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AHP にお ける丿ー

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AHP にお ける丿ー
論
説
AHP
における順位逆転について
井
白
定者が答えなければならない「どちらがどの
1 . はじめに
オ ベレーションズ ,リサーチ (OR) の研究
で著名であ ったサーティ (T.Saaty) によって
1970 年代に創始された AnalyticHe 田 rch),Pro(階層分析法,階層化意思決定法,階層的
cesS
意思決定法などと 訳されるが,定訳はない. 日
本でもしばしば AHP
功
と呼ばれるので ,小論で
くらい重要か」という 質問は, ( 多層,性 @ 効
用理論において 確率同値 (probability
equ 血 alence),
確実性同値 (certainty
equ Ⅳ alenCe), 価値中点
(㎞ dValue point
Ⅰ
などを顕ボするための 質問に較べ,意味が暖
昧 であ る.
3. 一対比較の結果として 得られる 屯 要さの程
もそのように 呼ぶ ) は 1,, その利用がますます
盛んになるとともに ", OR や意思決定論の 教
度に対して, 1
神書にも登場するようになって㍊ , O)R あ るい
重要であ る」ということが , 固有値 法 により
は最適意思決定の 一手法としての 市民権 を獲得
したようであ る. しかし創始直後か C,指摘され
要素の重要度を 求める過程より 明らかなよう
に, 3 ( 5, 7, 9) 倍 重要であ る」とい
うことを意味する・それにも 杓 わらず,上述
てきた AHP
の短所が改善されたわけではなく
一
9 という数値を 当てはめる
ことは,「やや (かなり,非常に,絶対的に)
「
短所は依然として 短所のままであ ると思われる
の 数値を当てはめる 納得的な根拠が 示されて
lJなさ直後から 指摘されてきた AHP の短所の
中,主要なものは次の 4 点であ る。).
1 . ( 多属 , 掛 効用理論の公理系が 経.
験的 テス
いない.
倉
ト可能な合理的行動の 叙述から成り ,
その 分
4. あ る代替案に特性したがって 一対 上ヒ 較の結
果が類似する 代替 案 (すべての一対比較結果
が 完全に - 致する代替案は コピ Ⅰ完全に一
理系より,意思決定の 基準となる期待効用関
致するわけではないが ,類似している代替案
数
はニアー・コピーと 呼ばれる・以下, まとめ
( および加法的多属性効用関数
れるのに対し。・, AHP
が導出さ
の公理系はテストーロⅠ
能 な行動を叙述するものではなく
れより AHP
)
,
また, そ
による意思決定の 基準であ
る上ヒ
てコピーと呼ぶ・
これに対し コビーもとの
代替案はオリジナルと 呼ばれる
)
を迫加する
と ,追加前と順位が逆転することがあ
り得る
率 尺度および合成重要度が 導出されるわけで
もない.比率尺度と合成重要度の 存在はプリ
). また
最適案になりそうにない 代替 案 (すなわち無
ミティブに仮定されており ,公理系の本質は
構造分析的で 定義的なものに 過ぎない.
関係代替 案 ) を迫加したり 削除したりすると
上位に順Ⅰ目汁けられた 代替案の順位が 逆転す
2. 評価基準および 代替案にれらはしばしば
ることがあ り得る. どちらの場合も 順位逆転
要素と総称される
)
の一対比較のどき 意思 決
( コピーを削除する
場合も同様であ
る
が起これば,最適案が変わってしまうことが
2 (84)
横浜経営研究
あ るので, AHP
による 順
立 ィ寸けは懇意
Ⅰ
白
りで
第㎜巻
第 2 号 (1997)
に 優れているのであ るが,残された他の候補地
あ る. また後者による 順位逆転のため ,
に較べると優れている 点が少なく,最適な候補
は「無関係代替案からの 独立,性 (independence of irrelevant alternatives, 以下で
は IIA と略記する ) 」を満たさないことにな
地にはなりそうにないと
AHP
る 6).
如上の AHP
の短所の中で 最大なものは ,そ
思われるので ,
いわゆ
る無関係代替 実 であ る.
評価基準としては ,①労働者の質と量,製品
輸送の便,営業の 便,建設コストなどから 構成
される経済的要因,②原材料,電気,
ガス,水
の順位付けの 恐 竜 ,性が指摘されている第 4 点で
などの供給の 便,設備のメンテナンスの便 ,敷
あ ろう. この点をめぐって AHP
ような順位逆転は 当然のことであ り, むしろ望
地の広さなどから 構成される技術的要因,③ 生
活費 ,買い物の便,公共サービス
,文化・娯楽
のサービス,子どもの教育の便などから 構成さ
ましいとしているのに 対して,後者は順 ィ立ィす け
れる社会的要因,④気候,風水害,大規模地震
が科学的であ るためには順位逆転は 許されるこ
とではないとし ( むしろ前者ではなく 後者が )
順位逆転を阻止する 方法を提案している 7).
小論では, Ⅱ章で順位逆転の 例を示し m 章
の可能性などから 構成される自然的要因の
の唱道者・ 擁
護 者と反対者の 間で論争が行われ ,前者はその
で順位逆転の 擁護論とそれに 対する私見を 述べ ,
Ⅳ章で AHP
の公理系について 検討し
結論を述べることによって
V 章で
,順位逆転をめぐる
論争における 両者の主張を 検討する.
Ⅱ. AHP
における順位逆転の 例
4
つ
とすることになった
まず,一対比較の手間を省くために ,無関係
代替 案 E を既に候補地から 外した数多くの 候補
地と同様に候補地から 外し代替案は A, B,
C, D の 4 つであ るとして,それらの 中から最
適案を選ぶことにしたとしよう. AHP の 刊 ll
頁
に従って各評価基準間,および各評価基準につ
工場 m 抽選定問題 ] あ る企業では主力
製品を生産している 工場が手狭になり ,設備も
やや旧式化したので ,最新鋭工場を建設するこ
いて各代替 案 間で一対立 較を行った結果,一対
比較表 1 および 2 が得られたとすると ,各要素
の 重要度および各代替案の合成重要度は 表 3 の
ようになるので 8,, 最適案は C であ る・
さて上記の代替案の 中, A と B は各評価基
準に関する重要度や 合成重要度が 近似している
ので,一方は他方のコピーと 判断されたとしよ
う. AHP の方法論によればコピーは 代替案の
とになり,数多くの候補地をリスト・アップし
て,慎重に検討した 結果, A (東北地方 p 市 ),
集合から削除されなければならないので ,合成
重要度が小さかった B の方が, それが大きか
市 ), C (関東地方, 市 ), D
( 中部地方 5 市 ), E ( 四国地方上市 ) の 5 カ所
が有力候補地として 残った. これらの候補地は
それぞれ優れた 点を持ち,優劣を容易に付けが
った A の コピ 一であ るとして, B を削除し
ヒ
本章では AHP における順位逆転の 例を,万
恨 [37] の半導体工場用地選定問題を 若干変更
した次の例題で 示そ う .
[例題 :
B
(東北地方 q
たいので, AHP
によって最適地を 決定するこ
とになった, なお,上記の 5 カ所の中, A
と
B
は同県内にあ り,多くの点で類似,性が見られる
が, いまのところコピーかどうか
不明であ る.
また E は外された多くの 候補 他 よりは明らか
表 1
Ⅰ
経済的要因
技術的要因
社会的要因
評価基準の一対比較表
技術的
社会的
自然的
要
要
要
因
2
因
5
4
因
7
6
3
AHP
における順位逆転について
表2
a.
c.
