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日本バイオロギング研究会会報

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日本バイオロギング研究会会報
日本バイオロギング
日本バイオロギング研究会会報
バイオロギング研究会会報
日本バイオロギング研究会会報 No. 28
発行日 2008 年 9 月 25 日 発行人 佐藤克文 発行所 日本バイオロギング研究会(会長 荒井修亮)
東京大学海洋研究所 国際沿岸海洋研究センター 〒028-1102 岩手県上閉伊郡大槌町赤浜 2-106-1
tel: 0193-42-5611, fax: 0193-42-3715 E-mail [email protected]
第 28号
もくじ
野外調査レポート
木崎湖スモールマウスバス調査
学会参加報告
Biologing III に参加して感じたこと
第3回国際バイオロギングシンポジウム
連載
Ethographer を使ったバイオロギング解析
第5回・加速度データの解析・角度と動き1
青山 高幸(東大海洋研)
2
佐藤 克文(東大海洋研)
鈴木 一平(東大海洋研)
2
3
坂本 健太郎(北大院獣医)
4
事務局からのおしらせ
事務局
からのおしらせ
事務局では、バイオロギングサイエンスに関連するシンポジウムや研究会開催のお知らせをメーリングリストにて配信しております
(不定期)。メーリングリストへの登録をご希望の会員の方は、氏名とメールアドレスを事務局までお知らせください。
日本バイオロギング研究会第4回シンポジウム(2008 年 11 月 15・16 日, 長崎大)の参加申込
参加申込・
参加申込・発表申込、
発表申込、まだ受
まだ受け付けます!
けます!
研究会ホームページより申込用紙をダウンロードし、お早めに事務局までファックスにてお申込ください。
写真: 木崎湖全景(2頁参照)
-1-
野外調査レポート
野外調査レポート
木崎湖スモールマウスバス
木崎湖スモールマウスバス調査
スモールマウスバス調査
2008 年 9 月 20 日
青山 高幸 (東京大学海洋研究所)
2008 年 7 月、私の木崎湖調
査は今回で 4 回目を迎えました。
「木崎湖ってどこ」?という方の
ために少し説明しますと、富山
県と長野県白馬村に接する長
野県大町市にある湖(表紙)で
野尻湖と並びスモールマウスバ
スが釣れる湖として有名な場所
のうちの一つです。(また、どうい
うわけかとあるアニメの聖地(??)
として、その手の方々が多数来
訪≒巡礼される一風変わった
場所です。)
このように場所柄(標高 764m)
から言っても寒い地域だという
ことはお分かりいただけるかと思
いますが、どのくらい寒いかとい
うと、冬はもちろん真っ白な銀
世界、春ならば室内で吐く息が
白くなるほど、夏ならば普通に
布団をかぶっていないと風邪を
ひきそうなくらいです。(まぁおか
げでこの 2 年間真夏でもエアコ
ンいらずの生活を送っていたた
めすこぶる体調はいいわけです
が・・・。) 私はそんな木崎湖で、
荒井さん御夫妻の経営されて
いるキャンプ場と伊藤さん御兄
弟の経営されるモダンボート(レ
ンタルボート店)にお世話になっ
ていました。まわりが美しい自然
に囲まれているためか、この荒
井さん一家はとても愉快な方々
で、私に“マスティー”というよく
意味の分からない愛称をつけ
て下さり、いつのまにか木崎で
の私の名前はマスティーになっ
てしまうなど、私も荒井さんご家
族と共に楽しい生活を送らせて
いただきました。また荒井家の
お子さん達(洋平君・朔未さ
ん)が毎日一人寂しい私と毎
日遊んでくださるおかげでい
い気分転換をすることもでき、
中でもご夫妻の長女の朔未
さん(5 歳)が私に非常になつ
いてくださり、彼女と真剣に
遊んだ次の日には必ず魚が
釣れるという、私に強運をも
たらしてくれる天使のような
存在でした。
さて、今回の 調査では、
私は生簀の中でスモールマ
ウスバスの捕食行動を記録
するということを第一の目的
としていました。つまり最初に
まず実験を行うための生簀
を作らなければいけないわ
けですが、「果たしてそんな
ものが一人でできるのか?
