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淡路地区唯一の特別支援学校としてのセンター的機能を活かした取組
淡路地区唯一の特別支援学校としてのセンター的機能を活かした取組 兵庫県立あわじ特別支援学校 主幹教諭 1 平見 幸子 取組の内容・方法 (1 ) は じ め に 本 校 は 、昭 和 23 年 10 月 に 小・中 学 部 を 併 置 す る 淡 路 聾 学 校 と し て 創 立 さ れ た 。 そ の 後 、 昭 和 35 年 に は 幼 稚 部 が 新 た に 設 置 さ れ 、 幼 ・ 小 ・ 中 学 部 を も つ 聾 学 校 と し て 歩 ん で き た 。 そ の 後 、 平 成 19 年 度 か ら は 複 数 の 障 害 種 別 に 対 応 す る 特 別 支援学校の設置が可能となり、兵庫県立淡路聴覚特別支援学校と校名変更され、 平 成 20 年 度 か ら 聴 覚 障 害 教 育 部 門 ( 幼 ・ 小 ・ 中 学 部 ) に 加 え 、 新 た に 知 的 障 害 部 門 ( 小 ・ 中 ・ 高 等 部 ) が 設 置 さ れ た 。 更 に 、 平 成 23 年 に は 兵 庫 県 立 淡 路 特 別 支 援 学 校 と の 統 合 後 、 現 在 知 的 の 小 ・ 中 ・ 高 等 部 に 90 名 余 り の 児 童 生 徒 が 通 う 知 的 と 聴 覚 の 併 置 校 と な っ た 。こ の 統 合 で 淡 路 島 内 唯 一 の 特 別 支 援 学 校 と な っ た のである。 淡路島内には、幼保・小・中・高等学校が130余り設置されている。その中 の 1 小 学 校 か ら こ う し た 歴 史 の あ る 学 校 へ と 4 年 前 に 転 任 し て き て 、特 別 支 援 教 育コーディネーターとしてスタートしたのである。 (2 ) 本 校 地 域 支 援 の 取 組 ア 教育相談 数年前より本校における教育相談と淡路島内三市へ出向いての教育相談が実 施 さ れ て い た 。そ の 数 は 年 々 増 え 、今 年 度 の 相 談 件 数 は 、の べ 500 件 を 超 え る 数 になろうとしている。対象は、乳幼児から高校生まで、聴覚障害・視覚障害も含 め、様々な障害に関する相談である。 来校 にお ける 教 育相 談は 、随時 電話 で 受 け付 け 、初 回面 接 で 保護 者か らの 聞き 取り・対象児の観察を行い、次回からのサポート計画を立てるようにしている。 市へ 出向 いての 教育 相談 は、各市の教育委員会が窓口 となり 、教育相談 の希望を 募 り 、 月 1 回 各 市 に お い て 行 う 巡 回 相 談 で あ る 。新 規 の 相 談 で は 、 対 象 児 と 保 護 者、在籍園・校の担当者・特別支援教育コーディネーター・担当保健師等の同行 を依頼し、連携して相談にあたっている。 イ 学校園等への訪問コンサルテーション 本校では、学校園等からの要請があれば訪問による相談支援・研修会への講師 派遣等を行っている。今年度これまでに、学校園等への派遣件数は48件で、内 容 と し て は 「 発 達 障 害 の 特 性 の 理 解 と 通 常 の 学 級 に お け る 支 援 」「 気 に な る 児 童 生 徒 へ の 具 体 的 な 支 援 」「 個 別 の 指 導 計 画 ・ 個 別 の 教 育 支 援 計 画 の 作 成 」 等 が 多 かった。また、事例研究会も増えてきており、必要に応じて本校への来校による 教育相談を紹介し、サポート教室に繋げている。 ウ 関係機関と連携した支援 島内で唯一の支援学校となったため、様々な関係機関から会議・研修会への参 加要請があり、参加することで情報交換を行うことができている。島内の特別支 援 に 関 係 す る 諸 機 関 が ど の よ う な 活 動 を し て い る の か 、本 校 へ の ニ ー ズ は ど の よ う な も の な の か を 知 る こ と が で き 、セ ン タ ー 校 と し て の 活 動 の 改 善 に 繋 が っ た と 思われる。