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皮質形成以前の先天性脳奇形 H13.7.13

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皮質形成以前の先天性脳奇形 H13.7.13
皮質形成以前の先天性脳奇形 H13.7.13
十三市民病院 望月邦三
Dorsal induction (primary neurulation) 背側誘導
Anencephaly 3W
Cephalocele 4W
ChiariⅡ malf ormation 4w
Ventral induction (telencephalization) 腹側誘導
Holoprosencephaly 5-6W
Septo-optic dyspla sia 6-7W
Pituitary maldevelopment 5-6W
Posterior fossa malformation 6-10W
Cephalocele とその関連疾患
Cephalocele
定義:頭蓋内の構造が、先天性の頭蓋、硬膜の欠損をへて、頭蓋外に伸展するもの。
内容による分類
1)Meningocele (脳脊髄液のみ)
2)Encephalocele(脳実質のみ)
3)Encepalocystocele(脳実質と脳室)
4)Meningoencephalocystocele(脳脊髄液腔と脳実質と脳室)
部位分類
cranial vault
occiptocervical
occipital 70%
parietal
frontal
temporal
frontoethmoidal(sincipital)
nasofrontal
nasoethmoidal
nasoorbital
frontal cranial base(basal)
transsphenoidal
sphenoethmoidal
transethomidal
sphenomaxillary
shenoorbital
好発部
人種により異なる
日本人では後頭部が最も多い
診断のポイント
① 骨の欠損部の情報(3D-CT)
②静脈洞の位置、偏位、状態や、欠損との関係の評価(MRI)
③脱出する構造の詳細(MRI)
:脱出脳の状態(血管に絞扼がおこると急性、慢性の梗塞となる。)
:encephalocystcele で脈絡叢が脱出すると、hydrocephalic な拡大が起こる。
:視神経を代表とする脳神経、下垂体、視床下部の突出は、機能障害の原因となる事がある。
④他の中枢神経系の合併奇形の有無を見ることも重要である。(MRI)
発生機序
1
まだ完全には分かっていないが、場所により、幾つかの違った要因が複合して生じる可能性が考えられている。
①skull base のような軟骨内骨化で形成される部分では、神経管の閉鎖不全に伴い、骨が誘導されない為あるい
は、basilar ossif ication center の融合がうまく行かない為に生じると考えられている。
②calvarium のような、膜性骨化で生じる部分では、骨の誘導の欠損、硬膜の形成不全、頭蓋内の腫瘤、嚢胞によ
る pressure erosion、一次神経管の一部の閉鎖不全などによるとされる。
その他の関連疾患や特殊な病態
Dermal sinus:頭蓋内と皮膚との間に皮膚外胚葉性の連続性が存続しているもの。
Epidermoid、Dermoid:上記の病態に伴って、あるいは単独で見られる。
Trans-sphenoidal cephalocele
basal cephalocele の1つの形
部位:通常では胎生 50日には閉鎖すべき、craniopharyngeal canal が存続していて、そこに突出する
注意:小児の鼻腔、上咽頭の腫瘤では、必ず、cephalocele を含む奇形を考慮する。 安易に生検しない。
内容:下垂体、視床下部、第三脳室
合併:脳梁形成不全
視器の異常(coloboma,眼球や視神経の低形成)
Atretic cephalocele(meningocele manque)
概念:断片状になった、 硬膜、繊維組織、変性した脳のみよりなる meinigoencephalocele
欠損部は線維性組織で閉鎖している。
fibrous core は頭蓋内の硬膜、falx、テント,時に中脳被蓋とつながる
好発部位と特徴
①parietal では脳の合併奇形が多く(孔脳症、脳梁形成不全、間脳嚢胞)予後悪いという報告見られたが、
occipital と大差ないとする報告が増えている。
②occipital では他の奇形の合併は少ない。 直静脈洞は骨欠損の直上でSSS に入る事が多い、
SSS は骨欠損部の直上部で2つに分岐するかまたは、有窓性 。
この病変の存在が、小脳テントや、静脈洞の発育に影響を与えたと考えられそうである。
Nasal glioma
定義 頭蓋外にglia l tissue が取り残されて存在するもので、neoplasm ではない。
