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昆虫蛾
コウモリガ,キマダラコウモリ ○ 加害樹種 スギ,ヒノキ,ポプラ,ヤナギなど各種の樹木や草本 ○ 被害の発症 ・ 幼虫が材の中に穿入・食害するため,加害された幹や枝の上部 は樹液の流動が妨げられ,枯死する場合がある ・ 幼虫の穿入口を多量の糞と木屑で穴をふさいでいるので,虫の 発見が容易である ○ 虫の特徴 ・ 成虫(蛾)は,夕方,コウモリのように飛びながら,沢山の卵をバ ラバラと産卵する ・ 幼虫が小さい頃は,ヨモギなどの草本類で成長し,大きくなると 木本に移り住む ○ ・ ・ ・ ・ 防除法 幹や枝の穿入口から針金を入れるなどして幼虫を刺殺する 又は,穿入口に殺虫剤を注ぎ込み綿や土などで蓋をする 根元周辺の表土を剥ぎ取るなど,きれいにする 幼虫のふ化時期にスミチオンなどの薬剤を散布する 幹を一周して食害 39 コ ス カ シ バ ○ 加害樹種 サクラ,ウメ,モモ,リンゴなどのバラ科樹木 ○ 被害の発症 ・ 樹皮下に穿入・加害し,そこから半透明のヤニと糞を出す ・ 表皮に傷付けたこの部分から病原菌が入り,大木が枯れる原因 にもなる ・ ソメイヨシノに多く,樹皮の肌がデコボコになり荒れる(下写真) ○ 虫の特徴 ・ 成虫は蛾であるが,ハチのようにも見える ・ 春から秋まで長期にわた り生息・加害する ○ 防除法 ・ 幼虫は樹皮下に生息するため防除は難しいが,薬剤効果を狙う には,スミチオン乳剤を年3~4回散布する必要がある コスカシバによる加害痕(岩沼市) 40 ゴマダラカミキリ ○ 加害樹種 カエデ,ツツジ,カンバ類,柑橘類など広範囲 ○ 被害の発症 ・ 幼虫は樹皮下から材部に穿孔し,食害しながら繊維状と粒状の 混ぜた虫糞を根元付近に排出・堆積させる ・ 成虫は6月~9月頃まで長期間生息し,新梢部の樹皮を集中的 に後食する ・ 後食された表皮には,ギザギザした平面的な咬み跡が残るの で容易に生息していることが確認できる ○ 虫の特徴 ・ 成虫は黒地に十数個の白い斑点を翅に持つ大型の甲虫で,触 覚は黒と白のまだら模様を呈す ・ 幼虫は材内に穿孔しているため,確認は難しいが,虫糞により 確認が可能である ○ 防除法 ・ コウモリガ,キボシカミキリに準ずる。成虫への薬剤散布も効果 がある 41 ゴマフボクトウ ○ 加害樹種 ツツジ,ナラ,カシ,ハンノキ,カエデなど ○ 被害の発症 ・ 地上に近い枝や樹幹内に穿入する。小枝が折れている場合など には,この虫の加害を疑がう ・ カシの苗木や生垣などの低木にでは,時に枯らすことがある ○ 虫の特徴 ・ 穿入口から3~5mmの円形の淡赤色の真ん丸の虫糞を出し, 堆積させる(コウモリガとは形態が歴然である) ○ 防除法 ・ コウモリガ,キマダラコウモリに準ずる 激害を受けたブナの若木(仙台市泉区) 42 ス ギ カ ミ キ リ ○ 加害樹種 スギ,ヒノキ,サワラなど ○ 被害の発症 ・ 林業上重要な害虫の一つである ・ ヒノキ,サワラはスギよりも被害に弱い ・ 「ハチカミ」と称される根元周辺部から樹幹の上部までの範囲で, 腐朽症状を発生させる原因を起こす昆虫である ・ 成虫から樹幹の粗皮部に産卵された卵は,ふ化後,内皮を食害, その後,材内に穿入加害し,辺材部を不規則に食害する ・ 食害され樹幹部の樹皮が裂けた部分に腐朽菌が入り,虫糞とと もに樹皮が崩れ落ち隆起する。