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トナカイとその地域

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トナカイとその地域
本科 / Z Study サポート / 地理 見本
6章
資源と産業1(農林水産業)
この章で
学ぶこと
RGA5C2-Z1J1-01
学習時間のめやす 40分
今回は,自然環境とも関わりがある,農林水産業について学習する。農牧業
については,世界の農牧業の地域区分を把握し,各農牧業地域の特色と成立の
背景を整理しておくとよい。林業・水産業については,地域ごとの特色を整理
するとともに,森林資源と水産資源の重要性を理解しておきたい。
1
世界の農牧業Ⅰ
1 農牧業の立地 ⑴ 自然条件
気
候
農作物栽培や家畜の飼育は自然条件,特に気候条件の制約を大きく受ける。
気 温
一般に,作物耕作には最暖月平均気温 10℃以上が必要。
降水量
一般に,作物耕作には年降水量500㎜以上,牧畜には年降水量250㎜以上が必要。
地 形
土 壌
平坦地が最適。傾斜地では,①棚田・段々畑での耕作や,②等高線耕作が行われている。
肥沃な土壌が最適。
※チェルノーゼムは小麦,レグールは綿花,テラローシャはコーヒー豆の栽培に適する。
▼小麦と稲の栽培条件
小麦
稲
積算温度1,900℃以上,生育期に冷涼湿潤,成熟期に温暖乾燥な気候。年降水量500~750㎜。
積算温度2,400℃,生育期に高温多湿,平均気温17~18℃以上,年降水量1,000㎜以上。
⑵ 社会条件
文化・技術・経済などの社会条件も,農牧業の形態に大きな影響を与える。
○文化……米を主食とするモンスーンアジアでは稲作,パンを主食とする欧米では麦類の栽培
と家畜の飼育が主である。豚を禁忌とするイスラム圏では豚肉はほとんど生産されない。
かんがい
○技術……機械化,灌漑,品種改良,土壌改良などによって農牧業が変化する。
○経済……経済の発展に伴い,より利益の得られる農産物の生産が盛んになる。
2 世界の農牧業地域 世界の農牧業は,農作物や家畜の種類,農牧業の経営形態などにより,大きく3つのタイプ
に分けることができる。
なお,かつて社会主義国で行われてきた,生産手段の共有,共同作業などにより集団で農牧
業を営む集団的農牧業を加えて,4つのタイプとする場合もある。
⑴ 自給的農牧業
自家消費のために農畜産物を生産する,伝統的な性格の強い農牧業。商品経済が発達してい
ないアジア・アフリカ・ラテンアメリカの発展途上国で多く見られる。
⑵ 商業的農牧業
販売を目的として,農畜産物を生産する農牧業。工業が発達して都市への人口集中が進み,
農畜産物の市場が成立したヨーロッパなどで見られる。
⑶ 企業的農牧業
商業的農牧業がさらに発展した形態。資本を投下し,最新の農業技術を導入して,販売を目
的とした農畜産物を大規模に生産する農牧業。アメリカ合衆国・カナダ・アルゼンチン・オー
ストラリアや熱帯地域(プランテーション農業)で見られる。
52
RGA5C2-Z1J1-02
▼世界の農牧業地域
*自給的農牧業
G
G
B
G
F J
H
K
E
E
G
K
J
B
D
B
L
A
I
A
E
F
I
F
I
A
L
A
G
I
K
*商業的農牧業
K
J
L
L
I
H
K
F
E
K
J
E 地中海式農業
F 商業的混合農業
G 自給的混合農業
A H 酪農
I 園芸農業
A L
L
A
K
C
A 焼畑農業
B 遊牧・オアシス農業
C アジア式稲作農業
D アジア式畑作農業
H
I
C A
B
K
K
E
A
D
D C
A
F
D
AC C
J
J
*企業的農牧業
J 企業的穀物農業
K 企業的放牧業
L プランテーション農業
➡各農牧業地域別に色を塗って,世界の農牧業地域の分布を確認しておこう。
3 自給的農牧業 ⑴ 焼畑農業
森林や草原を焼き払い,その灰を肥料として農作物を栽培する農業である。地力の衰えが早
いため,数年で耕地を放棄し移動する。アフリカ中南部・東南アジア・南アメリカなどの熱帯
地域で見られる。キャッサバ・タロイモ・ヤムイモなどの自給用作物が栽培される。
⑵ 遊牧
