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JP 2013-513548 A 2013.4.22 (57)【要約】 本発明はEimeria感染から
JP 2013-513548 A 2013.4.22 (57)【要約】 本発明はEimeria感染から家禽を保護するための コクシジウム症ワクチンに関し、このワクチンは、膜へ の係留のための疎水性シグナル配列につながれるか、ま たは分泌を可能にするための疎水性分泌シグナルおよび 切断部位につながれた(異種)プロモーターと、r56 、82kDa、および/またはTFP250抗原に由来 するものなどのEimeria抗原ORFのインフレー ム挿入のためのマルチプルクローニング部位と、ポリア デニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲノムとをイ ンフレームで含む組み換えトリアデノウイルスベクター を含む。 (2) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【特許請求の範囲】 【請求項1】 Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシジウム症ワクチンであって、前記 ワクチンは、膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、オープ ンリーディングフレーム(ORF)を前記疎水性シグナル配列とインフレームで挿入する ことを可能にするための、ORFを挿入するためのマルチプルクローニング部位と、ポリ アデニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモータ ーを含む組み換えトリアデノウイルスベクターを含む、コクシジウム症ワクチン。 【請求項2】 目的の前記ORFは、Eimeria maximaの切断型r56抗原、Eimer 10 ia maximaの切断型TFP250抗原、およびEimeria maximaの 切断型82kDa抗原からなる群より選択される抗原をコードする、請求項1に記載のコ クシジウム症ワクチン。 【請求項3】 前記マルチプルクローニング部位は、Eimeria maximaの切断型TFP2 50抗原および/またはEimeria maximaの切断型82kDa抗原と組み合 わせた、Eimeria maximaの切断型r56抗原をコードするORFを含む、 請求項1に記載のコクシジウム症ワクチン。 【請求項4】 前記トリアデノウイルスゲノムは、FAV1、FAV2、FAV3、FAV4、FAV 20 5、FAV6、FAV7、FAV8、FAV9、FAV10、FAV11およびFAV1 2のゲノムからなる群より選択される、請求項1に記載のコクシジウム症ワクチン。 【請求項5】 前記トリアデノウイルスゲノムはFAV8ゲノムである、請求項1に記載のコクシジウ ム症ワクチン。 【請求項6】 前記組み換えトリアデノウイルスベクターは、目的の前記ORFの挿入のための前記ク ローニング部位のすぐ上流に切断配列をさらに含み、前記ベクターからの発現産物は可溶 性産物を生成する、請求項1に記載のコクシジウム症ワクチン。 【請求項7】 30 前記核酸は、 a)配列番号13に示される全長r56配列のヌクレオチド70∼1035の配列を含 むが、配列番号2に示される完全なr56タンパク質配列はコードしていない、切断型R 56; b)配列番号2のアミノ酸24∼345からなる切断型R56フラグメント、または配 列番号2のアミノ酸24∼345のフラグメントをコードする、切断型r56; c)配列番号16に示される全長TFP250配列のヌクレオチド6448∼7083 の配列を含むが、配列番号4に示される完全なTFP250タンパク質配列はコードして いない、切断型TFP250;および d)配列番号16のヌクレオチド6448∼7083の核酸配列からなる切断型TFP 40 250 からなる群より選択される抗原をコードする、請求項2に記載のコクシジウム症ワクチ ン。 【請求項8】 Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシジウム症ワクチンであって、前記 ワクチンは、膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、前記疎 水性シグナル配列とインフレームで挿入された、配列番号2のアミノ酸24∼345から なる切断型r56または配列番号2のアミノ酸24∼345のフラグメントをコードする 核酸と、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結され たプロモーターを含む組み換えトリアデノウイルスベクターを含む、コクシジウム症ワク 50 (3) JP 2013-513548 A 2013.4.22 チン。 【請求項9】 Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシジウム症ワクチンであって、前記 ワクチンは、膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、前記疎 水性シグナル配列とインフレームで挿入された、配列番号16のヌクレオチド6448∼ 7083の核酸配列からなる切断型TFP250をコードする核酸と、ポリアデニル化シ グナルと、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み 換えトリアデノウイルスベクターを含む、コクシジウム症ワクチン。 【請求項10】 Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシジウム症ワクチンであって、前記 10 ワクチンは、膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、前記疎 水性シグナル配列とインフレームで挿入された、Eimeria maximaの切断型 82kDa抗原をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲ ノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリアデノウイルスベクター を含む、コクシジウム症ワクチン。 【請求項11】 多価コクシジウム症ワクチン調製物であって、前記調製物は: 請求項7に記載のコクシジウム症ワクチン、 膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、前記疎水性シグナ ル配列とインフレームで挿入された、配列番号16のヌクレオチド6448∼7083の 20 核酸配列からなる切断型TFP250をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと、 トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリア デノウイルスベクターを含む、コクシジウム症ワクチン;ならびに/または 膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、前記疎水性シグナ ル配列とインフレームで挿入された、Eimeria maximaの切断型82kDa 抗原をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲノムとに作 動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリアデノウイルスベクターを含む、コ クシジウム症ワクチン を含む、多価コクシジウム症ワクチン調製物。 【請求項12】 30 マレック病ウイルス(MDV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、伝染性気管支 炎ウイルス(IBV)、ニワトリ貧血ウイルス(CAV)、伝染性ファブリキウス嚢病ウ イルス(IBDV)、トリインフルエンザ(AI)、レオウイルス、トリレトロウイルス 、家禽アデノウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、サルモネラ菌種、およびE. coliからなる群より選択される免疫原をさらに含む、請求項11に記載の多価コクシ ジウム症ワクチン調製物。 【請求項13】 Eimeria tenella、Eimeria maxima、Eimeria acervulina、Eimeria necatrix、Eimeria prae cox、Eimeria mitisまたはEimeria brunettiによる感 40 染に対して被験体を免疫化する方法であって、請求項1に記載のワクチンを前記被験体に 投与するステップを含む、方法。 【請求項14】 前記投与するステップは、全長r56または全長TFP250抗原または全長82kD a抗原を含むFAVベクターによって前記被験体が免疫化されたときにみられる免疫より も増強されたレベルの免疫を誘発する、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記被験体は、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、チャボ、ウズラおよび ハトからなる群より選択される鳥種である、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 50 (4) JP 2013-513548 A 2013.4.22 前記鳥種はニワトリである、請求項15に記載の方法。 【請求項17】 前記ニワトリは成体のブロイラーニワトリである、請求項16に記載の方法。 【請求項18】 前記投与するステップは、前記被験体に前記ワクチンを噴霧するステップ、前記被験体 に食物中の前記ワクチンを給餌するステップ、および前記被験体の飲用供給物中に前記ワ クチンを提供するステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項19】 ニワトリ集団に、Eimeria tenella、Eimeria maxima、 Eimeria acervulina、Eimeria necatrix、Eime 10 ria praecox、Eimeria mitisまたはEimeria brun ettiに対する防御免疫を与えるための併用ワクチン接種療法であって、被験体に請求 項1に記載のワクチンを投与するステップと、前記ニワトリ集団にCoxAbic(登録 商標)を投与するステップとを含む、併用ワクチン接種療法。 【請求項20】 前記CoxAbic(登録商標)は種畜雌鳥に投与されることによって孵化の際にヒヨ コに免疫を与え、請求項1に記載のワクチンは孵化後の1日目およびそれより後に前記ヒ ヨコに投与され、かつ前記集団の成体ブロイラー雌鳥に投与される、請求項19に記載の 併用ワクチン接種療法。 【請求項21】 20 トリアデノウイルスゲノムを含む組み換えトリアデノウイルスベクターであって、異種 プロモーターと、異種疎水性シグナル配列と、マルチプルクローニング部位と、ポリアデ ニル化配列とを含み、前記プロモーターおよび前記疎水性シグナル配列はマルチプルクロ ーニング部位の上流に位置し、前記マルチプルクローニング部位に目的のORFを挿入す ることによって、前記プロモーターの調節下で前記シグナル配列とインフレームで前記目 的のORFを発現できる発現ベクターがもたらされる、組み換えトリアデノウイルスベク ター。 【請求項22】 前記疎水性シグナル配列は、前記目的のORFの発現産物が、発現された宿主細胞から 分泌されることを可能にするための切断部位を含む、請求項21に記載の組み換えトリア 30 デノウイルスベクター。 【請求項23】 前記シグナル配列は切断部位を含有しないことによって、前記宿主細胞の前記細胞表面 に係留された前記目的のORFの融合発現産物の発現がもたらされる、請求項21に記載 の組み換えトリアデノウイルスベクター。 