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New York 医療研修 2015 年 8 月 16 日~8 月 29 日 金沢大学附属
New York 医療研修 2015 年 8 月 16 日~8 月 29 日 金沢大学附属病院 2 年次臨床研修医 高坂満 憧れであった米国ニューヨークでの 2 週間の研修に参加させていただきました。参加者 は金沢大学医学類の 5 年生 8 名と金沢大学附属病院臨床研修医 2 名の 10 名です。 Professor Andrew Schneider をはじめとする関係各位の方々のおかげで、充実した研修を受けること ができました。以下主な研修内容について述べてみたいと思います。 <Pace University での医療英語研修> 多くの星条旗がはためくニューヨークミッドタウン 5 番街のしゃれたビルの7階に Pace University の語学研修センターがあります。ここで Professor Janis Sharkey と Professor Andrew Schneider から医療英語を学びました。基本的な症状を表す英語表現(痛み、不快 感、発熱、皮膚症状など) 、患者さんがよく使う口語医療表現(たとえば、All I want is a clean bill of health.など) 、オープニングトーク、問診、身体診察の際の決まったフレーズ、病歴 の取り方、患者さんの話がずれていった場合の対応の仕方、患者さんの言っていることが わからない時の対応の仕方などを学びました。特に病歴の取り方について、OPQRST に留 意 して 、聞 き漏ら しのな いよ うに 努めま した。 OPQRST とは O:Onset 発症 様式 、 P:Provocation and Palliation 増悪と寛解因子、Q:Quality 性状、R:Region and Radiation 場所と放散の有無、S:Severity 程度、T:Time 時間経過のことです。一通り医療表現に親し んだ後は、ペアで医師と患者のローリングプレイを行い、臨場感のあるトレーニングをし ました。仕上げにペアでみんなの前で医師と患者のショートドラマを披露するわけですが、 終わるたびごとに Janis 先生は“very good”を連発してくださり、 「○○もおだてれば木に 登る」ではないですが、心地よい達成感をもって医療英語研修を終えることができました。 <Simulation:模擬患者との医療面接> いよいよネイティブの模擬患者さんとの実際的な医療面接トレーニングです。模擬患者 さんは実際のアメリカの医学生相手に訓練を積んだプロ模擬患者さんです。アメリカの病 院で一般的なペイシェントガウンを着て、話し方、表情、しぐさを本物の患者さんそっく りに演じてくれます。構成員も、白人、黒人、アジア系と多様で、ニューヨークの多様性 を表しているようでした。5つの患者さんの部屋があり、ペアでそれぞれの部屋を訪問し、 ひとりが模擬患者さんを診察し、 もう一人はその様子を観察します。 まず 12 分間問診をし、 その後ペアの相方が感想述べてくれ、その次に模擬患者さんが good point と bad point を 指摘してくれます。具体的な症例としては、関節痛の 57 歳女性、ホモセクシュアルの背部 痛の 39 歳男性、禁煙希望の 42 歳女性などがありました。いずれの症例も模擬患者さんの 表現力がとても豊かで、実際にアメリカ人を診察しているような気持になりました。最初 のうちはぎこちなさがかなりありましたが、数をこなしてくると、それほど抵抗感なく、 自然にできるようになりました。まさに、“Practice makes perfect.”です。最終日には、 模擬患者さんと打ち解けあい、達成感がピークに達して、お互いにハイタッチで喜びを表 しました。 <研究所、病院見学> Weill Cornell Medical College の研究所では Ayuko Hoshino 先生から、今日の研究まで の経歴と最近の研究テーマである「exosome とがん転移」について講義を受けました。ま た日本とアメリカの研究環境の違いについてもお話ししていただきました。日本の学会で Cornell の先生に直接質問に行ったところから、今日の研究所での研究につながったという お話が印象的でした。 New York Hospital Queens では、循環器のカテーテル室と救急センターを見学しました。 院内の表示板が英語、中国語、韓国語、ロシア語と4か国語で表示されていました。たま たま川崎病の発見者の川崎富作先生の娘さんも同行され有意義な時間を過ごすことができ ました。 Icahn School of Medicine at Mount Sinai では、附属病院、講義棟、図書館、学生寮を 見学しました。医療面接のための施設が充実しており、各ブースでの面接内容がビデオ録 画され、モニター室で全体をチェックできるシステムになっていました。その後、The Mindich Child Health & Development Institute、The Friedman Brain Institute の Hirofumi Morishita 先生から現在に至る研究の経緯と「脳発達のメカニズム」について の講義を受けました。またアメリカの研究環境についてもお話ししていただきました。 NYU School of Medicine, Department of Obstetrics and Gynecology のマンハッタンの クリニックで Yuzuru Anzai 先生が診療されるところに shadow として同行をしました。当 日の患者さんの半数以上は在ニューヨークの日本人妊婦さんで、日本語で診療が進められ ていて、ニューヨークでも安心してお産ができる環境にあることを実感しました。 Pacific Medical Associates,P.C.の Takashi Matsuki 先生を訪問しました。Matsuki 先生 は日本の大学医学部を卒業後、横須賀の海軍病院で研修し、その後アメリカで精神科医を していらっしゃる先生です。ニューヨークのクリニックでは、主にフロイト流の精神分析 による治療を実践していらっしゃるとのことでした。ニューヨークでは精神分析のカウン セリングを受けることは社会的なステータスになっているそうです。精神科の分野では他 科より語学力が要求されるのではと質問したところ、ニューヨークでは外国人医師が多い ので、日常会話ができれば、必ずしも流暢な語学力は必要ないとのことでした。 <フリータイムにおけるニューヨーク体験> 研修後の夕方 5 時以降などのフリータイムを利用して、ニューヨークの街の中を見て回り ました。ネオンの多さ明るさがとてつもなく、深夜になっても人があふれ、活気に満ちた Times Square。俳優と観客が一体となったとても魅力的な Broad Way のミュージカル。9・ 11 の後にできた西半球一の高さを誇りニューヨークを一望できる One World Observatory と周辺の追悼メモリアル。 壮大なコレクションを誇る Metropolitan Museum と Museum of Natural History。格式を感じさせる壮麗な高層ビルと多くのはためく星条旗。ここはアフ リカかと思うくらい黒人の多い Harlem。様々な民族が入り乱れる地下鉄の風景。街の一コ マ一コマが映画の一風景のようで飽きることがありませんでした。 <最後に> 今回のニューヨーク研修は私にとって非アジア圏への初めての研修旅行でした。白人、 黒人、アジア系など様々な民族が混在し世界の縮図のようなニューヨークの環境は医療面 のみならず、見るもの感じるものすべてがとても刺激的でした。同時にやはり「人間はみ な同じ」 “We are the world.”という感じを強く持ったことも事実です。 “Think globally, Act locally ”と言われますが、世界を意識しつつ、地域で精進するこ とが大切であり、地域で発見、実践された素晴らしいものは世界に通じることを改めて実 感しました。 今回のニューヨーク研修は金沢大学のメンバーとして行けたため、個人ではなかなか難 しいところを訪問したり、貴重な方々にお会いすることができました。 このような素晴らしい研修の機会を与えてくださいました金沢大学の関係者の方々、特 に細部まで配慮の行き届いた研修プログラムを準備してくださった Professor Andrew Schneider、ニューヨークの医療関係者、スタッフの方々に心より感謝申し上げます。 New York Hospital Queens Simulation with a patient After simulations Skyscraper and Brooklyn Bridge in New York Manhattan / Central Park