かなり時間がかかってしまう
のではないか?」などと不安
を抱いておりました。しかしい
ざ木崎湖に着いてみると、
荒井さんやお客さんの御厚
意(勝手に巻き込んだわけで
すが・・。) により、ものの数
時間で立派な生簀 (写真
2) が完成してしまいました。
生簀さえ完成してしまえば、
あとはこっちのもので、「
「朔未
さんと遊
さんと 遊 ぶ → 魚 を 釣 る → 生
簀 に 放 す 」 という作業を繰り
返し、ある程度の魚が確保
できたところで、東京から応
援を呼び、短期間のうちに、
ばっちり捕食の瞬間をロガー
とカメラの両方から記録でき
たというわけです。
今回、こうした実験を行うこ
生簀完成図.
とによって新たに課題が浮上したりもしましたが、2 年間にわたる
私の調査活動がこうして無事に、楽しく終えられたのも、生活面
で私の面倒を見てくださった荒井さん御夫妻、時に真剣にブラッ
クバス釣りの話をし、時に一緒に釣りをしながらバカな話をしてス
トレス発散に付き合ってくださったモダンボート洋平店長、そして
ブラックバスという魚を通してお知り合いになれた多くのお客さん
(柳原さん・堀内さん・藤原さん・寺嶋さん etc)のおかげだと思っ
ております。
みなさんも一度、木崎湖へ足を運んでみてください。きっと
美しい自然に癒されるのではないでしょうか。
お世話になった皆がマスティーお別れ BBQ を開いてくれまし
た.
学会参加報告
Biologging III に参加して感じたこと
2008 年 9 月 10 日
佐藤 克文 (東京大学海洋研究所)
「日本語で構わないから、自分からど
んどん積極的に話しかけろ」。
プロ野球選手の松井秀喜がメジャーリ
ーグにデビューすべく渡米する際、プロ
ゴルファーの青木功はそうアドバイスし
たらしい。
アドバイスを請うために、日本語を一
から勉強した欧米人のプロゴルファーが
実際にいたとか。世界を舞台に戦う日
本人スポーツ選手が希であった時代に、
“世界の青木”と呼ばれた青木プロの強
心臓ぶりを示す逸話である。
-2-
「ゴルフが上手いから、そんな無茶な
態度も許されるんだよねえ」と思う人は
多いかもしれない。しかし、私はちょっと
違う感想を抱いている。“世界の青木”
だからできたのではなく、そんな事がで
きる人だからこそ“世界の青木”に成り
得たと思うのだ。
「どんなくだらないことでも良いから、口
頭発表の会場で手を挙げて質問しろ」。
Biologging III に参加した日本人学生
にそんなアドバイスをした。「日本語でも
いいから」と言わなかったところに私の
小市民ぶりが現れている。ごく当たり前
のアドバイスであったにも関わらず、残
念ながら口頭発表の際に手を挙げて質
問する日本人学生は出なかった。質問
しない代わりに、彼らは研究発表でしっ
かりアピールできただろうか?
今回、計96題の口頭発表があった。
そのうち、日本人研究者による発表は1
1題(11%)であった。一方、ポスター
発表においては、計42題のうち、日本
人による発表は17題(40%)を占めた。
日本人はポスター発表が好きなようだ。
私がこれまで共同研究などを通じて知
り合った欧米人達は、間違いなく口頭
発表が大好きだ。「そんな内容でよくも
まあ」と思うレベルであっても、彼らは当
たり前の様に口頭発表を申し込む。ポ
スター発表には、興味を持って聞いてく
れる人とより深い議論ができる、というメ
リットはある。しかし、そもそもポスターを
見に来てくれる人が少ない場合は困っ
てしまう。シンポジウムの規模がさほど
大きくなく、会場が 1 つしかない場合に
は、口頭発表は有効な宣伝手段だ。良
いプレゼンをすれば、声をかけるのもは
ばかられる程の大御所や、論文を読ん
で名前ならよく知っているという同業者
も含めて、多くの聴衆に自分の研究内
容をアピールできる。うまくいけば議論
を通して新たな知り合いもできる。
今から10年ほど前に、フランスの有
名な研究者であるイボン・ルマオー博
士が、国立極地研究所に長期間滞在
した。内藤先生をはじめとした先人達の
それまでの苦労が実を結び、日本製デ
ータロガーを使った研究成果が、日本
人を第一著者とした論文としてポツポツ
と国際誌に掲載されるようになった頃の
話である。内藤先生が「我々に足りない
のは何だ?」と尋ねたところ、ルマオー
博士は「ロガー開発も研究成果も世界
最先端じゃないか」と社交辞令を述べ
た。「それにしては、国際舞台で日本の
グループの存在感が無さ過ぎるではな
いか」と内藤先生が食い下がると、よう
や く 彼 は 「 日 本 人 は international