【請求項24】 膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、目的のORFを前 記疎水性シグナル配列とインフレームで挿入することを可能にするための、目的のORF の挿入のためのマルチプルクローニング部位と、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノ ウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む、組み換えトリアデノウイ 40 ルスベクター。 【請求項25】 前記目的のORFの前記挿入のための前記クローニング部位のすぐ上流に切断配列をさ らに含み、前記ベクターからの発現産物は可溶性ORF産物を生成する、請求項24に記 載の組み換えトリアデノウイルスベクター。 【請求項26】 a)疎水性分泌シグナル配列および切断部位、または膜アンカードメインをコードする 核酸を含むシグナル配列と、 b)Eimeria maximaの切断型r56タンパク質をコードする核酸と、 c)ポリアデニル化シグナルと、 50 (5) JP 2013-513548 A 2013.4.22 d)トリアデノウイルスゲノムと に作動可能に連結されたプロモーターを含む、組み換えトリアデノウイルスベクター。 【請求項27】 a)疎水性分泌シグナル配列および切断部位、または膜アンカードメインをコードする 核酸を含むシグナル配列と、 b)Eimeria maximaの切断型TFP250タンパク質をコードする核酸 と、 c)ポリアデニル化シグナルと、 d)トリアデノウイルスゲノムと に作動可能に連結されたプロモーターを含む、組み換えトリアデノウイルスベクター。 10 【請求項28】 a)疎水性分泌シグナル配列および切断部位、または膜アンカードメインをコードする 核酸を含むシグナル配列と、 b)Eimeria maximaの切断型82kDaタンパク質をコードする核酸と 、 c)ポリアデニル化シグナルと、 d)トリアデノウイルスゲノムと に作動可能に連結されたプロモーターを含む、組み換えトリアデノウイルスベクター。 【請求項29】 切断型r56をコードする前記核酸は、配列番号14に示される全長r56配列のヌク 20 レオチド70∼1035の配列を含むが、配列番号2に示される完全なr56タンパク質 配列はコードしていない、請求項26に記載の組み換えトリアデノウイルスベクター。 【請求項30】 切断型r56をコードする前記核酸は、配列番号2のアミノ酸24∼345からなる切 断型R56フラグメントまたは配列番号2のアミノ酸24∼345のフラグメントをコー ドする、請求項26に記載の組み換えトリアデノウイルス。 【請求項31】 切断型TFP250をコードする前記核酸は、配列番号16に示される全長TFP25 0配列のヌクレオチド6448∼7083の配列を含むが、配列番号4に示される完全な TFP250タンパク質配列はコードしていない、請求項26に記載の組み換えトリアデ 30 ノウイルスベクター。 【請求項32】 切断型r56をコードする前記核酸は、配列番号4のアミノ酸2150∼2361から なる切断型r56フラグメントをコードする、請求項26に記載の組み換えトリアデノウ イルスベクター。 【請求項33】 切断型TFP250をコードする前記核酸は、配列番号16に示される全長TFP25 0配列のヌクレオチド6444∼7083の配列を含むが、配列番号4に示される完全な TFP250タンパク質配列はコードしていない、請求項27に記載の組み換えトリアデ ノウイルスベクター。 40 【請求項34】 切断型TFP250をコードする前記核酸は、配列番号4のアミノ酸2149∼236 1からなる切断型TFP250フラグメントをコードする、請求項27に記載の組み換え トリアデノウイルスベクター。 【請求項35】 前記分泌シグナル配列は、ニワトリガンマインターフェロン、ブタガンマインターフェ ロン、およびヒトインフルエンザH1N2の分泌シグナル配列からなる群より選択される 、請求項26に記載の組み換えトリアデノウイルスベクター。 【請求項36】 前記膜アンカーシグナル配列は、トリインフルエンザHA抗原の分泌シグナル配列から 50 (6) JP 2013-513548 A 2013.4.22 なる群より選択される、請求項26に記載の組み換えトリアデノウイルスベクター。 【請求項37】 請求項26に記載の組み換えトリアデノウイルスベクターを含む、ワクチン。 【請求項38】 トリ集団における免疫応答を誘発する方法であって、前記集団に請求項38に記載のワ クチンを投与するステップを含む、方法。 【請求項39】 コクシジウム症に対して家禽集団にワクチン接種する方法であって、請求項24に記載 の組み換えトリアデノウイルスベクターを含むワクチンを投与するステップを含み、前記 ワクチンの投与は、全長r56または全長TFP250を含むワクチンの投与よりも高い 10 免疫応答を誘発する、方法。 【請求項40】 請求項24に記載の組み換えトリアデノウイルスベクターを含む、単離細胞。 【請求項41】 請求項24に記載の組み換えトリアデノウイルスベクターおよび適切な賦形剤を含む、 薬学的処方物。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 (関連出願) 20 本出願は、2008年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/122,59 6号の優先権を主張する。上記米国仮特許出願の全容は、その全体が参照によって本明細 書に援用される。 【0002】 本発明は、トリのワクチン接種のための方法および組成物に関する。 【背景技術】 【0003】 コクシジウム症は、世界的に非常に重要なニワトリの疾患である。それはブロイラー産 業だけでも年間10億USDを超える推定損失をもたらす。コクシジウム症は、7種のア ピコンプレクサの寄生原虫Eimeriaの感染によってもたらされる。これら7種のう 30 ちでも、E.tenella、E.maximaおよびE.acervulinaが最も 問題であると考えられている。コクシジウム症の症状は、気力低下、貧血、水様下痢また は血性下痢(感染する種による)、体重減少および飼料効率比の低下を含む。 【0004】 Eimeria寄生虫の生育および伝播は特にニワトリに蔓延している。なぜならこれ らのトリは典型的に稠密な条件下で飼育されているために、衛生管理を維持することがき わめて困難だからである。これらの条件下で抗コクシジウム薬物を使用することは、抵抗 性が発達するため、かつ窮屈な給餌環境においてこうした薬物を持続的に投与することが 困難であるために効果がない。さらに、抗コクシジウム薬は抗菌効果も有しており、餌内 に抗生物質を使用することは望ましくないとされている。 40 【0005】 米国農務省(The United States Department of A griculture:USDA)は、家禽の餌に加えられてニワトリ腸内におけるEi meria段階の細胞内発達を防ぐ抗コクシジウム薬物の使用に、米国および世界的なブ ロイラー産業が大きく頼っていることを認識している。肉製品に薬物が残留することを防 ぐやり方として、ニワトリが市場に送られる約1週間前に薬物が餌から取除かれる。抗コ クシジウム薬物はトリコクシジウム症を防ぐための主要な手段であり続けているが、US DAは、Eimeria寄生虫がこうした薬物に耐性となり得るため、代替的な制御方策 の開発が必要だと述べている。 【0006】 50 (7) JP 2013-513548 A 2013.4.22 コクシジウム症と戦うための代替的な解決策の1つは、有効なワクチンを開発すること であろう。低用量の病原性または弱毒化Eimeria種接合子嚢の混合物の投与が検討 されてきたが、それはまだ実際に有効な介入として証明されていない。ニワトリはEim eriaに対する免疫を発達させるため、コクシジウム症に対する「サブユニット」ワク チンを開発するためにかなりの努力が費やされている。こうしたワクチンは、遺伝子操作 技術を用いて、Eimeria寄生虫のタンパク質成分を生成するだろう。このアプロー チの背後にある根拠は、バクテリアの無害な実験株を用いて、胚内(卵の中)または孵化 時のニワトリを免疫化するために用いられ得る「組み換え」タンパク質を生成できるとい うことである。もし成功すれば、ニワトリは寄生虫の表面に通常存在するタンパク質によ って免疫化されるため、その後のEimeria感染に耐性となる。しかしながら、US 10 DAによると、今日までの努力は実を結ぶには至っておらず、トリコクシジウム症を予防 するために利用可能な商業的サブユニットワクチンは未だに存在しない。 【0007】 CoxAbic(登録商標)は当該産業において何らかの承認を得ているワクチンであ り、これは、Eimeria maximaの発生のマクロガメトサイト(雌性)段階か ら単離された3つの主要なアフィニティ精製された全長ネイティブ抗原(56kDa、8 2kDaおよび230kDa)を用いて、産卵する雌鳥の産卵期が始まる直前に雌鳥にワ クチン接種することに基づいている。CoxAbic(登録商標)は、E.acervu lina、maximaおよびtenellaに対する免疫を含む、ブロイラーに感染す るコクシジウム種に対する交差免疫を誘発する。CoxAbic(登録商標)は産卵時点 20 前の若雌鳥を免疫化するために用いられる。免疫種畜は卵黄を通じて特定の抗体をブロイ ラーに移し、孵化後の生育初期にそれらを遮蔽し、一方では農場で自然にコクシジウムに 晒される。この露出によって母性保護の際に免疫がもたらされ、それがブロイラーのライ フサイクルの初期段階でブロイラーに移される。保護的な移行抗体が卵黄を介して子供の ヒヨコに移され、ヒヨコは高力価の移行抗体を有して孵化する。これらの移行抗体は、ヒ ヨコの生育期間の最初の2∼3週間にわたり、接合子嚢脱落を低減させるように作用する 。これは次に、ピーク同腹仔接合子嚢カウント(peak litter oocyst counts)を60∼80%低下させ、これは通常は3∼5週齢で起こる。 【0008】 しかしながら、このワクチンは母子免疫をブロイラーに移すことができるものであり、 30 餌に抗コクシジウム薬を入れることなくブロイラーを飼育できるという事実にもかかわら ず、その免疫は、ブロイラーのライフサイクルの初期段階で母鳥からブロイラーに移され るという点において間接的な免疫である。ブロイラーがその免疫を保持することを確かめ るための仕組みはなく、孵化後のブロイラーまたはヒヨコに直接投与できるワクチンは現 在入手不可能である。このことから、母鳥から免疫を適切に受取らなかったブロイラー、 または免疫を失って追加免疫を必要とするより高齢のブロイラーの間でコクシジウム症が 広がる可能性が残っている。実際に、CoxAbic(登録商標)の製造者は、CoxA bicは種畜にワクチン接種するために用いられるものであって、その種畜のブロイラー ヒヨコのみを保護することを示している。ELISA法によって定めるとき、母子免疫は 約14日間またはもう少し長く持続する。それらのトリがライフサイクルのもっと後の年 40 齢でさまざまな種のEimeriaに晒されれば、もはや母子免疫は存在しないため、よ り高齢のトリは保護されないままとなる。 【0009】 CoxAbic(登録商標)ワクチンには、それが種畜ニワトリへの注射によって投与 されるというさらなる欠点もある。CoxAbic(登録商標)のためのワクチン接種ス ケジュールにおいては、若雌鳥は飼育の間に2回のワクチン注射を受ける必要があり、そ の2回の注射の間を少なくとも4週間あける必要がある。第1の注射は12週齢から15 週齢で行なわれてもよい;第2の注射は18週齢から21週齢で行なわれてもよい。よっ てこのワクチンの投与モードは、大集団のブロイラーニワトリへの直接投与に容易に適応 できない。 