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39(pdf 380kb) - 名古屋市立東部医療センター
名古屋市立病院臨床研究審査委員会 ~臨床研究の新しい風~ 編集人: 名古屋市立東部医療センター 臨床試験管理センター センター長 村上善正 ℡.052-721-7171( 内線 2355)e-mail: [email protected] http://www.higashi.hosp.city.nagoya.jp/ No.39 Jun.2014 本誌は、臨床試験管理センターで入手する最新情報などを多くの皆様と共有するNEWs誌です。 【 主な話題:臨床研究における安全性情報の報告のあり方 】 医療倫理について思うこと 名古屋市立病院臨床研究審査委員会委員長 東部医療センター倫理委員会委員長 村上 善正 東部医療センターでは「倫理コンサルテーション小委員会」という倫理委員会の下部組織を2014年3月に立ち 上げ、私が委員長を拝命しています。小委員会設立の目的は、臨床現場で解決できない、あるいは個人が疑問 に思う倫理問題を病院組織として検討・方針を共有することで現場スタッフを支援し、ひいては医療の質向上 を図ることにあります。通常の委員会のように定期的な会ではなく、問題が提示された時に、できるだけ素早 く開催できるように少人数で機動性のある会とし、実のあるものにしたいと考えています。現在までに既に3 回開催されています。 内科医師を対象とする一般論として、医療倫理の問題は「医療現場で遭遇する、医療関連領域の知識・技術・ 経験だけでは対処できない、あらゆる葛藤や懸案」と定義され、問題に対応する第一歩は、問題を問題である と認識できることだと考えられています。 では、臨床倫理の問題は、何時、発生しているのでしょうか? 一言で言えば、医療現場で解決しがたい モヤモヤした感じを抱いた時にこの問題が発生していると言えます。このモヤモヤは患者さんの思い、患者さ ん関係者の思い、医療者の思いの間の不一致から起こることもあり、日常茶飯事に発生しているといって過言 ではありません。 まだ新しい組織で私を含めて委員の知識も決して十分とはいえませんが、元々、倫理問題を画一的に解決す るアプローチは存在しないとも言えます。患者さんに寄り添い、患者さんの最善を求めて、多職種が悩みつつ 熟慮を重ねるしかないと思います。皆さんも医療倫理に関心を持って一緒に考えていただければ必ずや 良い医療の実現につながると信じています。 朝日 2014.6.4 掲載 医薬品等の適応外使用が医療上必要な場合、 『名古屋市立病院臨床研究審査委員会』において検討が行われています。 東京女子医大病院において、医薬品(麻酔薬プロポフォール)の保険適用外使用が院内の 薬事委員会や倫理委員会の審査を経ないで行われていたことが新聞等で明らかとなりました。 医薬品等の添付文書は薬事法上の公文書であり、そこに記載されている用法・用量あるいは 適応症の通りに使用することを前提に使用が認められており(このことを“保険適用を受け ている(保険診療)”といいます)、副作用発生時の被害救済制度が整えられています。名 古屋市立病院では、保険適用外使用の必要性が生じた場合、その治療は「研究を伴う治療法」 であるとして、計画書が立案され、臨床研究審査委員会で審議され、病院長が実施の適否を 判断するという手続きが行われています。臨床研究審査委員会は、医学・薬学・その他の医 療の専門家および専門家以外の有識者によって構成されており、倫理性や科学性が十分に保 たれているかが確認されています。 日経 2014.6.10 掲載 厚生労働省は「混合診療の拡大」における関連法案を 2015 年通常 国会へ提出し、2016 年度に導入する方針を示しました(右の記事) 。 現在、がんなどに未承認薬を使用する場合、公的保険が使えず 患者さんは治療の全額を負担する自由診療となります。混合診療が 拡大されると、投与する未承認薬の費用は患者さん負担ですが、投 与に伴う治療のうち公的保険が適用となる部分は保険適用となりま す。混合診療の拡大は、2 通りに考えられています。国内で初めて 行う治療の場合、全国 15 か所の中核病院(名古屋大学病院など)で のみ実施可能とし、国内で 2 例目以降は幅広い医療機関で混合診療 が利用できるようになります。混合診療が可能な医療機関が最大 1000 拠点(名古屋市立病院を含む)に広がる可能性があります。 臨床試験(介入を伴う臨床研究)における“安全性情報の報告”のあり方 人における医薬品等の有効性や安全性を確認する試験を「臨床試験」と言い、安全性が未確認であることから、 安全性情報の報告が重要となります。名古屋市立病院臨床研究審査委員会では、以下の運用が行われています。 ●治験の場合: 「くすりの候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験である「治験」では、重篤 で予測できない有害事象※は、「治験依頼者は発生を知った日から 7 日以内のできるだけ早い時期に規制当局に 電話またはファックス等で知らせ、可能な限りの完全な報告書をさらに 8 日以内(計 15 日以内)に 提出すること」が定められています。このため治験を実施する医療機関においては、 “発生を知った時から 24 時間以内に治験依頼者へ報告すること”が求められています。 ※重篤な有害事象の定義:①死に至るもの、②生命を脅かすもの、③治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの、④永続的 または顕著な障害・機能不全に陥るもの、⑤先天異常を来すもの、⑥上記に至らないよう医学的処置を必要とする重大な医学的事象 ●先進医療の場合: 「先進医療」とは、先進的な医療技術を健康保険に導入するかどうか評価するために実施され ている医療のことであり、 「先進医療A」と「先進医療B」に分かれています。Aは「薬事法の承認・認証・適用 のあるもの、あるいは適用がなくとも人体への影響が少ないもの(有効性がある程度明らかなもの)」 、Bは「高 度医療で、薬事法の承認・認証・適応のないもの(有効性が必ずしも十分に明らかでないもの)」であり、どちら も保険適用外の先端的な医療技術となります。 「先進医療」は、未承認薬などの治療に門戸を広げる一方で、本当 に有効かどうかを調べる臨床試験としての側面があるため、 「臨床試験」としての手続きが求められています。 「先進医療」の実施に伴って発生した以下の医学的に重大な事象は、厚生労働大臣に報告することが定められて います。 ① 7 日以内報告:死に至る又は生命を脅かす症例 ② 15 日以内報告:下記の症例であって、発生又は発生数、発生頻度、発生条件等の発生傾向が実施計画書 等から予測できないもの a) :入院又は入院期間の延長が必要とされる症例 b):日常生活に支障をきたす程度の永続的または顕著な障害・機能不全に陥る症例 c) :a)又は b)の他に、患者を危険にさらすおそれがあるもの ●上記以外の臨床試験の場合:試験責任者または試験分担者に対して、 “重篤な有害事象の発生を知りえた場合、 速やかに病院長および名古屋市立病院臨床研究審査委員会(IRB)事務局(臨床試験管理センター)へ報告し、15 日以内に文書にて病院長および IRB 事務局へ報告すること”が求められています。 【 編 集 後 記】 名古屋市立病院に研究事務局をおいて実施される臨床研究の案件数は順調に増加傾向にあります。引き続き、 皆様のご理解・ご協力をお願いします。現在、 “臨床薬理(平成 26 年度、第 39 回)研究振興財団「研究奨励金」交付 候補者募集のご案内”が当財団 HP より入手できますことにご留意ください(応募締切日:8 月 29 日当財団必着)。