3
A@
1@
B
2@
7
@ワ
7
C
2@ 1/6@ 1/7@
1/7@ 1/8
l/3
5D
表3
言ャ三
Ⅰ
要素
D
C
1
B
C
1/5
1/4
J
3
4
A@
7
C
B
C
1@
5@
B
5
D
9
9
5
評価基準および 代替案の重要度
社会的
要因
自然的
要因
重要度
合成
. 509
0.373
0.373
0.205
0 Ⅲ 49
0.327
0.073
0.048
0.11l
0.154
0.176
0.61
0.059
0.053
0.424
0.424
0.114
0 よ 53
0 ユ 48
C
D
Ⅰ
百日
0
表4
0 . 305
0.574
代替案の重要度
評価
基準要因
経済的
案
B
技術的
要因
B
ヲ己
A@
d. 自然的要因
社会的要因
基準要因
5り
評価基準
A
Ⅱ
(85) 3
面
ポ蚤
代-%日
功)
代替 案 A, B, C, D 間の一対立 ヒ較表
b. 技術的要因
経済的要因
(白井
技術的
要因
,A
0.;192
0
C
0 333
D
O.G75
0.293
0.640
・
・
067
Ⅰ
0 038
・
0,278
0.221
( コピー削除後 )
社会的
要因
自然的
要因
合
成
重要度
0. 188
0.735
0
0.731
0.081
0 よ 07
0 357
0.058
0 260
・
383
・
・
A, C, D の 3 代替案の中から 最適案を選択す
まうことになる. これらが コピ 一の追加・削除
ることになったしよう. 各 吉平価基準間および 各
によ る順位逆転であ る
代替案問の一対比較は B 削除前のそれを 変更
すべきではないので ,表2 の B に関する部分
さて, 代替 案 E は最適案になりそ
う
もな い
無関係代替 案 と考えられ,一対比較の手間を省
を 除いた 一 村上ヒ較結果に基づいて 各代替 案 の 重
くために代替案の 集合から排除されたのであ
要 度を求めると ,表4 のようになり ,最適案は
が, 例えば, AHP
A となる, 代替 案 B を削除する前の 最適案は
っている当該企業の 重役の 1 人が,手間のかか
C であ ったが, コピー B を削除すると C
ることを厭わず E を代替案の集合に 入れるこ
の 順位が逆転し
と
A
最適案は A となってしまう
上 とは逆に, A, C, D の 3 代替案について
順
Ⅰ
立 付けを行った
後に , A のコピ @ B が追加
に
よ
る順位付けの 特質を知
とを主張したとしょう. AHP に よ る順位付け
が 多くの人を納得させる 科学的なものであ るた
めには, このような主張に 対しても門戸を 開い
されたとしたときの 結果が表 3 であ るので, コ
ておかなければならない・
ピ ー が追加されたとき ,
を
コピ一の順位は 3 位 と
なって, コピー追加双のオリジナルの
川副立
の 直近に順位付けられるわけではなく
,
1 位
しかも
オリジナルの 順位がⅠ位から 2 位に変化してし
る
そこで,代替案 E
追加し, A, C, D, E の中から最適業を 選
ぶことになったとしよう ,評価基準間の一六す上ヒ
較 ,代替案 A, C, D 間の一対比較は 従前 通
とし代替 案 E と他の代替 案 との一対比較の
4@ (86)
横浜経営研究
表5
a,
/
A@
代替 実 の一対比較表
2@
C
D
E
7@
4
5
3
J
A
C
1/;3
D
D
C
1/6
Ⅰ
c.
/7 1/3
A
4
C
5
D
D
代替 案 の主要 度
D
1/5
3
(無関係代替
技術的
社会的
要
要
E
因
J
3
A@
7
1
C
0.076
0 .118
D
0 . 058
E
0 131
5@
9@
5
5
2
D
1/3
D
因
0 .106
0 .051
0 .289
C
自然的
合 成
要
0 . 554
0 . 306
A
案 追加 役 )
0 .640
0.194
0 505
C
・
d. 自然的要因
0.191
0.657
0.076
A
・
案 追加 役 )
7
要
因
号 (1997)
C
経済的
因
2
社会的要因
/
E
1/3
表6
第
(無関係代替
b, 技術白9 要因
経済的要因
C
第㏍巻
重要度
0.329
0,333
0.222
0.116
0 048
・
結果,表5 を得たとすると ,各要素の重要度 は
関係代替 実 の追加・削除に 関して納得的な 指針
表
がな い ので, AHP
6
のようになるので ,最適案はC であ り, E
の 順位は
E
る
(事前に予想された
通り ) 最下位であ
を追加する前の 代替 案 A, C, D の中の
に
よ
る順位付けは 盗意 的で
あ ると批判されるのであ る・例えば, ダイヤー
[5] は次のように 述べる・ 「真の問題は 順位 逆
最適案は A であ ったが,最適案になりそうに
転 現象それ自体ではない.
な い 無関係代替 案 E を追加すると ,
(追加後に
持つもっとずっと 深刻な問題の 一つの症状であ
A と C の @ll
頁
る : その方法論によって 与えられる順位付けは
おいて ) ともに E より上位であ
る
が
窓 意向りであ る・」 (p.252)
位 が逆転してしまう
ここで, A,
順位逆転は AHP
C, D, E の 4 代替 案 間での @ll
頁
位付けを行った 後に,前述の重役とは別の 重役
が 最下位となった 代替 案 E を, AHP
による 順
位付けに入る 前に切り捨てた 他の多くの候補地
と 同様に,代替案の集合から削除する
よう に 主
m. 順位逆転の擁護論について
1 . 順位逆転の擁護論
前章で述べた AHP
の順位逆転現象に 対する
批判に対して , AHP
の唱道者・擁護者はさま
張 したとしたらどうであ ろうか. この主張に対
しても門戸を 開いて, E を削除し A, C, D
次のように言うことができであ
の間で川副 立ィすけを行ったとすると , その結果が
は 人々は新情報を 獲得して新しいことを 学んだ
表
とき,以前の選好を常に保持するわけではなく
4
であ るので,無関係代替案を削除したとき
も ,追加したときと 同様に順位逆転が
とになる.
したがって AHP
当然にしばしば 逆転させる. AHP
は IIA を満たさな
ト般 的には最適意思決定における
追加・削除は ,
以上, コピーあ るいは無関係代替案の 追加・
の順位付けが 逆転する例を
示した. この ょう な順位逆転は 頻発し
後述するように , AHP
ろう
起こるこ
い のであ る
削除にょり, AHP
ざまに擁護論を 展開する.それを要約すれば,
かっ ,
にはコピーあ るいは 無
:
実生活で
における
)
代替 実 の
このような選好の 逆転をもたら
す 新情報の獲得の 一 形態であ り, より具体的に
言えば,それは 数理計画法の 感度分析における
決定変数の追加・ 削除, あ るいは べイ ジァンの
意 ,思 決定における 追加,情報の獲得と同様の 当然
,
AHP
の 結果をもたらす・
における順位逆転について
ここに当然の 結果とは,数
(白井
功)
(87) 5
保持しなければならないと
思っているのかもしれ
理計画法において 変数の追加・ 削除が行われた
ない・彼らは 真実は人間がつくったもので
とき, あ るいは べイ ジァンの意思決定において
的に変えることができ ,代替案問のわれわれが知
追加情報の獲得が 行われたとき ,最適解 あ るい
っている関係は 一時的なものであ り,新情報の獲
は最適案が変化しうるということであ
得とともに変化しうることを
ことと同様に , AHP
削除が行われれば ,
変化し
ぅる
る. この
において代替 実 の追加・
それに よ る最適案も当然に
・なお,コピ 一の追加によってその
オリジナルの 順位が下がるのは ,
コピ一の追加
,基本
信じないのかもしれ
ない.