communication が足りない」と本音を語
ってくれた。残念ながらこの指摘はいま
だに我々の耳に痛い。
2003 年に日本で第 1 回大会が開催さ
れて以来、計 3 回の国際バイオロギン
グシンポジウムすべてに私は参加して
きた。毎回日本人の 参加者は多い。
「日本人学生が多いねえ」という感想を
私に漏らした欧米人参加者もいた。そ
れにも関わらずこの分野における日本
人の存在感はまだまだ薄い。日本人の
研究内容のレベルが高いことを知って
いるだけに、この状況が残念でならな
い。
どうしたら国際舞台で人々から認知し
てもらえるのだろう。良い研究成果をあ
げる事が重要なのは言うまでもない。今
回のシンポジウムでイギリスの Christian
Rutz の口頭発表を聞いた。前回 2005
年に Biologging II が開催された時点で、
私は彼を認知していなかった。その後、
彼は自作の小型カメラをカラスに搭載
し、鳥の道具使用に関する研究を成し
遂げた(Rutz et al. 2007 Science)。「カラ
スも賢いけど、君も相当賢いねえ」と感
じられるプレゼンであった。周りの人々も
同様の感想を抱いたようだ。できる人は、
淡々と話すだけでも人々に強い印象を
残す。
日本人の発表にもすばらしいものがい
くつかあった。たとえば、本ニュースレタ
ーでエソグラファーの使い方について連
載している北海道大学の坂本健太郎さ
んの口頭発表もすばらしかった。発表
が終わったときだけでなく、質疑応答が
終わってから再び大きな拍手がわき上
がったのは、坂本さんの発表だけであっ
た。発表終了後に大御所からオファー
が数件舞い込んでいた事から見ても、
インパクトが大きかった事は確かだ。
一方、私は口頭発表後の質疑応答
に苦しんだ。言葉の壁はやっぱり高い。
Chris の様なクイーンズイングリッシュは、
どう考えても無理だ。そんな中で、言葉
のハンディキャップを補ってあまりあるパ
フォーマンスを口頭発表の場で披露し
て、人々の度肝を抜いたのは、我らが
内藤靖彦先生であった。その内容をこ
こに書き記す訳にはいかないが、「ああ、
この場でこんな事ができるからこそ、こ
の人は“生きる伝説”に成り得たのだな
あ」と感じ、青木功の逸話を思い出した
次第である。
いつの日か、日本の若者達が内藤先
生をも唖然と させるパ フォーマンスを
次々と繰り広げ、国際舞台における確
固たる存在感を勝ち取る日が来るのを
願っている。
第3回国際バイオロギングシンポジウム
2008 年 9 月 16 日
鈴木 一平 (東京大学海洋研究所)
こんにちは、はじめまして!東京大学海洋研究所・宮崎研
究室所属の鈴木一平(修士課程2年)です。今回は、9月1日
から5日にかけてアメリカのカリフォルニア州モントレー湾に面し
たパシフィック・グローブで開催された第3回国際バイオロギン
グシンポジウム(http://biologging.wordpress.com/)について紹
-3-
介したいと思います。
今回の学会では20カ国以上の国から200人を超える参加
者が集まりました。その内容はポスター発表と口頭発表の2つ
に大きく分けられ、ポスター発表は初日と2日目の夜に夕飯を
済ませてから始まり、飲み物を片手に交友を深めながら研究
内容について話し合うものでした。
ナーパーティーが催され、魚たちに囲まれながらの夕飯という
珍しい体験をすることも出来ました。
ポスター発表会場の様子.右より B・ブロック博士、宮崎信之
教授、河津静花さん.
口頭発表は、今回多くの参加者が滞在していたアシロマ・コ
ンフェレンス・グラウンズ(Asilomar Conference Grounds)という
カリフォルニア州立公園の中にある施設の1つの教会を借りて
初日から最終日まで行われました。
口頭発表の行われた会場の様子.
今回私は口頭発表に参加させていただき、『加速度データロ
ガーを用いた海棲動物の水中摂餌行動の新探知法』というタイトル
で、ノルウェーのトロムソ大学で行ったズキンアザラシの顎に加
速度データロガーを装着して物を食べる際の顎の動きから摂
餌行動を探知するという共同研究について発表を行いました。
初めての国際学会で、初めての英語での発表とすごく緊張し
てしまい、発表中の声も震えながらのものとなってしまいました
が、練習の甲斐あり何とか制限時間内に終わらせることができ
てほっとしました。発表の後には興味を持ってくれた方々から
声を掛けてもらい、今後のこの手法を用いた研究の展望に期
待が持てそうでした。
学会の4日目の夜には、閉館後のモントレー水族館でディ
-4-
モントレー水族館でディナーパーティーの様子.
