...

GPCI コミッティ会議 @シンガポール~香港、北京

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

GPCI コミッティ会議 @シンガポール~香港、北京
2009 年 10 月 21 日
GPCI コミッティ会議 @シンガポール~香港、北京
森記念財団研究員
久保隆行
今年の夏は、短かった。GPCI 関連でヨーロッパを歴訪したのち、すぐまた都市戦略研究所のもう
一本のプロジェクト、東京未来シナリオの有識者ヒアリングのため北京に向かった。さらに香港大
学主催の Asian Urbanization Conference に出席するため香港を経由して最後はシンガポール
を訪問。講演のためにシンガポール国立大学を訪れていた GPCI コミッティのサスキア・サッセン
教授とのミーティングを行い東京に戻ったころは既に秋の気配が漂っていた。偶然か必然か、訪
問した都市は今年の GPCI で目立つ動きをしている。今年のランキングの発表を直前に控え、東
京をはるかに超える巨大都市である北京、そして Asian Little Dragons と呼ばれる国際都市、香
港、シンガポールの最近の様子を振り返っておきたい。
Profile
■北京
■東京 23 区(参考)
人口: 15,810,000 人(2007 年)
人口: 8,663,751 人(2008 年)
面積: 16,410 ㎢(2005 年)
面積: 621 ㎢(2005 年)
■香港
■シンガポール
人口: 7,010,000 人(2008 年)
人口: 4,840,000 人(2008 年)
面積: 1,104 ㎢(2008 年)
面積: 704 ㎢(2006 年)
Tokyo
Beijing
Hong Kong
Singapore
1
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
空港から都心へのアクセス比較
先日、国土交通大臣が羽田国際ハブ化を打ち出し、国内が大きく揺れた。この出張の頃はまだ政
権が交代しておらずとても考え付かないことであったが、実現すれば東京はこれらの都市と国際
空港アクセスという指標で漸く同じ土俵に乗ることになる。2010年開業予定の羽田国際ターミナ
ルの行方を見守りたい。
都市
北京
香港
シンガポール
東京
空港名称
北京首都国際空
香港国際空港
チャンギ国際空
新東京国際空港
港
港
交通手段
機場快軌
Airport Express
MRT 東西線
成田エクスプレス
到着地
東直門(天安門広
香港駅
City Hall 駅
東京駅
場北東約4Km)
(途中下車)
所要時間
約20分
約25分
金額
約350円
約1500円
約30分
約120円
約60分
3000円
北京首都国際空港
2008年のオリンピックに合わせて新しい国際空港に切り替わっていた。右下の写真にあるように、
大きすぎてターミナルの反対側がスモッグにかすんでいる。国家の威信をかけて建設した最新鋭
の空港は、はたしてアジアのハブ争いでどのようなポジションになってゆくのであろうか。
Beijing International Airport
CBD (Central Business District)
宿泊したホテルのある王府井付近の東単駅よ
り国貿駅まで地下鉄にて移動。下車して地上
に出るやいなや CCTV(中央電視台)本社ビル
が目に飛び込んでくる。2002年ごろから我々
の上海のパートナー事務所が OMA の下で実
施設計を手掛けておりこの計画を知っていた
が、未だに建設途上であった。そして振り返る
Wang Fu Jing
2
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
と竣工間際の国貿(国際貿易センタービル)第3期が北京最高の330mの高さでそびえたち、外
資系のオフィスビルや高級ホテルから成る200m級のタワーがそれを取り囲みながら CBD を構
成している。土曜日であったため、CBD としてのビジネス街の雰囲気には乏しかったが、歩道を含
む諸施設もその他の繁華街とは少し異なるセンスの良さで整備されており、国際金融センターへ
の成長の意気込みが感じられる。上海にも同じ名前のビルがあるアイルランド系のケリーセンタ
ーにて日本食のレベルをチェック。中国にいることを実感した。CCTV の裏手に行くと今年の春起
きた火災で燃えた同敷地内のホテル棟(マンダリンオリエンタル)が無残な姿で孤立していた。
CCTV (Under Construction)
CBD
三里屯
CBD から北にタクシーで10分ほどのところに、
東京で言えば六本木にあたる三里屯がある。
タクシーを下車するといきなり欧米系の観光
客の群れに遭遇。この地域は他と比べて異様
