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ULI 年次総会 @サンフランシスコ

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ULI 年次総会 @サンフランシスコ
2009 年 12 月 9 日
ULI 年次総会 @サンフランシスコ
森記念財団研究員
久保隆行
Global Power City Index (GPCI)を題材とした研究成果の発表を今年の秋にアメリカで行ってき
た。今年で2回目の発表となる世界の都市総合力ランキングであるが、今年は発表直後に海外の
メディアからも大きく取り上げられ今や世界における主要都市ランキングの一つとして定着してき
た感がある。アメリカでは先ず、サンフランシスコで行われた ULI(Urban Land Institute)の年次
総会における Concurrent Session において GPCI プロジェクトチームに外部の専門家も交えての
発表を行った。また、大会ではさまざまな業種の人々と親交を深めることができ、以前共に上海の
プロジェクトを進めていた旧知の仲間たちとも再会を果たすことができた。
その昔、アメリカ東海岸に住んでいたころに夢見ていた西海岸での生活。とくに、サンフランシスコ
はアメリカ人の間でも非常に人気の高い都市のひとつである。今回はカンファレンスの合間を縫っ
てサンフランシスコの持つ都市としての魅力について改めて探ろうと思った。
City Profile
■サンフランシスコ
■東京 23 区(参考)
人口: 824,500 人(2008 年)
人口: 8,663,751 人(2008 年)
面積: 121 ㎢(2008 年)
面積: 621.35 ㎢(2005 年)
San Francisco
Tokyo
都市のスケール
サンフランシスコ市域としては人口は100人万にも満たないが、東のオークランドやシリコンバレ
ーのある南のサンノゼを含むサンフランシスコ・ベイを囲む地区全体が Bay Area と呼ばれ、740
万人を擁するメガ・リジョンとしてそのパワーを評価されることのほうが一般的であろう。
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一方でサンフランシスコの都心について見た場合、その中心機能はおよそ2km圏内に非常にコ
ンパクトにまとまっている。
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1: Union Square 2: SOMA 3: Financial District 4: North Beach 5: Mission Bay
サンフランシスコ国際空港
成田を夕方出発して同日の現地時間の昼前に到着。到着ロビーからエスカレータで一層上がると
目の前に BART(Bay Area Rapid Transit) への連絡ゲートがすぐに現れる。2003年に市内から
延長されたらしい。市内中心部にあたる Powell Street 駅まで$8(約700円)にて約20分で非
常に快適にアクセスできた。
BART Station
BART
Scenery
Market St.~Union Square 周辺
Powell Street 駅から地上に出ると、サンフランシスコのメインストリートである Market Street の中
心部に遭遇する。ここにはケーブルカーの発着場があり、折り返し運転のための古びたターンテ
ーブルが街の歴史を感じさせる。多くの観光客にまぎれながら Powell Street の坂を上がってゆく
と街のへそにあたる Union Square にたどりつく。大型の商業施設やホテル、劇場などが集まるニ
ューヨークで言えば Times Square のような場所と言ってよかろうか。11月とは言っても日差しが
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強いと汗ばむ陽気のなか、多くの人で賑わいを見せている。
Turn Table and Market Street
Powell Street
Union Square
Union Square
SOMA 地区
Union Square から Market Street をはさんで南側に SOMA(South of Market)地区が広がる。も
ともとは起伏が少なく、工場や倉庫を立地させるために大きめのロットで計画されていた地区であ
るが、現在は利用転換が進んで今回の ULI の大会が行われた巨大コンベンション施設 Moscone
Center や San Francisco MOMA などの文化施設が多く連なる場所となっている。また、最近では
高級レジデンス等の開発も増加してきている地域でもある。
Moscone Center
SF MOMA and Condos
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Financial District~China Town
Market Street の北東の海に向かった突き当たりに位置する場所にサンフランシスコの CBD にあ
たる Financial District がある。この地域の至る所で目を引くのが1980年代から新規の開発にお
いて併設が義務付けられたパブリックスペースである。新旧いろいろとあるが、街を歩き疲れたと
きにちょっと休める場所があるのはビジターにも助かる。Citigroup Center のように屋内を時間制
限付きで開放しているスペースや、Embarcadero Center のように数ブロックにまたがり連なる施
設の屋上部分を緑化しながら商業施設を配してペデストリアンデッキでつなげている事例もある。
Embarcadero Center はさらにその上部に高層のオフィスやホテル、住宅が立ち並び、典型的な
モダニズム建築ではあるが、歩車分離と高度利用と緑化をうまく組み合わせた Vertical Garden
