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第3回 株式会社 たび寅

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第3回 株式会社 たび寅
第3回
株式会社 たび寅
第3回目の訪問先として、「株式会社 たび寅」にお邪魔しました。
ホテル・旅館のホームページ作成やコンサルタンティング、予約システムの提供などを行っているこ
の会社では、ゼロ歳児から預けられる事業所内保育施設を設けるなど、子育て中の女性でも働きや
すい職場環境づくりに努めていらっしゃいます。
《企業概要》
訪問先:株式会社 たび寅 (諏訪市)
役職員数:14 人 (男性 4 人・女性 12 人)
事業内容:ホテル・旅館のホームページ作成、コンサルタント、予約システム提供
[訪問日] 平成 25 年 4 月 26 日
[お会いした方] 代表取締役社長 秋山晶子様
■託児所をつくってから女性の応募が増えた
【秋山 社長】
株式会社「たび寅」というのは旅館、ホテルを中心にホームページ制作をしている会社なんです。
当社では、ホームページの作成を最初5万円で請け負って、そこから予約が入ったら売上の5%が
「たび寅」の収入になるという形式でやっているので、本当に感性が良いホームページを作らないと、
売上はゼロになってしまいます。
家庭の中では旅行先を選ぶのもお金を出すのも女性
が多いし、特に女性は旅館に拘りを持っているので、や
はり女性の観点で旅館を取材してホームページを作りた
いというのが私の意向なんです。男性スタッフも優秀なん
ですけれども、女性が担当してホームページを作った方
が売り上げが良かったということもあります。やはり感覚的
な問題なので、こういう旅がしたい、こういう食べ物が食
べたい、こういう温泉に入りたいって、なかなか男女で越
えられない感性の壁っていうのがあって、そんな意味で
もうちの会社にとって女性が非常に大切で、保育室を作
秋山 社長
ったりして女性を確保していくということは、そんな所にあります。
【加藤 副知事】
たび寅さんのお取組みというのは、福利厚生という観点ではなくて、企業経営の戦略としてお考え
になっていらっしゃるわけですね。
【秋山 社長】
私は去年の7月に出産をしまして、別の社員も今年1月に出産したということがあって、それをきっ
かけに託児所を作ることにしました。経営者の立場からすると、社員が産休・育休を取っている間に
ほかの人を採用して、復帰してきたらその人を辞めさせる事はなかなか出来ないですね。ですから、
長く休みを取るよりも、子どもを連れて早く復帰をして、実力も落ちないように働いてもらいたいと思っ
ています。そこで、託児所を作るのが一番いいのではないかと思ったんです。
母親としては、いつも子どもと身近にいたいという強い欲求があるものですし、当社は仕事柄、取
材が遅い時間になることもあって、やはり社内に保育園を作って良かったと思っています。それに、
企業の戦略面としては、託児所を作ってから女性の応募が非常に増えました。今では女性の割合が、
ほぼ8割になっています。
子どもの立場から考えると、昔は大家族で家族や親戚がいる中で子どもは育ったわけですが、社
内の保育園があることで、会社の子どもとして育てるという形で、昔のように社会全体で育てるという
感覚に近くなるのではないかと思っています。
【加藤 副知事】
今のお話をお聞きすると、非常に広い視点をお持ちで
いらっしゃって、とかく子どもの視点というのが後回しにな
ってしまうことがありますよね。
【秋山 社長】
そうですね。それに、預けている側の気持ちになると、
会社の保育所に預けて本当に良かったと思ってもらえるよ
うにしたいと思っています。教育面でも良くて、お母さんも
輝けるという、両方を目指しています。子どもが成長できな
いと、お母さんが輝けないと思うんです。「あのとき働かな
加藤 副知事
いで子育てしとけば良かった」なんて後悔するようではい
けませんしね。
■事業所内保育施設をもっと広げたい
【秋山 社長】
やってみて思うのは、保育士の確保が非常に難しいということです。中小企業の場合は社員の子
どもも少ないので、子どもがいなくなった時どうするかという問題もあります。保育士さんには、それで
さよならっていう訳には行かないですし、その人を事務に回すかというと、適正の問題もあります。あと、
新生児に向いている保育士さんとか、4~5歳児に向いてる人というように、保育士さんでも向き不向
きがあることが分かったんですよね。そこで、企業内の託児所がネットワークで繋がっていけば保育
士さんを回す事ができると思っていて、そのためにも色々な会社に企業内託児所を作っていくことを
めざして、署名を集めたりしていこうと思っているんです。
【加藤 副知事】
保育園の実施主体の市町村でも保育士の確保には課題を抱えていらっしゃるんですよね。保育
士さん自身が育児休業お取りになる場合だってある訳ですし、近隣の市町村で広域的に保育士さ
