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バルーン下逆行性経静脈的 塞栓術(B-RTO)の一例
バルーン下逆行性経静脈的 塞栓術(B-RTO)の一例 名瀬徳洲会病院 内科研修医3年次 木村恵梨 同 内科研修医4年次 井上太郎 指導:岸和田徳洲会病院 消化器内科 尾野亘 食 道 胃 静 脈 瘤 側 副 血 行 路 胃静脈瘤の治療 胃静脈瘤の解剖学的特徴による ①門脈系→胃静脈瘤→食道静脈瘤→奇静脈系 ②門脈系→孤立性胃静脈瘤→胃腎シャント 治療法 – ①はEIS、EVL – ②はB-RTO他 内視鏡で、Lg-fであれば②を疑う →造影CTで胃腎シャントの確認 B-RTOとは Balloon occluded retorograde transvenous obliteration 孤立性胃静脈瘤の治療法 排血路から静脈瘤に達し塞栓する。 POINT:門脈圧亢進により静脈瘤からの排 血路が体循環に吻合しているため、通常 は閉鎖回路である門脈系にアプローチで きる B-RTOの実際(今回はTJO) TJO B-RTO 使用薬剤:①Ethanolamine oleate を用いて5%EOIを作成②ハプトグ ロビン EOIにより溶血するため、こ れに伴う溶血性腎不全の予防目的 に使用 使用機器:B-RTOには6.5Fバ ルーンカテーテル、7Fシース。TJO には6.5Fコブラ型カテーテル、7F ロングシース 適応 胃腎シャントのあることが前提 – 孤立性胃静脈瘤 – 胃腎シャントが原因の肝性脳症 禁忌:シャントが極端に太い場合(バルーンで 閉塞できないほど)、高度の腎機能障害、 高度の黄疸を伴う肝不全 側復路がある程度発達している場合は、コイ ル、エタノール等で塞栓する必要がある 症例:43歳 男性 アルコール依存症、HCV陽性、肝硬変で瀬戸 内徳洲会かかりつけ。5月28日、朝より吐血8 回あり瀬戸内徳洲会受診、内視鏡で胃静脈瘤 よりの出血の診断でSBチューブを挿入し当院 へ救急搬送された 既往:上記他詳細不明 内服:詳細不明 アレルギー:なし 喫煙:詳細不明 来院時所見 血圧:80/50mmHg、HR90/min、SpO2 97%、 BT 36℃台 全身状態:不良 意識:ややぼんやりしている JCSⅠ-20 黄疸著明 入院時検査値 WBC 5000/μU Hb 5.8g/dL Ht 17.6% Plt 1.8万/μU PT活性値 25.1 PT-INR 3.74 Na 145mEq/L K 3.5mEq/L Cl 110mEq NH3 187μg/dL TP 3.6g/dU Alb 2.1g/dL T-Bil 3.7mg/dL D-Bil 2.2mg/dL AST 93IU/L ALT 26IU/L ALP 159IU/L LDH 202IU/L γGTP 354IU/L CT所見・治療前 静脈瘤 胃腎シャントを確認(供覧) 内視鏡 ICUにて保存的治療 SBチューブ留置 MAP、FFP輸血 PPI 分岐鎖アミノ酸輸液 糖アルコール内服(NGチューブより) カナマイシン内服(NGチューブより) 検査値の推移 5月28日 6月2日 6月4日 6月8日 Hb 5.8 9.9 10.4 12.1 Plt 1.8 4.2 5.9 8.9 PT活性値 25.1 44.9 48.5 PT-INR 3.74 1.88 1.74 TP 3.6 5.5 5.6 7 Alb 2.1 2.8 2.8 3.1 T-Bil 3.7 4 2.8 2.8 AST 93 177 112 143 ALT 26 90 71 60 ALP 159 238 232 271 LDH 202 306 273 628 γ -GPT 354 338 296 258 TJO施行 翌日のCT 血栓化している静脈瘤 施行一週間後 施行1ヵ月後 B-RTOの成功率・利点 手技の成功率:ほぼ100% 胃静脈瘤の消失:70-100% 再発10% 肝性脳症の改善:ほぼ100% 侵襲が少ない 合併症 発熱70% 肺水腫 食道静脈瘤の増悪10-15% 肝障害:軽度 腎障害:ヘモグロビン尿は必発 考察 胃静脈瘤はありふれた疾患であり、かつ 致死的な疾患であるが、適切な治療選択 により救命しうる。 B-RTOは孤立性静脈瘤に対し比較的安 全かつほぼ根治できるため、適応となる 静脈瘤には積極的に選択されることが望 まれる。