50 (8) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【0010】 上述のとおり、ブロイラーニワトリの処置のためのワクチンを得ることには主要な商業 的誘因がある。ニワトリに注射する必要のあるワクチンは、大集団のニワトリへの投与に 対して実用的ではない。したがって、コクシジウム症の有害な影響に対する保護をもたら すためにブロイラーニワトリに容易に投与され得るワクチンが要求されている。 【発明の概要】 【課題を解決するための手段】 【0011】 特定の局面において、本発明は、Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシ ジウム症ワクチンを提供することによって、コクシジウム症ワクチンに対する要求に対処 10 するものであって、前記ワクチンは、膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性 シグナル配列と、オープンリーディングフレーム(open reading fram e:ORF)を前記疎水性シグナル配列とインフレームで挿入することを可能にするため の、ORFを挿入するためのマルチプルクローニング部位と、ポリアデニル化シグナルと 、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリ アデノウイルスベクターを含む。 【0012】 特定の実施形態において、目的のORFはEimeria maximaの切断型r5 6抗原をコードする。他の実施形態において、目的のORFはEimeria maxi maの切断型TFP250抗原をコードする。さらに付加的な実施形態において、目的の 20 ORFはEimeria maximaの切断型82kDa抗原をコードする。特定の他 の例示的な実施形態において、マルチプルクローニング部位は、Eimeria max imaの切断型TFP250抗原および/またはEimeria maximaの切断型 82kDa抗原と組み合わせた、Eimeria maximaの切断型r56抗原をコ ードするORFを含む。 【0013】 コクシジウム症ワクチンは、あらゆるトリウイルスから調製されてもよい。好ましくは 、コクシジウム症ワクチンは、FAV1、FAV2、FAV3、FAV4、FAV5、F AV6、FAV7、FAV8、FAV9、FAV10、FAV11およびFAV12のゲ ノムからなる群より選択されるトリアデノウイルスゲノムを用いる。特定の実施形態にお 30 いて、トリアデノウイルスゲノムはFAV8ゲノムである。 【0014】 組み換え組み換えトリアデノウイルスベクターはさらに、目的のORFの挿入のための クローニング部位のすぐ上流に切断配列を含んでもよく、前記ベクターからの発現産物は 可溶性産物を生成する。 【0015】 例示的な実施形態において、切断型r56をコードする核酸は、配列番号14に示され る全長r56配列のヌクレオチド70∼1035の配列を含むが、配列番号2に示される 完全なr56タンパク質配列はコードしていない。残基70∼1035によってコードさ れるヌクレオチド配列を配列番号13に示す。配列番号14には全長のEimeria 40 maxima R56をコードする配列も示されており、この配列は配列番号1の配列内 に含まれており、ここではatg開始部位が残基103∼106に示されている。さらに 他の実施形態において、切断型r56をコードする核酸は、配列番号2のアミノ酸24∼ 345からなる切断型r56フラグメント、または配列番号2のアミノ酸24∼345の フラグメントをコードする。特定の代替的な実施形態において、切断型TFP250をコ ードする核酸は、配列番号16に示される全長TFP250配列のヌクレオチド6448 ∼7083の配列を含むが、配列番号4に示される完全なTFP250タンパク質配列は コードしていない。より特定的には、切断型TFP250をコードする核酸は、配列番号 16のヌクレオチド6448∼7083の核酸配列からなる。残基6448∼7083に よってコードされるヌクレオチド配列を配列番号15に示す。配列番号16には全長のE 50 (9) JP 2013-513548 A 2013.4.22 imeria maxima TFP250をコードする配列も示されており、この配列 は配列番号3の配列内に含まれており、ここではatg開始部位が残基231∼233に 示されている。 【0016】 Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシジウム症ワクチンの組成物および 使用方法も意図されており、前記ワクチンは、膜アンカードメインをコードする核酸を含 む疎水性シグナル配列と、前記疎水性シグナル配列とインフレームで挿入された、配列番 号2のアミノ酸24∼345からなる切断型r56または配列番号2のアミノ酸24∼3 45のフラグメントをコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノウイル スゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリアデノウイルスベク 10 ターを含む。 【0017】 別の実施形態は、Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシジウム症ワクチ ンの調製および使用を教示し、前記ワクチンは、膜アンカードメインをコードする核酸を 含む疎水性シグナル配列に作動可能に連結されたプロモーターと、前記疎水性シグナル配 列とインフレームで挿入された、配列番号16のヌクレオチド6448∼7083の核酸 配列からなる切断型TFP250をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと、トリ アデノウイルスゲノムとを含む組み換えトリアデノウイルスベクターを含む。 【0018】 さらなる実施形態は、Eimeria感染から家禽を保護するためのコクシジウム症ワ 20 クチンの組成物および使用方法に関し、前記ワクチンは、膜アンカードメインをコードす る核酸を含む疎水性シグナル配列と、前記疎水性シグナル配列とインフレームで挿入され た、Eimeria maximaの切断型82kDa抗原をコードする核酸と、ポリア デニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーター を含む組み換えトリアデノウイルスベクターを含む。 【0019】 本発明は、上記コクシジウム症ワクチン組成物の組み合わせを含む多価コクシジウム症 ワクチン調製物も意図している。 【0020】 加えて、多価コクシジウム症ワクチン調製物は、マレック病ウイルス(Marek’s 30 Disease virus:MDV)、ニューカッスル病ウイルス(Newcast le Disease virus:NDV)、伝染性気管支炎ウイルス(Infect ious Bronchitis virus:IBV)、ニワトリ貧血ウイルス(Ch icken Anaemia Virus:CAV)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイル ス(Infectious bursal disease virus:IBDV)、 トリインフルエンザ(Avian influenza:AI)、レオウイルス、トリレ トロウイルス、家禽アデノウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、サルモネラ菌種 、およびE.coliからなる群より選択される免疫原をさらに含んでもよい。 【0021】 本発明の例示的な方法は、Eimeria tenella、Eimeria max 40 ima、Eimeria acervulina、Eimeria necatrix、 Eimeria praecox、Eimeria mitisまたはEimeria brunettiによる感染に対して被験体を免疫化することに関し、この方法は、本発 明のワクチンを被験体に投与するステップを含む。特定の実施形態において、投与するス テップは、全長r56または全長TFP250抗原または全長82kDa抗原を含むFA Vベクターによって前記被験体を免疫化したときにみられる免疫よりも増強されたレベル の免疫を誘発する。 【0022】 好ましくは、この方法はニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、チャボ、ウズ ラおよびハトからなる群より選択される鳥種の処置のために使用される。好ましくは、そ 50 (10) JP 2013-513548 A 2013.4.22 の鳥種はニワトリである。特定の実施形態において、ニワトリは成体のブロイラーニワト リである。 【0023】 投与は、たとえば前記被験体への前記ワクチンの噴霧、食物中の前記ワクチンの前記被 験体への給餌、および前記被験体の飲用供給物中への前記ワクチンの提供などを含むあら ゆる従来の投与経路によるものであってもよい。 【0024】 本発明の別の方法は、ニワトリ集団に、Eimeria tenella、Eimer ia maxima、Eimeria acervulina、Eimeria nec atrix、Eimeria praecox、Eimeria mitisまたはEi 10 meria brunettiに対する防御免疫を与えるための併用ワクチン接種療法を 含み、この方法は、被験体に本発明のいずれかのワクチンを投与するステップと、前記ニ ワトリ集団にCoxAbic(登録商標)を投与するステップとを含む。 【0025】 この併用療法は、種畜雌鳥にCoxAbic(登録商標)を投与して孵化の際にヒヨコ に免疫を与え、本発明の前記ワクチンを孵化後のday1およびそれより後にヒヨコに投 与し、かつ前記集団の成体ブロイラー雌鳥に投与するというものである。 【0026】 本発明の他の局面は、トリアデノウイルスゲノムを含むトリアデノウイルスベクターを 記載し、これは異種プロモーターと、異種疎水性シグナル配列と、マルチプルクローニン 20 グ部位と、ポリアデニル化配列とを含み、前記プロモーターおよび前記疎水性シグナル配 列はマルチプルクローニング部位の上流に位置し、前記マルチプルクローニング部位に目 的のORFを挿入することによって、前記プロモーターの調節下で前記シグナル配列とイ ンフレームで前記目的のORFを発現できる発現ベクターがもたらされる。 【0027】 特定の実施形態において、疎水性シグナル配列は、前記目的のORFの発現産物が、発 現された宿主細胞から分泌されることを可能にするための切断部位を含む。他の実施形態 においては、シグナル配列が切断部位を含有しないことによって、宿主細胞の細胞表面に 係留された前記目的のORFの融合発現産物の発現がもたらされる。 【0028】 30 膜アンカードメインをコードする核酸を含む疎水性シグナル配列と、目的のORFを前 記疎水性シグナル配列とインフレームで挿入することを可能にするための、目的のORF の挿入のためのマルチプルクローニング部位と、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノ ウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリアデノウイル スベクターも意図される。いくつかの実施形態において、ベクターは、目的のORFの挿 入のためのクローニング部位のすぐ上流に切断配列をさらに含んでいてもよく、前記ベク ターからの発現産物は可溶性ORF産物を生成する。 【0029】 疎水性分泌シグナル配列および切断部位と、Eimeria maximaの切断型r 56タンパク質をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲ 40 ノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリアデノウイルスベクター も開示される。 