自然の草と水を求めて家畜とともに移動する,粗放的な牧畜である。乾燥地域では羊・ヤギ
やラクダ(西アジア)
・馬(モンゴル)など,ツンドラ地域ではトナカイなどが飼育される。
⑶ オアシス農業
乾燥地域で灌漑によって行う③集約的農業である。外来河川沿岸や湧水地といったオアシス,
地下水路(カナート・フォガラなど)で導水した地域などで見られる。ナツメヤシや小麦・綿
花などが栽培される。
遊牧……乾燥地域やツンドラ地域の粗放的な牧畜
オアシス農業……乾燥地域の集約的農業
⑷ アジア式稲作農業
降水量が多いモンスーンアジアの沖積平野などで見られる,集約的な稲作農業である。
⑸ アジア式畑作農業
アジアの中でも降水量が少ない地域や冷涼な地域で見られる,集約的な畑作農業である。中
国北東部では小麦・こうりゃんなど,インドのデカン高原では綿花が栽培される。
①棚田 傾斜地に階段状に造られた水田のこと。ジャ
法のこと。
ワ島・ルソン島などで見られる。
②等高線耕作 傾斜地において土壌侵食を防ぐために,
③集約的農業 単位面積当たりの収穫量を増やすため,
うね
等高線に沿って畝を作り,帯状に作付けを行う耕作
労働力・資本・肥料などを多く投下する農業。これ
と相対するのが粗放的農業。
53
6章
資源と産業1(農林水産業)
A
I
G
D
RGA5C2-Z1J1-03
2
世界の農牧業Ⅱ
1 商業的農牧業 ⑴ 地中海式農業
夏季は乾燥,冬季は温暖湿潤な地中海性気候区で行われている農牧業である。地中海沿岸・
アメリカ合衆国のカリフォルニア地方・チリ中部などで見られる。乾燥に強いオリーブ・レモ
ン・オレンジなどの樹木作物と自給用穀物(主に小麦)が栽培され,羊・ヤギの①移牧も行わ
れている。
⑵ 混合農業
穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育を組み合わせた農牧業である。穀物と飼料作物は②輪作
によって栽培される。穀物は小麦・ライ麦など,飼料作物はエン麦・大麦・テンサイ・牧草な
どが栽培される。家畜は肉牛,豚,鶏・アヒルなど家禽が飼育される。穀物栽培の比重,畜産
物からの収入などで,商業的混合農業と自給的混合農業に細分される。ドイツ・フランスなど
中部ヨーロッパ,アメリカ合衆国のトウモロコシ地帯(コーンベルト)などで盛んである。
⑶ 酪農
冷涼・湿潤な気候でやせた土壌が分布し,穀物栽培に適さない地域で行われている。飼料作
物を栽培して乳牛を飼育し,乳製品を生産する農牧業である。大消費地の近郊では生乳・ク
リームの生産が多く,遠隔地ではバター・チーズなど保存のきく乳製品の生産が多い。北西
ヨーロッパの北海沿岸・バルト海沿岸やアメリカ合衆国の五大湖沿岸などで盛んである。
⑷ 園芸農業
野菜・果樹・花卉などの市場性の高い作物を集約的に栽培する農業である。資本・技術・労
働力を大量に投下するため,③土地生産性が高い。
○近郊農業……大都市近郊で行われる園芸農業を近郊農業という。
○遠郊農業……大都市から離れた地域で行われる園芸農業を遠郊農業という。輸送機関の発達
により,温暖な気候を生かした暖地農業や,冷涼な気候を生かした高冷地農業などが行われ
るようになった。遠距離輸送を伴うため,輸送園芸(トラックファーミング)ともいう。
▼ヨーロッパの農業の発展と分化
〈北西ヨーロッパ〉
に
ほ
二圃式農業
休閑
〈地中海沿岸〉
夏作物(エン麦・大麦)
休閑
冬作物(小麦)
耕地を2つに分け,耕作と
休閑を毎年交互に繰り返す。
さん ぽ
三圃式農業
休閑(家畜放牧)
夏作物
冬作物
耕地を夏作物・冬作物・休
閑地の3つに分け,これら
を毎年交代させる。
輪栽式農業
休閑地をなくし,夏作物・
冬作物と飼料作物(根菜類
・牧草)を輪作する。
根菜類
園芸農業
夏作物
牧草
混合農業
54
冬作物
酪農
地中海式農業
RGA5C2-Z1J1-04
地中海式農業……樹木作物と小麦の栽培,移牧
混合農業……穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育
酪農……飼料作物の栽培と乳牛飼育
園芸農業(近郊農業・遠郊農業)……野菜・果樹・花卉栽培
⑴ 企業的穀物農業
広大な土地で大型機械を利用して,小麦や飼料作物などを大規模に生産する農業である。粗
