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公式LIM
4. 微分法 4.1 微 分 の定 義 微分は物理を初めとする自然科学に頻繁に現れる。 ニュートンは物体の運動を記述す る際にまず位置(座標) x を時刻 t の関数としてとらえた x = f (t) . 速さとは物体が一定時間内に動いた距離のことであり、時刻 t1 から t 2 のあいだに位置が ! ! x1から x 2 へと変化した場合の平均的速さは !x 2 " x1 f (t 2 ) " f (t1 ) #x = = t 2 " t1 t 2 " t1 ! #t ! ! ! である。 ここで時刻の差を "t = t 2 # t1 、座標の差を "x = x 2 # x1と表記した。 ! ! ! ニュートンは次に、時刻 t = t1 における瞬 間的 な 速さを平均的速さの "t # 0 極限、 "x f (t 2 ) $ f (t1 ) = lim "t #0 "t t 2 #t1 t 2 $ t1 v = lim ! により定義した。 この、時刻 t における瞬間的な速さは ! dx d df (t) d x " , f "(t) , , , x , f (t) dt ! dt dt dt ! などと記され、 f "(t) は関数 f (t) の導関数と呼ばれる。 図から明らかなように、導関 数 f "(t) は関数 x = f (t) の t ! における接線の傾きを表す。 ! ! ! ! ! v= ! ! ! ! ! 20 微分の概念は座標の瞬間的変化率としての速度に限らず、任意の量の瞬間的変化率とし て考えうる。 ここに自然科学を記述するための手段として微分という数学が開発され たのである。 "x, "t などは単なる差(有限)を表し、 dx, dt などはそれらの無限小の極限を表すと考 えればよい。 微分法のあらゆる公式は有限の差分( "x, "t など)に対する代数的関係 式から直ちに導かれる。 ! ! ! 4.2 初 等 関数 の 微分 ・代数関数 ( x )" = n x n n#1 . ( n は正の整数に限らない) ・指数関数 (e )"!= e . x ! x ( e の定義より) ・正弦・余弦関数 ! x, cos x " = #sin x (sin x )" = cos ( ) ! . y の変化 "y と x の変化 "x の関係は ! y + "y = sin(x + "x) 、すなわち "y = sin(x + "x) # sin x 証) y = sin x とおく。 和積公式より ! ! 図形的に証明できる公式 lim ! ! ! u"0 ! # "x & "x "y = 2cos% x + ( sin . !$ 2' 2 sin u = 1 を用いて、 u ! "x # "y "x & sin 2 !"x = cos%$ x + 2 (' ) "x 2 +"x+*0 +* cos x )1 = cos x . cos x の微分も同様。 ! ! 21 . 4.3 複 雑 な関 数 の微 分法 積の微分 ! ! d ( f (x)g(x)) = f "(x)g(x) + f (x) g"(x) . dx 証) y = f (x)g(x) とおく。 y の変化 "y と x の変化 "x の関係は y + "y = f (x + "x)g(x + "x) 、すなわち "y = f (x + "x)g(x + "x) # f (x)g(x) . f (x)g(x + "x)!を足し引きすると !# f! "y = (!f (x + "x) (x)) g(x +!"x) + f (x)( g(x + "x) # g(x)) . ! "x で割って ! "y f (x + "x) # f (x) g(x + "x) # g(x) = g(x + "x) + f (x) "x "x "x "x $0 % %%$ f &(x)g(x) + f (x) g&(x) . ! ! ! 合成関数の微分 d ( f (g(x))) = f "(g(x))g"(x) . dx 証)関数 y = f ( g(x)) は y = f ( z) および の合成である。 ! y の変化 "y 、 z の変化 "z 、および x の変化 "x は ! ! と書ける。 z = g(x) "y = ! ! "x! で割って ! ! "y "y "z "z = "x "z! "z "x ! ! "y "y "z = "x "z "x ! "x, "z # 0 の極限をとれば dy dy dz = = f "( z) g"(x) = f "( g(x)) g"(x) . dx !dz dx ! 特に、関数 y = f (ax) は二つの関数 y = f (z), z = g(x) = ax の合成であるから ! dy dy dz = = f "(z)a = a f "(ax) . dx dz dx ! ! ! 22 また商関数 y = ! f (x) 1 は、 関数 f (x) および合成関数 の積であるから g(x) g(x) " d " f (x) % ! 