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公共建築物の木造化及び木質化の促進に関する研究

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公共建築物の木造化及び木質化の促進に関する研究
高知県立森林技術センター 平成 23 年度研究成果報告書
平成 24 年 4 月
公共建築物の木造化及び木質化の促進に関する研究
(既設木造公共建築物における木材使用状況の調査)
資源利用課 山中夏樹・沖公友・盛田貴雄
■ 目的
県では、平成 16 年度に「県産材利用方針」を、平成 17 年度には「県産材利用推進に向けた
行動計画」を策定し、公共建築物における木材利用の推進に取り組んできました。さらに、平
成 22 年度には国において「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定さ
れたことにより、一定規模以下の公共建築物の木造化や内装の木質化が加速し、今後の公共建
築物への県産材利用の拡大が期待されています。
しかしながら、過去公共建築物は、耐久性、耐火性能の面で有利な鉄骨や鉄筋コンクリート
造が主流であったため、公共建築物を木造化する際、技術的に煩雑な面が多く、その効果も明
らかになっていないのが現状です。そのため、公共建築物の用途、規模によって、異なる木材
利用による効果と問題点等は整理されておらず、さらなる木材利用を促進していくためには、
これらの点を明らかにしていくことが重要となります。
そこで本研究では、県内既設の木造公共建築物の木材使用の傾向とその問題点の調査を行い、
公共建築物の木造化及び木質化への指針を見出していきます。
■ 内容
調査対象は、平成4年から平成23年度施工の(社)高知県建築設計監理協会(現:社団法人
日本建築家協会四国支部高知地域会)会員設計の木構造及び混構造67施設としました。対象と
した施設は、施工年度、用途、規模をばらつかせたものとし、それぞれの木材使用量等の調査
を行いました。用途に関しては、あらかじめ設定していた「学校、運動施設、保育所・老人ホ
ーム、社会教育施設、共同住宅、病院・診療所」としました。これら各調査対象の因子と木材
使用量の関係を調べることにより、高知県の公共建築物における木材利用の傾向を探りました。
図1に用途別に調査対象として施設例を示します。
学校(H16須崎市立吾川小学校)
社会教育施設(H11森林研修館)
運動施設(H6中芸高校格技場)
共同住宅(H12嶺北北中央病院技術職員住宅)
図 1 木造建築物の用途設定と対象例
- 13 -
保育所(H19香南市立野市幼稚園)
診療所(H17さわだ耳鼻科)
高知県立森林技術センター 平成 23 年度研究成果報告書
0.4
0.33
木材使用量(m3/m2)
0.30
0.3
0.29
0.29
H16~19
H20~23
0.27
0.2
0.1
0
H4~7
H8~11
H12~15
施工年度
図 2 施工年度による木材使用量
木材使用量(m3/m2)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
図 3 各施設の木材使用量
学校
運動施設
保育所
老人ホーム
社会教育施設
共同住宅
病院
診療所
施設用途
図 3 施設用途別の木材使用量
0.4
木構造
混構造
木材使用量(m3/m2)
■ 成果
1)施工年度と木材使用量
過去20年間を5区分した施工年度別の延床
面積あたりの木材使用量(m3/m2)の平均値
を図2に示します。平成4年~7年には、0.33
m3/m2あったものが、平成8~11年には0.27
m3/m2まで低下していますが、平成12年以降
は0.29~0.3m3/m2の間で大きな変動もなく
推移しています。木材使用量の変動には様々
な因子が関わっていると考えられるので、特
定は困難ですが、因子の1つとしては、建築
基準法の改正があり、H4の準耐火構造の規定
改正をはじめとしてH10年、H18年にも大きな
改正がありました。
2)施設用途と木材使用量
施設用途別の木材使用量の平均値と標準偏
差を図3に示します。各施設の木材使用量を比
較すると、学校、共同住宅、病院・診療所の
ように、小規模の部屋が多数存在するような
施設では木材使用量が多いことが分かります。
逆に大空間を有するような運動施設について
は、木材使用量が少ないことが分かります。
これら使用量の差は、構造材としての使用量
に限らず、内装材等の使用量も大きく影響し
ていると考えられます。
3)延床面積と木材使用量
延床面積を一定の規模別に区分し、木材使
用量の平均値を木構造、混構造で比較したも
のを図4に示します。木構造では延床面積が大
きくなるほど木材使用量が少なくなっていく
傾向で、混構造については、木材使用量に大
きな変化は見られませんでした。一般的に延
床面積が大きな施設は、人員収容規模が大き
いため、共有スペース等の広めの空間の存在
により、木材使用量が少なくなることが考え
られます。
平成 24 年 4 月
0.3
0.2
0.1
0
~300
■ 今後の予定
24年度は、木材の仕様調査及び劣化調査を
行います。
- 14 -
300~600
600~900
900~1200
延床面積(m2)
図 4 延床面積別の木材使用量
1200~
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