Comments
Description
Transcript
009 体位変換が心電図波形に及ぼす影響についての検討 010
009 体位変換が心電図波形に及ぼす影響についての検討 ○ 村上 伊久子 大西 悦子 田中 教雄 鈴木 雅樹 佐藤 惠美子 伊達 裕 幸山 佳津美 増田 喜一 (国立循環器病センター生理機能検査部) 【目的】 波が10/11例で減高した(平均14.0 vs.平均10.1mm)。ST接合 ホルター心電図では体位変化によると考えられる波形変化 部についてはいずれの体位においても変化は認めなかった。通 がしばしば認められ、このため不整脈の鑑別やST評価が困難と 常、左側臥位では、心臓は時計方向回転するとともに心尖部が なる場合がある。今回、健常成人における体位と胸部誘導心電 やや左前方に偏位する位置の変化がみられる。これに伴って電 図波形との関係から、体位変換がホルター心電図解析に影響を 気的興奮の最大ベクトルの方向と大きさも変化した結果、V5、 及ぼすか否かについて検討した。 V6方向へのベクトルが最も大きくなり、R波が増高したと考 【対象および方法】 えられた。一方、右側臥位では、体表からみた心臓の位置に大き 心電図異常のない健常成人11例(男6例、女5例、平均年齢35 な変化がないため、心電図も不変であったと考えられた。また、 歳)を対象に、体位を仰臥位、左側臥位、右側臥位、坐位に変換さ 坐位における波高変化は、横隔膜が下がることにより心臓の位 せ、標準12誘導心電図を記録した。心電計(日本光電社製ECG- 置も垂直位心傾向に偏位し、V4に反映される電位が変化した 9321)内蔵の自動計測ソフトウェアを用いて胸部誘導の波高(R 結果と推察される。 波、SまたはQ波、T波)とST接合部を計測し、仰臥位と各体位を 比較した。 【まとめ】 正常心電図の場合、体位による心電図波形変化は、左側臥位 【結果および考案】 と坐位における左側胸部誘導の波高変化として出現した。これ 左側臥位では、V5は9/11例、V6は全例でR波T波ともに増高 に対し体位変換のST接合部に対する影響はなく、ホルター心電 した(RV5:平均19.4 vs.平均14.6mm、 RV6:平均22.1 vs.平均12.0mm、 図においてST評価の可能性が示された。 TV5:平均6.7 vs.平均5.5mm 、TV6:平均6.3 vs.平均4.0mm)。一方、 連絡先:06-6833-5012(内線2250) 右側臥位では波高変化は認めなかった。また、坐位ではV4のR 010 心エコードプラ法からみた心臓移植後早期の心血行動態について ○ 森下 孝 田中 教雄 橋本 修治 勝木 桂子 佐藤 洋 仲宗根 出 増田 喜一 (国立循環器病センター生理機能検査部) 【目的】 が減少傾向を示した。ETは評価可能5例で明らかな変動はなく、 心臓移植後の心血行動態の経時的な変化を知ることは、今 ほぼ一定であったが、その内3例は270msec以下であった。 後の急性拒絶反応や冠動脈病変の出現を評価する上でも重要 TMFのE/A比は評価可能5例中4例が期間中1.5以上であり、内 と思われる。今回、術後早期の心血行動態の自然経過を心エコ 2 例 は I R T が 7 0 m s e c 以 下 で あ り 、そ の 2 例 中 1 例 は D T が ードプラ法により検討した。 160msec以下であった。しかしTMFから得られる各指標は期 【対象および方法】 間全般を通して各個人内での変動が比較的大きく、その傾向 対象は当センターにて心臓移植を施行された6例(平均年齢 36歳)である。評価項目は心拍数、 左室拡張末期・収縮末期径(Dd・ の評価が困難であった。 【まとめ】 Ds)、左室内径短縮率(%FS)、左室後壁厚(PWT)、駆出時間(ET) 心臓移植後早期の心血行動態を心エコードプラ法から経時 および左室流入血流速波形(TMF)のE波、A波、E/A比、E波減速 的に検討した結果、心拍数、左室内径、収縮能の指標は明らか 時間(DT)、左室等容弛緩時間(IRT)である。観察期間は術後2∼ な変動なく一定であった。しかし各評価項目の中でもTMFか 12週間で、観察間隔は、術後2∼7週目までは1∼2週間隔、8週 ら得られる指標は各個人内での変動が比較的大きく、傾向の 目以降は3∼4週間隔とし、心筋生検と同一日に評価した。なお、 評価が困難であった。これはTMFに対してドナーとレシピエ 評価項目中ET:1例、TMF:1例が全期間を通して評価できなか ント心房の共存や手術による心房への侵襲が影響しているた った。 めとも考えられる。したがって、心臓移植後にTMFを用いた左 【結果】 室拡張能から急性拒絶反応や冠動脈病変の出現を推測する場 観察期間中に急性拒絶反応は全例に認めなかった。心拍数、 合は、以上のことを考慮し評価する必要があると思われた。 Dd・Ds、%FSは明らかな変動は認めずほぼ一定であった。%FS は全例正常範囲内であった。PWTは6例中1例が増加傾向、1例 ─1 6 ─ 連絡先06-6833-5012(内線2250)