に欧米系比率が高い。メインストリートである
三里屯南路の入り口角に昨年オープンしたと
いう三里屯ビレッジが歩行者の目を引く。建
物群は5,6階建で路地空間を構成しており、
どことなく上海の新天地の現代版と言った感
じがする。ヒューマンスケールを超える北京の
San Li Tun Village
3
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
街並みとは全く異なる、人間にとって心地の良い空間とはこういうものなのか、大勢のカップルや
子供連れの家族で賑わっている。三里屯南路に戻ると道沿いに欧米人向けのバーやレストラン
が立ち並ぶ。上海のヘンシャン路あたりの雰囲気に良く似ており、租界風の独特の雰囲気を醸し
出している。さらに奥に進めば並木通り沿いに大使館がぽつぽつと立ち並び、広尾界隈を連想さ
せる。後日香港での国際会議で知り合った在北京のドイツ人学者に聞けば、彼女もこの界隈に住
んでいて非常に気に入っているそうである。国際都市には外国人に心地の良い居場所が必ず存
在するのである。
San Li Tun
4
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
香港国際空港
現在の場所に国際空港が移転して10年が経過しているが、同じくフォスターが設計を手掛けてい
る香港上海銀行ビルと同様に古さを全く感じさせない。また、2年前に第2ターミナルもオープンし
てアジアのハブとしての座を確固たるものとしている。都心に残された啓徳空港の跡地は未だに
再開発されておらず、環境に配慮しながら慎重に利用計画が検討されている。(右下は Hong
Kong Planning and Infrastructure Exhibition Gallery にて展示中のスキーム)
Hong Kong International Airport
Kai Tak Airport Development Scheme
セントラル周辺
いわゆる CBD 地区であるセントラル周辺は地元の大手デベロッパーのサンホンカイ、香港ランド
等が開発を競い合いながらハイスペックなオフィスや商業施設を集積させている。地区内は空中
デッキで接続されているばかりでなく、地上でも HSBC の1階部分が歩行者の通りぬけに開放され
ていたり、スロープ状に地下通路にてスターフェリー乗り場に接続されていたりしてスムースな歩
行者動線が確保されている。(右下の写真は同地区の水際で行われている埋め立て工事。セント
ラル駅前のホットな不動産がおもむろに生産されている様子がうかがえる。)
Central
5
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
九龍駅開発
ユニオンスクエアと言う名称で2002年より MTR と香港の大手デベロッパーのサンホンカイにて開
発が進められており、KPF の設計による香港最高となる484mのインターナショナルコマースセン
ター(ICC)が部分的に工事している以外は完
成・オープンしている職住複合開発である。香
港国際空港からエアポート・エクスプレスにて2
駅目、約20分の位置にあり、もう一つの拠点で
ある IFC を中心とする香港駅とも同エクスプレス
と在来地下鉄の両方で5分接続されている。ア
クセシビリティ、規模、ランドマーク性ともに六本
木ヒルズをはるかに凌ぐ国家戦略的プロジェク
トであることを実感することができる。
Kawloon Station
上環周辺・ウェスタン・マーケット
上環は香港の植民地化当初から地元の中国系の人々が多く生活をしていた地域であり、現在で
も古くからの商店や飲食店が多く立ち並ぶ地域である。その地域に1906年に建設された、ウェ
スタン・マーケットは赤レンガによるイギリスの伝統的な様式に基づいており、当初は食料品市場
として利用されていた。1988年に老朽化のために閉鎖されたが、香港での歴史的建造物の保存
運動の波に乗り1991年にショッピングセンターとして再生され人気スポットとなっている。
Urbanization Conference でも香港の歴史的建造物の再生事例の成功例として紹介されていた。
6
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
Western Market (Model)
Sheung Wan
Western Market
Alley
View to Kawloon
ダイアモンド・ヒル
MTR にてセントラルより約20分の場所に位置する緑豊かな高級住宅地。駅には大型ショッピング
モールが併設されており、駅前は長期間バラックが立ち並んでいたところを寺院を中心とした大規
模な公園として再開発して市民に開放されている。駅周辺を見下ろす丘の上には多数の超高層