頭蓋内との線維性の結合は15%の症例で認められるが、CSF腔の連続性はない。
部位分類
extranasal(鞍鼻の皮下が多い、奇妙なことに正中にはない)
intranasal(鼻腔内が多い、上咽頭、口腔、翼口蓋窩にもある)
mixed
画像:CSF腔が腫瘤に連続していない事を確認する事が重要。
Holoprosencephaly
2
概念:脊索の頭側端の形成障害があって、その前方に出現する、前脊索中胚葉prechordal meseoderm の形成
不全が生じた結果、これによって誘導される前脳(prosencephalon)の2つの終脳と間脳への正常な分離
(divertic ulation and cleavage 胎生台5週まで)が、うまく行かない為に生じる奇型
前脊索中胚葉prechordal meseodermは顔面の形成にもあずかる為、holoprosencephaly では顔面奇型を合併
する。 その重症度は脳の奇形の重症度と相関する事が多い。
診断の基本
①左右が一体化した脳を Holospheric brain(holosphere)と言う
holosphere の脳回は未熟で、しばしば heterotopic gray matter や polymicrogyria をともなう。
③重症例のholospheric brain の背側辺縁には、海馬がring 状に被い hippocampal ridgeを形成しているが、これか
ら連続し、間脳につながる膜様構造が dorsal sac であり、これが拡大して dorsal cyst が形成される。
②大脳半球の分離は後方から前方に向かって進むので、軽症例ほど、前方まで完全となる。
軽症例では前頭葉の僅かな非分離(特に灰白質の連続性を見つける事が重要)
⑤大脳鎌も半球間裂の形成に応じて、形成されているので、軽症例ほど、より前方まで、またより深部までまで形
成される。
④脳梁は(通常の発生では、膝部→体部→膨大部→吻部の順で形成されるが)holoprozencephaly における脳梁
は、大脳半球の分離が生じた部分に一致して、後方からいかに前方まで、形成されているかによって、重症度を
判定する。 半球間裂の見られない所には脳梁は形成されない。
⑥視床、線状体の非分離も一般には重症例ほど顕著である(例外あり)。
⑦透明中隔は全例で欠損
⑧嗅球、嗅索もほとんどで欠損
⑨視神経の低形成の度合いはいろいろ
重症度分類 De Myer, Zeman のものが最もポピュラー(別表参照)
alobar-semilobar-lobar にわけられるが、これらの区別は必ずしも明確ではなく、スペクトラム上に存
在する。
Syntelencephaly(holoprozencephaly with middle interhemispheric fusion)
Holopresencephaly の特殊な亜型
概念:前頭葉前方、後頭葉での半球間裂は完全であるが、前頭葉後方から頭頂葉に融合が見られるもの。
脳梁は、膝部、膨大部は形成されているが、体部で欠損する。
発生機序:dorsal meninx primit iva(脳と脊髄を包む粗な胎性間葉組織.これから最終的な髄膜(クモ膜・
硬膜・軟膜)がつくられ る)が局所で少なかった為に、周辺の組織の誘導に異常が生じると考えられている。
(By Barkovich)
Holoprozencephaly の分類
3
Cerebral hemisphere
Interhemispheric
fissure
Lateral ventricule
Alober type
Semilobar type
Lober type
Syntelencephaly
左右への分離無し
Pan cake 状
無し
後方のみ分離
ほぼ全体が分離、前下方
のみ融合
後方では完全、前方で一
部不完全
前頭後方部及び頭頂で融
合
前頭、後頭では形成 前
頭の後方から頭頂で欠損
後方では一部形成、前方
では欠除
完全な単脳室
crescebt holoventricle
単脳室に連続する大きな
嚢胞
側頭角のみ一部形成
Falx
欠損
後方のみ形成
Thalamus
Corpus striatum
Corpus callosum
融合
融合
欠損
3rd ventricule
Septum pellusidum
Posterio fossa
Hippocampus
無し
欠損
正常
Hippocampal ridgeとして見
える
Azygos
Garen の低形成
SSS 欠損 ICV、 straight
sinus 欠損
高度の事が多い
生後すぐに死亡
Dorsal cyst
ACA
Sinus
Facial anomaly
予後
存在する事多い
前頭角も 一部形成あ る
が、低形成
無い
±
融合から分離まで
融合から分離
欠損〜低形成 膨大部の
みが多い
± 低形成
欠損
正常
不完全
ほぼ全体が形成され る
が、前方は低形成
分離
分離
体部の半分までは形成さ
れる事が多い
+ ほぼ完全
欠損
正常
ほぼ正常
前頭の後方から頭頂で欠
損
