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Page 1 昭和四十一年の富山県登山条例におけ る剣岳の登山規制以後

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Page 1 昭和四十一年の富山県登山条例におけ る剣岳の登山規制以後
特 集 ・春 雪 の山
剣 岳 小 窓 尾根
登 攀 の成 否 は 天候 に左 右 さ れ る
のであ った。
ざ し てき た。 そ れは山 へ登 る者とし て不
ではな いと思われる。 しかし、 小窓 尾根
ている ようだ が、組織 がし っかりし てい
て、積雪期 の経験 が豊 かであれば、困難
装備、食糧 の点 では、 でき るだ け軽量
化 を計 り た い。荒天対策とし ての退避路
が、 上部 にお いては早月 尾根 しかな い点
から、 予備 日数 とそ の食糧 に ついて の軽
お いては、応 々にし て安堵感 に陥 り、荒
天時以外 にお いても事故を発生さ せやす
い。
分 ある。 とにかく、 三ノ窓 から本峯ま で
の精神 的 な気 疲 れから、早月 尾根 下降 に
荒 れれば、本峯直下 のシシ頭付近など て
ルートを間違 いやす く、雪崩 の危険も充
般を把握 し、頭 に入れることは絶対 必要
である。快 晴時 には、 三ノ窓 から馬場島
いや富 山ま で 一日でも下れるが、
一たび
の注意点を詳 しく検 討 した。残 雪期 に小
窓、早月 両尾根 をト レー スし て剣 岳 の全
は早月 尾根 を下降路 にしたが、小窓 尾根
の研究 と結び つけ て、早月 尾根下降 の際
小窓 尾根 入山にあた って、 小窓 尾根 同
様 に下降路を充分研究 した い。 われわれ
スし ておき た いも のだ。
竜 谷 大学 体 育 局 山 岳 部
こ のよう な意図 の下 に、 われわれは非
昭和四十 一年 の富 山県登山条例 におけ
る剣岳 の登山規制以後、積 雪期 の小窓 尾
常 に条件 に恵ま れはし たが、 四十 六年 春、
お よび 冬 に、 小窓、早月 両尾根 から集 中
入山 にあ た って
る。以下、 四十 六年春 の経験を参考 にし
て、春 の小窓 尾根 に ついてそ の概 要を述
べてゆき た いと思う。
登 山を行 な い、 チ ンネを登攀 した のであ
根 は、 われわれ山岳部 の剣岳ゲ ビート研
究 を遂行す る上 で の 一つの目標 とな って
いた。厳冬期 の剣 尾根 が登り得 な い現在、
剣 岳 にお いては、小窓 尾根、チ ンネ登攀
と いう ルートが困難 さを代表 す る のでは
な いだ ろう か。 それはか つて の小窓 尾根
の歴史、そし てま た先 人 の残 し てくれた
剣岳 への足跡 がは っきりと示し て いる。
積 雪期 に小窓 尾根 へ入山す るためには、
条例 によ ってまず富 山県 ︵
富 山市新総 曲
われわれは、剣岳 のも つきび しさ、雄
大さ、そし て激 し い動 き の中 から得 る美
輪 一の七︶ へ登山届を提出しなければな
可欠 な判断力、行動力、胆力、忍 耐力、
に ついては少 なくとも 五月 の残雪期、 と
らな い。積 雪期 の剣 岳 そ のも のに ついて
一般的 に入山 がむず かし いと思 われ
は、
し い静寂 に心ひかれ、ま たアプ ローチ の
長さ、積雪量 の多 さ、天候 の厳 しさなど、
協調性 など総合的なも のをそ の過程 の中
く に届 け出 を必要 とす る十 五日ま でに、
他 にまさるとも劣 ること のな い条件 を認
から導 き出 し、 われわれ の情 熱 を結 晶さ
次 に述 べる点 から い っても 一度 はト レー
識 し て、積雪期 の小窓 尾根、チ ンネをめ
せるため の 一段階 を形成 しようとす るも
量化問題 はそ のかね合 いがむず かし いの
で充分研究 する余地 がある。幕営具 に関