放的農業であるため,土地生産性は低いが④労働生産性はきわめて高く,国際競争力が高い。
北アメリカのプレーリー,アルゼンチンのパンパ,オーストラリア南東部などで見られる。
⑵ 企業的放牧業(企業的牧畜業)
ステップ気候区を中心に,広大な牧場で大規模に行われる,牛や羊などの粗放的な牧畜であ
る。農作業や家畜の管理などで機械化が進んでいるため,労働生産性が高い。北アメリカ西部,
アルゼンチンのパンパ,オーストラリア内陸部で見られる。
○アメリカ合衆国の企業的放牧業……グレートプレーンズを中心とした地域で,肉牛・羊の放
牧が行われている。グレートプレーンズで生まれた肉牛は,トウモロコシ地帯やグレートプ
レーンズ内のフィードロットと呼ばれる肉牛肥育場で肥育される。
⑶ プランテーション農業
熱帯・亜熱帯地域で見られる,植民地時代に欧米諸国が開発・経営し,現地の安い労働力を
使用したプランテーション(大農園)での嗜好品の生産に起源を持つ農業である。かつてのプ
ランテーションは,第二次世界大戦後,植民地の独立とともに,現地資本の経営になったり,
小規模に分割されたりした。サトウキビ・バナナ・カカオ豆などが輸出用に生産される。
○プランテーション農業の問題点……その地域の気候・土壌などに適した特定の農作物だけを
生産する単一耕作(モノカルチャー)が多いので,市場の価格変動の影響を受けやすい。
➡ ラテンアメリカの国々における大農園の呼称を調べてみよう。
企業的穀物農業……大規模な小麦栽培
企業的放牧業……大規模な肉牛・羊の放牧
プランテーション農業……大農園での単一耕作(モノカルチャー)
①移牧 季節によって家畜を垂直移動させて飼育する
牧畜。乾燥のため牧草が生育しにくい夏季は高地の
防ぐ。
③土地生産性 単位面積当たりの生産量。労働力や肥
牧場(アルプ)で放牧し,冬季は低地の牧舎で飼育
する。
②輪作 異なった農作物を,同一の耕地で,年ごとに
料の投下量に応じて高くなる。
④労働生産性 単位労働時間当たりの生産量。機械化
に応じて高くなる。 一定の順序で循環的に栽培すること。地力の低下を
55
資源と産業1(農林水産業)
2 企業的農牧業 6章
RGA5C2-Z1J1-05
3
世界の林業・水産業
1 林業 ⑴ 森林と林産資源
かんよう
○森林……水源の涵養,土壌侵食の防止,大気の浄化など多くの役割を果たしている。
○森林面積の大きな国……ロシア・ブラジル・カナダ・アメリカ合衆国・中国など。
○木材の利用……木材は,古くから薪炭材として利用されてきた。近年は先進国を中心に,建
築材・パルプ材など用材としての利用が増えている。
➡ 木材の主要輸出国・輸入国を確認しておこう。
▼木材伐採量(2007年)
順位
国 名
1位
3位
2位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
木材
針葉樹
伐採量
うち用材
うち薪炭材
アメリカ合衆国
44,400万㎥
叅9,叅叅1万㎥
5,0⓺9万㎥
⓺叅.4%
中国
29,440
9,4⓺7
19,974
48.1 インド
ブラジル
ロシア
カナダ
インドネシア
エチオピア
コンゴ民主共和国
スウェーデン
叅叅,021
24,49⓺
2,叅19
10,51叅
20,700
1⓺,200
19,591
19,叅00
10,叅42
叅,5⓺0
10,00⓺
29叅
7,7⓺⓺
7,720
445
7, 1叅0
叅0,702
1叅,98叅
4,500
291
⓺,78叅
9,71叅
7,叅21
590
の割合
叅.7 22.2 ⓺⓺.7 80.9 0.2 ⓺.8 ― 91.2 FAO資料による。
用材の利用が大……先進国,薪炭材の利用が大……発展途上国
針葉樹の割合が大……寒冷な国,高緯度に位置する国
針葉樹の割合が小……温暖な国,低緯度に位置する国
⑵ 熱帯林地域の林業
常緑広葉樹が多い。樹種が多く密林になっている。材質が硬く加工をしにくい硬木が多い。
①ラワン・②チーク・③マホガニーなどが有用樹。有用樹の選別に手間がかかること,交通が
不便で木材の伐採・搬出が困難なことから,開発が遅れた。近年はパルプ材・建築材にも使用
されるようになり,伐採が進んでいる。
⑶ 温帯林地域の林業
