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タンポポおじさんのタンポポの秘密 第3話 タンポポの仲間たち
タンポポおじさんのタンポポの秘密 第3話 タンポポの仲間たち タンポポは、菜の花、レンゲソウやスミレなどとともに春の花として日本人には馴染み の深い花かと思います。子どもが描く絵の中に登場する花としてもチューリップやヒマワ リとともにタンポポは代表的な花のひとつといえるでしょう。タンポポはキク科のタンポ ポ属に分類されますが、一口にタンポポといってもその種類は世界中で数百種類あります。 主に北半球に多く日本では在来種は 15 種類、亜種、変種も入れると 18 種類に分類されて います(※1)。またこれらをまとめてニホンタンポポと呼ぶこともあります。 在来種タンポポの分類表 キク科タンポポ属 モウコタンポポ節 種 亜種 カンサイタンポポ(本州、四国、九州、朝鮮) カントウタンポポ カントウタンポポ 変種 カントウタンポポ(関東、中部に局在) トウカイタンポポ(静岡県に局在) シナノタンポポ(新潟、長野、山梨、群馬、栃木県に局在) オキタンポポ(隠岐諸島に局在) モウコタンポポ(対馬、島原半島、朝鮮、中国、モンゴル) オクウスギタンポポ(宮城県、福島県に局在) シロバナタンポポ(本州、四国、九州、琉球に局在) キビシロタンポポ(岡山県周辺、北九州に局在) クシバタンポポ(近畿、山陰、山陽、四国の山地に局在) ケンサキタンポポ(日本海側、近畿、中国地方に局在) ツクシタンポポ(西四国、北・中央九州の山地に局在) ミヤマタンポポ節 エゾタンポポ(日本、樺太) ミヤマタンポポ(本州の高山・亜高山に局在) シコタンタンポポ(東北海道、千島に局在) クモマタンポポ(北海道の高山と千島、カムチャッカ、アリューシャン) ユウバリタンポポ(北海道夕張岳に局在) オーヒラタンポポ(北海道大平山の石灰岩地帯に局在) 日本の在来種のタンポポは、形状や遺伝子の違いからこれだけの種類があり、変異性が 大きく、分類が難しい植物といわれています。ですから専門家でないとなかなか区別は難 しいのですが、唯一花の色で簡単に見分けがつく種類があります。それはシロバナタンポ ポです。タンポポの花の色は何色?と聞かれれば、多くの人が黄色と答えることでしょう。 中国語でもタンポポは黄色地丁(ファンファ・ディーディン:黄色い地面の帽子)といい、 花の色は黄色であることを表しています。ところがシロバナタンポポはその名が示すとお り、花の色は黄色ではなく白い色をしています。富士通研究所の K さんから最近こんなお 話を伺いました。学生時代、友達との会話でタンポポが話題となり、九州出身の友人がタ ンポポの花の色は白だと言ったので、みんな驚いたそうです。今回の全国タンポポ分布調 査でシロバナタンポポの存在を知った K さんは、数十年前のアイツの言ったことは正しか ったのだ、と気がついたそうです。 1 黄色い花のカントウタンポポ 白い花のシロバナタンポポ (全国タンポポ分布調査データより) それでは日本の外来種のタンポポの種類はどれくらいあるのでしょうか。一般にはセイ ヨウタンポポとアカミタンポポの2種類があると言われています。この2種類、花が咲い ている状態では見分けることは非常に困難です。しかし綿毛ができて、種の部分が見える ようになると区別ができます。この種の部分の色が茶褐色なのがセイヨウタンポポ、赤み を帯びた褐色をしたものがアカミタンポポです。 セイヨウタンポポの種 アカミタンポポの種(※2) 私たちが暮らすこの地球上の生物は、既知の種数として 175 万種、未知の種数も含める と 500 万種~3,000 万種あるといわれています。しかし今、野生生物の絶滅速度は急速に加 速しつつあります。環境省レッドリストによると、日本の維管束植物は評価対象種数約 7,000 種のうち、33 種は既に絶滅、8 種は野生絶滅(野生では絶滅し、植物園等で栽培され ているもの)となっています。また 24%にあたる 1,690 種が絶滅のおそれのある種に指定 されています。在来のタンポポもその例外ではありません。西四国、北・中央九州の山地 に局在するツクシタンポポや北海道の高山に成育するクモマタンポポなどは絶滅危惧種と なっています(※3)。山地のタンポポばかりではありません。平地のタンポポも次第にそ の数を減らしているようです。神奈川県の平塚市におけるタンポポ調査によると、1983 年 はカントウタンポポが市域西部の丘陵地帯、セイヨウタンポポが水田や住宅地の広がる平 野部に分布していたものが、2003 年にはカントウタンポポが減少し、セイヨウタンポポが 2 郊外に拡大しているとの結果が出ています(※4)。日本の多くの人が春の身近な花と思い 浮かべるタンポポ、このままでは気がついたときには在来種のタンポポは絶滅し、そのか わり外来種のタンポポに被いつくされていたといったことになるかもしれません。 以上 [参考文献] ※1 小川潔,2001. 日本のタンポポとセイヨウタンポポ、どうぶつ社 ※2 写真提供:渡邊幹男,愛知教育大学 ※3 J-IBIS 生物多様性情報システム 絶滅危惧種情報 http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.html ※4 塚田友二・浜口哲一,2005.平塚市における GIS を用いたタンポポ類の 分布変化の解析 3