1 )1 % f ((x)g(x) ) f (x) g((x) + f (x)$ g((x) = . $ ' = f ((x) 2' dx # g(x) & g(x) g(x) 2 # ! g(x) & !・双曲線関数 sinh x = e x " e"x e x + e"x , cosh x = と定義すると 2 2 (sinh x )" = cosh x, (cosh x )" = sinh x ! 逆関数の微分 . ! ! dx !x dy "y は分数としての の極限であるから、 の極限として定義される の逆数であ dy !y "x dx る: ! dx 1 = . dy dy dx ・対数関数 ! (ln x )" = 1 . x 証)まず y = ln x ! と置く。次に、これを逆関数で表せば、 x と y の間の同等な関係として x = ey が得られる。ここで両辺を y で微分すれば、 dx = e y 、 すなわち dy dx =x . dy dx !x dy は の極限であるから、 の逆数である。 従って上式の逆数をとれば、 dy !y dx dy 1 = . dx x 23 ・逆三角関数 (sin x )# = "1 1 1" x 2 1 (tan x)# = 1+ x "1 2 (cos x )# = " 1 "1 , ! 1 (cot x )# = " 1+ x "1 , , 1" x 2 2 . ! 符号は主値の選び方によるが、ここでは最も一般的に用いられる主値を採用した。 ! ! 証)例えば cos !1 x の微分公式を得るには y = cos !1 x 、 とおき、後者の表現を y で微分して すなわち x = cos y dx = ! sin y = ± 1 ! cos 2 y = ± 1 ! x 2 dy を得る。ここで、主値として 0 " y < ! を選んでいることから、 sin y ! 0 、すなわち、 上の複合はマイナスを取らなければならない。両辺の逆数をとって、 dy 1 . =! dx 1! x2 他の逆三角関数の微分公式も同様。 問題 すべての逆三角関数の微分公式を証明せよ。 陰関数の微分 xと yは x = f (t), y = g(t) によって陰関数関係にあるとする。 ! このとき ! ! dy dy dt g"(t) = = . dx dx f "(t) dt "y "y "t 証)差が有限のときには ! = と書換えられる。 無限小の極限をとれば "x "x "t ! 24 上式を得る。 ・ サイクロイド x = t " sin t, y = 1" cos t dy dy dt sin t = = . dx dy 1" cos t dt の (x, y) における接線の傾きは ! ! ! 25 4.4 微 分 で記 述 され る物 理 量 一般に物理には2つ以上の変数が現れるから、登場する微分量を考えるときには常に 「どの変数による微分であるのか」 に注意を払わなければならない。 特に、時間による微分 d d と座標による微分 を混同しやすいから注意する。 dt dx 座標・速度・加速度 ! ! 速度 v が位置(座標) x の時間 t による導関数であることはすでに述べた: v= ! ! ! a と呼ぶ: 速度 v の時間 t による導関数を加速度 a= ! ! dx dt dv d " dx % = $ '. dt dt # dt & ! ! t による座標の 2 階導関数である。 明らかに加速度は時間 ! 位置エネルギーと力 ! 物体に働く力が時間にあらわによらず、座標のみの関数 F = F(x) であるとする。 このとき、ある座標の関数で、その導関数が "F(x) となるものを位置エ ネルギー V (x) と呼ぶ: ! dV (x) = "F(x) . ! dx ! ・一様な重力 V!(z) = mgz F(z) = " " dV (z) = "mg dz F(z) が負であることは z 軸(鉛直)下向きに力が働くことを示す。 ! ・ばねの復元力 ! !1 2 V (x) = kx 2 ! " F(x) = " dV (x) = "kx dx ! マイナス符号は力が復元力であることを示す。 ・万有引力 ! 1 ! V (r) = "GMm !r " F(r) = " dV (r) 1 = "GMm 2 dr r マイナス符号は力が常に斥力(距離 r の増加する方向に働く)であることを示す。 ! ! ! ! 26 ・静電気力 V (r) = Qq 1 4 "#0 r " F(r) = " dV (r) Qq 1 =+ dr 4 #$0 r 2 プラス符号は同符号の電荷 Q と q に対して力が斥力、異符号の電荷に対して力が引力 であることを示す。 ! ! ! ! 電荷と電流 ! 一般にある量 N(t) の時間変化率を流れ J(t) とよぶ: J(t) = " dN(t) . dt !が減少するとき J(t) が正になるようにマイナス符号をつけたため、 ! N(t) J(t) は考えている 量から外に流れ出す流れを表している。 ! ! ! ! 特に、コンデンサーの片方の極板に蓄えられた電荷を Q(t) とすると、その極板につながれ た電線を伝って流れ出す電流 I(t) は dQ(t) I(t) = " ! dt で定義される。 ! ! ! Q(t) "Q(t) ! ! 27 I(t)