また、声を掛け合える方々が増え、その連携が保健師や福祉へと拡大 されていった。その主なものとして以下のようなケースが挙げられる。 A市においては、昨年より早期支援が実施できるように、5 歳児を対象に専門 職による発達相談が実施されている。この趣旨としては、個の衝動・多動性や対 人関係により子育ての困難感のある幼児を持つ保護者・保育者が、子どもの特性 や課題を理解 し、子育てが行えるように 支援 するというものであ る。その教育相 談を 担当 させて いた だき、必要に応じて 小学校就学まで サポート 教室での支援を 提供することとなっ た。早期発見・早期支援 が個 の成長 にどのように影響するの か、今後の見守りと継続的な支援を実施していきたいと考えている。 B市 にお いては、市の保健師 さんが定期的な保護者との面談 で気 になるケース があると本校へ繋いでくれている。誕生から幼保・小・中・高校と長いスパンで の成長を知り得る保健師さんとの連携は、育てにくさ・不安を感じている保護者 や困り感のある幼児児童生徒にとって大変有効であったと感じている。 C市においては、健康福祉課・社会福祉協議会の相談員の方が面談で気になる ケ ー ス が あ る と 本 校 へ 来 校 し 、就 労 自 立 を 目 指 し た 連 携 し た 支 援 が 行 わ れ て き た 。 家 庭 生 活 面 の 支 援 を 行 っ て い る 福 祉 関 係 者 と の 連 携 は 、児 童 生 徒 の 学 校 教 育 に お いて効果的な支援に繋がったと思われる。 エ サポート教室 教育相談 で継続的な支援 が必要と思 われる幼児児童生徒 に対 して、個別の指導 を実施している。流れとしては、事前に予約を入れ、月1回程度保護者・幼児児 童生徒が来校 し、個別に個に応じた支援 を提供する。1時間程度本校 の相談支援 部員がスタッフ とな り、子どもの特性・発達 の状態に合わせた指導支援を直接行 うと共に、保護者へのカウンセリングも行っている。最近では、この相談に幼児 児童の担任や学校の特別支援教育コーディネーター・生活支援教員の方々が同席 して 頂けるケースが増えてきている。参加者 の在籍学校園と 連携 した 形での 支援 が 実 現 で き つ つ あ る こ と は 、意 味 あ る 取 組 と な っ て い る と 感 じ て い る 。参 加 者 は 、 幼 ・ 保 育 園 児 15 名 、 小 学 生 35 名 、 中 学 生 7 名 の 計 57 名 で あ っ た 。 今 年 度 の 5 歳 児 検 診 が 進 め ら れ て い る た め 参 加 者 は 今 後 10 名 程 度 増 え る と 思 わ れ る 。 オ 特別支援教育講座 教 育 相 談 や 学 校 訪 問 で の 要 望 、年 度 末 に 実 施 し て い る ア ン ケ ー ト か ら 公 開 講 座 の必要性 を強 く感じ 、今年度は公開講座 を増 やすよう 心掛けた 。研修講座の講師 は 、本 校 の 多 様 化 事 業 で 指 導 し て い た だ い て い る 先 生 に 専 門 的 な 内 容 を お 願 い し 、 本校職員 も講師 を務 めるなどして 実施している。今年度計画 している研修講座は 以下のとおりである。 平 成 24 年 度 公 開 講 座 の 内 容 時期 2 内容概要 7月 ことばを話すことへつながる指導 7月 特別支援学校での指導で見えてきたもの 8月 出会い、共感し、繋げていく 8月 楽しく作業能力を向上させよう 8月 正しい姿勢を身につける 11 月 感覚統合療法実技編 12 月 感覚統合療法実技編 1月 コミュニケーション研修(機器の効果的な活用) 2月 続コミュニケーション研修(機器の効果的な活用等) 3月 聴覚研修―聴こえについてー(仮) 取組の成果 (1 ) 学 校 園 等 へ の 支 援 島内の幼保・小・中・高等学校・関係機関で、訪問・教育相談で要請のあった 関 係 者 に 対 し 、 ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し た 。 