この症状を呈した部分を林業用語 で「ハチカミ」と称す ○ 防除法 ・ 林業的防除方法である健全な森林に育てることが第一条件 ・ 被害木は伐倒駆除。成虫へのスミチオン乳剤も効果がある 脱出孔 食害痕 左:被害に遭ったチャボヒバ,右:食害痕(加美郡色麻町) 43 スギノアカネトラカミキリ ○ 加害樹種 スギ,ヒノキ,サワラなど ○ 被害の発症 ・ この虫に加害された部分を「トビグサレ」と呼び,材価を著しく低 下させる原因をつくる林業上重要な害虫である ・ 雌の成虫が,死節や枯枝のくぼみなどに卵を産卵し,ふ化した 幼虫は樹幹の中に楕円形の穿孔を作りながら食入する ・ 穿入孔から雨水等とともに侵入した腐朽菌により,材の断面に ボタン状の腐れや変色,虫孔として出現させる ・ 被害材を製材したときに変色や腐れが材の表面に現れ,利用上 著しく木材の価値を低下させる。 ○ 防除法 ・ 林業的防除法を用いる。枯枝を付けないように枝打ちをすること で,ほぼ完全に予防できる 症状として現れた「トビグサレ」 44 ソボリンゴカミキリ ○ 加害樹種 ツツジ,サツキ,シャクナゲなど ○ 被害の発症 ・ 幼虫が材の中に穿入・食害するため,樹液の流動が妨げられ 枯死に至る場合がある ・ 幼虫の穿入口には,多量の糞と木屑を穴をふさいでいるので, 虫の発見は容易である ・ 本県では田束山のヤマツツジに発生するなど,高標高地での 発生が懸念される ○ 虫の特徴 ・ 幼虫は樹幹や枝に穿入し,木を枯らすことがある ・ 甲虫の成虫は,葉裏の葉脈を後食する ○ 防除法 ・ キボシカミキリに準ずる。6月の成虫発生初期に薬剤防除を行う ヤマツツジに受けた被害 虫は根元周辺に寄生する 45 アブラムシ類 ○ 加害樹種 多くの樹木に寄生する。樹種毎に寄生する虫の種類は違う ○ 虫の特徴,被害の発症 ・ 成虫,幼虫ともに新芽や新葉に長い口針を刺し込んで樹液を吸 汁する。その時,芽は萎縮,葉が巻いたり,変形することがある ・ 繁殖は雌だけの単性生殖で行い,旺盛に増殖する ・ 排泄物で葉や花,果実が汚れたり,スス病やウイルス病を発生 させる原因となる ○ 防除法 ・ エストックス,オルトランなどの液剤散布が効果的である。低木に はエカチン,ダイシストン等の土壌施用の方法も効果がある ・ 寄生させたくない樹木には,防虫網を張り,成虫の飛来を防ぐ バラに寄生したイバラヒゲナガアブラムシ 「モモアカアブラムシ」の 被害により葉が巻き込む 46 カイガラムシ類 ○ 加害樹種 多くの樹木に寄生する。樹種毎に寄生する虫の種類は各々違う ○ 虫の特徴,被害の発症 虫の特徴や種類として次のような虫種がある ① 貝の形をした堅い殻で覆われているもの ② 背中に白い粉をまとい自由に動き回るもの ③ ロウ物質で覆われているもの ④ 白い袋を付けるものなど ○ 防除法 ・ 何れのカイガラムシも,堅い殻やロウ物質で体が覆われている ため,薬剤の防除時期は限られるが,5~7月の幼虫期にスプラ サイドやカルホスなどの薬剤が効果がある。 ・ 厳冬期に,マシン油乳剤や石灰硫黄合剤の散布は効果的 ツノロウムシ (サザンカ) マツコナカイガラムシ (クロマツ) 47 カツラマルカイガラムシ ○ 加害樹種 クリ,ナラ類,カエデ類,シデ類,カンバ類,ハンノキ類など ○ 被害の発症 ・ 広範囲の広葉樹に寄生するが,特にクリ園で被害が大きい ・ 被害は葉のしおれから始まる。