順位逆転は伝統
る
あ
しかし
白
りな測定理論が 仮定するもので
AHP
は順位逆転が 実際に起こり ,
受け入れられるべきことを
明らかにした.実生活
によって同種のものが 豊富になり,その稀少性
では人々は以双の 選好を逆転させる 新しいことを
が減少するからであ
学び , このことが整合性の 条件下でも順位逆転に
り, これも当然のことであ
る・以上のように ,ある代替 実 の 選 貯は他のす
導き
投資機会 A
ャ
と
B があ り, 4 期にわたり異なった キ
,シュ・フローをもたらすものとする.0 時点、
を非難することはできな
における 純 現在価値は A の万が B より大きいが ,
が基本的と考えることが 効
B を選ぶと, 第 1 期には A を選ぶより大きい キャ
るからであ
,シュ・フローが 得られると仮定する. 現在価値
法 によれは A の方が B より選好される.
さて,如上の擁護論はサーティニヴァーガス
= ヴァーガス
[25], [26], [27],
3 の投資機会 C があ り, 第 2,
ハ一 カー
[9] の主張を要約したものであ
ここで, その主張をそれらから 引用するこ
とによって評しく 見てみよう.
サーティ = ヴァーガス
ャソ
3.
しかし第
4 期おいて キ
シュ・フローを 必要とするとする. もし C に
投資したいならば , B の方が A より選好されるべ
きことは明らかであ る. ここに A
と
B の選択は C
によって影響され ,順位逆転が起こる・
(p.515)
[28] は「順位逆転の
正当,性 」と題する論文であ る.彼はその中で次
のように述べる
つ
しかしそう
る・
[28], サーティ
百ノ
の
の
@Ⅰ
と
る
で
あ
るが,
用理論では無視されていることがあ
る・
当
はこの認識に 基づいて,
IT,A の不成立を認めるのであ
い. なぜなら AHP
正
カ
の公理の一つの 期待に関
(期待公理 )
だからといって AHP
転る
する公理
位挙
傾る
ないのであ る. AHP
るのであ る 91. (p.515)
て次
して
ない. したがって無関係代替案からも 独立では
レ︶
案はその重要度の 決定において 互いに独立では
そし
べての代替案から 影響を受け, この意味で代替
ぅ
なお上のサーティ = ヴァーガスの 引用の中に
あ るルース
:
ヴァーガス
と
レイファ一の 本 とは, ハ一 カーニ
[9] の同趣旨の叙述 (p.1400) か
Jll
は位 逆転は良いことであ りうると指摘することが
ら考えて, ルース
重要であ る, それは新しくかつ 重要な 属 ,性が以前
分を指すと思われる
ニ
レイプ了一
[16] の次の部
の選 好 ないかに変えうるかであ る. そのような思
考方法を禁ずる 自然界の法則はない ,
ルース
と
レ
あ る紳士が初めて 行った町のまあ まあ のレストラ
イファ一による 有名な本はこの 点を目立たせる.
ンに入り,給仕から 焼いた 鮭 2.5 ドル か ,
仲略 ]
4.0 ドルが出せると 聞いた.彼は第一級のレストラ
ステーキ
@llR
位の冷厳な保存の 上- に打ち立, てられた現存の
ンではステーキを 注文するが, 知らない環境と 異
"万法に慣れている 人々は真実は 絶対であ り, いか
なる価格を考えて ,鮭を選んだ.
その直後,給仕
その 間 - 性を
が調理場より 戻り, カタ ツムり のフライと蛙の 足
なる新 滝報 が利用可能となっても ,
6 (88)
横浜経営研究
第㎜巻
第
2
号 (1997)
の フライもそれぞれ 4.5 ドルで出せると 伝えた. そ
AHP
の紳士はそのどちらも 大嫌いで, それらより鮭の
とべ
方が好きであ るが,彼は「素晴らしい・ 注文をス
イジァンの理論は 以前の結果からの 情報を包含す
テーキに変更する」
ることによって ,予測を改める際に統計学の 公理
と言った. 彼は経験から 満足
できるレストランだけが
カタツムリと 蛙の足を出
せる傾向にあ ることを知っていたので ,
まずいス
テーキの危険は 少ないと考えてステーキに 変更し
た・
との関係は統計学の 古典的な頻度論的方法
イ
ジァンの理論との 関係に類似している. ベ
を破る. これは学習の 過程であ る.学習と意思決
定 が統合されるとき ,効用理論の静 りな基本公理
白
に疑問がもたれる.
仲附
コ一 ビン・マーリ
ィ
[3] は順位逆転の 効用理論の例を 挙げる.小さな
(p.288)
町の夫人が帽子を 買いたいと思っている. W の 唯
[25] では代替 実 の追加・削除は 線
形計画法における 変数の追加・ 削除と同様であ
一つの帽子 居 に人り , 二つの帽子 A
るとして,次のように述べられている
いと考えた. しかし店員が B と同じ第 3 の帽子を
サーティ
:
と
B を見つけ,
同じくらい気に 入ったので,同様に等しく買いた
見つけ出したとすると ,夫人は当然 A を選択する
[相対的測定においては
]
のすべての代替案によって
あ る代替 実 の 選貯 は 他
(B を買えば, 自分のと全く 同じ帽子をかぶった 誰
決定される. この意味
かに会う危険があ る ). 効用理論はこの 逆説に対し
沖 ㍼そ
で代替案はその 重要度の決定において 互いに独立
て明確な分析上の 解答を持っていない・
ではない.
この代替 案 間の依存,性は ,存在する代
のような例のゆえに , あ る手続きが順位を 保存す
替案の数に依存している 評価基準の重要度の 評価
るか否かかだけの 理由から,その手続きをあ らゆ
のし直しと解釈される.換言すれば,相対的測定
る 決定問題に用いることはできない・
(pp.37-38)
におけるあ る代替案の存在あ るいは不在は , その
的情報をもたらす. この情報は,線形計画法にお
このサーティの 主張の中の帽子店の 夫人の例
は迫加情報によって 意思決定が変化する 例であ
ける変数の追加あ るいは削除と 同様に,決定問題
るが,第3 の帽子は帽子 B の コピ 一であ るの
の 構造の変化から 発生する. 新しい最適は 最初か
で ,それはコピ 一の追加によってそのオリジナ
ら計算されなければならず
代替案の他の 代替案に関する 優越。性に関して追加
的に異なる 旧 基準と比較されるのではなく
,新情
ルの選択順位が 下落する例でもあ る・サーティ
頁
[25] は コピ 一の追加によってオリジナルの Jll
位 が下落する理由について , AHP における 重
要 度の正規化の 手続きとの関連において ,次の
報に基づいて 評価し直すことによってその
基準の
ように述べるにこで , AHP
,
いく っ かの変数につ
いては,以前の最適とは通常は 一致しない・
決定
問題における 新情報は構造的な 基準一これは 基本
重要度の上の 変換として働く 一によって表現され
る・
(p.264)
における重要度
の正規化の手続きとは ,各代替案の合成重要度
の算出に用いる 要素 すめ 重要度 ひ ; としては,
その和が 1 になる よう に
サーティ
[26」では, AHP
とべ
イ
ジァン理
論との類似性が 次のように述べられている
(*)
刃 '-fWi 二 l
:
叫が,すなわち一対比較行列
と正規化された
理論と実践を 結びつけることは 重要なことであ る
から固有値 法
が,
られた要素 ゲの重要度をⅤi としたとき
しばしば困難なことであ る.我々はすべての
状況で厳密に 従
う
べき決定理論の 公理を定めるこ
とと,意思決定の過程で学習し 改めることとを 区
別する必要があ る, 効用理論の順位保存の 公理と
(あ
Ⅶ
るいは累乗根 法 ) によって 得
二
W/ ニニ Ⅰ叫
を満たす 側 ;を用いるということであ
る)
AHP
における順位逆転について
(臼井
功)
89)@ 7
正規化は果物の 赤さのような 代替案の中に 存在す
あ る州には保守主義者が 60%,
自由主義者が 40%
る評価基準の 稀少性と豊富さの 概念にも関連する.