【0030】 別の実施形態は、疎水性分泌シグナル配列および切断部位と、Eimeria max imaの切断型TFP250タンパク質をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと 、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリ アデノウイルスベクターに関する。 【0031】 さらなる実施形態は、疎水性分泌シグナル配列および切断部位と、Eimeria m aximaの切断型82kDaタンパク質をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナル 50 (11) JP 2013-513548 A 2013.4.22 と、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えト リアデノウイルスベクターに関する。 【0032】 さらなる実施形態は、膜アンカードメインをコードする核酸を含むシグナル配列と、E imeria maximaの切断型r56タンパク質をコードする核酸と、ポリアデニ ル化シグナルと、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含 む組み換えトリアデノウイルスベクターに関する。 【0033】 さらに付加的な実施形態は、膜アンカードメインをコードする核酸を含むシグナル配列 と、Eimeria maximaの切断型TFP250タンパク質をコードする核酸と 10 、ポリアデニル化シグナルと、トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロ モーターを含む組み換えトリアデノウイルスベクターを記載する。 【0034】 膜アンカードメインをコードする核酸を含むシグナル配列と、Eimeria max imaの切断型82kDaタンパク質をコードする核酸と、ポリアデニル化シグナルと、 トリアデノウイルスゲノムとに作動可能に連結されたプロモーターを含む組み換えトリア デノウイルスベクターも意図される。 【0035】 上記に概説したワクチンにおいて、切断型r56をコードする核酸は、配列番号14に 示される全長r56配列のヌクレオチド70∼1035の配列を含むが、配列番号2に示 20 される完全なr56タンパク質配列はコードしていない。より特定的には、切断型r56 をコードする核酸は、配列番号14のヌクレオチド70∼1035の核酸配列、または配 列番号14のヌクレオチド70∼1035のフラグメントからなる。たとえば、切断型r 56をコードする核酸は、配列番号2のアミノ酸24∼345または配列番号2のアミノ 酸24∼345のフラグメントからなる切断型r56フラグメントをコードする。 【0036】 他の実施形態において、切断型TFP250をコードする核酸は、配列番号3に示され る全長TFP250配列のヌクレオチド6448∼7083の配列を含むが、配列番号4 に示される完全なTFP250タンパク質配列はコードしていない。より特定的には、切 断型TFP250をコードする核酸は、配列番号16のヌクレオチド6448∼7083 30 の核酸配列からなる。 【0037】 分泌を生成する組み換えトリアデノウイルスベクターは、あらゆる分泌シグナル配列を 含んでもよい。特定の実施形態において、分泌シグナル配列は、ニワトリガンマインター フェロン、ブタガンマインターフェロン、およびヒトインフルエンザH1N2の分泌シグ ナル配列からなる群より選択される。 【0038】 アンカー産物を生成する組み換えトリアデノウイルスベクターは、あらゆる膜アンカー シグナル配列を含んでもよい。特定の実施形態において、膜アンカーシグナル配列は、ト リインフルエンザHA抗原の分泌シグナル配列からなる群より選択される。 40 【0039】 記載されるいずれの発現ベクターも、本明細書に記載される方法における使用のために ワクチンに容易に配合され得る。 【0040】 例示的な方法は、トリ集団における免疫応答を誘発する方法を含み、この方法は前記集 団にこうしたワクチンを投与するステップを含む。 【0041】 コクシジウム症に対して家禽集団にワクチン接種する好ましい方法は、本発明の組み換 えトリアデノウイルスベクターを含むワクチンを投与するステップを含み、前記ワクチン の投与は、全長r56または全長TFP250を含むワクチンの投与よりも高い免疫応答 50 (12) JP 2013-513548 A 2013.4.22 を誘発する。 【0042】 本明細書に記載される組み換えトリアデノウイルスベクターを含む単離細胞も意図され る。 【0043】 組み換えトリアデノウイルスベクターのいずれかを適切な賦形剤と有利に組み合わせて 、動物、特にトリの処置のための薬学的処方物を生成してもよい。 【図面の簡単な説明】 【0044】 【図1】図1は、本発明のFAVに基づくベクターの概略を示す図である。 10 【図2】図2は、ネイティブ、膜アンカーまたは分泌形のいずれかのr56タンパク質を 含むさまざまなFAV構築物のウエスタンブロット分析を示す図である。 【図3】図3は、ネイティブ、膜アンカーまたは分泌形のいずれかのTFP250タンパ ク質を含むさまざまなFAV構築物のウエスタンブロット分析を示す図である。 【図4A】図4は、Heijne Eur.J.Biochem 133,17−21( 1983)の図1より転載した、真核生物のシグナル配列のコレクションを示す図である 。これらの配列は、アスタリスク(*)によって示されるそれらの公知の切断部位または 予想される切断部位に基づいて整列されている。ここに示される配列は、配列番号35∼ 124である。 【図4B】図4は、Heijne Eur.J.Biochem 133,17−21( 20 1983)の図1より転載した、真核生物のシグナル配列のコレクションを示す図である 。これらの配列は、アスタリスク(*)によって示されるそれらの公知の切断部位または 予想される切断部位に基づいて整列されている。ここに示される配列は、配列番号35∼ 124である。 【図5】図5は、発現カセットの化学合成のためのスキームを示す図である。 【図6】図6は、構築物を調製するためのPCR増幅のためのスキームを示す図である。 【図7】図7は、配列の挿入のためのマルチプルクローニング部位の使用のためのスキー ムを示す図である。 【図8】図8は、以前に添付物にて「p1232_entire」と示した、ガンマイン ターフェロンの分泌シグナルを有するCMVP−TFP250−pA/1054(FAV 30 RHE)のプラスミド構造を示す図である。全配列は配列番号17として本明細書に示 される。その配列において、分泌シグナル配列は配列番号18によってコードされており 、これは配列番号17のヌクレオチド5629..5712に位置し、配列番号19のタ ンパク質に翻訳される。切断型TFP250挿入物は配列番号20の配列によってコード されており、これは配列番号17のヌクレオチド5713から6348に位置し、配列番 号21の配列に翻訳される。このプラスミドは、位置4965...5623にCMVプ ロモーター配列を有する。この図面に示される情報および関連する配列情報は、2008 年12月15日に提出された優先権出願である米国仮特許出願第61/122,596号 の添付物にて以前提供したものである(本明細書においてその全体にわたり引用により援 用する。 40 【図9】図9は、以前に添付物にて「p1223_entire」と示した、ガンマイン ターフェロンの分泌シグナルを有するMLP−R56−pA−pA/1054(FAV RHE)のプラスミド構造を示す図である。全配列は配列番号22として本明細書に示さ れる。その配列において、分泌シグナル配列は配列番号23によってコードされており、 これは配列番号22のヌクレオチド5381..5461に位置し、配列番号6のタンパ ク質に翻訳される。切断型R56挿入物は配列番号24の配列によってコードされており 、これは配列番号22のヌクレオチド5462から6430に位置し、配列番号25の配 列に翻訳される。このプラスミドは、ヌクレオチド5381...5461にMLP配列を 有する。この図面に示される情報および関連する配列情報は、2008年12月15日に 提出された優先権出願である米国仮特許出願第61/122,596号の添付物にて以前 50 (13) JP 2013-513548 A 2013.4.22 提供したものである(本明細書においてその全体にわたり引用により援用する。 【図10A】図10Aは、E.maximaの82kDaタンパク質の配列を示す図であ る。この図面に示される配列は、配列番号26(上側の鎖);配列番号27(下側の鎖) および配列番号28(タンパク質配列)である。 【図10B】図10Bは、E.maximaの82kDaタンパク質の配列を示す図であ る。この図面に示される配列は、配列番号26(上側の鎖);配列番号27(下側の鎖) および配列番号28(タンパク質配列)である。 【図10C】図10Cは、E.maximaの82kDaタンパク質の配列を示す図であ る。この図面に示される配列は、配列番号26(上側の鎖);配列番号27(下側の鎖) および配列番号28(タンパク質配列)である。 10 【図11】図11は、E.maximaのR56配列(配列番号2)およびE.tene llaのR56配列(配列番号29)の比較を示す図である。シグナル配列を欠いた切断 型R56の配列(配列番号30)も示される。この図面の下側部分は、E.tenell aの切断型R56(配列番号31)とE.maximaの切断型R56(配列番号32) との配列比較を示す。この配列情報図は、2008年12月15日に提出された優先権出 願である米国仮特許出願第61/122,596号の添付物にて以前提供したものである (本明細書においてその全体にわたり引用により援用する。 【図12】図12は、E.maxima(配列番号33)およびE.tenella(配 列番号34)の短縮バージョンのR56を示す図である。この配列情報図は、2008年 12月15日に提出された優先権出願である米国仮特許出願第61/122,596号の 20 添付物にて以前提供したものである(本明細書においてその全体にわたり引用により援用 する。 【発明を実施するための形態】 【0045】 本発明は、ブロイラーニワトリの集団に、コクシジウム症に対するこうしたトリの防御 免疫のために投与できる組み換えウイルスワクチン組成物の調製方法および使用に関する 。このワクチンは孵化後のトリに投与でき、注射による投与は必要なく、代わりに経口、 食物供給、飲用供給物を通じて、またはエアロゾルスプレーとして投与されてもよい。本 発明のワクチン構築物の利点は、免疫原を内部発現させるのではなく、免疫原の発現が感 染細胞の細胞外部位に送達されるように指示することである。本明細書に記載されるワク 30 チンの場合、こうして免疫原が粘膜細胞(例、鼻腔、気道、胃腸管、腸粘膜などにおける 粘膜細胞)の外表面に送達されることによって、細胞内での送達免疫原の発現では免疫原 が適切な免疫応答機構に効率的に接触しないおそれがあるのに対し、免疫応答が迅速に開 始され得る部位に免疫原を提示する。 【0046】 既存のワクチンは、いくつかの理由から有効なコクシジウム症ワクチンに対する当該技 術分野の長年にわたる要求を満たしていない。第1に、コクシジウム症を処置するために 現在利用可能なワクチンであるCoxAbic(登録商標)は、母鳥にしか免疫を与えず 、その免疫が卵黄を通じてブロイラー集団に移ることに頼っている。母子免疫は、卵の孵 化後最初の約14日間という比較的短期間しか持続しない。よって、これはブロイラーニ 40 ワトリにおいて特定的に長期の応答を誘発するために有効なワクチンではない。さらに、 このワクチンは注射を介して投与される。このことからも、このワクチンは高齢のトリの 大集団を処置するために有効でないものとなる。 【0047】 コクシジウム症に対する既存の処置の問題点に対処するため、本発明者らはブロイラー に防御免疫を与えるための新たなワクチンを開発した。