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「仕事の場」を重視して人の役に立つ企業活動を

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「仕事の場」を重視して人の役に立つ企業活動を
CSRとミッション経営
「仕事の場」
を重視して人の役に立つ企業活動を
CSRの浸透がもたらす企業の変化
むという人・組織面の効果である。
現在多くの日本企業は、
従来の従業員を重視す
る価値観から、
株主を重視する米国型の価値観に
シフトしつつある。
このシフトは従業員の高年齢
CSR経営を実践するための
「ミッショ
ン経営」
とは?
化や事業活動・株主構成のグローバル化など環境
多くの企業が、
CSRに関して
「総論賛成・各論反対」
条件の圧力によって促されているが、
多くの経営
的なスタンスを取りがちなのは、
主として、
上記
者は、
まだ、
その行き着く先や自らがとるべき価
の各種の効果が発生するまでのリードタイムが
値観について確信をもてないでいる。
そうした不
長いことと、
その確実性に自信がもてないことに
安定な状況に追い打ちをかける形で、
いまCSRを
よる。
私は、
効果発生のスピードと確実性を高め
求める新たな経営環境圧力が高まりつつある。
ながらCSRを実行していく実践的なアプローチと
して
「ミッション経営」
を提唱している。
こうした混乱のなか、
いまいちど企業活動の目
的について根本から考え直してみる必要がある。
「ミッション経営」
では、
先に挙げた三つの側面
企業活動には、
株主価値を高める資本増殖の側面、
のうち
「仕事の場」
を重視し、
人の役に立つという
従業員とその家族の生活を支える共同体の側面、
使命感
(ミッション)
をもって企業活動に取り組
分業社会において各人が担う義務を組織的に果
むことを第一義とする。
企業にとって役に立つ対
たす仕事の場という側面があり、
CSRは、
これら3
象としての
「人」
は
『顧客』
である。
この信念に基づ
側面に地域社会や地球環境を加え、
より包括的に
き、
経営者は主要ステークホルダーの優先順位が
企業活動のあるべき姿を考えていこうとする視
顧客→従業員→地域社会→株主であることを明
点である。
近年、
こうした視点が軽視されてきた
示し、
「全員顧客志向」
の姿勢で仕事に取り組むよ
ところから、
不祥事の発生や経済の混乱が起きて
う全従業員をリードする。
いる。
その根本となるのは、
自社がどのような顧客に
CSRに適切な配慮をもって経営すると、
企業の
どんな価値を提供する会社かという企業活動の
発展にさまざまな効果が期待できる。
第一の利点
原点を見つめ直すことである。
医薬品メーカーで
は、
社員の意識改革や社内基準の整備を通じてコ
あれば医師や看護婦と共に病気の人びとを救う
ンプライアンスの水準が高まり、
不祥事の発生を
ことであり、
乳業メーカーであれば安全で優れた
未然に防ぐことが、
企業の長期的な発展を下支え
成分の乳製品を人びとに供給し健康の維持増進
する。
第二は、
顧客から見た企業イメージの向上
を支援することである。
により、
企業ブランド効果を通じて売り上げの拡
大と採算性の向上が期待される。
三つ目は投資家
業種のいかんに関わらず、
顧客というものは、
からの評価が向上し、
より有利な条件で資金調達
製品やサービスを提供する企業の全従業員が自
が可能になるSRI面の効果。
そして四つ目はプラ
分のことを考えてくれることを望むものだが、
こ
イドをもち、
やりがいのある仕事を望む優れた人
うした顧客の願望に高いレベルで応えている企
材が集まり、
高いモラールをもって仕事に取り組
業は極めて少なく、
ほとんどの企業は100点満点
CSR講座
慶應義塾大学大学院
経営管理研究科教授
(工学博士)
小野 桂之介
で40∼50点くらいのレベルに留まっている。
顧客
が望んでいることがこんな低水準しか満たされ
好循環の「ミッション経営」でCSRを
実現
ていない市場で、
100点は無理だとしても70点程
CSRに関わる期待と要求が高まるこれからの時
度のレベルを達成するだけで、
十分に他社との差
代において、
経営者は、
上記の顧客重視型
「ミッシ
別化が実現する。
ョン経営」
を実行する際に、
これまで以上に地域
社会や自然環境に配慮しながら
「本業における意
こうした姿勢で展開される企業活動は、
顧客に
思決定」
をおこなう必要がある。
また、
自社の余裕
高い満足を、
従業員に仕事のやりがいをもたらし、
の範囲内で
「利益還元型の社会貢献」
にも前向き
その結果として、
市場競争力の向上・売上の拡大・
に取り組むことが望ましい。
これらのCSR的企業
利益の増加を、
比較的短いリードタイムと高い確
行動は、
冒頭に述べたプラス効果を通じて企業の
実性で実現しやすくなる。
この顧客満足に裏づけ
発展に貢献する。
られた市場競争力とそこから生まれる付加価値
こそが、
従業員と家族の生活を支える報酬と、
株
以上に述べた
「CSRに向けたミッション経営的
主価値を高める利益の源泉なのである。
アプローチ」
でとくに大切なことは、
全員顧客志
向経営 → 仕事のやりがい+顧客満足 → 市場競
これを実現するためには、
企業内の全部門・全
争力 → 業績成果 → 利益再投資 (利益配分型
社員が顧客のことを常に考えて仕事をするとい
社会貢献を含み、
それがまた全員顧客志向経営、
う意識改革と風土づくりが必要になる。
これは決
仕事のやりがい、
顧客満足などにつながる)
とい
して容易な課題ではないが、
それだけに、
他社が
う好循環をバランス良く回し続けていくことで
簡単に真似できるものでもなく、
実現するとその
ある。
その中核をなすのが
「広い時空間意識をも
優位性には永続性がある。
その実現のカギは、
つ
って企業組織をリードする経営者のリーダーシ
きつめると経営者の優れたリーダーシップであり、
ップ」
であることは言うまでもない。
その基礎には、
信念に裏づけられた人びとの共感
を呼ぶ経営理念、
明確な経営ビジョン、
現実妥当
性に裏づけられた経営戦略が求められる。
小野 桂之介
(おの けいのすけ)
慶應義塾大学大学院
経営管理研究科教授
(工学博士)
1997年∼2001年、
同大学経営管理研究科委員長兼
ビジネス・スクール校長。
主要著書は、
『CSR入門』
『
、量
の経営から、
質の経営へ』
『
、ミッション経営のすす
め』
『
、ミッション経営の時代』
『
、経営戦略と企業革
新』
『
、生産企業の経営』
ほか。
(財)
海外技術者研修
協会理事、
(財)
日本自動車研究所理事、
久光製薬
(株)
監査役、
YKK
(株)
経営顧問。
【企画・制作】 日本経済新聞社広告局
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