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山本博文 (1985) 根尾南部地域および伊吹山地域の美濃帯中・古生層

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山本博文 (1985) 根尾南部地域および伊吹山地域の美濃帯中・古生層
伊吹山の地質について(2014 年 7 月 31 日 「理科教員野外研修」資料)
岡本義雄(大阪教育大学・附属高校天王寺校舎,非常勤)
[email protected]
1.伊吹山の地質を考えるにあたって
古来,大阪の北部の北摂山系から京都滋賀にかけての山々の地層は,
「秩父古生層」と教科書に書かれた時期
が長かった.なぜなら,その地層の多くはやや変質した砂岩・泥岩の互層,凝灰岩(シャールスタインとその
頃呼ばれた)
,チャート,石灰岩などから構成されていたが,この石灰岩からフズリナや海ユリといった古生代
後半の典型的な「示準化石」が多量に発見されたからであった.この地層のつながりには山口県の秋吉台,広
島県の帝釈峡,岡山県の阿哲台など,大規模は石灰岩地形も見られる.この地層の関東圏での典型的な産地が
秩父地方であったため,これら一連の石灰岩を含む地層に「秩父古生層」という名前がつけられた.筆者の大
学入試の頃まではこれが常識であった.
ところが,この地質学の常識が 1980 年台に覆る.それまで大型化石(フズリナや海ユリ,サンゴなど)は
石灰岩にしか発見されず,石灰岩を取り囲んでいた化石の発見がほとんどなかった砂岩や泥岩,チャートを処
理すると,新たに微化石と呼ばれる放散虫や「コノドント」などの顕微鏡サイズの化石がたくさん見つかるこ
とがわかってきた.さらにこれらの放散虫などの微化石はすでに時代がわかっていたヨーロッパの地層などで
の産出から,時代別の区分が丁寧になされていたのだ.ところがこの時代の区分を日本の「秩父古生層」に適
用するととんでもないことがわかってきた.それまですべて古生代の地層だとされていた,
「秩父古生層」の砂
岩や泥岩,チャートには古生代よりはるかに新しい,中生代の放散虫が含まれることがわかったのだ.これは
「放散虫革命」と呼ばれ,地層の年代の解釈に大変むずかしい問題をもたらした.つまり,一連の地層だと思
っていた地層のなかの,石灰岩が実は一番古く,砂岩・泥岩とチャートはそれよりはるかに新しいという問題
と,後者の2つの間にも時代の食い違いが見られたのだ.これはそれまで地質学の大事な原理であった「地層
累重の法則」が成り立たないやっかいな問題が突然生じてきた.
これを解決したのが,1980 年代当時,ほぼ括弧とした考え方として確立した「プレートテクトニクス」であ
った.プレートテクトニクスによれば,日本列島は太平洋プレートがユーラシアプレートとぶつかり,その下
にもぐり込む構造をしているということはわかっていた.それならば過去もそのような関係は続いていたに違
いない.そんな海洋プレートが陸地のプレートの下に沈みこむ境界で海にたまる地層はどのようなものになる
のか?ここでも四国で重要な発見があった.四国の足摺岬や室戸岬のあたりには分厚い中生代から新生代にか
けての地層が分布する.これを詳細に調べていた高知大学のグループが,地層の何度も積み重なる構造や,そ
の中に挟まるように存在する石灰岩の岩体,海洋の海底を作っていた玄武岩の岩体などの詳細な構造を次々と
明らかにしていった.これらの構造は「付加体」と呼ばれ,プレートの境界の陸側の斜面に堆積する典型的な
地層であることがわかってきた.このプレートの境界には,陸側から河川で運ばれてきた砂や泥が厚く堆積す
る一方,海洋プレートの上面である海洋底で形成されるチャートや,時に火山島や,珊瑚礁などで形成される
石灰質の岩石がまるでブルドーザーでかき集められてこれらの岩石が渾然一体となって混じっている地層が作
られることがわかってきたのだ.これならば,地層の中の岩石による時代が異なるのも納得できる.部屋中の
ゴミをほうきで集めれば,古いほこりから,最近捨てられた紙や,髪の毛など様々な時間のものが一緒くたに
集まることが理解されると思う.日本列島の地層はじつは昔のプレートの境界のいわば「ゴミ溜め」にたまっ
た地層であるとわかったのだ.
さて,私たちは伊吹山でその「ゴミだめ」のなかの珊瑚礁や火山島のまわりにできた石灰岩の地層を見るこ
とができる.この山の7合目以上と3合目付近が石灰岩からなる岩体であり,それより以外はさきほど書いた
中生代の砂岩や泥岩からできている.おそらく砂岩や泥岩の地層の中に,海洋プレートに乗っていた珊瑚礁や
海山の石灰岩の岩体が巨大なレキとして取り込まれたものだと思われる.したがって一見,古い地層が新しい
地層の上に乗っているように見えるのだ.さらに上記したようにこれら一連の地層で唯一,肉眼ではっきりと
化石を確認できる.それはフズリナや海ユリ,サンゴといった古生代の海で珊瑚礁や火山島を形成していた岩
石の破片を見ていることになる.そう考えると,伊吹山の岩石にも遠い時代にプレートに乗って旅をして,今
我々の眼前に展開する,岩石の悠久の時を感じることができるのではないかと考える.
(産業技術総合研究所地
球科学情報研究部門斎藤眞氏の文章(https://www.gsj.jp/Muse/100mt/ibukisan/index.html)などを参考にし
た)
付加体に石灰岩が取り込まれる概念図(http://www.limestone.gr.jp/introduction/より)
右:三畳紀のコノドント(http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/より)
左:ジュラ紀の放散虫化石(http://science.shinshu-u.ac.jp/より)
<参考文献>
https://www.gsj.jp/Muse/100mt/ibukisan/index.html(地質で語る百名山の伊吹山のページ)
山本博文 (1985) 根尾南部地域および伊吹山地域の美濃帯中・古生層.地質学雑誌,91,353–369.
伊吹山で見られる化石(写真は別の地域のもの,wikipedia などより)
Y.Okamoto
[email protected]
<参考>地質時代の区分:http://homepage2.nifty.com/izumonotisitu/kaseki02.htm より
伊吹山の石灰岩は白っぽいものが多く,他の地域の石灰岩(灰色や黒いもの)に比べると,化石が少し見に
くいです.水に濡らしたり,風化した表面をルーペでのぞいて丹念に探してみましょう.表面についたコケや
植物によるシミを化石と間違えないように!
ウミユリ:円筒形の茎にあたる部分がよく見つかる.断面は円形や長方形で円形の断面はドーナツ型をしてい
る.
フズリナ類(紡錘虫)とその進化:フズリナ
類は石炭紀に現れ,ペルム紀にかけて種類と
個体数を増やし,
その過程で急速に進化した.
その概要は概ね,内壁の複雑化と大型化に向
かった.しかしペルム紀末に,三葉虫などと
ともに P-T 境界大量絶滅事件で,姿を消す.
(右図は浜島書店「新地学図表」より)
伊吹山では比較的後期のネオシュワゲリナや
パラフズリナが見られると文献にはあります.
http://www.chubu-geo.org/data/geo/pdf/chishitsu_03.pdf より美濃帯の地質図
伊吹山の地図と地質図
<メモ>
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