い る.保守主義の候補者が 1 人, 自由主義の候補
赤 ' 、 果物が多すぎるとき ,赤さは個々の果物を区
者が 1 人のときは,結果は前者に有利であ る. 第
別するのに余計なもので ,重要でなくなる.逆に
3 の人気が
赤さがひくつかの 果物に集中的に 現れ , 他の果物
保守主義者の 投票が割れ, 自由主義の候補者が 勝
には現れないとき , 赤さは稀少で , 果物間の意思
っ, (p.443)
よ
しない保守主義の 候補者が現れると ,
決定の際の区別の 基準となりうる. したがって代
替案の優越,性が 大きければ大きいほど ,各々に配
また,
ハ
一カ一二
ヴァーガス
[9] は AHP
分される評価基準の 重要度は小さくなる , 逆に,
の公理系は効用理論のそれとは
大いに異なり ,
代替案の優越性が 最小。 したがってすべての 代替
IIA を満たすことを 要求していないとして 次の
案が -- 様であ るとき, 各々に割り当てられる 評価
ように述べる :
基準の重要度の 割合は大きくなる. か 。 して代替
案問に大きな 差異と優越性が 存在する評価基準は.
AHP
,
代替案問 に 相違がない。 すなわち一村上
析の部分集合, あ るいはその摂動と 見るべきでは
ヒ
敏行列に
を 多 属性効用理論のような
伝統的な決定分
1 が多い評価基準より ,稀少で,
したがって順位
ない. 決定分析 t 会における主な 論争は, AHP
の決定において 影響力を持つ.
が全く異なる 公理系に基づいていることを
豊富な評価基準は 各代替案に等しいあ るいはほ
不
認識し
ないことから 起こっている. 例えば. AHP
は無
とんど等しい 優先度を与えるので.順位の決定に
関係代替案への 依存性 (順位逆転 ) を示すという
対する寄与は 小さい. 評価基準について 合計さ
事実のために , ()R/MS
L
・
ォ
たとき順位の 決定に付してはとんど 影響しない
ねコンみならば,
ば 円トⅠ
5 円+ (.であ るので,
二ン
c
の方法を利用してこなかった.
は jll
日
序を逆転させないことを 思い出せ ). 他の代替 案 0
コ
最終順付の決定においてもはや
支配的でなくする・
る.
の期待公理- のこと一筆者 ] は AHP
すなわち AHP
基準の稀少の 問題を豊富の 問題に変化させ ,
においては,代替案の独立性
コ
る. このような議論の 方向は多属性効用理論の
公
理 と矛盾するので 妥当ではないと ,われるかもし
れない. しかし 多 属性効用理論は 等しく望ましい
代替案の究極的
順位に影響する. その ょう な順位逆転をもたらす
AHP
のに必要なコピー 数は・相対自りな 比較 値 次第で小
であ るという 婁実 ,
い かも知れないし
可能性を排除す
して仮定されない. あ るいは見なされないのであ
コビ 一の漠人はこれらの 代替案に関してはま ザ fm
さ
[後
は必要なことあ るいは非常に 望ましいこととは 決
沖略 ]
ビ ー 数を増加させることによって
述する AHP
しかし公理-4
が注意深く用いられたならばこの
ピ 一であ る代替案は決定力のあ る評価基準の 重
要 度を希薄にし
社会の多くの 人たちはこ
大きいかも知れ・ない
の基本的信条と. すなわち人々は 非整合的
ックでな
い
およびその非整合,性はアドホ
フォーマルな 方法で取扱われるべきで
したがって,AHP
コピ一の存在はあ らゆる代替 案とコビ 一の オリ、ジ
あ るという事実と 矛盾する.
ナル の相対的優越度を 減少させる. これは実世界
多 属性効用理論の 公理.から判断してはならず, 二
のより 真; 円であ りそうに 巴 われ。 帽子を購入する
つの -万法は異なっており ,
夫人の逆説のような 効用理論の逆説のいくつかを
考えるべきであ
ォ
取り扱うことを 可能とするかも 知れない・
る・
を
おそらく相互 -補完的と
り 140%
・
(p.265)
ヰ
@ム
@一
動サる
行,し
挙
あげ
め が て
入 る
夫
るで
店逆ぅ
る次
子位よ
帽順の
]
によ は
う にに
よ加
コテ
上ピィ
2. 擁護論の検討
以上,順位逆転に 関する AHP
護者の擁護論
の唱道者・擁
と ,順位逆転の 当然性を示すとし
て挙げられた 例をひくつか 引用した. ここでそ
8 (90
横浜経営研究
Ⅰ
第㎜巻
第 2 号 (1997)
の 擁護論と挙げられた 例について検討しよう・
が 下落してしまう 可能性があ る. このときコ
(1) 数理計画法との 類似性について
ピーもオリジナルとほぼ 同じ順位がつけられる
まず, AHP
ので,線形計画法におけるコピー 追加の場合の
において代替 実 の追加・削除が
順位逆転を起こすのは
ように,オリジナル とコピ 一の両者で
,数理計画法において 変
数の追加・削除が 最適解を変化させることと
合わせてコピー 追加前と同じ 順位を保持すると
いうことはできない. したがって コピ 一の追加
同
様なことであ るという主張について 検討しょう・
確かに,数理計画法においてもいったん 最適 解
に関しては, AHP
が得られた後に 変数の追加・ 削除が行われれば ,
また無関係代替 実 の追加・削除に 対 C するも
とは一般的にのみ 言えることであ って, コピー
のとして,新たに製品 "+
るいは無関係代替 実 の追加・削除という 特殊
な場合にも言えるかどうかについては
検討する
まず コピ 一の追加・削除について 検討しよう
笏
トル a, 什 1, 利益係数あ +1 を用いて,追加され
た変数のシンプレックス 基準 タ n+I を計算した
種類の生産要素を 用いてれ種類の 製
品を,生産要素の利用可能量の 制約の下に総利
益を最大にすべく 生産するための 線形計画問題
( いわゆる生産計画問題 ) において,製品ノに
利益係数と技術係数が 酷似した製品 ロダを生産す
ることにしたとしよう.
ところ,
戸沖
ならば, オリジナル とコピ 一の利益係数と 技術
係数は同じであ るから, コピー追加双のオリジ
一
la +l 一
れ
C 刀十
1%0
いうことを一つの 代替 案 と考えるならば , その
コピー追加後の オリ
代替案はまさに 無関係代替 案 と言えるのであ る
戸 "+1 く 0 のときは ェ "+1* ノ 0 となり,従来の
最適解は変化しうる. しかしこのとき ,新製品
導入という代替案を 無関係代替 案 と呼ぶことは
できないと思われる. したがって線形 画法は
IIA を満たしていると 言えるのであ る.