やがて木全体が枝枯れ状態と なり,激しい被害を受けると木が枯れる場合がある ○ ・ ・ ・ 虫の特徴 直径2mm以下の円形の白い殻を被ったカイガラムシである 葉の葉脈から太い樹幹まで一面に寄生し,樹液を吸う 若い幼虫には脚があり動き回るが,直ぐに殻を着けて定着する ○ ・ ・ ・ 防除法 年2回発生する幼虫初期に,スプラサイド乳剤40を散布する 厳冬期に,石灰硫黄合剤又はマシン油も効果がある 被害部分を冬季に持ち出し焼却するのも効果が大きい 幼虫 成虫 天然記念物のクリに発生,典型的な被害形態を示している写真提供:林業技術総合センター 成虫・幼虫 (登米市登米町) 佐々木技師 48 ケヤキフシアブラムシ ○ 加害樹種 ケヤキ,ニレ ○ 虫の特徴,被害の発症 ・ ・ ・ ・ ・ ケヤキの葉表に壺形の虫コブをつくるアブラムシ 葉裏に寄生したこの虫の刺激で,葉が凹む 虫コブは次第に黒褐色に変わり大量に発生すると美観を損ねる 葉が枯れるため,樹勢が損なわれる 夏の間は,ササ類の根に寄主し,秋にケヤキに戻る ○ 防除法 ・ 中間寄主のササや竹類を遠ざける ・ 新芽が出る4月中の孵化期に,ディプテレックス乳剤1000倍 液の散布が効果的 上:壺形になった虫コブ 右:衰弱し先端部が枯れかかっている 49 ツツジグンバイムシ ○ 加害樹種 ツツジ,サツキ,アザレア ○ 虫の特徴,被害の発症 ・ ・ ・ ・ 成虫の翅は透明で軍配に似たことが名の由来 成虫,幼虫とも,葉裏から長い口針を刺し込み樹液を吸汁する 葉裏から樹液を吸汁されるため,葉の色が脱色される 葉表からは,カスリ状の被害が見え,緑色が退色する ○ 防除法 ・ 葉裏に付いた虫を圧力の高い水道水で吹き飛ばす ・ 5月初めから出方を確認しながら,薬剤を散布する ・ 薬剤は,葉裏を重点にアクテリック,スミチオン,カルホス等の 乳剤を散布する ・ ダイシストン粒剤など,土壌に撒く薬剤は薬効期間が長く効果的 被害葉はカスリ状になる 緑色が薄く見た目が悪い(気仙沼市) 50 ハ ダ ニ 類 ○ 加害樹種 スギ,マツ類,ビャクシン,モクセイ,ツゲ,バラなど ○ 虫の特徴,被害の発症 ・ ハダニは昆虫でなく,クモの仲間(脚が4対,8本)である ・ 葉から樹液を吸汁されるため,葉色は急激にあせる ・ 各樹種に寄生するハダニは,それぞれ別の種類である 代表的な樹木に寄生するハダニには次のものがある ➢スギ(スギノハダニ) ➢モミ・マツ(トドマツハダニ) ➢ ビャクシン(ビャクシンハダニ) ➢バラ(ナミハダニ) ➢ツゲ(チビコブハダニ) ○ 防除法 ・ スギ造林地に発生するスギノハダニは,過去,林業害虫として 幼齢林に発生する重要な害虫であった ・ 虫の発生状況を確認しながら,薬剤を散布する。薬剤には, 殺ダニ剤のケルセン,アカールなどがある ・ ダイシストン粒剤など土壌処理薬剤は薬効期間が長く効果的 スギハダニに加害された枝は黄色味を帯びる 51 踏 圧 ○ 被害の原因と現れ方 ・ 人や車による根元周辺の踏みつけは,根への負担が大きくなり, 樹木の衰退が進展する大きな原因 ・ 根元周辺部の踏みつけにより,土壌が硬くなり樹木への水分, 養分及び酸素等の供給量を減少させ,年々樹勢を衰えさせ,最 後には枯死に至らせる原因となる ○ 対策 ・ 自然に成立する樹木の根系は,枝の張りだした地下の範囲まで 及ぶことから,この範囲への立ち入りを禁止する ・ 立ち入り防止柵を設置する。