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沖縄医報 Vol.41 No.7 2005 が全国平均を大きく上回っています(表 1) 。沖 縄県の脂肪摂取比が、現在の全国平均レベルに お 腹 の 積ア みブ 過ラ ぎ に 注 意 ! 達したのは、昭和 47 年(本土復帰)以前であ ると考えられており、平成 5 年からは 30 %を超 え、欧米並みの水準となっています(図 1) 。典 型的な車社会であることも重なって、平成 10 年 には、男女共 40 歳以上の肥満率が、全国平均 所 長 田 仲 秀 明 糖 尿 病 ・ 生 活 習 慣 病 セ ン タ ー 豊 見 城 中 央 病 院 の約 2 倍となってしまいました 3 )。 医 療 法 人 友 愛 会 一般に食べ過ぎや運動不足で余ったエネルギ ーは、糖質(グリコーゲン)として蓄えられる のはごく僅か(体重の 1 %以下)で、その大部 分は脂質(アブラ)としてお腹の中(内臓脂 肪)や皮下(皮下脂肪)に貯め込まれます。 皮下脂肪は優れたクッションであると同時に 断熱材で、体温を保つのに役立ちますが、多過 ぎると熱が逃げにくくなり、余剰なエネルギー を生むことにもなります。そしてその重みが過 大となると膝の関節に負担をかけ、間節軟骨の 破損を招き、変形性膝関節症を引き起こしてし 沖縄は健康的な高齢者や百寿者の多い県とし まうのはご存じの通りです。 て有名でした 1 )。しかし、若い世代では高脂肪 一方、内臓脂肪は皮下脂肪のように指で摘む 食に代表される欧米型のライフスタイルが浸透 ことができないので、その存在に気付きにくい し、いわゆる生活習慣病の増加が今日、社会問 のですが、貯まり過ぎると単なる重みとなるだ 2) 題となっています 。 けでなく、その中から多彩な生理活性を持った 沖縄県では 30 年以上前から、蛋白源として 物質が出てくることが最近分かって来ました 魚介類の摂取が低く、代わりに獣鳥肉類の摂取 (図 2 )。ほどよい量の内臓脂肪からは脳に満腹 表1.魚介類と肉類摂取量(g/日)年次推移の比較 図1.沖縄県のPFC比年次推移と全国平均(平成10年) 図1.沖縄県のPFC比年次推移と全国平均(平成10年) 調査年 1967 1968 1969 1970 1972 1977 1982 1988 1993 1998 魚 介 類 全国 84.0 86.3 86.8 87.4 92.7 88.5 90.2 96.1 96.2 95.9 沖縄 61.3 79.8 65.4 60.1 61.2 71.1 63.9 79.4 79.9 75.1 獣 鳥 肉 類 全国 34.8 37.9 40.1 42.5 70.8 68.4 70.8 74.1 73.7 77.5 沖縄 53.0 64.9 62.6 79.0 102.5 96.6 94.2 86.5 97.5 100.3 1967年∼1970年:沖縄県の値は第1∼4回住民栄養調査結果(琉球政府) 1972年∼1998年:沖縄県の値は県民栄養調査(本土復帰に伴い、 国民栄養調査と同時調査)全国の値は国民栄養調査結果より ■たんぱく質 ■資質 ■糖質 (P比) (F比) (C比) 昭和47年 15.3 26.5 58.2 1896 kcal 昭和57年 15.7 29.6 54.7 1914 kcal 昭和63年 15.9 29.2 54.9 1897 kcal 平成 5 年 15.9 30.1 54.0 1927 kcal 平成10年 16.1 31.0 52.9 1806 kcal 平成10年 16.0 (全国) 0% −92(752) − 26.3 20% 57.7 40% 60% 80% 1979 kcal 100% 沖縄医報 Vol.41 No.7 2005 プライマリ・ケア 図2.内臓脂肪から出る生理活性物質と動脈硬化 内臓脂肪の貯まり過ぎ (≒腹部肥満) おダシ↓アク↑ HB-EGFの分泌 PAI-1の分泌 アディポネクチン の減少 レプチンの過上昇 アンギオテンシ ノーゲンの分泌 高インスリン血症(インスリン抵抗性) 血管狭小化 血栓形成 遊離脂肪酸の上昇 TNF-α分泌 高血圧 高血糖 高中性脂肪血症 (低HDL-コレステロール) 動脈硬化(脳梗塞・心筋梗塞) 感を伝えるレプチンや、血液をサラサラにして 部肥満;腹囲身長比 0.5 以上、高中性脂肪血 血糖が上がり過ぎないようにするアディポネク 症;中性脂肪 150mg/dl 以上、低 HDL- コレス チンのような、いわばおダシのような物質が出 テロール血症; HDL-コレステロール男性 てきて私たちの体を守ってくれますが、貯まり 40mg/dl および女性 50mg/dl 未満、高血圧; 過ぎた内臓脂肪からはこのおダシが出ないどこ 収縮期血圧 130mmHg 以上または拡張期血圧 ろか数々のアクが出て、血管を狭くしたり 85mmHg 以上、空腹時血糖異常;空腹時血糖 (HB-EGF) 、血液をドロドロにしたり(PAI-1) 、 110mg/dl 以上を陽性とし、5 項目中 3 項目以上 血圧を上げたり(アンギオテンシノーゲン) 、中 満たす者をメタボリックシンドロームと診断し 性脂肪や、血糖を上げたりして動脈硬化を引き ました。