夕飯の後には、この分野で多大なる功績をあげていらした
内藤靖彦教授への表彰状の授与式がありました。また、内藤
靖彦教授、宮崎信之教授から今回の主催者バーバラ・ブロッ
ク博士(Dr. Barbara Block, Stanford University)とダニエル・
コスタ博士(Dr. Daniel Costa, University of California at
Santa Cruz)にダルマ人形が贈呈され、今回の学会の成功を
記念してダルマに片方の目を書き入れ、もう一方の目にはバ
イオロギング・サイエンスの更なる発展を祈願し、それが達成
されるように皆でこれからも頑張りましょう!というセレモニーも
行われました。その場で、次回の第4回国際バイオロギングシ
ンポジウムに関する告知もありましたので、下記をご参照下さ
い。
今回の学会を通して、バイオロギングという分野がいかに国
際的な分野で、どれだけ多くの人たちが動物の生態、行動、
生理学を解明するためにバイオロギングを用いているのかとい
うことを知ることができたと思います。ダルマのもう一方の目を
書き入れるため、私の研究も今後のバイオロギングの発展の
役に立てるよう頑張りたいと思いました。
以上で今回参加した第3回国際バイオロギングシンポジウ
ムに関した学会報告は終わりにしたいと思います。最後までお
読みいただきありがとうございました。
***ニュース!!***先ほど紹介した次回の国際バ
イオロギングシンポジウムについてです。まだ詳細については
決まっていませんが、まず確定事項として、次回の第4回国際
バイオロギングシンポジウムの開催地はオーストラリアに決定し
ました!
開催される年は2011年の予定だそうです。オーストラリアは
日本との時差が1時間なので、私たち日本人の体にはカリフォ
ルニアの-16時間よりも適応しやすそうですね!
保存版!
保存版!
連載
Ethographer を使ったバイオロギング解析
坂本 健太郎 (北大院獣医)
第5回 加速度データ
加速度データの
データの解析・
解析・角度と
角度と動き1
動物の体の加速度は、
行動に伴う動きを微細に
計測したデータで、得られる情報は多いですが、データは複雑
で解析していくのは難しいです。今回から数回にわたってデー
タロガーで記録された加速度データの解析について紹介しま
す。(ここではリトルレオナルド社の加速度ロガーを想定してい
ます。)
(1)加速度データ
加速度データの
データの問題点
現在、データロガーによって深度、温度、画像など様々なパ
ラメータが測定されるようになりましたが、その中でも加速度デ
ータは取扱いが最も厄介な物の一つであるように思います。
私が思う問題点を挙げます。
(A)データロガーが記録するのは相対値だけである。
(B)記録された加速度は、(通常)データ量が多い(数百万デ
ータ位になる)。
(C)データが何を意味しているのか、わかりづらい。
しかし、せっかく動物の加速度が測定できるようになったの
ですから、これを研究に使わない手はありません。
単位に
( 2) 加速度データロガー
単位に変換
加速度データロガーで
データロガー で測定された
測定 された値
された値 を[m/s2]単位
する。
する。
地球には重力が働いているため静止した物体には常に下方
向に 1G(≒9.8m/s2)が働いています。重力を利用して加速度
データロガーの値を[m/s2]に変換します。加速度データロガー
に電源を入れ、Fig.1 のようにロガーを上下方向に向けます。
それぞれの時刻に、上方向、下方向に 1G の加速度がかかり、
それがカウント値をして記録されます(Fig1)。±1G に相当する
カウント値を覚えておきます。
Ethographer を起動します。加速度データは YG、XG という
名前で読み込まれます(Raw Data → Load Logger Data)。メ
ニ ュ ー か ら 「 Ethographer 」 → 「 Raw Data 」 → 「 Acceleration
Transform」を選びます(Fig.2)。加速度データを Wave に選び
ます(図では YG)。±1G に相当する値を「9.8m/s2」「-9.8m/s2」
に入力します(図では 1455 と 2366)。変換後のデータの名前を
Output Wave に入力します(図では Surge)。OK ボタンを押しま
す。
(3)加速度を
加速度を成分ごとに
成分ごとに分離
ごとに分離する
分離する方法
する方法
動物に装着されたデータロガーが記録する加速度は、3種