南部は,常緑広葉樹の照葉樹(シイ・カシなど)が多い。北部は,落葉広葉樹(ブナ・ナラ
など)と針葉樹(マツ・モミ・スギなど)の混合林になっている。市場に近く,古くから開発
が進んでおり,④人工林が多く,樹種が均一化している。
⑷ 冷帯林地域の林業
南部は,落葉広葉樹と針葉樹の混合林になっている。北部は,タイガと呼ばれる針葉樹の純
林になっている。純林が多く伐採・搬出が容易であること,市場に近いこと,パルプ材・建築
材に適した軟木が多いことから,林業が盛んである。
56
RGA5C2-Z1J1-06
2 水産業 ⑴ 漁場の成立条件
せんたい
しおざかい
○自然条件……水深の浅い大陸棚や⑤バンク(浅堆)
,暖流と寒流が接触する潮 境 (海面上の
しお め
帯状の筋が潮目)では,プランクトンの繁殖が盛んなため,よい漁場となる。
○社会条件……水産業を営むための資本・技術などがあること。漁港が発達していること。
よい漁場の自然条件……大陸棚・バンク・潮境(潮目)
⑵ 世界の主な漁場
○太平洋北西部漁場……日本近海。主な出漁国:日本・ロシア・韓国・中国
・自然条件-広い大陸棚と多くのバンク。日本海流(暖流)と千島海流(寒流)が会合。
・主な漁獲物-北部:ニシン・サケ・マス 南部:イワシ・サバ・マグロ
○大西洋北東部漁場……北海中心。主な出漁国:イギリス・アイスランド・ノルウェー
・自然条件-広い大陸棚,ドッガーバンクなど多くのバンク。東グリーンランド海流(寒
流)と北大西洋海流(暖流)が会合。
・主な漁獲物-ニシン・タラ・カレイ・ヒラメ
○大西洋北西部漁場……北アメリカ東岸。主な出漁国:アメリカ合衆国・カナダ・フランス
・自然条件-広い大陸棚と多くのバンク。ラブラドル海流(寒流)とメキシコ湾流(暖流)
が会合。
・主な漁獲物-タラ・ニシン・サケ・サバ
▼世界の主な漁場
太平洋
北東部
大西洋北西部
大西洋北東部
大西洋 大西洋
中西部 中東部
太平洋中東部
太平洋
南東部
地中海
太平洋
北西部
インド洋西部
大西洋 大西洋
南西部 南東部
インド洋東部
南氷洋
太平洋
中西部
太平洋南西部
⑶ 水産資源と漁場
1970年代に自国の水産資源の保護を目的として,発展途上国をはじめとした各国が200海里
の漁業専管水域を設定し,沿岸国の主権を確立した。
①ラワン 東南アジアで産出。比較的軟らかく,合板
③マホガニー カリブ海沿岸で産出。木目が美しく,
材・家具材などとして用いる。
②チーク タイ・ミャンマー・インドなどで産出。船
材・家具材などとして用いる。
高級家具材として用いる。
④人工林 植林など手入れを行って育てた森林。
⑤バンク 大陸棚の中でも特に水深の浅い所。
57
資源と産業1(農林水産業)
6章
RGA5C2-Z1J1-07
4
日本の農林水産業
1 日本の農牧業 ⑴ 日本の農牧業の特色
○零細経営……家族経営が中心で,農家1戸当たりの経営耕地面積が1.⓺5ha(200⓺年,販売
農家)と狭い。但し,近年,わずかではあるが,経営規模は拡大の傾向にある。
○集約的農業……狭い耕 ▼世界各国の農業生産性の比較
地に労働力や肥料・農
耕地100ha当たり
耕地1ha当たり
耕地1ha 当たり
日 本
44人
叅20.⓺kg
2,⓺48kg
アメリカ合衆国
2人
1⓺8.5kg
―
中 国
叅2⓺人
叅叅4.⓺kg
2,7叅5kg
インド
1⓺5人
1叅叅.2kg
1,叅91kg
オーストラリア
1人
40.9kg
薬を大量に投下し,高
の農業従事者数
い技術により収量を高
める集約的農業が行わ
れている。土地生産性
は高いが,労働生産性
は低い。
○農家の兼業化……販売
の肥料消費量※
農家のうち,副業的農 統計年次は※は2007╱08年度,その他は2005年。
家が55.5%を占める
の穀物生産量
801kg
FAO資料による。
(2005年)。
*1995年以降,農家は,主業農家(農業所得が50%以上を占め,⓺5歳未満の農業従事⓺0日以
上の者がいる農家)
・準主業農家(農業外所得が主で,⓺5歳未満の農業従事⓺0日以上の者
がいる農家)
・副業的農家(農業外所得が主で,⓺5歳未満の農業従事⓺0日以上の者がいな
い農家)に分類されるようになった。
○稲作中心……①食糧管理制度により政府が米の買い入れ価格を保証していたため,日本の農