根への負担を少なくすることが肝要 ・ 土壌が固結している場合には,土壌を軟らかくするため,土の入 れ替えや土壌改良を行う 衰退が進むシダレザクラ 根の周辺を改変され,人が入り込むようになった 52 コケ類の着生 ○ 被害の現れ方 ・ ツツジ類やウメの古木などの幹や小枝に,コケ状のものがビッシ リと付着し,その先の枝が自然と衰退している樹木をよく見かける ・ コケの付着により,生育が妨げられると思われがちだが,この コケは着生植物(多くはウメノキゴケ科の地衣類)であり,樹木の 養分を吸収するものでない ・ コケは,衰退又は枯死した部分に,二次的に着生するもので, 樹木が衰退する原因は別にある。その原因究明が先決である ○ 対策 ・ コケが樹木の衰退となる原因にならないので,コケの着生を気 にする必要はない ・ 何らかの原因で樹勢の衰退が起こるので,樹木の環境改善に より,樹木に活力を与える ヤマツツジへの着生(南三陸町) サツキへの着生(名取市) 53 薬 害 ○ 被害の現れ方 ・ 農薬を散布した時に樹木の外観に異常をきたし,ひどい場合に は枯れるなどの症状が現れる ・ 薬害は,農薬が持つ植物に対する毒性で発症するもので,農薬 の種類,樹種,樹齢,生育環境などの条件で異なることが多い。 しかも,単独の条件だけでなく重なり合った条件によるなど,発症 の仕組みは色々である ・ 薬害が発症する部位には,根系,樹幹,枝葉及び樹体全体に出 現するなど各種ある。 ・ 又,症状の現れ方にも,穿孔,壊死,落葉,奇形,生育抑制,枯 死などがある ○ 対策 ・ その農薬にだけ感受性の高い植物があるので,農薬散布時に は散布対象樹木だけでなく周辺樹木に配慮しながら散布する ・ 散布濃度の間違いで発症する例が多いので,薬剤の希釈倍数 や散布基準を適正に守ること 殺虫剤によりジンチョウゲに発生した葉の縮れ 54 太枝の切除 ○ 被害の現れ方 ・ 太い枝の切除や間違った剪定をしたことにより,腐朽が樹幹の 表面だけに留まらず,上下に拡大したり,材内部まで腐朽が進行 し,空洞化に及ぶことがある ・ これらの被害は,人の生活と密接な関係に多いサクラ類に多く, 邪魔になった下枝や太枝を安易な気持ちで切除することが原因と なる例が多い ○ 対策 ・ 将来にわたって,太枝を切らないよう,樹木の小さい時期から 目標を持った仕立て方をすることが大切である ・ やむなく枝を切除する場合には,鋭利な刃物で適正な位置で切 除すること ・ 切り取った切断面には,必ずトップジンMペーストなどの殺菌剤 を塗布し,適切な防菌処理を行うこと ・ 昔の諺に「桜切る馬鹿,梅切らぬ馬鹿」と言われ,桜の枝は切っ てはならないとされている。十分留意しながらの剪定が必要である 一目千本桜(大河原町) 森舞台のモミジ(登米市) 55 固定ひもの締め付け ○ 被害の現れ方 ・ 植栽した樹木が,風などで揺れたり倒伏しないよう設置した支柱 の結束用に用いるシュロ縄などが,その後の樹木の成長に伴い, 樹幹等に食い込んでしまう結果になる ・ これらの食い込み被害により,その箇所の上部から折損したり枯 損の原因となる。また,穿孔性害虫が附着しやすい原因にもなる ○ 対策 ・ 樹木を支柱に設置する場合には,幹と支柱の接点には杉皮等を 幹に巻いてからシュロ縄で固定する。 ・ 樹木の活着や生長と共に支柱の役割りが済んだなら,できるだ け早期に結束縄を除去する。 (仙台市宮城野区) (仙台市青葉区) 56