住宅がそびえ立ち、さらに奥には山並が連なる。後方の山はハイキングコースとしても人気が高
いとのことである。
Diamond Hill
7
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
油麻地、旺角周辺
2004年にこの地区にオープンした大規模再開
発プロジェクト、ランガムプレース。露店やマー
ケットが集積するこの地区の雰囲気とは全く異
なる現代的な施設であるが、六本木ヒルズも手
掛けたジョン・ジャーディ事務所による巨大ショ
ッピングセンターは平日であるにもかかわらず
大変なにぎわいを見せている。しかも、地上15
階建ての商業施設を檀状の吹き抜けが連なり
最上部までも特大のエスカレータをうまく組み
合わせながら客を呼び寄せている。再開発地
Yau Ma Tei
区のさらに裏手に行くと大型の共同住宅群が立
ち並び、そこに地元の多くの小型商店やマーケ
ットを運営する人々が住んでいる。政府による
公共住宅プロジェクトで成功例としてとりあげら
れているとのことである。ぱっと見た目は老朽
化しかけた古い共同住宅にも見えるが、職住近
接が実現されており、コミュニティの雰囲気も良
く、センスの良い店やシネマ等が立ち並ぶ落ち
Mong Kok
Langham Place
着いた感じの居心地の良いところであった。
Shek Kip Mei
油麻地、旺角地区からやや北に位置する住宅地であり、1953 年に大火災に見舞われてから政府
により共同住宅群が整備され、現在はそれらの建て替えが活発に行われている。その一角にあ
る9階建ての吹き抜けもつ建物を建て替えずに上部にガラス屋根をかけながら再利用したアーテ
ィスト育成施設がある。Jockey Club Creative Arts Centre と呼ばれるその施設は香港バプティス
ト大学等により運営され、さまざまな工房やギャラリーを設置し地元の若手アーティストの才能発
掘の場として活用されている。
Jockey Club Creative Arts
Centre
8
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
シンガポール チャンギ国際空港
昨年オープンしたばかりのターミナル3に到着。ロビーの広さがヒューマンスケールをはるかに超
えているが、混雑もなく瞬く間にイミグレーションへ。ふと横を見ると地下鉄の自動改札かと思いき
や、自動入国ゲート!出入国がパスモでできる日がいつかは日本にも来るのであろうか。
Changi International Airport
マリーナ・ベイ地区
世界3大 Disappointment として有名なマーライオンを中心にインナーハーバーを形成するこの
地域はシンガポールの中でも現在開発が最も活発な地域であり、マーライオンも観光要素として
以前よりも数倍大きく成長している。対岸では巨大なカジノから成る複合施設が建設中であり、工
期は遅れているものの年内に部分開業するそうである。訪問した時期は F1 グランプリの市街地コ
ースの設営中であり、街はさらに活気づいていた。 (写真左下は建設中のカジノの完成予想模型
と実際の景色が観覧車から一瞬一緒に見えるスポットから撮影)
Marina Bay (Model & View)
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
9
ALL RIGHT RESERVED.
セントーサ島
シンガポールの中心から地下鉄でわずか2駅のハーバーフロント駅から東京ディズニーランドの
ものを思わせるリゾート感あふれるモノレールに乗り換えるとセントーサ島内に到着する。島のな
かは、アミューズメント・リゾート地区とヨットハーバー付きの高級
住宅地区により構成される水と緑が豊かな島である。島の市街
地方面(写真左下)では現在もホテルやカジノが建設中で、沖合
い方面(写真右下)では自然を保全しながら住宅の開発が進めら
れている。ちなみに宅地の価格はリーマンショック前は数十億し
たとのことであったが現在の価格は如何に。
Sentosa Island
Vivo City
伊東豊男氏設計作品のなかで「失敗作」と地元
に住む友人から評されていたので気になり訪れ
た。セントーサ島の対岸に位置する巨大ショッピ
ングセンターであり、MRT とセントーサエクスプ
レス駅にも直結しており立地としては悪くない。
施設規模は地下1階、地上3階建てであるが、
敷地面積が大きく、延べ10万㎡は超していると
思われる。海に面したテラスと半屋外化されて
Vivo City
10
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
いる3階を吹き抜けや屋上庭園などで巧みに演出し、多