City の良い見本であると言えよう。
101 California Street
Citigroup Center
505 Sansome Street
Crocker Galleria
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Embarcadero Center
Financial District の西のエンドを超えると突然見慣れた光景が飛び込んでくる。アメリカで最大の
規模を誇るチャイナタウンである。その規模がニューヨークのを超えると思うと驚きであるが比較
的整然としていて小奇麗な感じがする。サンフランシスコはアメリカの中でも中華をはじめとするア
ジア系の食事が美味しいことでも有名である。カジュアルな感じの食堂にふと立ち寄ると大勢の地
元の中国系と見られる客と観光客で賑わっていた。ちなみにいままで訪れた海外の都市でチャイ
ナタウンらしき地区に遭遇しなかったことは、ほとんどない。
Chinatown
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North Beach
上海のペデストリアンデッキ計画をつくる際に協働したサンフランシスコに本社のあるランドスケー
プの大手デザイン事務所 EDAW(11月より AECOM に改称)を訪問するために North Beach に
行った。地名を聞いた際にビーチサイドにオフィスがあるとは流石と思ったがそれは100年も前の
話であった。しかし、サンフランシスコのシンボル的な丘である Telegraph Hill の袂に立地するロ
フト風のオフィスはゆとりがあり、すぐ近くのリトルイタリー地区にはレストランやバーが充実してい
る。この場所で行われている創作活動はここ数年は全体の受注の60%以上がアジア向けと聞き
サンフランシスコとアジアのつながりについて改めて思い直した。
North Beach
EDAW (AECOM)
Studio
EDAW 事務所をあとにして Bay Bridge の目の前にある Gensler 事務所を訪問した。こちらもや
はり古い建物を改装していて、Bay Bridge を借景にしたモダンなインテリアが映える。Gensler は
上海にて SWFC の高さを超えるタワーを設計し、現在建設中であり見逃せない存在なのである。
次にそこからさらに南に現在サンフランシスコで最も開発が注目されている Mission Bay 地区に
向かった。
Bay Bridge
Gensler
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Mission Bay
San Francisco Redevelopment Agency が主導する再開発プロジェクトで計画は1998年に遡る。
2000年に移転オープンしたサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地 AT&T パークの南側に位置
する約120ha が再開発区域となっていて現在も開発中である。自然保護区域を多く持つ狭小な
サンフランシスコ市内において最後の聖地と呼ばれる鉄道ヤードであったこの区域は官・学・産が
共同となってバイオテクノロジー研究施設と住宅施設を中心に開発が進められている。地理的に
Market Street がある中心部からやや離れているものの、区域内から発着する Caltrain を利用す
ればシリコンバレーにダイレクトに通勤できるという中心部にはない魅力を持っている。さらに、計
画中の地下鉄網が実現すれば Market Street や Union Square にも直結されることになる。この
ような状況を見越してか、区域には既に多くの高級コンドミニアムやハイエンドなレストランが立ち
並んでいる。
AT&T Park (Front)
AT&T Park (Back)
Bay Bridge
Inlet at Mission Bay
Condominium
Condominium
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コンドミニアム群と同じく一足先にカリフォルニア大学サンフランシスコ校のメディカルリサーチ系
のキャンパスが完成している。そのほかにもカリフォルニア再生医療研究所などのバイオ・メディ
カル系の研究所が立ち並び、今後は総合病院等も続々と建設される予定である。
University of California at San Francisco Mission Bay
Mission Bay Development Plan
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Downtown San Francisco / View towards Telegraph Hill
今回は時間の都合でダウンタウン周辺しか歩くことが出来なかったが、Golden Gate Park 周辺の
美しい自然と街並みなどサンフランシスコの魅力を伝える場所はまだまだ沢山ある。さらに、少し
郊外に行けば Berkeley や Napa Valley などもあり、高いレベルの都市の魅力が揃っているよう
に思われる。ULI のセッションで地元の人と思われる参加者からの質問を受けた。居住分野でサ
ンフランシスコは何故ムンバイよりもスコアが低いのか?Good Question である。サンフランシス
コは実は凶悪犯罪が意外と多く、さらに地震が多いのに対して備えが万全ともいえない。住宅コス
トもダウンタウンにおいては非常に高い。このような指標が積み重なりムンバイに負けてしまう結
果となった。ならば、海外赴任を命じられたときにサンフランシスコとムンバイのどちらを選ぶか?
そんなことを考えながら、次の目的地のニューヨークへと向かった。
つづく
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