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人獣共通感染症の話 - 犬山動物総合医療センター
犬山動物総合医療センター 第105号 動物病院だより 愛知県犬山市羽黒大見下29 2013年 8月 20日 TEL 0568-67-1267 http://www.inuyama-vet.com/ E-mail [email protected] 人獣共通感染症とは、人と動物の両方に感染する病気のことで、これを引き起こす 病原体にはウイルス、細菌、真菌(カビ)、寄生虫などさまざまなものがあります。 今回、それらの中でも、私たちがペットとして飼っている犬・猫・エキゾチックアニマ ルと人における重要な感染症を紹介します。 狂犬病ウイルスは人をはじめ、全ての哺乳類に感染する可能性があります。狂犬病ウイルスに感染し ている犬に噛まれることで人にも感染しますが、感染すると治療法がなく致死率はほぼ100%です。 狂犬病は恐ろしい病気ですが、ワクチンによる予防が可能で、狂犬病予防法で生後90日を 超えた全ての犬は登録と予防接種が義務付けられています。 日本では昭和32年以降国内での発生がなく清浄国とされていますが、いつ海外からウイル スが渡ってきてもおかしくはありません。万が一の時にウイルスの蔓延を防ぐためには、犬 の感染予防が非常に重要となります。飼い犬を守るだけではなく、人間や社会全体を守る ためにも予防注射を必ず行いましょう。 レプトスピラという細菌は多くの哺乳類に感染し、腎臓で増殖し尿中に排泄されます。 そして汚染された環境(下水、水田など)から経口または皮膚を通して犬や人に感染します。犬でも人で も血尿、発熱、黄疸、肝臓・腎臓障害、出血傾向などを呈し、重症の場合は死に至る事があります。 (人では「ワイル病」「秋疫」「七日熱」などの病名で知られています) 犬においてはワクチンの接種が有効です。 原因となる真菌(カビ)には白癬菌、小胞子菌など数種類あります。犬・猫・ウサギなどで痒みのない円形 の脱毛がみられることがあります。このような皮膚症状のある動物を抱っこすることで人にも感染し、リン グ状の赤みを帯びた皮膚病変が見られます。対策としては皮膚症状の出ている動物を直接触らないこ と、触ったら手洗いを行うことが大切です。 左:猫の脱毛病変 右:人の皮膚病変 こんな病変があったら注意! バルトネラという細菌を保有する猫にひっかかれてしまうと、人に丘疹、水疱、局所のリンパ節 の腫脹が起こります。猫はこの菌を体内に持っていても症状を表しません。猫から猫への感 染はノミが媒介するため、ノミ駆除もこの病気の対策の一つになります。 トキソプラズマとは原虫という分類の寄生虫で、成猫に対してはほとんど無症状ですが子猫に 神経症状をひきおこすことがあります。感染猫が便中に排泄するオーシスト(虫卵のよ うなもの)や非加熱の豚肉中に含まれる虫体を経口摂取することで人にも感染します。 成人における感染率は約30%といわれており、健康な人にはほとんど無症状です。 ただし、妊婦さんが初めてトキソプラズマに感染した場合が問題となり、早産や流産、 胎児に障害を引き起こすことがあるため注意が必要です。 妊娠されていて心配な方は、病院で抗体検査をしてみるとよいでしょう。 抗体検査が陽性(過去に感染したことがある)なら、問題ありません。 陰性なら、妊娠中に初感染しないよう注意が必要です。 (妊娠期間中は猫の糞便処理は手袋をする・触ったら手をよく洗う・豚肉はよく加熱して食べるなど) 犬・猫回虫は線虫という分類の寄生虫で、それぞれ犬・猫の腸管内に寄生し、感染してい ても症状が現れないことがほとんどです。しかし、犬・猫ともに母子感染することもあり、幼 少期において発育不良や消化器症状を呈することがあります。 人には、動物の糞便中に排泄された虫卵を口に入れてしまうことで感染します。人の体内 に侵入した回虫は、成虫になれず体内を移行して内臓や眼に入り、さまざまな障害をひき おこすことがあります(幼虫移行症)。砂遊びや泥遊びをした後や、犬や猫と遊んだ後には 必ず手を洗うようにしましょう。 クラミジアとは細菌の仲間で、細胞内に寄生する微生物です。これはオウムだけでなくインコなど多くの 鳥類に感染しますが、無症状のものが多いです。しかし、感染している鳥の排泄物や羽毛に含まれる病 原体を吸入することで人にも感染し、高熱や呼吸器症状などインフルエンザ様症状を引き起こします。 鳥との濃厚な接触を避けること、飼育ケージの掃除はマスクを着用するなど工夫しましょう。 本菌は食中毒の原因菌として知られているように、経口感染により人に急性 胃腸炎(下痢、腹痛、嘔吐、発熱など)を引きおこします。 ミドリガメはサルモネラ菌を100%保菌していると言われています。 カメを触ったらきれいに手洗いをしましょう。 今回は人と動物に関わる感染症のお話をメインでしました。 普段から動物を触ったら手をよく洗う、動物には狂犬病予防 注射・混合ワクチン・ノミやダニの駆除などの予防をするとい うように、きちんと対策をすればほとんどの感染症を防ぐこと ができます! 人も動物も健康的に暮らせるよう、これらのことをぜひ心がけましょう!