このワクチンは、サブユニットワ クチンにおけるEimeria抗原の発現をもたらすトリアデノウイルス発現系に基づく ものである。この抗原は疎水性シグナル配列とインフレームで発現され、ワクチンが投与 されたニワトリにおけるウイルス感染細胞の細胞表面に提示されるか、または代替的に、 発現ベクター中の疎水性シグナル配列が切断シグナルをも含む場合には、こうした感染ニ 50 (14) JP 2013-513548 A 2013.4.22 ワトリにおける細胞外ドメインに分泌される。これらの特徴、ならびに組み換えトリアデ ノウイルスコクシジウム症ワクチンを用いるための方法および組成を、本明細書の下記に おいてさらに詳しく説明する。 【0048】 一般的に、本発明のワクチンは、トリアデノウイルスゲノムでできた、図1に示される とおりに構築された発現ベクターで構成される。トリまたは家禽アデノウイルス(fow l adenovirus:FAV)は当業者に周知であり、広範囲にわたって特徴付け られている。たとえば、家禽アデノウイルスタイプ1株CELO(ヒヨコ胚致死孤児(c hick embryo lethal orphan)に対するもの)と呼ばれるトリ アデノウイルスが記載されている(Chiocca,S.ら,J.Virol.70:2 10 939−49(1996);Li,P.ら,J.Gen.Virol.65(Pt 10 ):1817−25(1984);May,J.T.ら,Virology 68:48 3−9(1975);Lehrmann,H.,Cotton,M.,J.Virol. 73:6517−25(1999);Chiocca,S.ら,J.Virol.71: 3168−77(1997))。遺伝子療法、ならびにヒトおよび動物、特にトリにおけ る感染性疾患に対するワクチンでの使用のために、ベクターを形成するためのCELOの 使用および操作方法は、たとえば米国特許第6,335,016号などにも広範囲に記載 されている。CELO(FAV1またはFAV A)の完全なゲノム配列は、Genba nk受入番号U46933;NC_001720およびAC_000014に見出される であろう。 20 【0049】 特定の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において用いられる 家禽アデノウイルスベクターは、たとえば米国特許出願第08/448,617号および 第09/272,032号に記載されるものなどの家禽アデノウイルスベクター(FAV )であり、本明細書においてその内容は引用により援用される。特に好ましい実施形態に おいて、このベクターはFAV血清型8(以後「FAV8」)の右側端部を含む。FAV 8の全ヌクレオチド配列は、本明細書において配列番号5として示される。FAV8発現 ベクターの全ヌクレオチド配列は、GenBank受入番号AF155911にも含まれ ている。FAV8の単離および生成のための方法は、米国特許第6,296,852号( 本明細書においてその全体にわたり引用により援用する)に記載されている。 30 【0050】 FAV9(FAV Dとも呼ばれる)はCaoら,J.Gen.Virol.79(P t 10),2507−2516(1998)に記載されており、その完全なゲノムはG enBank受入番号AF083975およびNC_000899に示されている。 【0051】 FAVの配列の教示が当業者に公知であるため、本発明のワクチンは、FAV1、FA V2、FAV3、FAV4、FAV5、FAV6、FAV7、FAV8、FAV9、FA V10、FAV11、FAV12またはあらゆる後に単離される血清型の家禽アデノウイ ルスを用いて容易に調製され得る(ウイルスの分類についてはMonreal,G.Ad enoviruses and adeno−associated viruses 40 of Poultry.Poultry Science Rev.4,p.1−27( 1992)を参照)。米国特許第6,296,852号に記載されるとおり、FAV C FA20(FAV血清型10である)、CFA15(血清型10)ならびにCFA40お よびCFA44(両方とも血清型8)ならびにFAV CFA15およびCFA19(血 清型9)は、ワクチン生成のために特に有用であり得る。 【0052】 本明細書で調製されるワクチンにおいて使用されるプロモーターは、FAV構築物中の 目的の異種コード領域の発現を駆動できるあらゆるプロモーターであってもよい。こうし たプロモーターは、トリアデノウイルス主要後期プロモーター(major late promoter:MLP)、CMVp、PGK−、E1−、SV40初期プロモーター 50 (15) JP 2013-513548 A 2013.4.22 (SVG2)、SV40後期プロモーター、SV−40最初期プロモーター、T4後期プ ロモーター、およびHSV−I TK(ヘルペスウイルスタイプ1チミジンキナーゼ(h erpesvirus type 1 thymidine kinase))遺伝子プ ロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus)) LTR(長末端反復(long terminal repeat))およびPGK(ホ スホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglycerate kinase))遺伝 子プロモーターを含むがそれに限定されない。FAV MLPのDNA配列は、米国特許 第6,296,852号の図5に示されている。多くの他の哺乳動物またはトリのプロモ ーターが当業者に公知であり、それらが用いられてもよい。 【0053】 10 本明細書に記載されるワクチンに使用されるプロモーターは、目的のオープンリーディ ングフレームまたはコード領域の核酸配列とインフレームでつながれた疎水性シグナル配 列のインフレーム融合物の発現を駆動する。疎水性シグナル配列は、家禽アデノウイルス 発現ベクターに感染した宿主細胞の外膜を標的として、または特定的にそこに向けて目的 のペン(pen)リーディングフレームまたはコード領域の発現を行なわせるために用い られ得るあらゆる配列であってもよい。本発明において、このFAVに基づく発現ベクタ ーはニワトリに感染させることが意図される。FAVは典型的に、たとえばニワトリの腸 管、気道または胃腸管などに見出され得る、ニワトリの粘膜細胞、肝細胞および上皮細胞 に感染する。よって疎水性シグナル配列は、目的のオープンリーディングフレームまたは コード領域の発現をこれらの粘膜細胞の細胞表面に輸送するものである。こうして目的の 20 オープンリーディングフレームまたはコード領域を動物の粘膜細胞の細胞表面に提示する ことによって、免疫応答の開始をそれほど効果的に促進できないおそれのある動物細胞内 での発現とは対照的に、本発明のワクチンは、免疫応答を効果的に開始できる内部部位に 抗原を最も効果的に送達できる。今説明しているワクチンの使用によるこの発現産物の細 胞外分泌によって、野生型免疫原によってワクチンを調製したときにみられるものよりも 大きい抗体免疫応答および抗体生成がもたらされる。 【0054】 真核細胞において、分泌タンパク質は、疎水性シグナル配列によって小胞体膜を標的と する。本発明はこの性質を用いて、異種疎水性シグナル配列を利用してワクチンにおける 所与のタンパク質の発現を細胞表面に向ける。 30 【0055】 本明細書で用いられるウイルスベクターは、ORFの発現産物が発現の際に切断型OR Fタンパク質の(感染細胞からの)分泌を可能にするように改変されたORFをコードす るか、または感染細胞の表面にタンパク質を直接発現させるような核酸を含むポリヌクレ オチド構築物を含む、組み換えベクターである。たとえば、目的のORFは、ニワトリガ ンマインターフェロン、ブタガンマインターフェロン、またはインフルエンザウイルスの HAタンパク質からのシグナル配列とインフレームで発現される。用いられ得る他のシグ ナル配列は、たとえば乳清リンタンパク質シグナル配列;α−1酸糖タンパク質;α−サ イロトロピン;メクラウナギからのインスリン;アンコウからのインスリン;ヒトインス リン;ラットインスリンIまたはII;ヒツジβ−カゼイン;ヒツジχ−カゼイン;ヒツ 40 ジα−ラクトアルブミン;ヒツジβ−ラクトグロブリン;ヒツジα−slカゼイン、およ びヒツジα−s2カゼイン;VSウイルス糖タンパク質;雄鳥VLDL−11;ミツバチ メリチン;ラットラクチン;ヒト胎盤ラクトゲン;ヒトβ−絨毛性ゴナドトロピン;ヒト α−絨毛性ゴナドトロピン;ウサギウテログロビン;ラット成長ホルモン;ヒト成長ホル モン、ヒト;ウシ成長ホルモン;ウシ副甲状腺ホルモン;ラットレラキシン;ラット血清 アルブミン;ヒト血清アルブミン;ラット肝臓アルブミン;ニワトリトロポエラスチンB ;ニワトリオボムコイド;ニワトリリゾチーム;ニワトリコンアルブミン;ヒトα−1ア ンチトリプシン;ラット前立腺結合タンパク質;ラット前立腺結合タンパク質c2;AD ウイルス糖タンパク質;ラットアポリポタンパク質Al;狂犬病ウイルス糖タンパク質; ヒトインフルエンザVictoria赤血球凝集素;ヒトインフルエンザJap赤血球凝 50 (16) JP 2013-513548 A 2013.4.22 集素;トリインフルエンザFPV赤血球凝集素;ヒト白血球インターフェロン;ヒト免疫 インターフェロン;ヒト線維芽細胞インターフェロン;マウスχ−免疫グロブリン;マウ スλ−免疫グロブリン;マウスχ−免疫グロブリン;マウスH鎖免疫グロブリン;マウス 胚VH−免疫グロブリン;マウスH鎖免疫グロブリン;イヌトリプシノゲン1;イヌトリ プシノゲン2+3;イヌキモトリプシノゲン2;イヌカルボキシペプチダーゼAl;イヌ アミラーゼ;マウスアミラーゼ;ラットアミラーゼ;ウサギα−ラクトアルブミン;ブタ α−ラクトアルブミン;ラットカルボキシペプチダーゼA;ウシACTH−β−LPH前 駆体;ブタACTH−β−LPH前駆体;ヒトACTH−β−LPH前駆体;ブタガスト リン;マウスレニン;トリパノソーマ糖タンパク質;ナマズソマトスタチン;アンコウソ マトスタチン;ラットカルシトニン;およびアンコウグルカゴンのシグナル配列などを含 10 む。これらのシグナル配列の各々は、von Heijneら、Eur.J.Bioch em 133 17−21(1983)の図1に示されており、本明細書における使用の ために容易に適応され得る。前述の参考文献の図1からのシグナル配列を本明細書の図4 に転載している。 【0056】 所与のタンパク質に対するこれらおよびその他のシグナルペプチド部位は、当業者に公 知の方法を用いて容易に決定できる。たとえば、SignalP 3.0サーバ(Ben dtsen,J.D.,Nielsen,H.,von Heijne,G.&Brun ak,S.(2004)Improved prediction of signal peptides:SignalP 3.0.J.Mol.Biol.340,783 20 −795)を用いてシグナルペプチド部位を予測できる。加えて、シグナル配列の決定を 容易にするために利用可能なウェブサイトもあり、たとえばhttp://www.cb s.dtu.dk/services/SignalP/などを参照されたい。発現され た産物を細胞表面に輸送できる疎水性配列である限り、使用されるシグナル配列の正確な 同一性は重要ではない。 【0057】 好ましい実施形態において、シグナル配列は、そのシグナル配列を切断して付加タンパ ク質をこうした細胞の細胞外スペースに分泌させることを可能にするための切断部位を含 む。