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英語科教育学 文献発表 2016/05/09 担当:E.N 第3章「背景知識と理解
英語科教育学 文献発表 2016/05/09 担当:E.N 第3章「背景知識と理解」 本章では読解プロセスにおいて既有知識がどのように活性化され、文章理解にどのように 影響するのか、について述べられている。 1. 行間を埋める読み手の知識 既有知識:文章のトピックや書かれている情報に関連して読み手がすでに持ち合わせ ている知識。背景知識(background knowledge) 、先行知識(prior knowledge) 、ス キーマ(schema)などがある。 読み手が文章理解にかかわる既有知識を持たない場合や、持っていたとしても上手に 活性化できない場合には文章理解も内容の把握も困難になってしまう ⇔既有知識が存在することにより逆に理解を阻害してしまったり知識の豊富な読み手 のほうが知識の乏しい読み手に比べて理解の度合いが低くなったりすることがある なぜ既有知識が理解に影響するのか? →読み手は「何について書かれているのか」という情報から既有知識を活性化させ、 予測をたてながらトップダウン型で読みすすめていき、一貫した心的表象を構築する ため。 記憶機構 短期記憶(short term memory, STM):一時的な記憶に関与する 長期記憶(long term memory, LTM) :経験や知識を長期間保持する ワーキングメモリ(working memory):情報の「処理」と「保持」を並行して行 う記憶機構 ワーキングメモリには容量制限があり、 「処理」と「保持」はトレードオフの関係にあ る。 ワーキングメモリには読み手がもつ既有知識(エピソード長期記憶)が常に影響を及 ぼす(Baddeley, 2000) エピソード記憶はどのように心的表象の構築に影響を及ぼすか? → 背景知識を活性化するために単語認知という下位レベルの処理が影響する 活性化された背景知識が個々の単語の認知や認識に作用する 記憶機構の他の分類 知識(スキーマ)→ 内容スキーマ:文章のトピックや内容に関わる 形式スキーマ:言語や文章構造に関わる 2. 背景知識の影響を受けるのは読みの「深さ」 背景知識は文章理解のどのような側面に影響があるのか 読み手に背景知識が少ない場合、状況モデルを構築するためには文章そのものに 一貫性があり、情報が明示的に述べられている必要がある(van Dijk &Kintsch, 1983) 背景知識を活性化できない読み手の場合、同じくテキストベースの処理に労力が 費やされる(Carrell, 1983 など) →状況モデルを構築するような読み(高次の情報処理)とテキストベースの読み(低 次の情報処理)は補完関係にある。 背景知識は読解中の情報処理の深さにも影響を与える(Alexander & Murphy,1998; Braten & Samuelstuen, 2004 など) 。例:心内要約、メインアイデアの精緻化や情報の分 析(Wineburgh,1991)など 読み手が持つ背景知識の量と読解中に使用される方略の関連(Braten & Samuelstuen, 2004)より テスト目的以外の目的で読む場合には背景知識の量によって情報処理の深さが異なる。 →背景知識が中程度以上ないと深い情報処理ができないのでは? テキストに表れていない情報の理解にも背景知識が影響する 例:Queen of Arts 「芸術の女王」と解釈するか、故ダイアナ妃に関する記事だと 推測するか 3. 背景知識を活かせる人と活かせない人 背景知識に頼りすぎることで文章に書かれている内容を誤って解釈することもある。 トピックに関する知識の量が多ければ多いほど理解に有利かというと、そうでもない (Caillies, Denhiēre, & Jhean-Larose, 1999 など) 。 Schmidt and Boshuizen(1993)より →読む時間が十分にある条件下では中程度の知識を持った読み手のほうが、知識が豊 富 な 読み 手や 知識 が乏し い 読み 手よ りも 多くの 情 報を 再生 でき る。= 中 間効 果 (intermediate effect) 理由:知識の豊富な読み手は情報を高次の情報へと置き換えて要約していたため。 知識の豊富な読み手は再生するさいに関連ある情報だけを選んでいるため (Patel & Groen) 。 読解時間が短く制限されるにつれて中間効果は目立たなくなる(Schmidt & Boshuizen, 1993) 。 Caillies, Denhiere, and Jhean-Larose (1999)より 専門知識そのものの構造がテキスト理解に影響を及ぼしたのではないか 知識が豊富な人の知識は目的論的構造 知識が中程度以下の人の知識は因果的構造 →例えば因果的構造の文章理解では中間効果がみられるのではないか 背景知識は英語力より重要か? 背景知識よりも言語熟達度のほうが理解度に影響する(Clapham, 1996) 文章内容が難しい場合には読解熟達度の影響が強くなる(Ushiro et al., 2004) 4. 上手に関連する知識を活性化するには 背景知識を活用することで同じ言語力であってもより深い・効率的な理解が可能にな る。 アナロジー(具体化情報)を提示する →類似した背景知識を理解に役立てることができる 情報量が多くなってしまい読み手が混乱してしまうこともある 文章を読む前に背景知識を活性化させる(プレリーディング活動) イラストやタイトルを見て、トピックに関連した知識を活性化させる 教師の発問によって、関連しない知識の活性化を抑制する 強調されている文字や談話標識から、ストーリーの展開を予測する →知識を与えるのではなく、知識を活性化させることがポイント