以上より, AHP における代替 実 の追加・削
除も線形計画法における 変数の追加・ 削除も最
適業ないし最適解を 変化させうるが ,それは一
般的にのみ言えることであ って, コピーおよび
石 *", コピ一のそれを
ボ " とすれば,
くⅠ 二巧 ㌢
CBR
ったとしよう. このとき従来の 最適基底は依
然として最適基底であ るので,従来の最適解は
変化せず,新製品の最適生産量 ェ "+1" 二 0 で
あ る, すなわち, 新製品 れ十 1 を導入すると
このとき追加される 製品目が完全な コピ 一であ る
、ジナルの最適生産量を
+l=
あ
コピ一の追加であ る.
ナルの最適生産量をヰ *,
1 の生産を検討し
たとしよう. このとき,既に得られている 最適
基底 B, その逆行列 B-l, B に対応する変数
の利益ベクトル c", 新製品れ土 1 の技術ベク
必、 要があ る.
い き,
と線形計画法では ,変数の
追加・削除の 効果は異なると 言うことができる
最適 解 が変化する可能性があ る. しかしこのこ
あ
(力を )
十あ
き十
が 成立する, したがって,
コピーが追加される
と, オリジナルの 生産量は下落するかも 知れな
いが, オリジナル とコピ 一の生産量を 合わせた
合計生産量によって ,
コピー追加双のオリジナ
ルの 生産量が保持できるのであ
る. この場合の
コピーはオリジナルの 完全な コピ 一であ るので,
オリジナル とコピ 一の区別はできないとすれば
コピーが追加されてもオリジナルの
,
最適解は不
変であ ると言ってもよいであ ろう.
これに対して ,
追加されると ,
AHP
の順位付けでコピーが
オリジナルの 合成重要度はコ
ピー追加双に 較べて減少してしまうので
,順位
無関係代替 実 の追加・削除に 限って言えば , こ
れらは AHP においては順位を 逆転させうるの
に対して,線形計画法では最適解を変化させな
い ので, AHP
における代替案の 追加・削除を
線形計画法における 変数の追加・ 削除と同一視
できないと言える.
AHP
佗 ) ベイジァン理論との 類似,性について
AHP
における代替 案 の追加・削除とべ
イ
ジ
における代替案の 追加・削除はべ イジァ
ン 理論における 追加,情報の獲得と類似している
ので,前者が
行われたとき 最適案が ,変わり
井
功)
(91)
9
ろ 異端であ り, この前提が成立しない 場合も少
ァン理論における 追加,情報の獲得との類似性を
主張する議論について 検討しよう, この議論は,
AHP
@
における順位逆転について
ぅ
る
なくない・帽子を 購入したい夫人も ,帽子店 が
一つしかない 町ではなく,大きな都会で購入す
るときは,コピーが数多く存在するのが 通常で
あ るから, コピ一の存在には 関係なく自分の 気
に入った帽子を 購入するであ ろう,
もう一つの前提は ,サーティ [27] に挙げら
のは当然であ ることを主張しその 例として,
れている投票の 例が如実に示しているよ
レストランにおける 紳士の行動と 帽子 店 におけ
各要素の重要度の 和が常に一定,すなわち 各要
素の重要度は ,要素の追加・削除により要素数
る
夫人の行動が 挙げられる. これらの例はいっ
たん意思決定をした 後に ,
ヵタッムリと 蛙の足
の料理ができるというレストランの
追加情報が, あ るいは第
3
貿に関する
の帽子があ るという
(*)
が変化しても ,
う
に,
を満たさなければならな
いということであ る. (*) が 成立しなければ
ならないとき ,
コピ一ではない 新代替案が追加
帽子の稀少性に 関する追加情報が 得られた場合
された場合でも ,従来の要素の重要度は減少し
であ
なければならない. しかし コピ 一でない新代替
る・
このような場合,ベイジァン意思決定
論における追加情報の 獲得と同様に.追加情報
案は, 従来の代替案の 稀少性を希薄化するとは
の獲得によって 最適な意思決定が 変わるのは ヨ
-
限らないので ,
然であ る. しかし AHP
替 実 の追加のときにも 要求するのは 無理があ る
で問題にされる 代替 案
の 追加・削除は 追加情報の獲得とは 異なる. な
ぜなら, Ⅱ章の例からも 明らかなように , 追
(*)
の成立を コピ 一でない代
この点, コピーが追加されてもオ
リジナルの稀少性が 希薄化されるとは 考えない,
と 思われる・
加・削除される 代替案は新たに 得 E,れた代替 案
ではなく,既に存在している 代替 実 であ るので。
用理論の取扱いの 方が妥当,性が 高いと考えられ
その ょう な代替 案 の追加・削除は 上述のような
る
追加情報を何らもたらさなかからであ
したがって
(木)
の成立を要求しない 多 属性効
以上より, コピ一の追加がオリジナルの 選好
る.
Jll
頁 位を下落させるという
主張は,消費の柑℡依
(3) コビー追加による 希薄化について
コビ 一の追加がオリジナルの 稀少,性を希薄に
存性と
し その 選好 順位を下落させるという 主張につ
ということができるであ
いて考えてみよう・
この主張の背後には ,
C*)
の 成立を前提にするもので
,
その
ような前提が 成り立つときにのみ 成り立つ主張
ろう
吐い
に無関係ではない 二つの前提が 重なり合って 存
在していると 思われる. その一 つは 社会的に稀
(4
Ⅰ
投資および投票の 例について
本章の最後に ,順位逆転の例として挙げられ
少性が高いと 選好順位が高いという 前提であ る.
た例の中で, これまでに触れなかった 例につい
この前提を経済学の 言葉でより一般的に 言えば。
て私見を述べよう.
まずサーティニヴァーガス
[28] にあ る投資
る消費者の効用が 他考の消費量にも 依存して
いるという消費の 相互依存,性 あ るいは外部,性 と
の例については 次のように言えるであ
いうことであ り, それはいわゆる べ ブレン効果
の例において , サーティの玉帳 通り順位逆転が
なども含んでいる.上述の例における帽子を 購
起こるのは,投資資金の調達方法として 内部留
入したい夫人も ,他者が持っていない 帽子を購
保による方法しかない ,
入したいということであ
る 方法が最も有利であ る場合だけであ る. しか
あ
るから, この前提を満
たしている. しかしこの前提は 経済学ではむし
ろう : こ
あ るいは内部留保によ
し投資資金調達方法としては 内部留保の他にも
Ⅰ
0 (92
横浜経営研究
Ⅰ
株式発行や負債による 方法があ ), また近代
ポートフォリオ 理論 (MPT)
におけるモディ
れ
アーニ・ミラ 一理論
(MM 理論 ) によれば,
第㎜巻
第 2 号 (1997)
いるので,その ょう な指針はあ るはずがないと
も考えられるが ,
もしあ るとすれば, それは
(少なくともそれについてのヒントは
AHP
)
妥当な条件の 下で,内部留保,株式発行,負債 の公理系にあ ると思われるので , 次 章では
のどの方法によっても 資本コストは 変わらない
AHP の公理系について 検討することにしょう.
とされるので ,如上の前提は一般に成り立たな
W. AHP の公理系
い・ したがって第 3 の投資機会 C が存在し
それにも投資したいとしても
4
, 選 好されるのは
期にわたるキャッシュ・フロ 一の大きい A
1. 公理
AHP の公理系は AHP
ヨき
の方であ る,するのが近代財務論の 常識であ ろ
後, AHP
、つ
答えてサーティ
次に投票の例については
次のように言えるで
あ ろう : この例を,候補者をプレーヤⅠその
得票を利得とするゲームと 見たとき,この ゲ一
ム は (投票率が 100% であ るとして ) 定相ゲー
の方法が確立された
には公理的基礎がないという
批判に
[24] によって規定されたもの
で,公理系の基礎となるプリミティフな
概念と
4 つの公理から 成り立っている.