特に好ましい実施形態においては、ニワトリガンマIFNからのシグナル配列を用い て本発明のこの局面が示され、これは配列MTCQTYNLFVLSVIMIYYGHT 30 ASSLNL(配列番号6)を含み、これはDNA配列ATG ACT TGC CAG ACT TAC AAC TTG TTT GTT CTG TCT GTC ATC ATG ATT TAT TAT GGA CAT ACT GCA AGT AGT CTA AAT CTT(配列番号7)によってコードされ、ブタガンマIFNに対す る疎水性シグナル配列はMSYTTYFLAFQLCVTLCFSGSYC(配列番号8 )であり、これはDNA配列ATG AGT TAT ACA ACT TAT TTC TTA GCT TTT CAG CTT TGC GTG ACT TTG TGT TTT TCT GGC TCT TAC TGC(配列番号9)によってコードされ 、ヒトインフルエンザウイルスH1N2に対する疎水性シグナル配列はMKVKLLIL LCTFTATYADTI(配列番号10)であり、これは配列atg aaa gta 40 aaa cta ctg atc ctg tta tgt aca ttt aca gct aca tat gca gac aca ata(配列番号11)によって コードされる。これらの例示的な配列の各々も切断部位を含み、そこにシグナルペプチダ ーゼが作用して発現ORFの放出をもたらす。 【0058】 プロモーターと、切断部位を含んでも含まなくてもよい疎水性シグナル配列とに加えて 、発現ベクターはポリアデニル化配列をさらに含む。ポリAテールは、mRNA分子を細 胞質におけるエキソヌクレアーゼによる分解から保護し、転写終結、mRNAの核からの 排出、および翻訳を助ける。ほぼすべての真核生物mRNAはポリアデニル化されている 。当業者は、タンパク質の組み換え発現のためにポリAテール配列をルーチン的に付加す 50 (17) JP 2013-513548 A 2013.4.22 る。 【0059】 本発明のベクターに挿入されるORFまたはその他の外来配列は、本明細書に記載され るFAVベクターを使用して発現されることが望まれるあらゆるORFまたはその他の外 来配列であってもよい。これらその他の外来配列は、1つもしくはそれ以上のORF、ま たは目的の発現産物、または遺伝子ではないが治療上の目的での他の機能を有するその他 のヌクレオチド配列からなっていてもよい。 【0060】 しかしながら特定の実施形態において、本発明は、コクシジウム症に対してニワトリに ワクチン接種するためのサブユニットワクチンとして使用されるベクターを記載する。こ 10 の状況において、目的のORFはアピコンプレクサの原虫寄生体Eimeriaの抗原を コードするものである。より特定的には、ORFは、米国特許第7,423,137号( 本明細書において引用により援用される)に記載されるとおりの56kDa、82kDa および230kDaの抗原からなる群より選択される。より特定的には、本発明者らは、 56kDa(本明細書では代替的にr56と呼ばれる)または230kDa(本明細書で は代替的にTPF250と呼ばれる)抗原の全長配列をFAVに組み込んでも有効なワク チンが生成されないことを見出した。しかし、切断型r56配列を用いると、ワクチンは 効果的に免疫応答を誘発する。r56の全長アミノ酸配列を配列番号2に示しており、こ のタンパク質配列は配列番号1の配列によってコードされ、r56をコードする全長遺伝 子も配列番号14に示されている。加えて、56kDa抗原をコードするプラスミドは、 20 the Australian Government Analytical Lab oratories,Pymble,Australiaから受入番号NM01/224 00の下で公的に入手可能である。56kDa抗原によって形質転換されたバクテリア細 胞も、同じ保管所から受入番号NM01/22401の下で入手可能である。したがって 特定の実施形態において、コクシジウム症ワクチンの調製のために切断型r56が用いら れる。r56の配列は配列番号2のアミノ酸24∼345を含むものであり、これは配列 番号14の配列70∼1035によってコードされてもよい。本発明の好ましいコクシジ ウム症ワクチンにおいて、r56の切断型配列は、切断型r56を感染細胞の細胞表面に 係留する疎水性シグナル配列とインフレームである。本発明の別の好ましいコクシジウム 症ワクチンにおいて、r56の切断型配列は切断部位を含む疎水性シグナル配列とインフ 30 レームであることによって、膜の細胞外側への輸送の際に、切断型r56は細胞の細胞外 スペースに放出される。特定の実施形態において、アンカーr56タンパク質がトリイン フルエンザHA抗原の疎水性シグナル配列によって細胞表面に係留されるコクシジウム症 ワクチンが提供される。さらに他の特定の実施形態においては、切断部位を含む疎水性シ グナル配列が、ニワトリガンマインターフェロン、ブタガンマインターフェロン、および ヒトインフルエンザウイルスH1N2からなる群より選択される、コクシジウム症ワクチ ンが提供される。特定の実施形態においては、両方のタイプのワクチン、すなわち切断型 r56の細胞表面発現を可能にするワクチンと、発現されたr56を細胞外スペースに放 出するワクチンとを含むコクシジウム症ワクチン組成物が調製されてもよい。 【0061】 40 さらに他の例示的な実施形態においては、コクシジウム症ワクチンの調製のために切断 型TFP250が用いられる。TFP250の全長配列は配列番号4に示されており、こ れは配列番号3または配列番号16によってコードされる。250kDa抗原をコードす るプラスミドは、the Australian Government Analyt ical Laboratories,Pymble,Australiaから受入番号 NM01/22396の下で公的に入手可能である。この抗原によって形質転換されたバ クテリア細胞は、同じ保管所から受入番号NM01/22397の下で入手可能である。 本明細書における好ましいワクチンに用いられるTFP250の配列は、配列番号4のア ミノ酸2149∼2361またはアミノ酸2150∼2361を含むものであり、それは それぞれ配列番号16の配列6444∼7083および2149∼2361によってコー 50 (18) JP 2013-513548 A 2013.4.22 ドされてもよい。本発明の好ましいコクシジウム症ワクチンにおいて、TFP250の切 断型配列は、切断型TFP250を感染細胞の細胞表面に係留する疎水性シグナル配列と インフレームである。本発明の別の好ましいコクシジウム症ワクチンにおいて、TFP2 50の切断型配列は切断部位を含む疎水性シグナル配列とインフレームであることによっ て、膜の細胞外側への輸送の際に、切断型TFP250は細胞の細胞外スペースに放出さ れる。特定の実施形態において、アンカーr56タンパク質がトリインフルエンザHA抗 原の疎水性シグナル配列によって細胞表面に係留されるコクシジウム症ワクチンが提供さ れる。さらに他の特定の実施形態においては、切断部位を含む疎水性シグナル配列が、ニ ワトリガンマインターフェロン、ブタガンマインターフェロン、およびヒトインフルエン ザウイルスH1N2からなる群より選択される、コクシジウム症ワクチンが提供される。 10 特定の実施形態においては、両方のタイプのワクチン、すなわち切断型TFP250の細 胞表面発現を可能にするワクチンと、発現されたTFP250を細胞外スペースに放出す るワクチンとを含むコクシジウム症ワクチン組成物が調製されてもよい。 【0062】 類似の態様で、Eimeriaの82kDa抗原を発現するワクチンと組み合わせてワ クチンを調製してもよいことが意図される。82kDa(本明細書においてはgam82 とも呼ばれる)抗原は、the Australian Government Ana lytical Laboratories,Pymble,Australiaから受 入番号NM01/22398の下で公的に入手可能であり、82kDa抗原によって形質 転換されたバクテリア細胞は、同じ保管所から受入番号NM01/22399で入手可能 20 である(本明細書の添付物に示されている)。本発明のワクチンのいずれかが、既存のワ クチン投与プロトコルと組み合わせて使用されてもよい。たとえば、種畜、ヒヨコおよび 高齢のニワトリにおいて防御免疫を生成するために、本明細書に記載されるワクチンをC oxAbic(登録商標)と組み合わせて使用してもよい。 【0063】 本明細書に記載される実施例の多くがEimeria maximaの抗原から調製さ れたワクチンに関するが、当業者は他のEimeria種からの相同配列を用いてこうし たワクチンを調製してもよいことが容易に明らかになるだろう。当業者は、従来の分子生 物学技術を用いてEimeria maximaからのオープンリーディングフレームの 上記配列に対する相同性を介して、こうした適切なDNA配列を容易に同定できる。よっ 30 て、他のEimeria種、たとえばEimeria tenella、Eimeria acervulina、Eimeria necatrix、Eimeria pra ecox、Eimeria mitisまたはEimeria brunettiなどに 由来する、Eimeria maximaのr56、TFP25および82kDaのOR Fの相同体は、本明細書に記載されるコクシジウム症ワクチンの調製物に対して特定的に 意図される。これに関して、配列番号12はEimeria tenellaのr56の 配列を提供する。Eimeria tenellaおよびEimeria maxima のr56配列が有効であることが示されれば、当業者は本明細書に記載される方法および 組成物に用いるために他のEimeria種からのr56の相同体を容易に同定できるだ ろう。 40 【0064】 好ましい実施形態において、本発明のワクチンは、Eimeria tenella、 Eimeria maxima、Eimeria acervulina、Eimeri a necatrix、Eimeria praecox、Eimeria mitis もしくはEimeria brunetti、または免疫学的に交差反応性の抗原を発現 する微生物による感染に対して被験体を免疫化する方法を提供するために用いられ、この 方法は、本発明のワクチンを被験体に投与するステップを含む。特に好ましい実施形態に おいて、被験体は、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、チャボ、ウズラおよ びハトからなる群より選択される鳥種を含むがそれに限定されない鳥種である。特に好ま しい実施形態において、その鳥種はニワトリであり、より特定的にはブロイラーニワトリ 50 (19) JP 2013-513548 A 2013.4.22 である。 【0065】 このワクチンは、ワクチン接種に典型的に用いられるあらゆる経路によって投与されて もよく、その経路は、全身的(たとえば、静脈内、気管内、血管内、肺内、腹腔内、鼻腔 内、非経口的、腸管内、筋肉内、皮下、腫瘍内、または頭蓋内など)、経口投与、エアロ ゾル化、または肺内注入によるものを含むがそれに限定されない。投与は単一用量で行な われてもよいし、特定の時間間隔後に1回またはそれ以上繰り返される用量で行なわれて もよい。適切な投与経路および投与量は状況(たとえば、処置される個体、処置される障 害、または目的のポリペプチドのORFもしくはフラグメントなど)によって変わるが、 当業者によって定められ得る。 10 【0066】 このワクチンは従来の投与計画に従って投与されてもよく、たとえば投与量処方に適合 する態様の単一または繰り返し投与として、予防的に有効な量、すなわちトリ(特に家禽 )において病原性のEimeria寄生虫による攻撃に対する免疫を誘導する前記抗原を 発現できる組み換え微生物または免疫化抗原の量にて投与されてもよい。免疫とは、ワク チン接種後のトリの集団において、ワクチン接種していないグループに比べて有意なレベ ルの防御が誘導されることとして定義される。特定の実施形態において、与えられる免疫 は増強された免疫であり、ここで本発明のワクチンは、ワクチン接種後のトリの集団にお いて、全長r56または全長TFP250抗原または全長82kDa抗原を含むサブユニ ットFAVベクターによってトリがワクチン接種されるときにみられる防御よりも有効な 20 レベルの防御を誘導する。