融合から分離まで
Azygos
Azygos
Azygosの例あり
膝部、膨大部は形成され
るが、体部に欠損
欠損
正常
低形成
軽度から正常
長期生存が見らる。
Septo-optic dysplasia(Morsier's syndrome)
概念;1956年 Morsier が最初に報告した。
①視神経の低形成(特に optic disk の低形成を眼窩的に証明する事が診断状重要である。)
②透明中隔の低形成~欠損
③視床下部ー下垂体系の機能異常(単独のGH、ADH、ACTHの欠損から panhypo まで)
を特徴とする。 (Morsier の最初の報告には記載無し)
1つの疾患概念というよりは、いくつかの疾患概念を含有している。
分類
(by Barkovich)
①mild form of lobar holoprozencephaly 50%
mesenchymal defic iency が想定されている。
透明中隔は完全欠損
大脳白質はび漫性に低形成で、側脳室前角相当部は box like appearance で大きく見られる
脳梁膝部も低形成、anterior falx の低形成を伴う事もある。
②migrational anomaly を伴うもの 50%
Ⅰst からⅡnd trimester での虚血によると考えられている。
schizencephaly50%、 hetrotopia
透明中隔は部分欠損
4
視床下部の機能異常
optic pathway の低形成は病側のみにみられ、出生前の、視放線の破壊あるいは低形成に伴う
transsynaptic degenerationと考えられる。
③posterior pituitary ectopia
分類
発生機序
Septum pellucidum
視神経
mild form of lobar holoprozencephaly
migrational anomaly(schizencephaly)
を伴うもの
mesenchymal defic iency が想定され Ⅰst から Ⅱnd trimester での虚血
ている。
によると考えられている。
完全欠損
部分欠損
両側が多い
病側のみの低形成、 transsynaptic
degenerationと考えられている。
Septum pellucidum の欠損の分類
欠損の程度
Primary agenesis
完全
原因
先天性
Secondary destruction
切れ端が脳梁の下に残っているも
のや、有窓性の中隔が見られるもの
がある。
繰り返す外傷、炎症、持続する水頭
症
Primary agenesis に合併する奇形
Sept-optic dysplasia, Agenesis of corpus callosum, Holoprosencephaly,
ChiariⅡmalformation, Schizencephaly, Hydranencephaly, Microgyria, Heterotopia
Joubert Syndrome
1969年に Joubert が報告したときの臨床的特徴は
呼吸障害(発作性多呼吸、無呼吸)
眼球運動異常
顔面の非対称
失調
精神運動発達遅延
遺伝 AーR
中枢神経系には
小脳虫部の完全又は部分欠損
小脳脚の低形成
第四脳室の拡大、変形(横断では bat wing 矢状断では triangular shape)
5
脳幹上部の横断面では上小脳脚がやや長く平行に近い走行を示す為、特徴的なmolar tooth appearance を示
す
しかし、Joubert が報告したものと、同じ中枢神経系の奇形を示しながら、臨床症状の異なる症例が多く報告される
ようになっており、混乱が生じている。(それを Joubet syndrome として報告していたり、別の症候群としていたり)
例えば有馬らは、有馬症候群(脳、眼、肝、腎、症候群)として、AーRで遺伝し、網膜の異常、嚢胞腎、肝線維症
を伴う症例を報告しているが、この症例の、小脳の変化は、Joubert の報告のものとほぼ同様である。
また同様の小脳、網膜、腎、肝の病変を示すものとして、Senior-Loken syndrome, COACH syndrome (Cerebellar
vermis hypopla sia , Oligophrenia, congenital Ataxia, Coloboma, Hepatic fibrocirrhosis) などが報告されている。
いずれにせよ Joubert syndrome で報告されている画像所見は、特異的なものでは なく、それ のみでは、
joubert syndrome とは診断してはならない事は注意すべきである。
これらの疾患では、小脳に関しては、胎生の同一の時期に同様のメカニズム(rombic lip の吻側に限局した発育の
停止または障害)が働く為に、同様の奇形を生じるものと想像される
6
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