まず公理系の 基礎となるプリミティブな 概念
が 次のように規定される.
(1) 代替案及び評価基準 : Ⅵを代替 案 と呼
ムであ る・ このことを意思決定論に 当てはめ,
各要素の重要度の 決定を各要素へ 重要度を配分
するゲーム (要素重要度配分ゲーム ), 各要素
熟の要素が比較される 性質ないし属性の 集合
プレーヤⅠ各要素の 重要度をその 利得とし
としよう・この 性質ないし属性は 評価基準と呼
を
たとき, そのゲームが 定相ゲームであ るという
ことであ る・ しかし世の中で 行われるゲームは ,
選挙のような 定相ゲームより ,不定相ゲームの
ばれる " 個の要素の集合, (@
そ
それを用いて
ばれる.評価基準はプリミティブであ る.
(2)
項関係 : Ⅶに属す二つの 物 あ るいは
要素を奄に属す 評価基準に従って 比較すると
き, 2 項上 較をするという. 斗の上の 2 項 関
2
方がはるかに 多いと考えられる. したがって 要
素 重要度配分ゲームが 定相ゲームであ る必然性
は全くなく, (多 属性 ) 効用理論のように 不定
相ゲームとして 取り扱っても 全く構わないので
選考される」を 表わし 一,は 「無差別であ
る」を表わす・ 与えられた 2 項関係 ノ,の族は
あ る.
プリミティブであ る.
ヒ
係ノ 。 は⑤に属す評価基準
C に従えば「より
の唱道
(3) 基本的尺度 : P は 鈍 x 鈍から R 。への
者・擁護者の 議論と,それに 対する否定的な 私
見を述べた. もし AHP における順位逆転に 正
写像の集合を 表わすとしよう.ここに R. は正
の実数の集合であ る・ また ん ㏄ づ P とし C
当性がないとすれば ,次の問題は ,
㈲であ るとしょう・かく
するとあ らゆる 組 Cん , A,) e g(X 別に対し
次の性質をもっ 正の実数 P,(A 。 4) 二のをあ て
本章では順位逆転を 正当とする AHP
コピーあ る
いは無関係代替案を 選択対象の代替案の 集合に
追加・削除すれば ,代替案の順位付けが 変化す
る可能性があ ることが分かっている
は AHP
( このこと
e
ほ ほ 対し
はめることができる
に関心を持つ 者は誰でも知っておかな
AHP
,
は納得的な指針があ るかどうかというこ
とであ る. AHP
では順位逆転は 当然とされて
:
A, ノ 。 A ㊥ F 。 (A,,A,) ノ 1
ければならないことであ り,事実誰でも知って
いると思われる ) とき,それらを代替案の集合
に追加・削除してよいかどうかについて
P,E/
ノ
A, 二 Ⅱ , ㊥ R,(A,,A,.) =1
%. ノ , ヰは A; は A,
よ
り選好されることを 意味
するので,巴は個人が要素 A;E
性質 Ce
俺を 4%
W に含まれる
Ⅶの関連で知覚する 相対
AHP
的な強度, すなわち,評価基準C についての
代替 案
; の代替
すことになる・
案ソに 対する選好の 強度を表わ
三ッ組 (Wx 熊 , 穴 ,,F,) は基
功)
193 11
Ⅰ
ェ,二 け @
ⅡL
は
ょ
をカバーする t, k--2,
の集合打目㌦ 一 1 は,
: 二つの任意の 代替 案 (A,,
1/ タミ P, し,l,此 )
A,) e g[ X Ⅵが与えられたとき ,九のんに対
する選好の強度は A, の A, に対する選好の 強度
homogeneou,)
の逆数であ る. すなわち
公理は月 け " り =
・
月ソ
垂
Ⅴ 3,1,J2 E
Ⅰ
丁-
(pであ ると言われる・ 特に逆数
を満たすならば , ヱモ ねに関してⅠ同質
公理 2
) = ¥/ 月 (A 尹 A ,)
( 同質性 )
を意味する・
1
:
階層 め ,
ょ
モめ,デモ㌦
が与えられたとき ,Ⅰ三 L 。 +1 は卍 同質であ る
・
月 (A "
3,
定義 : 正の実数 p 垂 l が与えられたとき , 井空
以上の基本的概念を 用いて公理が 規定される
(逆数条件 )
井
(3) ょモ ム は ,、, 9 ㍉ 1 を意味する・ここに
本的あ るいはプリミティブな 尺度であ る.
公理 1
@
における順位逆転について
であ る.
は二 1 ,
この公理はあ る物体の車- さが他の物体の
5
倍
六一 1)
この公理は周知のアルキメデス
的,l、 生路に密接
ならば,後者の 重さは自動的に 前者の 1/5 倍
であ るということに 対応する. AHP では二つ
の要素間の選好の 強度の比較は 比率尺度で行な
すなわち同じ 階層に属す要素は 太陽と原子のよ
われるので・
うに極端に異なるものではなく
この公理の成立 - は 物体の重さの 比
較と同様に当然ということになる.
もちろん他
に関係があ り, 同じ階層に属す 任意の二つの 要
素の強度の比 七け " 巧 ) は 正で有限であ ること,
,意思決定考に
とって容易に 比較可能なものであ ることを意味
の尺度ならば 成立する保証はな い ,
する. もし非常に異なるものがⅡ
定義
て比較が容易でない 場合は ,上ヒ較 可能なものⅡ
:
次の条件を満たす
2
項関係 垂 をもっ集合
S は部分順序集合であ る,
士をいくつかのクラスタ
(a)
反身・
(h
推移性 : すべてのご ,ノ,
, e S に対し
Ⅰ
ザ性 : すべての
ょ 壬ソ ,ソニ,ならば
, ご睾
臣)
ごニ %
ェ
e S に対し、
・ミ工・
ノミ・2 ならば,
定義 : 集合Ⅵはもしあ らゆる C
=
ッであ
る・
)
るとする・
れる.
もし デくソ であ り,かつ ごく
となる古が存在しないならば
Ⅰ
くッ
h
をもっ有限の 部別 ll
序 集合としょう・めは 次の条件を満たすとき
2,
ての基本的 ド 度が定義されるとき ,代替案の策
,
合は評価 基 廿の策命に外部従属するということ
川
が存在する
ここに
み = b.
二
ゆ l 丁は
六一 1.
になる.
定義 : 蝕は屯に外部従属するとしよう・
ッ
を ヵ バー
するⅡ㌃ 二 1,
ここに
ワ卸
Ⅶの
要素は, もしⅦが A に外部従属するような
モ
詑 ) ご ことは、Ⅰ 二 L 肝 l を意味する・
、r-
と 言わ
頁
階層と呼ばれる.
は ) めの, レベルと呼ばれる 集合への分割
1 。
に ulerdependent)
あ るから, 各代替 案 のあ らゆる評価基準につい
めを最大の要素
二
(@ ほ ついて
Ⅶは代替案の 集合。 ぼは評価基準の 集合で
, ッはょ をカバー
(支配Ⅰ すると 吉ぅ .
々
こ
基本的尺度が 斗の上で定義できるならば 集合
⑨に外部 従 寓する
け何
クラスタ一内での 比較 と
る.