この、より効果的なワクチン接種が観察されるのは、このサブ ユニットワクチンが全長配列から調製されたサブユニットワクチンよりも高い安定性を有 するためである。 【0067】 本発明のワクチンは、感染動物が脱落させる接合子嚢の数を減らすかもしれない。通常 、脱落した接合子嚢は群の他の動物に感染する。よって脱落した接合子嚢の数が減少する ことによって、その後感染される動物の数も減少し、さらに脱落した接合子嚢の数が減少 することによって、感染性負荷の減少がもたらされる。特定の実施形態において、本発明 のワクチンは、その後のEimeria感染によって攻撃されたときに、トリにおける盲 腸の病変の数を低減させる。 30 【0068】 典型的に、生ウイルスベクターワクチンのニワトリ当りの用量率は102から1010 pfuの範囲であってもよい(ただし、たとえばHVTに対しては<1000pfuでも 十分であり得る)。 【0069】 本発明のワクチンは、同じおよび/もしくは他のEimeria種の他の抗原性成分、 ならびに/または家禽病原性ウイルスもしくは微生物に由来する付加的な免疫原および/ もしくはこれらの免疫原をコードする核酸配列と効果的に混合されてもよい。こうした混 合ワクチンは、トリの群における寄生虫負荷を減少でき、コクシジウム症に対する防御の レベルを増加でき、加えて他の家禽病原体に対する防御ができる。こうした他の免疫原は 40 、たとえばマレック病ウイルス(MDV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、伝染 性気管支炎ウイルス(IBV)、ニワトリ貧血剤(CM)、レオウイルス、トリレトロウ イルス、家禽アデノウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、サルモネラ菌種、また はE.coliからなる家禽病原性ウイルスまたは微生物の群から選択されてもよい。よ って本発明は多価ワクチンを意図している。特に好ましい多価ワクチンは、上述のr56 発現ベクターを、上述のTFP250を発現する家禽アデノウイルスベクターと組み合わ せるか、および/または上述の82kDa抗原を発現する家禽アデノウイルスベクターと 組み合わせたもので構成される、本発明のコクシジウム症ワクチンである。 【0070】 FAVに基づくサブユニットワクチン中で発現されるEimeria maximaの 50 (20) JP 2013-513548 A 2013.4.22 切断型抗原から調製される本発明のワクチンの特定の利点は、それらをエアロゾルスプレ ーもしくは点眼剤によって投与してもよいし、ブロイラートリの飲水、胚内もしくはトリ の餌に入れて投与するか、またはトリによって摂取されるゲルマトリックスとして配合し てもよいことから、これらのワクチンが典型的な過密条件下であってもブロイラートリの 大規模ワクチン接種に適用可能なことである。よって好ましくは、ワクチンはその投与を 達成するためにワクチンの噴霧を容易にする賦形剤とともに調製されてもよい。 【0071】 本発明のこれらのワクチンは、新たに孵化したヒヨコに噴霧または給餌されてもよいし 、より高齢のトリに同様に噴霧および給餌されてもよい。 【0072】 10 本発明のワクチンは、r56の全長配列またはTFP250の全長配列によって作製さ れた同様のワクチンよりも明白な免疫応答を生じてより良い免疫を与える態様で、Eim eria感染の病原性の影響から家禽を保護することができる。 【0073】 本発明に従うワクチンは、たとえば上述した家禽アデノウイルスベクターを医薬的に許 容できる担体と単に混合することによって作られてもよい。医薬的に許容できる担体とは 、ワクチン接種される動物の健康に悪影響を与えない、少なくともその動物がワクチン接 種されないときの疾病によってみられる影響よりも過度の悪影響を与えない化合物と理解 される。医薬的に許容できる担体は、たとえば滅菌水または滅菌生理食塩水などであって もよい。より複雑な形では、担体はたとえば緩衝液などであってもよい。 20 【0074】 代替的には、本発明のコクシジウム症ワクチンはアジュバントをも含有してもよい。一 般的にアジュバントは、非特異的態様で宿主の免疫応答を高める物質を含む。当該技術分 野において、いくつかの異なるアジュバントが公知である。アジュバントの例は、フロイ ントの完全および不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ポリマーならびにポリア ミン、たとえばデキストラン硫酸、カーボポール(carbopol)およびピランなど である。同じく非常に適切なのは、表面活性物質、たとえばSpan、Tween、ヘキ サデシルアミン、リゾレシチン、メトキシヘキサデシルグリセロールなど、およびQui ll A(登録商標)などのサポニンである。さらに、ムラミルジペプチド、ジメチルグ リシン、タフトシンなどのペプチドがしばしば用いられる。これらのアジュバントの次に 30 、免疫刺激複合体(Immune−stimulating Complexes:IS COMS)、ミネラルオイル、たとえばBayol(登録商標)またはMarkol(登 録商標)など、植物油またはそのエマルション、およびDiluvac(登録商標)Fo rteが有利に用いられてもよい。このワクチンは「媒体」をも含んでもよい。媒体とは 、ポリペプチドがそれに共有結合することなく付着するような化合物のことである。よく 用いられる媒体化合物は、たとえば水酸化アルミニウム、リン酸化物、硫酸化物または酸 化物、シリカ、カオリンおよびベントナイトなどである。媒体中に抗原が部分的に埋込ま れるような、こうした媒体の特殊な形がいわゆるISCOMである(欧州特許第109. 942号、欧州特許第180.564号、欧州特許第242.380号)。 【0075】 40 ワクチン組成物は、たとえば分解されやすいポリペプチドの分解を防ぐため、ワクチン の有効期間を増すため、または凍結乾燥効率を改善するための安定剤をさらに含んでもよ い。有用な安定剤は、スキムミルク、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、炭水化物、たとえ ばソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、スクロース、デキストランま たはグルコースなど、タンパク質、たとえばアルブミンまたはカゼインまたはその分解産 物など、および緩衝剤、たとえばアルカリ金属リン酸塩などを含む。 【0076】 凍結乾燥材料は、何年間も保存して生存可能に保つことができる。凍結乾燥材料に対す る保存温度は、材料に有害になることなく零度より高くてもよい。特定の局面において、 ワクチンは凍結乾燥される。 50 (21) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【実施例】 【0077】 以下の実施例は、本発明に従うワクチンの生成を示すものである。これらの実施例にお いては、家禽アデノウイルス血清型8(fowl adenovirus seroty pe 8:FAV8)が用いられた。この送達系を用いることの主要な利点は、適切な標 的組織(この場合には腸粘膜)へのサブユニットワクチン送達のためのベクターとして弱 毒化FAV8を利用できることにある。 【0078】 実施例1 構築物の調製および分析 10 本実施例においては、Eimeria寄生虫のマクロガメトサイト段階からの最も免疫 原性の高いタンパク質の1つである組み換えタンパク質r56をFAV8ベクターにクロ ーニングした。加えて、Eimeria雄核発生段階からの別の免疫原性タンパク質であ る組み換えタンパク質TFP250を別のFAV8ベクターに別個にクローニングした。 このTFP250のORFは、前の研究でやはりEimeriaによる攻撃感染に対する 部分的防御免疫を誘導することが示されたミクロネームタンパク質(寄生虫侵入に関与す る小器官)の部分をコードしている。 【0079】 形成された発現構築物を以下の2つの表に示す。 【0080】 【化1】 20 30 40 【0081】 (22) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【化2】 10 20 このベクター系を用いてニワトリにおける免疫応答を最大限にするために、これら2つ のタンパク質をコードする各ORFを3つのFAV8発現構築物に別々にクローニングし て、ネイティブタンパク質、膜に係留されたバージョンのタンパク質、および分泌形の抗 原のいずれかを発現させた。後者の2つのFAV8構築物は、目的のORFの上流に適切 30 なシグナル配列を融合することによって得られた。送達ベクターとしてFAV8を用いた ことにより、ワクチンを安価に大規模に投与できるため、かなり大きなブロイラー市場に 導入される可能性を有する最終生成物が提供される。 【0082】 驚くべきことに、全長r56がFAV8ベクターにクローニングされたとき、それはベ クター内で不安定であるために、サブユニットワクチンとして送達されたときにも適切な 防御免疫を提供できないことが見出された。しかし、切断型バージョンの抗原を用いたと きには、免疫が明確に示された。 【0083】 3つのバージョンのr56および3つのバージョンのTFP250を生成した。バージ ョン1はUTSから供給されたネイティブORFであり、そのコード領域をFAV発現カ セットに挿入した以外は変更していないものである。バージョン2は、シグナル配列を加 えることによってr56またはTFP250が細胞から分泌されるようにしたものである 。バージョン3にもシグナル配列が付加されているが、これはr56またはTFP250 を細胞膜に向けるためのものである。 【0084】 下記の表は第1の研究の結果をまとめたものである: 【0085】 40 (23) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【表1】 10 組み換えウイルスが得られたことを確認するために、従来の手段を用いてウイルスを単 離してプラーク精製した。加えてPCRを用いて、組み換えFAVのDNAから単離され た、挿入されたr56またはTFP250 DNAおよびポリA全体、ならびに各セクシ ョン(プロモーター、r56またはTFP250およびポリA)の増幅を確認した。プロ モーター、r56またはTFP250 DNAおよびポリAからなる挿入発現カセット全 体を含む、組み換えFAVから単離したDNAについても、両方向の配列決定を行なって 20 配列挿入物の忠実度を確認した。抗r56または抗TFP250血清を用いてタンパク質 発現を確認した。 【0086】 図2および図3は、さまざまな構築物からのr56およびTFP250のタンパク質分 析を示す。異なるFAV8構築物をLMH細胞系統に感染させることによって、タンパク 質発現実験を行なった。これらの構築物は、すべてのタンパク質発現バージョン(ネイテ ィブ、分泌および膜アンカー)とともに、異なるプロモーター(MLPまたはCMVp) の制御下で設計された。陰性対照として、未感染のLMH細胞およびFAV8ベクターの みを感染させた細胞を用いた。組み換え56に対して産生されたポリクローナル抗血清を 用いてr56抗原を検出し、組み換えペプチドに対するマウス抗血清を用いてTFP25 30 0を検出した。タンパク質バンドは、クローニングされた部分遺伝子フラグメントから予 測されたペプチドの予想サイズに基づく適切な分子量のところに現れた。組み換えTFP 250(図3)に対するレーン3および4にみられるスメアは、ペプチドと宿主細胞材料 との凝集によるもののようであった。 【0087】 この結果から、明確なバンドを示さなかったTFP250膜アンカー構築物を除くすべ ての構築物はよく発現されることが示された。明確なバンドを示さなかったのは、発現さ れたタンパク質が膜に係留して、膜からの抽出後に高次構造が変化したためかもしれない 。 【0088】 40 当業者にとって、多くの異なる可能性が利用可能である。