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フィリピン:自動車産業再生プログラムの施行細則発表

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フィリピン:自動車産業再生プログラムの施行細則発表
平成 28 年(2016 年)1 月 15 日
BTMU Global Business Insight 臨時増刊号
AREA Report 419
フィリピン:自動車産業再生プログラムの施行細則発表
フィリピン政府が公表した包括的自動車産業再生プログラムの施行細則について概要を記載
します。
2015 年 12 月 19 日、フィリピン政府貿易産業省と投資委員会(BOI)は、
「包括的自動車産業再
生プログラム(CARS Program ※1)」の施行細則(IRR ※2)を発表した。
※1 CARS Program=Comprehensive Automotive Resurgence Strategy Program
※2 IRR=Implementing Rules and Regulations
本プログラムは、2015 年 6 月 2 日に、大統領令(EO 第 182 号※3)として公布され、今回、そ
の施行細則が発表されたものである 。四輪自動車の 3 つのモデルを対象に、車体組立、大型プラ
スチック部品組立や部品製造、車両・部品の検査施設への投資に、2016 年より 1 モデル当たり最
大 90 億ペソ(約 223 億円 ※4)、3 モデル合計で最大 270 億ペソ(約 670 億円)のインセンティブ
を付与する。フィリピンは、本プログラムを梃子に、自動車産業を育成する。
※3 大統領令(EO 第 182 号)の内容については、以下のレポートご参照。
「AREA Report 400 フィリピン:自動車産業再生プログラムを発表」2015 年 6 月 11 日
http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20150611.pdf
※4 1 ペソ=2.48 円で計算。以下、同様。
以下、今回発表された施行細則より、
1.本プログラムの対象となる自動車メーカー(参画自動車メーカー=Participating Car
Makers、以下、PCM)
、部品メーカーの条件
2.インセンティブの内容、インセンティブの対象となる自動車部品のリスト
を掲載する。
1
1.本プログラムの対象となる自動車メーカー(PCM)、部品メーカーの条件
(1)モデルの登録基準
モデルの登録基準は、以下に基づく(以下の条件に限定されるものではない)
。
① 海外および国内で、実績があり、競争力がある。
② 車体組立および大型プラスチック部品組立のための投資を行う。
③ 投資委員会が決定する計画生産台数。ただし、最長 6 年のモデルライフに対し 20 万台
を切ってはならない。
④ 当該モデルについての投資計画が経済的影響を持つこと。部品製造業およびその関連業
種、雇用創出 、および全般的消費者福利に対する影響も含む。
⑤ 全般的競争力があること、および長期的産業発展が見込まれること。
⑥ 投資委員会が決定する燃費効率および排気ガス基準を遵守すること。いかなる場合も大
気浄化法で定められた基準より劣ってはならない。
複数のモデルが同等の評価となった場合、フィリピン経済への総合的な影響の大きさを考
慮して対象モデルが選定される。
(2)自動車メーカーに求められる最低限資格
① 国際的知名度のある自動車メーカー/ブランド所有者および、またはそれらの企業と共
同で事業活動を行う、国内で認定されたライセンス取得済み製造メーカー。
② 国際的な実績があり、国際的に認知されたブランドで、アジア、欧州、および、または、
北米で、かなりの市場占有率を有する。
③ 多国籍で企業活動を行っており、研究開発、製造、マーケティング、アフターサービス
を、アジア、欧州、および、または、北米で行っている。
(3)部品メーカーに求められる最低限資格
① PCM が自分の流通モデル用部品の製造業者として部品メーカーを認定する。
② OEM 自動車部品メーカーおよび/または正式国内ライセンス取得済み製造業者で、
共同で国際的知名度のある自動車メーカー/ブランド所有者と事業活動を行っている。
③ しっかりとした販売実績がある。
④ フィリピン部品製造者連盟の優良加盟員である。
(4)共用検査施設に求められる最低限資格
① PCM 全体からの承認を得ている。
② しっかりとした実績がある。
2.インセンティブの内容(財務支援、1 モデル当たり)
登録 PCM は最長で 6 年の流通モデルライフ期間中に、(1)モデルライフ予算の範囲内で 2 種
類の財務支援を受ける権利が与えられる。具体的には、(2)固定投資支援、および(3)生産台
数インセンティブである。
2
(1)モデルライフ予算(Model Life Budget)
モデルライフ予算(=今回のインセンティブの総額)は、90 億ペソ(約 223 億円)を上回ら
ないものとする。一台当りの財政サポートの総額は、セグメント加重平均価格(SWAP
※5)の
8%とし、45,000 ペソ(約 11 万円)を上回らないものとする。
※5 SWAP=Segment Weighted Average Price。登録モデル一台当りの価格から、製造メーカーの利
益として 5%を引いたもの。
モデルライフ予算は、固定投資支援に 40%、生産台数インセンティブに 60%が割り当てられる。
(2)固定投資支援
固定投資支援は、生産立ち上げ時の設備購入や、トレーニングのための費用をまかなうために
付与され、モデル生産をサポートするために用いられる。固定投資支援は、以下のように割り当
てられる。
① 車体組立および大型プラスチック部品組立については、モデルライフ予算の最小 12.5%
から最大 30%。
② 共通部品と共通検査施設については、モデルライフ予算の 5%。
③ 戦略部品の製造については、モデルライフ予算の最小 5%から最大 22.5%。
上記①、②、③のカテゴリーに割り当てられる固定投資支援の合計は、投資プロジェクトの総
投資支出の 40%を超えないものとする。
優先戦略部品および共通部品のリストは、以下の「付表 A」の通り。その他の対象部品は BOI
により決定される。
【付表 A】固定投資支援の対象となる優先的共通部品、戦略部品
No.