くの地元の家族連れで賑わっていた。建築家独特の波
がうねるような形の屋根をコンクリートで造形しているが
水仕舞いが悪く、かなり多くの箇所が薄汚れていたり、
クラックが入っていたりするが、利用者はそんなことには
お構いなしである。
Vivo City
ブギス・ジャンクション
市街地中心部からやや北側に立地するブギスは地元の若者に人気のあるスポットであり、新規
開発も多く行われている。その中心に位置する商業施設、ブギス・ジャンクションは上海プロジェク
トを進めるうえでもかなり参考にさせてもらった。近年のショッピングセンターは大型化するにつれ、
構成についても大きな吹き抜けを中心に何層も店舗が積み重なり、外部との関係は断ち切り内部
完結型になる傾向が強かった。そのなかで、ブギス・ジャンクションは周辺の商店との連続性を保
ちながら、内部空間も路地状のヒューマンスケールに合わせた空間構成をとっている。さらに、施
設間に軽快なガラス屋根を自然に配置することで、シンガポールの年間を通した蒸し暑い気候の
なかで、光があふれながらも空調の利いた快適な空間を提供している。センスの良い小売りと飲
食施設、さらにインターコンチネンタルホテルが組み合わされており、多くの人で賑わっていた。
Bugis Junction
11
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
クラーク・キー地区
マリーナ・ベイ地区よりシンガポール川沿いにウォーターフロントプロムナードが整備されており、
そぞろ歩きをしながらクラーク・キー地区にアクセスできる。地元の友人曰く、ほんの数年前までは
資材などが置かれている魅力のない川沿いの空間だったのが最近一変したとのことである。如何
にも米系の商業デザイン事務所が手掛けたようなウォーターフロントの立地を生かした商業空間
とアーバン・リゾートっぽいホテル群が連なって行く。昼間のにぎわいはさほどでもないが、夜にな
ると下の写真でわかるように遅い時間まで地元と外国人観光客でごった返している。
Clarke Quay
バイオポリス
地元の友人はランドスケープ・アーキテクトであるが、彼がデ
ザインに携わっており、最近のシンガポールの成長への意欲
が感じられるプロジェクトとして紹介された。シンガポール政
府自ら主導するバイオメディカル研究開発拠点であり、最近
第一期がオープンしたばかりである。この研究施設群は、シ
ンガポール大学の隣接地に整備中の科学技術パーク内にあ
り、政府主導で世界中から積極的に若手の優秀な研究者を
集めており、パーク内は研究施設のみならずさまざまなアメニ
ティが提供されつつある。場所はやや郊外ではあるが、市内
中心部からタクシーで20分程度の距離である。
Biopolis
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
12
サスキア・サッセン教授打合せ
GPCIコミッティメンバーの一人であるサスキア・サッセン教授は
年の半分をコロンビアで教えながらニューヨークで過ごし、残り
の半分を LSE で教えながらロンドンで過ごしている。先般ロンド
ンにピーター・ホール卿を訪ねる際に「私もそのころはロンドンに
いるから」と教えられており、一石二鳥のコミッティ会議が開催で
きると考えていたが、甘かった。グローバル・アクターは忙しい。
直前になって「ロンドンから急きょワシントンDCにカンファレンス
に 行 く こ と に な っ た 」 と の 連 絡 。 ”Our paths would cross
somewhere in the world!”などとメールで明るくやりとりしてい
るうちに、まさにシンガポールで cross することがわかった。サッ
セン教授とはシンガポール国立大学構内で GPCI-2009の中
間報告に基づきアドバイスを受けた。今年はとくに環境分野の指 NUS
標を充実させているが、その他にも文化交流分野の指標の追加
や見直しを行った結果、今回訪問した都市のスコアが上昇して
いる。とくに、シンガポールが総合ランキングでも上位になりつつ
あることについての報告に“No Doubt!” とサッセン教授。シン
ガポールについて非常に高い評価をしている。
Saskia Sassen
そんなサッセン教授とも間もなく再会する日となる。もう一人のコミッティのリチャード・ベンダー、カ
リフォルニア大学バークレー校名誉教授も東京に到着した。そしてまさに今、誰もいなくなった真
夜中のオフィスで GPCI-2009のレポートの最終チェックが完了しようとしている。
おわり
13
COPY RIGHT © 2009 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION.
ALL RIGHT RESERVED.
Fly UP