類あります。一つは、重力加速度由来の加速度。これは、デ
ータロガーの角度に依存しています(取り付けられた動物の角
度)。動物が上(90 度)を向いていれば 9.8 m/s2、下(-90 度)を
向いていれば-9.8 m/s2、動物が上 30 度を向いていれば 9.8 x
sin(30) = 4.9 m/s2 といった具合です。二つ目が、直線方向の
動きに由来する加速度。3つ目が遠心力に由来する加速度
です。これら3つの加速度が加算されたものがデータロガーに
記録されています。私の現段階の理解では、加速度データだ
けから、これら3つの成分を厳密に分離することは出来ません。
ここでは、以下の二つを仮定して、重力由来加速度と直線方
向の動き由来加速度を分離する方法を紹介します。
<仮定1>動物は遠心力が大きく作用する動きをしない(激し
い円運動のような動きをしない)。
<仮定2>直線方向の動きの激しさに比べて、姿勢(角度)を
変える速度はずっとゆっくりしている。
大ざっぱにいえば、早い加速度の変化は直線方向の動き由
来の加速度と解釈し、ゆっくりとした加速度変化は動物の姿勢
由来の加速度と考えます。厳密にいえば正確な方法ではない
ですが、生物学的な意味という点では、当たらずとも遠からず
といったところではないかと思います。
(4)加速度データ
加速度データの
データの性状を
性状を調べる。
べる。
動き由来の加速度と姿勢由来の加速度を分離するために、
-5-
加速度データの性状を調べます。魚の鰭や鳥の羽ばたきの動
きを加速度データから分離して、それらの動きよりもゆっくりし
た動きを姿勢に由来するデータと考えます。
Ethographer のメニューから「Graph」を選択します。「Graph
View」パネルが出てくるので、Wave1 に目的の加速度データを
選択します。「Graph View」パネルから「Spectrum Analysis」を
選んでください。「Spectrum Analysis」パネルが出てきます
(Fig.3)。
緑の帯が見えます。これは、何らかの周期的な運動を表して
いると考えられます。逆に、1秒より大きな周期のシグナルは
ほとんどありません。そこで、1秒周期よりも小さい周期の周期
的なシグナルを動き由来の加速度、それよりも大きい周期の
シグナルを姿勢(角度)由来の加速度と考えることにします(ち
ょっと主観的ですが・・・)。
「Spectrum Analysis」パネルの「Close Windows」を押して、
グラフを消します。
ウェーブレット変換についての本では、「ウェーブレット入門
―数学的道具の物語」(BB ハバード著、山田道夫・西野操
訳、朝倉書店)が分かりやすかったです。一番最初に読む本
として、お勧めです。
続く
パネルの一番上の「Wave」のところで目的の Wave を選択して
ください(今回は Surge)。MinScale はなるべく小さい値(ここに
0を入力すると、入力できる最小値になります)。MaxScale は、
例えば、5sec を入力します(動物が直線方向での加速運動を
連続的に行う時間よりも長い時間)。Data_Browser(時系列デ
ータが表示されているウィンドウ)の下に○と□印が表示されて
いるので、これで解析を行う時間帯をはさんでください(Fig3)。
挟んだ後に、「Spectrum Analysis」パネルの「Set Time」ボタン
を押します(最初は 10 分間くらいの短い時間にしてください)。
ここまでの設定ができたら、「Spectrum」ボタンを押します。
(morlet ウェーブレットを用いた連続ウェーブレット変換をしてい
ます)。
出力された結果が Fig.4 です(ヨーロッパヒメウが潜水してい
るときのデータです)。
Fig.4 で表されているのは、周期的なシグナルが毎時間ごとに
どのくらい存在しているかという情報です。縦軸が周期を表し、
横軸は時刻です。シグナルが強ければ赤や黄色になり、紫色
はシグナルが弱いことを示します。動物の体の動きというのは、
歩く、羽ばたく、泳ぐなど、どれも同じ動きを周期的に繰り返し
ています。従って周期的な運動を表す周期の範囲のデータが、
動物の体の動き由来の加速度であると考えてもよさそうです。
Fig.4 の場合だと、0.2~0.7 秒周期くらいの範囲で斜めに走る
by S.K.
編集後記 先月号の答えは 3.サメにかじられた痕でした。大槌川
-6にはちらほら鮭の姿が。すっかり秋です。(酒)
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