業の中心は稲作であった。しかし,食生活の変化などで余剰米が生じるようになり,1971年
から政府は本格的に②減反政策を実施した。
1995年の食糧管理制度の廃止,新食糧法の施行に伴い,米の流通が自由化されたため,銘
柄米の生産競争や輸入米との競合が激化している。
○地域的特色……気候・地形などの自然条件や大都市までの距離などの社会条件の影響を受け
て,地域ごとに特色ある農業が営まれている。
➡ 農畜産物の主産地を調べ,各地域の農業の特色についてまとめてみよう。
⑵ 日本の農業と輸入農畜産物
日本は,農業生産の維持と農家の保護のために,農畜産物の輸入を制限してきた。しかし,
1980年代後半以降,世界各国は日本に対して,③GATT(関税および貿易に関する一般協
定)の最後の多角的貿易交渉であったウルグアイ=ラウンド(198⓺年開始,9叅年合意)を通し
て,農畜産物の市場開放を要求してきた。1991年に牛肉・オレンジが輸入自由化され,95年に
米も部分的輸入自由化された(99年に関税化)
。
日本の農家は品質・安全性の向上,規模の拡大による経営の効率化に努めるなどして,輸入
農産物に対抗している。
日本の米……生産過剰で,1971年から本格的に減反政策実施
1995年,米市場の部分開放と新食糧法施行
58
RGA5C2-Z1J1-08
⑶ 食料自給率の低下
日本の農畜産物は生産コストがかかる
ため,価格も高く,国際競争力が低い。
▼日本の食料自給率の推移
(%)
120
そのため,農産物の輸入量が増加して,
100
食料自給率は低下している。但し,主食
80
である米の自給率は高い。また,畜産物
60
の輸入に依存しているため,真の自給率
40
はかなり低くなる。なお,200⓺年の穀物
野菜
牛乳・乳製品
肉類
果実
20
(食用+飼料用)自給率は27%
(食用穀物
自給率は⓺0%),食料全体の供給熱量自
0
給率は叅9%である。
小麦
1975
80
85
90
95
2000
05(年)
『食料需給表』などによる。
2 日本の林業 ⑴ 林業の停滞
私有林が多く,保有する山林が10ha未満の小規模経営の林家が大半を占めており,木材の
伐採・搬出にかかるコストが高い。近年は木材価格が低迷しているため,国産材の生産が停滞
している。山村では過疎化が進んでおり,林業従事者の高齢化と後継者不足が深刻である。
⑵ 世界有数の木材輸入国
高度経済成長期に木材需要が急増したため,木材の輸入量が増加した。輸入材は安価なため
輸入量が次第に増加し,世界第3位の木材輸入国(200⓺年)となっている。
3 日本の水産業 ⑴ 漁獲量の減少
▼日本の漁業種類別魚獲量の推移
1970年 代 以 降, 世 界 各 国 が200海 里 漁 業
(万t)
700
専管水域を設定し,操業規制を強化したた
め,また,2度の石油危機で燃料費が高騰し
600
たため,遠洋漁業の漁獲量が急減した。沖合
500
漁業・沿岸漁業も漁獲量が減少してきたため,
400
近年は養殖業や栽培漁業など育てる漁業への
沖合漁業
遠洋漁業
沿岸漁業
300
転換がはかられている。
200
⑵ 世界有数の水産物輸入国
100
漁獲量の減少に伴い,水産物の輸入が急増
0
している。日本は世界有数の水産物輸入国で
あり,エビ・マグロ・サケ・マスなどの輸入
海面養殖業
内水面漁業・養殖業
1965 70
75
80
85
90
(年)
95 2000 05
農林水産省『漁業・養殖業生産統計年報』による。
額が多い。
※東南アジアなどでは,輸出用エビの養殖池造成のため,マングローブ林が破壊されている。
①食糧管理制度 食料(主に穀物)の安定供給を目的
③GATT 貿易上の障壁をなくし,貿易を活発にす
に,1942年に制定された食糧管理法に基づく制度。
ることを目的とした国際協定。1948年発効。1995年,
②減反政策 政府による米の生産制限。当初は水田の
WTO(世界貿易機関)に移行した。
休耕を奨励したが,その後は他の作物への転作が進
められた。
59
6章
資源と産業1(農林水産業)
は家畜のエサである飼料穀物を海外から
米
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