し ては、天候悪化 の折 り のビバー クにも
二、 三人用 の雪洞 なら適 した場所を み つ
けること ができる ので、 テ ントは不用だ
ろう。
気 象 状 況
春 の小窓尾根 は、北 ア ルプ ス全体を通
し ていえ ることかも しれな いが、
一番積
雪量 が多 い。夏 になると悩 まされる ニー
ド ル付 近 のブ ッシ ュはほと んど雪 に埋ま
っている。降雪量 は厳冬期 の 一月 ころに
比 べて約半分 で、 四月 にでも なれば快 晴
の日も増 える。 しかし、気象条件 は非常
に不安定 で、下部 にお いては雨、上部 に
お いてはミゾ レや アラレと いう時 がある
かと思うと、完 全 に冬型気 圧配置 に戻 り、
一週 間近くふぶく時も ある。ま た日本海
の気象状況 によ って微妙 に変化 すること
も あるから注意し た い。 しかし移動性高
気 圧下 の剣岳 は、富 山湾 かL能 登半島 ま
でみわたせる素晴らし い天気 となり、 こ
の上な い春 山 の気 分を満喫さ せてくれる
だ ろう。
し たが って、 小窓 尾根 の成否 は非常 に
天候 に左右されやす いと いえ る。
一八〇
〇研付 近までは、雪 が重 いため ラ ッセ ル
がき つく、 ドー ムに至るま では、そ れに
加 えて雪 に隠 れたブ ッシ ュや大 きくはり
出 した雪庇 に悩 まさ れる。 とくに ニード
ルま で の急登は、 と ても 登りづら く、雪
●ι
可1111
︵
固有 呼将 ︶
躾 笏
に
ハ
Ⅷ
ヽ
動0
﹁ノ了勿後′
ミ
ピ ラ ミ ツド
マッチ箱
各紙絶賛ノ
早 月尾根 か ら小窓尾根 スケ ッチ
の状 態 や天 候 によ って かな り条 件 が変 わ
、く る。
り、 体 力 消 耗度 、 スピ ード が異 っィ
マ ッチ箱 をすぎ る と、 白 い傾 斜 が小窓 谷
、お り、 ふ ぶけば ルー ト を誤
側 に広 が っ″
いいだ ろう。 小窓 尾根 は、雷岩 上流 五〇
層 あたり の森林帯 から取 り つく。赤 谷尾
で雪崩 の危険 は非常 に大き い。 し たが っ
て、馬場島 を早朝 に発 ち、稜線 には十 一
高度をあげ る
根 を後 にみて、ぐ いぐ いと一
と稜線 に出 る。 こ のビ ッチ は非常 に苦 し
いが頑張ら ねば ならな い。稜線 へ出 るま
時前後ま でには達す るよう行動 しなけれ
認 しや す く、 雪 崩 の可 能 性 も 多 い。 と に
化 と とも に常 に影 響 す る ので、 アイ ゼ ン
多 量 の雪 が気 象 変
か く全 コー スを通 し ´、
と ワ カ ンをふ か に使 いこ なす かと いう こ
ば なら な い。
危険性 が出 てくる。 二 一二〇肝 に達 する
と、眼前 には コルと、 急 にせりあが った
連 続 で、 そ の少 し手前 ではじめ て雪庇 の
一
ば本峯、 三 ノ窓、奥壁 が眺 められる。
九 八〇済 ピー クま では単調 なラ ッセ ルの
一六〇〇暦 は白 い大地 て、晴 れて いれ
とも ポ イ ント と な るだ ろう。
小 窓 尾 根 の概 略
雪 の状 態 にも よるが、ブ ルドーザーが
入 って いれば伊折 から三R四時間 で馬場
島 に つく。 こ のアプ ローチは剣岳 へ登 る
者 がどう しても たとらなければならな い
ピー クと、少 し顔 を出 した ニード ルが目
、
に入る。 ここから ニード ルま では体力
宿命 でも ある。
馬場島 から取 入 日、そし てタカノ スヮ
付近 が小窓 尾根 登攀 にお いて の 一つのや
ッ
ま であろう。地道 に、根気 よく登ら ねば
ならな いと ころである。 こ の登りは ニカ
忍 耐力、そし て雪 と の問 いである。 この
リがきび し い冬 の剣岳 の 一面 をみせてく
れる。雪崩や スノープリ ッジ に注意して
タカノ スフリ ヘ入る。急 に左 へ角度を変