内 容 は 、「 学 校 等 訪 問 支 援 に つ い て 」 「サポート教室での支援について」であった。 学 校 関 係 等 の 支 援 の 効 果 に つ い て は 、「 子 ど も の 実 態 把 握 に 役 立 っ た か 」「 子 ど も へ の 関 わ り 方 な ど に 役 立 っ た か 」 の 質 問 に は 、 80% 以 上 が 「 大 い に 役 立 っ た 」 と 回 答 し て い る 。 し か し 、「 学 校 園 等 の 支 援 体 制 づ く り に 役 立 っ た か 」「 子 ど も に 関 わ る 職 員 の 心 理 面 で の 支 え に な っ た か 」 の 質 問 に は 、 20% 前 後 が 「 ど ち ら か と いえばそう思わない」と回答している。調査結果から、学校園等への支援は子ど もの実態把握 には大いに 役立 っているものの、学校体制づくりや 職員の心理面へ のサポートがまだまだ十分ではないことが示された。 (2 ) サ ポ ー ト 教 室 で の 支 援 サポート 教室 で支援 を受 けた幼児・児童生徒 の保護者 に対して 、アンケート 調 査を実施した。 サ ポ ー ト 教 室 で の 支 援 の 効 果 に つ い て は 、「 子 ど も の 実 態 把 握 に 役 立 っ た か 」 の 質 問 に は 、 84% の 保 護 者 が 「 大 い に 役 立 っ た 」 と 回 答 し て い る 。 ま た 、「 子 ど も へ の 関 わ り 方 に 役 立 っ た 」「 学 校 園 等 の 支 援 体 制 づ く り に 役 立 っ た 」「 保 護 者 ・ 学校との連携に役立った」との回答も多かった。調査結果から、サポート教室で の 支 援 は 、子 ど も の 実 態 把 握 や 関 わ り 方 へ の 効 果 が あ る と 共 に 保 護 者 と 学 校 と の 連携に役立っていると感じている保護者が多いことが示された。 3 課題及び今後の取組の方法 本校が県立の聾学校として創立されていたこともあり、島内の学校関係機関と の 交 流 が 少 な か っ た 。し か し 、平 成 19 年 度 以 降 の 特 別 支 援 学 校 の セ ン タ ー 的 機 能 の充実へ向けての取組が始まったことにより、本校が相談・支援の場として広く 知られ、なくてはならない存在へとなりつつあると感じている。しかし、島内に 1校の支援学校ということもあり、相談内容は多岐にわたり、十分な支援が実施 できているとは言い難い現状である。今後は更に校内研修の充実を心がけ、より 多くの教師がセンター的機能を担えるよう力を入れていきたいと考えている。本 校の若い教員の多くは島外出身者であるため、3∼4年すると転勤してしまう。 島内在住の教員は高齢化してきており、その数は年々減ってきている。こうした 中、長期にわたり本校の教育に携わり、島内の支援を必要とするすべての方々に 支援ができるような人材を育てていくことが今後の課題であると考える。 また、関係機関と連携を取りながら、島内三市が独自の特別支援の体制づくり を更に強化して効果的な支援が実施できるように協力していきたい。 特別支援学校で特別支援教育コーディネーターとしての4年が過ぎようとして い る 。小 学 校 教 師 と し て 30 年 以 上 働 い て き た 経 験 を 活 か し な が ら の 取 組 で は あ っ たが、これまで導いてくださった管理職の先生方、同僚・関係機関の方々、そし て出会った多くの子ども達・保護者の方々にたくさんの事を学ばせていただいた と感謝している。特別支援教育へのさらなる原動力をいただいているとも感じて いる。これからも、どの子も笑顔で安心して生活できることを願い、島内の特別 支 援 の 体 制 整 備・関 係 者 の ス キ ル ア ッ プ の た め の 支 援 機 能 を 充 実 さ せ て い き た い 。