に対して, ゴくツ はェミ ッ かつェチ ッ を意味す
:
新たな階層のレ
反対称,性 : すべての ェ,ッ垂ぶにたいし
吏
( かくす
クラスターⅡ土の 比較に分けるのがよいとされ
,である・
定義 : 任意の関係 デ垂ッけ は デ を含むと読め
定義
一にまとめて
ると各クラスターをカバーする
ベルが - つ 増えるⅠ,
じ 階層にあ っ
Ⅶが存在するならば ,
Ce
A
K に関して内部
従属する (innerdependent) と吉 われる・
代替案の集合があ る代替案に関して 外部従属
するとは,あ る代替案に関して 基本的尺度が 定
12@ (94)
横浜経営研究
第 2 号 (1997)
第㎜巻
議 されることを 意味するので ,その代替案が評
価基準となるような 比較がなされるような 場合
に,代替案の集合は内部従属していることにな
(1)
る.
ァーガス [9] によれば, この公理系の 中で代
公理 3
(従属性および 独立性 )
ム,
",
あ,
= 1 ,
やな レベル
㍉をもっ階層としょう・
各 ㍉,
ん
ハ 一カ一二 ヴァーガスの 説明
以上が AHP
の公理系であ る. ハ 一ヵ一二 ヴ
替 実 の追加・削除の 関連する公理は 公理 4 (期
待 公理 ) であ る. この点について 彼らは次のよ
うにコメントする
乃一 1 に対して
",
2. 期待公理と代替案の 追加・削除
(1) ム十 1 はム に外部従属する・
(2) ム +1 はすべての エ モムに関して 円き 4%
ロ
属するわけではない.
この公理の主要な 目白りは代替 実 の追加あ るいは削
除を処理することにあ る. コピ一の追加に 関して
(3) ムはム十 1 に 外部従属しない・
言えば,あ る代替 実 のコピーが追加されたときに
この公理の (1) と (3) は,代替案は評価基準に
は, 新たな評価基準を 追加しなければならないこ
ついて比較できるが ,逆に評価基準は代替案に
とを述べている.例えば, 一つのリンゴ
ついて比較できないこと
オレンジを
,一般的に言えば,
階
上ヒ駁しているとき
,
と
一つの
もう一つのリンコ。
層 の各レベルの 要素はそれより 一 つ 上のレベル
が追加されたならば ,期待を保持するためには,
の要素について 比較できるが 逆はできないこと
を意味する. また (2)はあ る代替案を評価基準
「あ るタイプの要素の
数 ) 」のような新たな 評価基準が階層に 追加され,
にした代替案の
評価基準の集合とその 優先度が変更されるべきで
上ヒ
較が全ての評価基準について
数
( リンゴの数とオレンジの
行えるわけではないことを 意味する.
定義 : 期待 (expectation) は先験的な知識か
ら引き出される 代替案の順位についての 信念
(belief)であ る・意思決定者が 評価基準に関す
あ る. もし以前の評価基準と 優先度に固執すると
る先験 りな知識に関して 代替案の順位付けを 直
価基準について 完全に A, に 同じであ るという意味
感 的に持っているならば ,彼は順位について期
で 真の代替 案 ではない代替案は , 選択集合に何も
待を持っている.
加えないので , 選択問題から 排除されるべきこと
白
公理
4
(期待 )
: 全ての評価基準と 代替案は階
層の中に表現される. すなわち
庵 C め一 L 肋 Ⅶ 二 L 。
はない.
この期待公理はまた 他の代替 案 んがすべての 評
仲略 ] しかしながら ,二つの代替案
を意味する・
が
コピー
あ ることを信じるためには ,
これらの 二
っ
0 代替案を区別できる 評価基準が存在しない ,
すなわち ほ が完備 (complete) であ ると信じなけ
で為る
この公理の意味は ,
きは, コピーは公理 4 に従って追加されるべきで
自己の信念に 根拠を持っ
思慮深い個人は , 彼の考えは結果がその 信念に
評価基準の集合は 完備と考えられなければなら
ない. このときコピーは 代替案の集合に 何もっけ
加えないので ,削除されなければならない.
沖崎 ] ルストランの 紳士の例では ] レストラ
ンの
質 という新たな 評価基準が評価基準の 集合
に 加わったのであ
(Pp Ⅱ 386-1387. 1400)
る・
ト
除に
、自力ノーロ
メ ・追
コ 加の
の迫一
スの 。
ヒ
ガ業 コ
替に
ァ代か
ヴは確
二旬
白
一日 る
力 のあ
一4 で
公
のこハ理
と
ばす
れ理
上,る
以
そ な
説い
なのか
的るて
理すっ
なと 期
合 定時
,阪を
くを 待
もこな
合
でる 理
けき
わで 不
るが の
すとく
明人
定こ多
性
合致するに足る 23 に表現されると 確信してい
ること,すなわちすべての期待は評価基準と 代
替 案の形で表現され ( あ るいは排除され ), 期
待に矛盾しない 重要度が付されなければならな
いことを意味する. この公理はその 過程の合理
ればならない.
奄
AHP
における順位逆転について
(白井
功)
13
95)
ては, それは新たな 評価基準を追加するのでな
先 験的な知識から 引き出される 代替案の順位に
ければすべきでないという 処理方法が具体的な
ついての信念であ ると定義され ,意思決定者が
として与えられている. しかし このよう
な処理方法の 是非に関しては ,次のダイヤー
5] のコメントに 尽、きていると思われる :
代替案の順位付けを 直感的に持っているならば
ォはま十
「
,
彼は順位について 期待を持っていること ,②す
べての期待は 評価基準と代替案の 形で表現され
コピーは代替 案 として許されないと 言う理由に基
るいは排除され ), 期待に矛盾しない 重要度
が付されなければならないこと ,③公理,
4 は期
づく AHP
待形成過程の 合理性を仮定するわけでも
, 合理
は技術的な理由で 支持されない.第 1 に,代替案を
的な見解を説明することができることを
仮定す
評価し @ll
頁 位 づける手続きはどのように
働くべき
るわけでもなく , 人々は多くの 不 合理な期待を
と期待されるか 考えてみよう. あ る手続きに従っ
持っていること ,
て 順位づけられてからあ る代替 実 のコピーが追加
ピー以覚の代替 実 の追加, lJ除に関しては 具体
的な指針は何も 与えられていないことになる.
(あ
の防御は根拠がなく ,
されたときは ,
直感的にあ るい
この コピ 一の順位付けはその 手続
きに従って,対応する 代替 案 と全く同様に
行われ・
のみであ る. したがってコ
ぼ
このことはあ る意味では当然かも 知れない. な
に, AHP
コピーと対応する 代替案の順位は ,対応する代替
ぜならⅡ章で 見たよ
案が当初につけられた 順位と同じになることを 期
待する.この期待に対する 唯一の例外は ,評価基準
護者は代替 案 の追加・削除による 順位逆転を当
然のことであ り, むしろ望ましいと 考えている
が代替 実 の -- 焦性 は ついての関心を 含み, コピー
からであ る.
がその評価基準についての
両者の評価を 低下させ
う
の唱道者・擁
しかし選択対象となる 代替案の集合にどの
るか,意思決定者の代替案に関する 理解を変化さ
代替案を含め ,
せる追加的な ,ド 青 軸 をもっている 場合だけであ る.