える地点 から、赤 谷側 へ高 巻きした方 が
長野県警 察
山岳遭難
救助隊編
、
レ
と
二
ノ
勤
﹄
琳
蹄
﹄
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ば
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ストの魂 財“
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難若きアルピ︼
た
語
大
死 と背中 合 わ せ のき びし い活 動 を し いられる遭難救助隊員 が ピ ヶ ル を ベ ン
、
にかえ て訴 え る遭難防 止 の切 な る願 いと 山 の生活 の赤裸な手記ノ ¥ 6 8 0
● この本 は遭 難防 止 の基 金 作 ります
剣岳 ドームか ら三 ノ窓方面
札幌門田ピッケル,ア イゼン
ビッケル下記の様 にお呼び下さい
ルが残 置されて いる場合も ある が、絶対
に頼 らず自 らザイ ルを出す べき である。
を登 る のは、脚力と腕力 を必要以上 に使
う。 眼下 は スラブ状 とな って池 ノ谷ま で
コル ヘ下 り、 ドー ムに取 り つく。 ドー
ムは 一兄 ど こから取 り ついてよ ∵ かわ か
ら な いが、池 ノ谷側 へ少 し右斜 上ぎ み に
ト ラ ハー スし、急 な糾面 を約 一C︱
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二
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一
に
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か´ヽ
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一
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︲一
マ ッチ箱 の真下 に出 る。 アイ ゼ ンをき か
せて右上 して いけは、 マ ッチ箱 のピー ク
こ の付 近 からアイ ゼ ンで岩 を登り降 りす
る機会 がふえ てくる。
のバ ンドを伝う が、直登 す れは登攀 にな
る ので避 けた方 か いいだ ろう。池 ノ谷側
呼 んで いる岩稜を抜 けるには池 ノ谷側 を
巻 けば よ い。 巻き﹂
た はピラミ ッド の中距
をト レー スし て コル ヘ降 りる。 マ ッチ箱
の前衛、 つまりわれわ れがピラミ ッドと
前 にルび える マ ッチ箱 を めざ し て、稜
線 から 三居 ほど池 ノ谷側 へ下 ったと ころ
洞 を掘 る のも いい。
ー ムのピー クである。 ドー ムで の 一時 は
心を慰め てくれる。 ﹂、
き ればドー ムで雪
す る。下 は池 ノ谷 である。 そ こを左 の稜
線 へ出 て、稜伝 いにラ ッセルす れば、 ド
″
新 機 種 発 売″
缶¥16,000
①嶽建菖
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LTtt」 ャ
ルい
CN)¥12,500
琥 ミ
ァ
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槽
璃 にm¥Ю "∞
①騨弊Ill鸞 督(LT9,500
③眈 脇
∞
'¥卸
ビッケル
落 ちており、 かなり緊張 を要す る。 マ ッ
チ箱 への稜線 は、 風 が強 いので注意しな
ければならな い。簡単 な雪壁 を登 れば、
発達 させて いる の一、
注意 した い。 一
ド
T,
ルの一
月から コル ヘの下 りには、 日定 ザイ
所も っとも細 く両側 がされおち て いると
ころがある。 ここは冬期 は両側 に雪 庇を
。
ド ル ヘ到 ろ
ヤ
