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不明熱の検査項目は?(100304)

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不明熱の検査項目は?(100304)
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不明熱の検査項目は?(100304)
不明熱の定義もいろいろあると思うが、一般に 3 日間の入院、または 3 回の外来受診でも原因
不明の発熱とされる。不明熱では十分な問診(ROS)と身体診察が重要で、この検査を行えば大
丈夫という単純な代物でないことは十分承知だが、鑑別診断の引き出しには十分な余裕があった
ほうがいい。ただ、ハリソンなどの鑑別診断を見るとめまいがするほど多くの疾患が挙げられてい
る・・・。
いつも行き当たりばったりなところがあり、苦手なところなので、復習してみた。検査も多すぎて、
手がかりが無いと、患者に申し訳ないくらいの検査をしてしまうことになる・・・。
検査の前に、問診や身体所見が診断の手掛かりとなる可能性も高いので、重要な項目に関して
はもれのないように行いたい。


問診(個人的に聞き忘れそうなところ)

最近の医療行為(薬剤歴)

ワクチン接種歴

旅行歴:腸チフス、パラチフス、マラリアなど

ペット飼育歴

妊娠の有無
身体所見(個人的に所見をとり忘れそうだが、発見すると診断のきっかけになりそうなところ)

爪甲の小出血:感染性心内膜炎

血圧の左右差:大動脈炎症候群

サーモンピンク疹:成人スティル病

結節性紅斑:ベーチェット病(口腔アフタ、虹彩毛様体炎、陰部潰瘍などにも注意)

黒色の痂皮:ツツガムシ

耳鼻科領域:慢性扁桃腺炎、慢性副鼻腔炎

リンパ節腫脹:リンパ腫

側頭動脈の圧通、硬結:側頭動脈炎(頭痛があれば(特に高齢者であれば)側頭動脈炎
を想定した病歴聴取と身体診察を行う。6))

近位筋の疼痛:PMR
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
歯科領域の診察:齲歯

四肢末端、結膜、口唇、舌の変化、皮疹(小児):川崎病

下肢の腫脹、浮腫:深部静脈血栓症

下腹部痛、帯下、不正出血:骨盤腹膜炎、子宮留膿腫

発熱の後に関節炎:ウイルス性関節炎、反応性関節炎、成人スティル病、細菌性心内
膜炎、ライム病

比較的徐脈(簡単な計算式:39 度で脈拍が 100/分以下、それ以上では 0.5 度上がるご
とに脈が 10/分は上がるとして、40 度なら脈拍 120/分以下の場合は比較的徐脈):腸チ
フス、薬剤熱

比較的元気、比較的徐脈、比較的 CRP が低い:薬剤熱の比較 3 原則(参考文献 5)
問診や身体所見ではっきりしない場合も多いが、そうなると検査で手がかりを検索することにな
る。教科書ごとに記載が大きく異なるが、UpToDate では minimum diagnostic evaluation として最低
限の検査項目が紹介されている(ただ、CT が含まれるので、CT がない一般の診療所ではそのと
おりというわけにはいかない)。いきなりすべてを検査するわけにはいかないので、どうしても優先
順位をつけたいが、年齢や国による違い、侵襲性を考慮しながらケースによって順番が違ってくる
のは避けられない。

検査項目:参考文献 1 で minimum diagnostic evaluation として紹介されているもの。一部は改
変している。

血液培養(適切な体液の培養)

ESR(PMR、側頭動脈炎、多発性骨髄腫他)

CRP

生化学一般(肝機能、腎機能、電解質、LDH、Ca、CK、Fe を含む)

蛋白電気泳動

RF

ツベルクリン反応

HIV

胸腹部 CT(深部膿瘍、骨髄炎、腎臓癌など:腫瘍熱の原因として頻度が高いのは悪性
リンパ腫、腎細胞癌、肝細胞癌などが挙げられるが、月の単位で進行していなければ考
えにくい。悪性リンパ腫は完全否定するのが極めて難しい不明熱の原因。6))

検査項目:上記に加え、参考文献 2 でも何らかの形で勧められている検査項目。
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
CBC(白血球分画、塗抹)

尿検査:尿沈渣(腎炎など)

VDRL

EBNA

VCA-IgG

CMV-IgM

ANA

クリオグロブリン

c-ANCA(Wegener 肉芽腫症)

p-ANCA(顕微鏡的多発動脈炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、および顕微鏡的多発
動脈炎の腎限局型と考えられる特発性壊死性半月体形成性腎炎:中年以降の男性の
発熱と体重減少で検査をしてもわからないときはPN(結節性多発動脈炎)を鑑別に挙
げなければならない。6))


ACE

胸部エックス線写真

腹部エコー(肝膿瘍、腎周囲膿瘍、骨盤膿瘍など)

心エコー(感染性心内膜炎)

Ga シンチ

PET

肝生検

骨髄生検
検査項目:その他の教科書や慣習的に行われている検査項目

FOBT

CEA

CA19-9

PCT

β‐D グルカン

フェリチン(1000ng/ml 以上などの高地では可能性が高くなる。)

D ダイマー(PE、DVT)

ADA

甲状腺機能検査

腰椎穿刺

頭部、骨盤 CT
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参考文献
1.
Approach to the adult with fever of unknown origin. UpToDate 18.1
2.
福井次矢ら( 監訳).ハリソン内科学 第 2 版. 東京,MEDSI,2006.
3.
伊藤陽子.原因不明の疾患(不明熱).月刊保険診療, 63(9) : 19-25, 2008.
4.
青木泰子.状況に応じたアプローチ これは“不明熱”かなと思ったとき.診断と治療, 95(7) :
1019-1024, 2007.
5.
岡田正人ら.不明熱の「第 4 の鑑別診断」って何ですか?日経メディカルオンライン.
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/stluke/201004/514829.html
6.
生坂政臣.めざせ!外来診療の達人.東京,日本医事新報社,2006.
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