て代替案の順位付けが 変化する,すなわち最適
案は選択対象の 代替案の集合次第であ る可能性
メルセデス
と
クライスラーを 上ヒ駁するときに,
どの代替案を 含めないかによっ
他の メルセデスを 追加することは 適当でないこと
があ る, ことが分かっているとき ,
を認めるとしよう. しかしたいていの 評価基準に
を含め, どの代替案を 外して代替案の 集合を決
おいてメルセデスに 近いが,完全な コビ 一ではな
定し
い BMW
を追加するとしよう. BMW
か は直感的に順位付けをして
ルセデス
と
の追加がメ
クライスラ一の 順位を逆転させること
を 当然とは 巴 れないであ ろう. これはし ぱ しば起
こる
仲附
.サーティはこの現象を AHP
におけ
どの代替案
その中で先験的な 知識に基づいて ,ある
期待を形成すれば
よいのか,合理的な意思決定者ならば 誰でも 迷
うのではないだろうか.サーティは公理
4
は期
待形成の過程について 合理,性を仮定しないとし
る誤りの潜在的原因の 指標とは認識せず。 他の代
て, 人々が不合理な 期待を持っこと 認めている
替 案 とのスコアの 違いが 10 パーセント以内の 代替
ということは ,期待形成過程には代替 案
案は考察から 外すことを示唆する.
二つのメルセデス
と
したがって ,
クライスラーを 比較できない
だけでなく, メルセデス
と
BMW
をクライスラー
と上ヒ敵 することもできないのであ
る・
(pp.252-
253)
び 評価基準
)
( およ
の集合の決定も 当然含まれるので ,
その決定が先験的な 知識あ るいは直感に 基づく
不合理なものであ っても構わないということで
あ ろう カⅠ もしそうであ れば, AHP に よ る j@@
位付けが不合理であ ることを自ら 言弘めたことに
他ならないのではないだろうか.
(2) 不合理な期待と 順位付け
さて コビ 一の追加以外について ,公理4 とそ
の説明として 述べられていることは ,①期待が
多人数による 順位付けになると 問題はさらに
複雑になる. すなわち AHP は評価基準と 代替
案が一義的に 定まって初めて 適用できる方法で
14 (96)
横浜経営研究
第 2 号 (1997)
るが,効用
い 「どちらがどのくらい 重要か」ということは ,
理論は IIA を満足し コピーが追加・ 削除さ
れても順位逆転を 起こさないので ,代替案の集
合の一義 性は コピーあ るいは無関係代替案の 追
質問の意味は 多少 暖昧 かも知れないが ,答えや
すいことなので ,、 意思決定者にとって 負担が少
加・削除に関しては 問題にならない
(整合皮 )
ある
( もちろん効用理論もそうであ
第㎜巻
)
ので, そ
ない,②意思決定者の 判断の不整合性を , C.I.
と
C.R.
(整合上 ヒ )
という整合性の 指
れらを一義的に 決めることは 必須のことであ る
標 によってフォーマルに 扱える,などの長所を
しかし
持っている・ これらの長所を 残しつつ,代替案
の追加・削除に 対して順位逆転を 起こさないよ
に)
( Ⅱ章の例における
2 人の重役のよう
人によって評価基準や 選択対象の代替案の
集合が異なる 可能性が大きいとき ,
どのように
してそれらを 一義的に定めればよいのであ
か・
うに, AHP
また,代替案の順位付けに関する 期待も ,
人によって異なる 可能性が大きいのであ るが,
それをどのように 扱えばよいのであ ろうか.評
価基準と代替案の 集合が一義的に 定まらず,
( したがって )
期待も一義的に 定まらないとき ,
期待と矛盾しない 重要度はいかにすれば 付与で
きるのであ ろうか.
如上の問題に 対して AHP の唱道者・擁護者
の 解答はないように 居、 われる
V. 結論に代えて
小論では AHP
の順位逆転問題について ,
Ⅱ
章二工場用地選定問題を 例に,コピーあ るいは
無関係代替 実 の追加・削除によって 順位逆転が
起こりうることを 示しⅢ章で順位逆転の 擁護
論,すなわち①AHP における代替案の 追加・
削除は数理計画法における 決定変数の追加・ 削
除 と同様であ る,②それはまたべイ ジァンの意
思決定における 追加情報の獲得と 類似している ,
③コピーを追加すれば ,そのオリジナルの稀少
性が減少するので ,その川頁位 が下がるのは 当然
であ る, ほ ついて検討し
これらの擁護論はい
ずれも成立し 難いことを明らかにした.そして
Ⅳ章では代替案の 追加・削除について
AHP
が
木内得的な指針を 持っているかどうか ,その公理
系について検討した 結果,そのような指針を持
っていないので , AHP
による順位付けは 懇意
的で非合理的であ るという結論になった.
しかし AHP
を頑健にすることが 必要であ ろう.
ろう
は ( 多 属性 ) 効用理論に較べ
て, ①意思決定者が 明らかにしなければならな
Ⅰ
王
1) サーティ
[21], [2幻は AHP に関する彼自身
の最早期の著作であ り,サーティ [23] は,そ
れらを含め, 1970 年代の AHP の研究と応用の
成果をまとめた 最初の成 書 であ る.
2) 日本で AHP の普及に尽力したのは 日本オペ
レーションズ , リサーチ学会であ る. 同学会の
年 2 回の研究発表会には 毎回 AHP のセッショ
ンが設けられ , AHP 関連の研究部会あ るいは研
究グループも 毎年設置されている.その成果 の
一つが力根ほか [38] であ る. 同学会の啓蒙 誌
[19] は同学会創立 40 周年記念 号 であ るが,それ
に掲載されている OR の適用事例 29 の中, 2 事
例が AHP を利用したものであ る. なお,外国
の利用状況については ザ ヘディ [48], サーティ
[27] などを参照せよ.
3) フレンチ [8], 森 ほか [17], 今野 [15] など
4) カメ ネ ツキー [12], ベルトン ニ ギア 一 [1],
[2], ワトソン = フリーリンバ [46], [47],
ラウ
い明, ハ一 カーニヴァーガス㏄ ], nl円,
白井 [42], [43], トラウ トニ タディシ ナ [40],
ダイヤー [5] [6], フォアマン [7], ヴァーガ
ス [44] を参照せよ.
5) この点については ,フオン・ノイマンニ モルゲ
ンシュテルン [45], キ ー ニーニワイファー
[14], 瀬尾 [35] [36], 市 Ⅱ l [11] などを参照
ト
ト
せよ.
6) 因みに,代替案問の一対立 較に基づいて 代替 案
ヒ
の順序付けを 行うエレクトル 法 あ るいはコン
コーダンス法も 順位逆転を起こさない. エレク
トル 法 およびコンコーダンス T去については , ネ
イカンプ [17], ヴァン・デルフト ニ ネイカンフ。
[4], 白井 [41] なとを参照せよ.
7) シェンカーマン [30], カンニスタム [13], シ
ェンカーマン [31], ショーナーニウェドリー
[32], ショーナーニウェドリーニチュー [33],
[34] を参照せよ. なお注 4) の参考文献も 参照
せよ・
8) 小論の重要度および 合成重要度の 算出には,㈱
日本科学技術研修所開発・ 販売の意思決定支援
AHP
ね まわしくん 一
,"
が成立することであ る. ちなみに。 その必要十
分条件は,一対比較行列A 二ね,ッの 最大固有値
を A" 」としたとき ,
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10
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4
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Ⅱ り X 夕 /た二は戊
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Version2.0 」を用いた.
9) 整合性の条件とは ,意思決定者の- ・対比較が 整
合的であ ること,すなわち要素 / を 要素 j と上ヒ
校 したときの - 対比較値 な d" 要素数を抑とし
たとき,
(97) 15
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ソフトウェア・パッケ
における順位逆転について
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