部品名
同英文
1
自動車用の織物
Automotive grade fabric
2
エンジン、エンジン部品、同組立
Engines, engine parts & assembly
3
エンジンと車両の連結部分の部品
Engine mounts
4
トランスミッション部品、トランスア
クスル部品、同組立
Transmissions/transaxle parts & assembly
5
恒速度継手
Constant velocity joints
3
No.
部品名
同英文
6
車軸
Axles
7
グリル
Grill
8
ランプ
Lamps
9
ショック・アブソーバ、支柱
Shock Absorber and struts
10
サスペンションメンバー(サブフレー
ム)
Suspension members
11
ワイパー・モーター機器、ワイパーブ
レード
Wiper motor mechanism, blade
12
ハンドル
Steering wheel
13
電動パワーステアリングシステム
Electric power steering system
14
窓開閉装置
Window regulators
15
コンビネーション・メーター
Combination meter/Instrument cluster
16
シャーシ(車台)、サブ・フレーム
Chassis & sub-frame
17
内装仕上げ材
Interior finishing
18
継電器、スイッチ
Electric Relays & switches
19
オルタネーター(充電装置)、始動
モーター
Alternator and starter motors
20
座席装置、座席リクライニング装置、
座席スライド装置
Seat mechanism/Seat recliner and sliders
21
格納式シートベルト
Retractable seat belts
22
アルミニウムラジエータ、蒸発器、コ
ンデンサー、オイル・クーラー
Aluminum radiators, evaporators, condensers, and
oil coolers
23
プラスチック製燃料タンク
Plastic fuel tanks
24
燃料ポンプ
Fuel pumps
25
ブレーキ装置、ブレーキ部品
Brake system and components
26
エアコン用コンプレッサー、エアコン
部品
Aircon compressor and parts
4
No.
部品名
同英文
27
エアバック装置
Air bag systems
28
自動車用ガラス
Automotive glass
29
ドア、バックミラー
Door & rear view mirrors
30
前輪連結棒
Tie rods
31
クラッチ・ディスク
Clutch disk
32
クラッチ・カバー
Clutch cover
33
鍵
Locks
34
モーター
Motors
なお、固定投資支援を受ける、①「車体と大型プラスチック部品組立」については、認定後、
36 ヵ月以内に主要なプラスチック部品の生産を行うと共に、50%以上の車体組立を行わなければ
ならない、②「共通部品、共用検査施設」
、③「戦略部品」
、については、認定後、36 ヵ月以内に
生産またはサービスを行わなければならない。
(3)生産台数インセンティブ
生産台数インセンティブ(PVI=Production Volume Incentive)は、生産台数と、物流の効率
性により、以下の算式で付与される。
PVI=SPS(※6)× 実際の年間生産台数 ×LEI(※7)
※6 SPS は、以下の算式で計算される。
SPS =
(60%×MLB[モデルライフ予算])÷(VOLML ※8―100,000)
また、SPS の値は、以下の累積生産台数に関するインセンティブにより計算される。
SPS
累積生産台数
0~100,000 台
0 ペソ
100,001~200,000 万台
54,000 ペソまたは 9.6%×SWAP のいずれか低
い値
5
生産台数が 20 万台を超えた場合、SPS は 27,000 ペソまたは 4.8%×SWAP のいずれ
か低い方の値となる。
LEI は、以下の算式で計算される物流の効率性に係る指数で 0 から 1 の間となる。
※7
LEI =
Nf - Na
Nf - Nt
Nf … CKD 部品全体の容量(m3)
=車一台当りの部品総 m3 量
Na… 輸入部品の容量(m3)
=年間輸入部品量(m3)÷年間総生産量(台)
Nt… ハイテク部品割当量(m3)
=車一台当たりの使用ハイテク部品量(m3)
PCM から提出された認定モデルのデータに基づき BOI が認定し、1 ロットの
CKD 部品の全量を監査する。また、モデルのライフ期間中にレビューを行う。Nt
は、Nf の 23%以下とする。
※8 VOLML は、計画総生産台数。参画自動車メーカーが提出した最長 6 年間のモデルラ
イフ期間中のモデル車種生産台数。
(4)生産台数インセンティブの適格要件
PCM は、以下の要件を満たすことで、生産台数インセンティブを付与される。
a. 車体組立の 50%以上を行う。
b. 大型プラスチック部品組立の主要部品の生産を行う。
c. 10 万台以上の生産を行う。
d. BOI の認定時に定められた条件を充足する。
初回の生産台数インセンティブの計算に用いる LEI の値には、最初の 4 万台の LEI を用
いる。
6
【参照レポート】
「AREA Report 400 フィリピン:自動車産業再生プログラムを発表
三菱東京 UFJ 銀行
2015 年 6 月 11 日」
国際業務部
http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20150611.pdf
【参考サイト】
「自動車産業再生プログラムの施行細則」
CARS Implementing Rules and Regulations (IRR)
http://industry.gov.ph/cars-program-irr/
「自動車産業再生プログラム」
http://industry.gov.ph/cars-program/
レポート作成:
・
国際業務部 情報室
北村 広明
[email protected]
本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。本資料
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・
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・
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・
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