必要な構築物を作製するため に、3つの実施例を以下に示す。図5には、制限酵素部位、目的のORF(たとえば切断 型r56、82kDaタンパク質またはTFP250など)とインフレームのシグナル配 列、および構築物をFAVの右手端部発現カセットに挿入させるための第2の制限酵素部 位の化学合成のためのスキームが示されている。 【0089】 代替的に、(図6)当業者は、適切なRE部位およびインフレームのシグナル配列を有 するプライマーを用いて、目的のORFから所望の配列をPCR増幅してもよい。 【0090】 他の実施例において、当業者はFAV RHE発現カセットを構築して、プロモーター 50 (24) JP 2013-513548 A 2013.4.22 およびシグナル配列、次いでシグナル配列とインフレームで目的のORFを挿入するため のMCSを含ませてもよい(図7)。 【0091】 実施例2 防御免疫応答の誘導 本実施例は、FAV8−r56およびFAV8−TFP250ベクターが、E.max imaの発生を妨げて寄生虫病変を防ぐような防御免疫応答を誘導する能力をテストする ものである。 【0092】 【表2】 10 病変を生成するために必要な接合子嚢の数を評価するために予備試験が行なわれ、その 20 試験では30羽のSPFニワトリを可搬性の清潔なケージ内でコクシジウム症のない条件 下(清潔度、水および餌)で飼育する。ニワトリに毎週飲水を通じてアンプロリウムを投 与することによって、攻撃前にコクシジウム感染を防ぐための処置をする。day28に ニワトリは経口で適切な数のEimeria maxima接合子嚢の攻撃を受ける(表 2を参照)。day34に病変スコア付け(投与量レベル当り少なくとも5羽のニワトリ )を行なう。平均3∼4の最も一貫した病変スコアを有するグループを選択して、試験で 用いられる高攻撃投与量に供する。予備試験に用いられたのと同じバッチの接合子嚢を2 %重クロム酸カリウム中で4℃にて保存し、試験に用いる。 【0093】 次いで、Armidale近郊の孵化場から得られた400羽のSPFニワトリ(最初 30 の3週間で最高10%の死亡率を許容)、および胚内免疫化のための18日インキュベー ションの180個の受精卵に対して予備試験を行なう。 【0094】 以下のワクチンおよび対照が用いられる: 対照:ワクチン接種なし(陰性対照);FAV8ベクターのみ(陰性対照);r56タ ンパク質のワクチン接種;およびTFP250タンパク質のワクチン接種。テストされる ワクチンは、以下のとおりのFAV8構築物に基づくワクチンである:FAV8−r56 ネイティブタンパク質;FAV8−r56 N末端膜アンカー;FAV8−r56分泌形 ;FAV8−TFP250ネイティブタンパク質;FAV8−TFP250 N末端膜ア ンカー、およびFAV8−TFP250分泌形。 40 【0095】 FAV8構築物の力価は用量当り1×108となる。以下に記載されるとおり、ワクチ ンは経口、胚内、または皮下ワクチン接種によって投与される。 【0096】 経口ワクチン投与に対しては、21ゲージのブラントチップ(blunt−tip)針 に接続した1mlシリンジを用いる。トリを垂直に保持し、そっと口を開かせて、後鼻孔 の割れ目の前部にブラントチップ針を挿入する。ワクチンをゆっくりと投与して、ワクチ ンが嚥下される前に後鼻孔の割れ目および中咽頭を浸すようにさせる。この態様で、ワク チンが投与される際に上咽頭のほとんど、および口腔のほぼ全体がワクチンに接触する。 【0097】 50 (25) JP 2013-513548 A 2013.4.22 18日インキュベーションにおける胚内ワクチン接種に対しては、180個の卵が尿膜 腔液中に、日齢ヒヨコに用いられるのと同じ用量レベルでウイルスの注射を受ける(グル ープ5、6、17、18、23および24の卵、各々以下の表3を参照)。 【0098】 組み換え抗原を用いた皮下および筋肉内ワクチン接種に対しては、バクテリアを発酵濃 度の10倍に濃縮して、下記の尿素緩衝液中での超音波処理によって溶解する:25mM のTris pH8.0、6Mの尿素、100mMのNaCl、さらに0.8μMフィル タで濾過する。各25mlのCEサンプルならびに尿素緩衝液およびPBSから100m lのエマルション(25%水相)を調製する。この試験にはフロイントの完全アジュバン トが用いられ、エマルションは注射の直前に調製される。 【0099】 各ニワトリは、最初にday1に用量当り0.5mlを皮下にワクチン接種され、次い でday14に用量当り0.5mlを筋肉内に追加される。 【0100】 下記の表はワクチン接種に対する実験設計をまとめたものである。 【0101】 10 (26) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【表3】 10 20 30 コクシジウム症の混入を避けるために、day7、14および21にニワトリの飲水中 のアンプロリウムでニワトリを毎週処置する。さらに、隔離飼育器、設備などを徹底的に 40 洗浄し、すべての作業者が入室の際に着替えることによってコクシジウムの感染を防ぐ。 day26に糞便サンプルを取ってEimeria接合子嚢の存在をテストする。day 28に、接合子嚢排出の測定に用いられるニワトリは、経口的に100個のE.maxi ma胞子形成接合子嚢の攻撃を受け、病変スコアに対するニワトリは、予備試験で決定さ れた顕著な病態をもたらす数の胞子形成接合子嚢を受取る(20∼50,000)。 【0102】 上記の試験は以下のスケジュールに従う。 【0103】 卵インキュベーションのday18に、グループ3、9および12の第1の胚内ワクチ ン接種。 50 (27) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【0104】 卵インキュベーションのday21に、胚内ワクチン接種グループからのヒヨコが3つ の別個の卵インキュベータ内で孵化。 【0105】 day1に、その他すべてのグループの第1のワクチン接種を行なう。 【0106】 day14に、すべてのヒヨコ(グループ3、9および12を含む)の第2のワクチン 接種を行なう。 【0107】 day28に、血清学的テストのためにニワトリから採血してから、病変スコア付けに 10 対してはニワトリ当りに必要な正しい数の接合子嚢(予備試験の結果に基づく)によって 、接合子嚢カウントに対してはニワトリ当り100個の接合子嚢によって、E.maxi maによる攻撃を受けさせる。 【0108】 day34に、大投与量の接合子嚢を受けたグループに対する病変スコア付けを行なう 。 【0109】 day34∼day37に、100個の接合子嚢に感染されたヒヨコの各グループから の糞便を単一のプールに集め、day37にすべてのサンプルに対して接合子嚢カウント を行なう。 20 【0110】 day42(感染後14日)に血清学的テストのためにトリから採血し、屠殺する。 【0111】 免疫応答の評価のためのインビトロテストを行ない、ここでは免疫化の4週間後(da y28)にFAV8被覆プレート(TropBio Ltd.)上で血清学テストを行な って、FAV8構築物の感染を確認する(すべての群に対して)。免疫化4週間後の血清 および攻撃後14日の血清に対しても、APGA、r56およびTFP250被覆プレー ト上でELISAアッセイが行なわれる(すべてのグループに対して)。さらに、正の対 照血清として抗r56/APGA/抗TFP250/を、陰性対照として正常なニワトリ 血清を用いた、調製用ガメトサイトおよび組み換えTFP250含有ブロットによるウエ 30 スタンブロットを用いて、タンパク質分析を行なう。 【0112】 上に示すとおりに行なわれた最初の試験において、最高の防御を有したワクチン接種グ ループは、平均病変スコアがそれぞれ1.31および1.36のr56分泌グループおよ びr56ネイティブグループであることが見出され、ここでスコア1はブロイラーニワト リにおける良好な能力結果を得るために許容できると考えられる。対照グループにおける 平均病変スコア2.37と、ワクチン接種グループにおける1.31との差は、病気のニ ワトリと防御されたニワトリとの間の格差によるものと明確にいえる。 【0113】 病変スコア付けおよび接合子嚢カウントの両方に基づいて、r56分泌構築物を含むF 40 AV8ベクターは1日齢のヒヨコにおける防御の誘導に非常に良好に働くことが結論付け られた。胚内免疫化によってこの構築物によるワクチン接種を受けたグループは、こうし た高レベルの防御を示さなかった。この理由は、孵化が早かったためにヒヨコがウイルス に晒される時間が十分でなかったためだと考えられる。それにもかかわらず、胚内ワクチ ン接種はなおも将来のワクチン接種に対する実行可能で経済的なアプローチである。1日 齢のヒヨコの経口ワクチン接種は効果的であることが証明されたことから、こうしたトリ にワクチンを噴霧または給餌することが、ブロイラーに長期の免疫を与える有用な方法と なることが期待される。 【0114】 r56構築物によって良好な結果を提供したことに加え、病変スコア付けおよび接合子 50 (28) JP 2013-513548 A 2013.4.22 嚢カウントの両方によって、TFP250分泌構築物も顕著な(20∼30%低いが)レ ベルの防御免疫を誘導することが見出された。 【図1】 【図4A】 【図4B】 (29) 【図5】 【図7】 【図6】 【図8】 【図9】 JP 2013-513548 A 2013.4.22 (30) 【図10A】 【図10B】 【図10C】 【図11】 JP 2013-513548 A 2013.4.22 (31) 【図12】 JP 2013-513548 A 2013.4.22 (32) 【図2】 JP 2013-513548 A 2013.4.22 (33) 【図3】 【配列表】 2013513548000001.app JP 2013-513548 A 2013.4.22 (34) JP 2013-513548 A 2013.4.22 【国際調査報告】 10 20 30 40 (35) JP 2013-513548 A 2013.4.22 10 20 30 40 (36) JP 2013-513548 A 2013.4.22 10 20 30 40 (37) JP 2013-513548 A 2013.4.22 10 20 30 40 (38) JP 2013-513548 A 2013.4.22 10 20 30 40 (39) JP 2013-513548 A 2013.4.22 10 20 30 40 (40) JP 2013-513548 A 2013.4.22 フロントページの続き (81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM), EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,S K,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR, BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,I S,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE ,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW (72)発明者 シェパード, マイケル ジー. オーストラリア国 3095 ビクトリア, エルザム, ジ アイリー 9 Fターム(参考) 4B024 AA10 BA80 CA01 DA02 EA02 FA20 GA11 HA20 4B065 AA90X AA95Y AB01 AC20 BA02 CA45 4C085 AA03 AA04 BA05 CC07 CC08 DD62 EE01 EE03 GG08 4C087 AA01 AA02 BC83 MA02 NA14 ZC64 10