んのリストを作るのもいいかもしれませんね。
【高森 長野労働局長】
秋山社長は自分の会社だけではなくて、そういうネットワークを中小企業中心に広めて行きたい、
地域のネットワークにされたいっていうのは、すごく先取り思想ですね、ぜひ応援をしたいと思いま
す。
【秋山 社長】
社内保育のもうひとつの問題点は経費
の問題です。保育士さんは1時間 1000 円
くらい、夜はそれ以上かかってきますので、
その経費を捻出するのが非常に難しいん
です。今、「たび寅」の場合はフルタイムの
社員は1時間 500 円、短時間勤務の社員
だと1時間 200 円という形で、社員と会社の
折半でやっています。でも、パートの社員にとっては保育料の負担が大きすぎて、現状は難しいかと
思います。市から少しでも補助金がもらえれば非常に有難いので、そういうことも含めて署名を集め
て行きたいを思っています。女性が働き続けるという事は税収も増えると思いますしね。それに、女性
が働きやすくなることで、女性が多い企業の誘致にもつながるんじゃないかとも思います。
【加藤 副知事】
県でも5ヵ年計画を今年度からスタートして、プロジェクトの中でも人口増を掲げて取り組むことにし
ていますが、都会では待機児童の問題が非常に大きい中で、長野県でしたらこんなにも働きやすい
環境を整えている企業がこんなにあるんですよ、どうぞ長野県へ…というセールスポイントにもなりま
すね。
■他の保育園ではできないこともやっていきたい
【秋山 社長】
子どもにとっても、親が働いている姿を見るのは、すごくいい事だと思うんですよね。今後もう少し
二人の子どもが大きくなったら、子どもの会社見学のような時間をつくって、社員と触れあえる時間を
つくるという様な事を考えているんです。
あるいは、企業内でしかできない子どもの教育として、自分が手に入れたいものは自分の強い意
志と努力で手に入れるという事を学ばせたいと思っているので、わざと段差を作って高い所におもち
ゃを置くということもしているんです。あと、社内の清掃のような簡単な事を子ども達にやらせて、社内
で使える仮のお金をあげるというような形でお金の教育をしたり、他の保育園にはできないこともやっ
ていきたいと思ってます。
あと、周りを巻き込んで行くことがやっぱり大事かなと思うんですよね。社内には子どもがいる人も
いない人も、結婚してない人もいるので、そういう人達には関係ないという感じになってしまうと、お母
さん達は働きにくいので、逆にその人たちを巻き込んで、みんなの子どもとして可愛がってもらうと、
社内の対立もなくなると思うんです。それで、みんなが自分の子どもの様に可愛がってもらえるように、
9時から 10 時はあえて社員が交代でみる時間にしています。
【加藤 副知事】
ホームページで企業内保育を宣伝なさるといいと思うんです。そうすると、就活をしている高校生と
か大学生達も、こういう会社があるんだということが分かりますし。せっかく入った会社を1、2年で辞め
るなんていう事も沢山ある訳ですけれども、そういうことを防いでいくことにもつながると思いますので、
是非お取組みを。
【高森 長野労働局長】
厚生労働省のホームページに、働く女性の活躍を応援
している企業を紹介するサイト(ポジティブ・アクション応援
サイト)がございますので、これに登録していただくのもい
いですね。長野県は日本の平均と比べて非常に就業率
が高かったり、出生率も高いんですが、残念ながら男性の
育児休業の取得率とか、女性の管理職への登用比率が
全国に比べて低いレベルなんです。そのあたり、男性中
心の思考が地域的に残っているのかなという感じがしま
す。
高森 長野労働局長
【秋山 社長】
経営者の立場から行くとやはり、絶対残業はできないっていう状態だと、管理職への登用は非常
に難しいですね。早く帰れれば一番いいんですけれど、どうしてもだめな場合は子どもにも負担が無
く、お母さんが傍にいて仕事を頑張れるような体制をつくらないと、女性が活躍し続けるのは非常に
難しいと思うんです。そこは多分、女性の意気込みとか覚悟も必要だと思うんですけれど、働いて育
児もするという強い意志を持っている人に対して、企業も最大限の事をやってあげる事が大事なんで
すよね。
【高森 長野労働局長】
出産を機に6割の女性が職場を辞めざるを得ないという現実は、これから少子高齢化で労働力人
口が減って行く中で非常に大きな経済の制約要因にもなり得るんですね。ですから、女性の方が就
業を継続して経済を支えていただくためにも、女性が元気で活躍出来る職場が沢山出来れば明るさ
が随分戻って来ると思います。
【加藤 副知事】
たび寅さんがロールモデルになって、他の中小企業の経営者の方がやってみようかって思ってい
ただけるといいですね。
秋山社長と保育スタッフの皆さん
㈱たび寅のホームページにリンク
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