分の意思でコントロールで きなくなった状態です。よくないことだと分かっていても、家庭や仕事より も飲酒を優先させてしまいます。これは、過度の飲酒が続いたことにより、 脳機能の変化が生じて、飲酒への欲求を止められない状態になっており、治 療が必要です。 本人が飲酒を止められないために、問題は家族や友人、同僚など周囲の人 へも広がり、多くの人が巻き込まれます。社会のルールが守れなくなり、周 囲の人に迷惑がかかります。特に家族は、経済的な問題や家庭内不和など深 刻な問題に直面することになります。 また、体内のアルコールが切れない状態が続けば、判断力や思考力は常に低 下したままですので、事故や暴力などの問題を起こしやすくなります。 さらに、大量にアルコールを摂取すると、睡眠の質が低下し不眠につながる とともに、意欲低下や気分の落ち込みが生じ、うつ病を併発しやすくなります。 かつては、飲酒問題を抱える人というと、中年男性のイメージがありました が、現在は若い男性、女性や高齢者にも増えています。女性は家庭生活の悩み が引き金となりやすく、うつ病やパニック障害などの精神疾患を併発している 人も多くいます。高齢者は、定年退職や家族との死別、孤立などが背景にあり、 認知症と関連がある場合もあります。 2003 年に実施された成人の全国飲酒実態調査によると、アルコール依存症 の疑いのある人は 440 万人、アルコール依存症の患者は 80 万人いると推計さ れます。アルコール依存症は、誰でも起こりうる病気と言えます。 Q 一般のお酒好きとアルコール依存症との違いはどこにありますか? A 正常な人は、お酒を飲むときと飲むべきでない時を明確に区別できますが、 アルコール依存症者は、仕事中など、本来お酒を飲むべきでない状況でも飲酒 するようになります。徐々に量や頻度が増え、やがて絶え間なく飲酒し続け るようになります。 また、通常アルコールが抜けると酔いの症状もおさまりますが、アルコー ル依存症者は、お酒を飲まないと、離脱症状が現れ、手の震え、異常な発汗、 嘔吐、下痢などの自立神経症状や、睡眠障害、うつ状態、イライラ感などの 精神症状がみられます。重症化すると、けいれん発作や幻覚などの意識障害 が起こることもあります。不快な症状を止めるためにお酒を飲み、ますます 悪循環に陥っていきます。 Q アルコール依存症を治すにはどうしたらよいですか? A アルコール依存症の治療の原則は、断酒することです。酒量を制限するだ けでは、トラブルや再発がなかなかなくなりません。また、断酒は一生続け る必要があります。そのため、本人の治したいという意思が欠かせません。 診断や治療は専門の医療機関で受けられます。最初は断酒による離脱症状 を抑えます。他に心身の病気を合併している場合はその治療も行います。体 調が落ち着いてきたところで、断酒のためのリハビリを始めます。心理教育 を受け、依存症に対する考え方を見直し、適切な対応を理解します。 断酒に成功してもその後誘惑に負けて再発することが多くあります。飲酒を 防ぐ方法の一つに抗酒剤の服用がありますが、飲酒欲求をおさえるわけではな く、一時的にお酒を飲むと不快な状態をつくり出すものです。したがって、通 院治療とともに自助グループに参加するなどして断酒を続けていくことが重 要です。 Q 飲酒問題で困ったときはどこに相談したらよいですか? A アルコール依存症者の多くは、飲酒の悪影響を否認しますので、自ら医療 機関を受診することはあまりありません。家族が関係機関に相談することで 治療の突破口になることが多々あります。 飲酒問題の症状や治療に関する相談は、保健所やお住まいの市町村で受け られます。また、断酒会や AA、アラノンなど自助グループのミーティングに 参加すると、依存症者や家族の話が聞け、対応の参考になります。 心身の病気がある場合は、内科や一般の精神科に相談し、そこから専門医 療機関を紹介してもらうことも可能です。 病気から派生した経済的な問題や法律的な問題については、それぞれの相 談窓口を利用してください。 どこに相談しらたよいか分からないときは、私ども新発田保健所にご連絡 ください。開設時間は、祝日を除く月曜から金曜までの午前8時30分から 午後5時15分までです。また精神科医による無料の相談会も実施していま す。相談の秘密は守られます。 電話番号は、0254-26―9133 0254-26―9133です。 アルコール依存症は、長い年月をかけて悪化していき、治療や解決にも相 応の時間がかかります。また、健康面だけでなく、経済面、人間関係や仕事 など問題が複雑であることが多いですので、1回の相談ですべてが解決する とは限りません。しかし、第三者に相談することで、問題が整理されていき ます。困っているときはためらわず相談してください。