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有毒植物による食中毒について
有毒植物による食中毒について 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部主任研究官 登田 美桜 動物や植物の中には、ヒトや動物に有害な影響をもたらす物質を含んでいるものがあ る。これを「自然毒」と呼び、動物性自然毒(フグ毒や貝毒など)と植物性自然毒(有 毒キノコや有毒植物)に分類される。 植物性自然毒を原因とする食中毒のうち、有毒植物による食中毒は国内で毎年発生し ており、近年その発生件数にはやや増加の傾向が見られる。食中毒の主な原因は食用に できる植物と見た目がよく似ている有毒植物を誤認して採取・喫食したことにより、特 に新芽や若葉のときは区別が難しいため食中毒の発生件数も山菜採りシーズンである 4、 5 月が多い。厚生労働省監修の「全国食中毒事件録」をもとに昭和 61 年~平成 27 年ま での 30 年間に発生した有毒植物による食中毒を集計・解析したところ、発生件数が多 かったのはバイケイソウ類、チョウセンアサガオ類、トリカブトであり、患者数では主 に小学校で発生しているジャガイモが最も多かった。さらに時代とともに原因となる植 物の種類には変遷がみられ、直近 10 年間ではスイセン、ジャガイモ、クワズイモ、イ ヌサフランが増加していた。有毒植物に含まれる自然毒は毒性が強く少量の摂取でも致 死的になる場合があり、トリカブト、イヌサフラン、グロリオサによる食中毒では死者 も報告されている。 今年 4 月は昨年の同時期に比べると有毒植物による食中毒の発生頻度が高く、厚生労 働省が「有毒植物による食中毒防止の徹底について」 (平成 28 年 5 月 3 日、生食監発 0503 第 1 号)を通知して、食用にできると確実に判断できない植物については絶対に 「採らない」 、 「食べない」、 「売らない」、 「人にあげない」よう改めて注意喚起が行われ た。今年は特にスイセンをニラと誤認する事例が多く、4、6 月にはイヌサフランをギ ョウジャニンニクと誤認したことによる死亡事例も報告された。このように、トリカブ トなどの野草に加えて身近に栽培されている園芸植物を原因とする事例が報告される ようになったのは最近の特徴の一つである。 本日のシンポジウムでは、有毒植物による食中毒について最近の傾向とともに原因とな った有毒植物の特徴をご紹介する。 *参考:厚生労働省ホームページより 「自然毒のリスクプロファイル」 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/p oison/index.html