セ
尾
根
に
て
る
こ
の
ヤ
セ尾
根 は ニード ル2 月 へ続 いて いるが、
一カ
前 で右 ヘトラバー スし た方 が いいだ ろう。
こ の登 り の苦し みを脱出す ると、 ニー
雪崩 の危険性も あり、加 えイ
ヽ上部 ではか
ぶりぎ みにな って いる ので、乗越 し の手
り つく 一番最初 の壁 は、白萩川沿 いに雪
庇 ができ て いる。 ま た右 へ寄 りすぎ ると
所 ほど雪壁状 にな っており、 コルから取
最高の材質・卓越 した技術・永 い伝統
I日
‐
ヽ3
『写
尊
7:.:ff‐ 逸
6_ス レ
継
¥800高
I)¥7,500
(C.ヽ
アイゼン
特 殊 鋼 (NC.ヽ 1)12本 爪 ¥17,000
〃
10本 爪 ¥15,000
〃 10本 爪 (蹴 爪付)¥14,000
″
8本 爪 ¥10,500
⑤特殊鋼(C.ヽ 1)8本 爪 ¥9,500
ア イゼ ンの サ イ ズ
ザイ ルを解 いてから三ノ窓 ま で のわず
かな道 のり が非常 に苦 しく、ま た長 く感
じられるに違 いな い。 し かし苦労 のし が
続く。
すぎ ると雪崩 の危険 がある。神経 を集中
さ せられるト ラバー スが約 一〇〇肝 ほど
,
卜 ︶ア
︰
雪
L
に
ま
き
込ま れ な ,︱
・■、市壁
ら下 を確実 に卜一
7ハー スするc下 へおり
べ 一4 古い一にL円/ ・。 一 ノー ル Υ ﹁ 一 、
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´
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す ぐ前 が小窓 王 下 で あ る。 有 へ回 ︱
︱込 む
いく つか の小 さ な ピー ク を忠実 に アイ
ゼ ン の ツ ァ ッケ を さ か せ て通 過 す ると、
き じ め る 必要 があ る。
足 をと ら れや す いので、 最 後 ま で気 を ひ
三 ノ窓 が近 い。 し かし疲 れと安 心感 から
窓 谷 側 は白 い雪 の斜 面 で あ る。 小窓 王、
チ ンネ が ア ルベ ン的 な ムー ド を漂 わ せ、
の稜 線 は池 ノ谷 側 が兄 事 にさ れ わ ち、 小
マ ッチ箱 から は 小窓 谷 が美 し い。 小窓
ロ ッ クハ ンマ ー
いはある。青 空L岩壁 に田ま れた三ノ窓
に立一、
は、鹿島桔 か眼前 に飛び込 え一、
く
に な ります
― ニ ッヶ ル 、 ク ロム 、
モ リブ デ ン鋼
― ク ロー ム 、 モ リブ デ ン鋼
No C.M―
オー ダー は
― SeKADOttA―
︵記 ・前 日隆 F.
︶
人 の山に対 する情 熱 と行動 であり、パー
テ ィ総体 の長 期的計画 に基 つく有機性 ■
ある。
を 一層高 めるであろう。 そし てこれら の
成功を支 える のは、相 互信頼 に基づく個
なり高度 なt のを要求される。
三 ノ窓 登攀 の計画 は、 小窓尾根 の価値
な岩壁 i、豊攀者 にと っ´.
L雪 二水 の緊
張 ル場 で る。 窯気、天候 々と
や
は
はい′
´
,
厳 冬期 には
劣 るが、登攀 技術 の点 一、
はな
人も いな い。実際、
春
の
チ
ン
ネ
には人を
拒 むよう な氷 が発達 し ´、
おり、
一見容易
夏 たと、ゲ レンデ化 す るほど混 みあう
チ ンネも、 こ の季節 にはほとんど訪 れる
チ ンネ 登攀
れな がら雪洞を堀 る のも、 晴 れた空 の下
一、
池 ノ谷 をみおろし、 トカゲをきめ こむ
のも、ま た一
石山なら では の楽 しさ であ る。
る。 人 一人 いな い三 ノ窓 で、雪煙 に吹 か
C.M―
(N.C II)¥lo,500
ア イス バ イル
54
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