メタボリックシンドロームの頻度は、男 起こしてしまうのです。実際、肥満大国アメリ 性の約 3 割、女性はその半分でした(図 3) 。腹囲 カでは虚血性心疾患の増加によって、平均寿命 が短くなってしまった地域もあるそうです。 n.s. 45 0 国の NCEP ATP III 5 )の診断基準を参考に、腹 32.6 39.2 36.4 男 女 50歳代 男 女 60歳代 男 女 男 女 70歳代 30∼79歳 17.1 22.6 22.7 28.9 男 女 40歳代 31.5 男 女 30歳代 10.1 5 5.4 3,839 人、女性 3,146 人の合計 6,985 人です。米 10 15 ドックを受診した 30 歳から 79 歳までの男性 20 平成 15 年 5 月から平成 16 年 3 月までに当院人間 25 30 ーム)の関連を検討してみました 4 )。対象は、 36.0 35 囲と生活習慣病の集積(メタボリックシンドロ 39.2 40 豊見城中央病院人間ドックの断面成績から腹 んでいても平気なのでしょう? 図3.年齢別メタボリックシンドロームの陽性率 図3.年齢別メタボリックシンドロームの陽性率 (豊見城中央病院人間ドック) (豊見城中央病院人間ドック) それでは、どの位のアブラならお腹に貯め込 (%) 50 p<0.05 p<0.001(chi-square test) −93(753) − 沖縄医報 Vol.41 No.7 2005 プライマリ・ケア 図4.腹部肥満の有無とメタボリックシンドロームの頻度 図4.腹部肥満の有無とメタボリックシンドローム (豊見城中央病院人間ドック) (%) (豊見城中央病院人間ドック) 60 50 。お臍の高さの腹 とが分かると思います(図 5) 囲(男性ならほぼズボンのサイズです)が、中 47.8 高年には厳しいですが、男女を問わず身長の半 40 分までなら、かなり安全であると言えます。最 30 近は、子供の肥満を見かけることも多いのです 25.9 が、この目安は小学生以上の子供にもあてはま 20 ることが分かっています。 10 0 と同じように、車高制限があるらしいというこ 4.7 最後に、体にアブラを貯め過ぎないコツ。食 0.9 (+) (−) 男 (+) べ過ぎないこと、バランスよく食べること(特 (−) 女 に油物のとり過ぎは禁物)、よく歩く(動く) こと、筋肉を落とさないよう努力すること、睡 眠不足(夜ふかし)を避けること。そして禁煙 (タバコはインスリン抵抗性を介してお腹にア ブラを貯めやすくすると言われています)。 さあ車高制限を守って、アブラの積み過ぎに は十分注意しましょう! 【文献】 1)長寿のあしあと,長寿の検証と世界長寿地域宣言,沖縄県 環境保健部,1996年 2)田仲秀明:生活習慣病の上流にあるもの−そして沖縄 図5.腹囲は身長の半分までが目安! 県の現状−,沖縄県立南部病院医学雑誌, 6, 2-11, 2002 3)平成10年国民栄養調査 との関連でみると腹囲身長比 0.5 以上の男性の 半分、女性の四分の一にメタボリックシンドロ 4)Tanaka H et al : High Prevalence of the Metabolic Syndrome among Men in Okinawa, J Atheroscler Thromb (in press) ームを認めました。一方、腹囲身長比 0.5 未満 5)Executive Summary of The National Cholesterol でメタボリックシンドロームを認めたのは、僅 Education Program ( NCEP) Expert Panel on かに男性 5 %未満、女性 1 %未満でした(図 4)。 Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood 以上のことから、どうやら人間にもトラック Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III), JAMA, 285, 2486-2497, 2001 −94(754) −