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⑨ ざくろ石を含む片状花崗閃緑岩と泥質片麻岩−呉市蒲刈町大浦三崎
⑨ ざくろ石を含む片状花崗閃緑岩と泥質片麻岩−呉市蒲刈町大浦三崎 1 地質の概要 この地域は,領家変成岩類の片状花崗閃緑岩 と泥質片麻岩が広島花崗岩類の捕獲岩として見いだされる ところである。泥質片麻岩は,周辺の泥質ホルンフェルスとは明らかに異なり,粒度も粗く,黒雲母など の鉱物が定向配列をし,片状構造をつくっている。片状花崗閃緑岩と泥質片麻岩の接触部には直径約1cm のざくろ石が形成されている。 2 露頭の案内 (1) 場所 呉市蒲刈町大浦三崎(図 9-1) 大浦港より 1.3km であり,海を隔てて豊島が見える。現在, 上蒲刈島と豊島を結ぶ豊島大橋が建設中である。 (2) 規模・状態 露頭の状態も良く観察しやすいが,干潮でないと海に降り ることができない。観察可能人数は 20 人程度である。 (3) 安全に対する配慮 道路は交通量も少ないが,カーブが多く,車に注意する。 また,海岸はすべりやすく,注意が必要である。 3 露頭の観察 道路から,海岸沿いに一周しながら観察する。その概略は 図 9-2 であり,図 9-3 に道路から撮影した写真を示す。また, A∼Dから撮影した写真を図 9-4∼7 に示す。 図 9-2 1 ヒン岩岩脈 図 9-4 図 9-1 呉市蒲刈町大浦三崎付近 の地図 露頭のスケッチ 2 片状花崗閃緑岩 南東側 より撮影(A) 図 9-3 3 露頭遠景 泥質片麻岩 図 9-5 北側より撮影(B) 図 9-6 東側より撮影(C) 図 9-7 (1) 観察のポイント ① 泥質片麻岩 の観察 この泥質片麻岩は,片状花崗閃緑岩とともに広島花崗岩 類の捕獲岩として取り込まれた岩体である(図 9-8)。 ○ 泥質片麻岩 の片理面を探し,クリノメーター で走向傾 斜を測定する。泥質片麻岩全体としてどのような傾向が あるか。 ○ 片状花崗閃緑岩中に含まれる泥質片麻岩の 岩片の様 子をスケッチしてみよう。泥質片麻岩と片状花崗閃緑岩 の関係はどのようなものと考えられるか。 ② ざくろ石を含む片状花崗閃緑岩 の観察 北側の海岸及び東側の海岸に片状花崗閃緑岩 と泥質片 麻岩の接触部があり,直径約1cm のざくろ石が多数含まれ ている(図 9-9,10)。 ○ ざくろ石が含まれている範囲は,泥質片麻岩との接触 部から約何 cm の範囲か。 ○ ざくろ石が風化すると,赤くさびるのはなぜか 。 図 9-8 図 9-9 南側より撮影(D) 片状花崗閃緑岩に取り込まれた泥質片麻岩 片状花崗閃緑岩との接触部における ざくろ 石 図 9-10 拡大写真 ③ ヒン岩岩脈の観察 北側の露頭と南側の露頭に緑色のヒン岩の岩 脈が観察 できる(図 9-11)。岩脈を崖の表面に現れている脈として 見るのではなく,その連続を考えることにより,立体的に 把握させるのに 良い露頭である。 ○ 岩脈の伸びをクリノメーター で測定してみよう。 (2) 採取できる岩石・鉱物 ① ざくろ石が入った片状花崗閃緑岩 かなりめずらしい岩石であり,風化も激しいので,自然 図 9-11 ヒン岩の岩脈 保護の上からも採取しない方がよい。 ② 泥質片麻岩 片状花崗閃緑岩とともに広島花崗岩類に捕獲されたものである。 ③ ヒン岩岩脈 緑色で緻密な岩石である。 (3) 顕微鏡写真 ① 泥質片麻岩 領家変成作用および広島花崗岩類による接触変成作用により黒雲母と菫青石が形成されている。菫青石 はピナイト化している。また,黒雲母などが定向配列し,片理を形成している(図 9-12,13)。 黒雲母 図 9-12 泥質片麻岩 の偏光顕微鏡写真 (下方ポーラーのみ,長辺の長さ 1.0mm) 図 9-13 泥質片麻岩 の偏光顕微鏡写真 (直交ポーラー ,長辺の長さ 1.0mm) ② 片状花崗閃緑岩 斜長石,石英,角閃石,不透明鉱物よりなる。また,角閃石の周囲に細粒の角閃石が再結晶している(図 9-14,15)。 図 9-14 片状花崗閃緑岩 の偏光顕微鏡写真 (下方ポーラーのみ,長辺の長さ 2.5mm) 図 9-15 片状花崗閃緑岩 の偏光顕微鏡写真 (直交ポーラー,長辺の長さ 2.5mm) ③ ヒン岩岩脈 短冊状の斜長石と短冊状の角閃石より構成されている。斜長石の間を陰微晶質や二次的鉱物が埋めるイ ンターサータル組織を示している。また,ところどころ角閃石や斜長石の斑晶が見られる(図 9-16,17)。 角閃石 図 9-16 泥質片麻岩 の偏光顕微鏡写真 (下方ポーラー のみ,長辺の長さ 1.0mm) 図 9-17 泥質片麻岩 の偏光顕微鏡写真 (直交ポーラー,長辺の長さ 1.0mm) 4 参考文献 間賀田隆秀(1997):「広島県南部領家帯−山陽帯境界域の地質学的・岩石学的研究」広島大学大学院学 校教育研究科修士論文抄,第 16 巻,pp.241-244 松浦浩久(2001):『三津地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)』地質調査所,58p. 谷口剛章(1999):「芸予諸島における中生代火成岩類 の研究及びその教材化への試み」広島大学大学院 学校教育研究科修士論文抄 ,第 18 巻,pp.225-228