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今 こ そ 素 材 開 発 ・ 販 路 開 拓 を

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今 こ そ 素 材 開 発 ・ 販 路 開 拓 を
Vo l . 5 9 7 C o n t e n t s
SYMPOSIUM
TOPICS
■発行/繊維経営企画部
■大阪市中央区久太郎町 4-1-3
■FAX06-6241-2008 2010
since 1960
発行所
1
ニュース・クリッピング
マーケット発進!
ボルネオ島植林体験ツアー実施
「ロット(Lotto)
」展開
海外報告
中国の中の「自由都市」香港
5
REPORT
ファッションリポート
ファストファッションが生むもの
6
本紙は、下記のアドレスからでもご覧いただけます。
【出席者】
執行役員 ファッションアパレル部門長
岡本 均
常務執行役員 同エグゼクティブバイスプレジデント 佐々 和秀
ブランドマーケティング第一部門長
大津寄 正登
小関 秀一
ブランドマーケティング第二部門長
石井 和則
執行役員 繊維原料・テキスタイル部門長
岡藤 正広
新年あけましておめでとうございます。2009年は前年の金融危機に端を発した世界同時不
況でスタート。下半期には回復を期待しましたが、深刻な状況が続きました。昨年を振り返ると
価格競争に明け暮れた一年でした。年末恒例のヒット商品番付をみると、東の横綱が「エコカー」
に対し、西の横綱は「激安ジーンズ」でした。また、昨年11月末時点で百貨店の衣料品売上
高は29カ月、GMSのそれは10月末時点で46カ月連続の前年同月比マイナスを記録するなど消
費も低迷しました。
しかし、こうした厳しい環境下でもそれを克服し健闘している企業は少なくなく、
ヒット商品も生まれています。昨年を振り返りながら、2010年、いかに活路を見いだすか。
マーケッ
トを展望したいと考えます。 (岡藤正広副社長・繊維カンパニープレジデントの冒頭発言から)
岡藤 まず皆さんが担当されているそれぞ
れの分野の2009年の状況と、厳しい状況の
なかで奮闘する企業や商品を紹介ください。
小関 北陸・尾州など繊維産地は最悪の
状況が続いた一年でした。マインド的には1
∼3月がどん底でしたが、生産は4∼6月がど
ん底、7∼9月に回復を期待したものの横ば
いで推移しました。
例えば北陸3県の織物生産を見ると、1∼
9月累計で前年同期比37%減と落ち込み、そ
の生産量はピーク時の1973年の2割にまで低
下したことに現下の厳しさが表れています。
10月に入りようやく上向くかなと期待したわけで
すが、為替の1ドル=84円台突入といった円
高が輸出を悪化させ、国内も引き続き消費が
戻らず、冷え切ったままで越年した格好です。
川上の合繊メーカーでは“撤退”が相次
いだ一年でした。旭化成、三菱レイヨンがポ
リエステル長繊維、ユニチカがナイロンから
撤退し、三菱レイヨンはアクリル生産設備の
縮小にも乗り出しました。
一方、尾州産地をみると、ウールが市場
から受け入れられにくくなっている点が気掛
かりです。低価格志向のなかで、ウールの
割高感から採用が減っているとされます。尾
州産地関係者によると、昨年の生産高は“七
五三”、つまりメンズが7掛け、ニット5掛け、
婦人物に至っては3掛けと言われるほどです。
こうした厳しい状況にはあるものの、
“エコ”
を切り口にした素材が着実に市場に浸透して
きました。当社グループが手掛ける事例で紹
介すると、事業会社のインクマックスのインク
ジェットプリントに手応えがあります。海外メー
カーと提携し、世界的なスポーツメーカー、ナ
イキ社への供給が決まるなど、その環境に配
慮した染色技術が評価されました。こうした
動きは今後さらに強まるものと期待しています。
岡藤 当社が取り扱うプレオーガニックコッ
トンと言い、いま紹介されたインクマックスと言
い、地道な努力が実を結ぼうとしています。
世界のメガブランドがエコとまともに向かい合
うという状況は、環境問題に対する世界的な
意識の高まりを裏付けるものと考えます。そ
の点で、機能性を含めた日本の素材が再評
価されてきたといえるでしょう。
代表取締役副社長
繊維カンパニープレジデント
岡藤 正広
ただ、テキスタイルでの問題は効率の良い
商品は中国など海外に奪われ、海外で生産
できない難しい商品は日本で、という構図で
す。この場合、ロスが多い、値段が通らな
いといった問題が残ります。このあたりをいか
に克服するか、来年の課題となりそうです。
次に産業資材分野の状況はいかがでしょ
うか。
2010年の繊維・ファッションビジネス
撤退相次いだ川上業界
テキスタイル生産は大幅減
4
REPORT
毎月 1 回発行
代表取締役副社長 繊維カンパニープレジデント
1-3
今こそ素材開発・販路開拓を
■TEL06-6241-2027
vol.597
2010年の繊維・ファッションビジネス
2
2010年の繊維・ファッションビジネス
2010年(平成22年)1月号
産業資材分野も直撃
石井 ファッションアパレルと異なり、変動
幅が比較的小さいとされてきた産業資材分野
ですが、さすがに2008年から2009年にかけ
ては強い影響を受けました。
当社は自動車、エレクトロニクス、建築・
土木、インテリア・ホームファニシングの4分
野を中心にカバーしていますが、いずれの分
野も昨年は落ち込みました。それぞれ過去
にない生産・販売の低下で、大手自動車メー
カーも大幅赤字に陥るなど惨たんたる状況で
した。昨年後半、自動車、電機分野に底打
ち感が出てきましたが、本格回復にはほど遠
く、建築・土木や寝装・インテリアに至って
はトンネルの出口さえ見えない状態が続いて
います。
そうしたなかで、比較的元気なのが衛生
材料などに代表される不織布分野です。新
型インフルエンザの流行でマスク特需があっ
たのが特筆されます。2009年のマスク生産
は前年比3∼4倍に増えたとみられます。不
織布では紙おむつ用が引き続き順調で、こ
の間の技術開発とグローバル展開の成果が
表れてきました。
いった事例もみられました。作るだけ、ある
いは納期を管理するだけといった勝負なら大
手に勝ち目はありません。
アパレル製品の市場規模は1991年からほ
ぼ一 貫して縮 小してきました。2002年から
2004年にかけて一時的に若干回復したもの
の、その後は再び落ち込んでいます。とくに
数量の低下が著しいように思います。
同業他社の例をみると、OEMビジネスを
事業会社などに外出しするケースが相次い
でいます。それだけコスト的に厳しくなってい
るといえます。当社の場合は本体社員が動く
体制を変えていませんし、この体制を維持し
ていく考えです。
先ほど“素材の再評価”という話題が出ま
したが、アパレルOEMビジネスにおいて、素
材は市場へアピールするための大きな武器に
なっています。当社では部門間の連携を通じ
てオーガニックコットンなどの環境素材、温度
調節機能のある「アウトラスト」などの素材を
打ち出していますが、当社に限らず、こうし
た機能素材がアパレルOEMビジネスにおい
ても重要なカギとなってきました。
岡藤 総合商社では当社を除いてOEM
ビジネスの外出しが続いてきましたが、昨年
でほぼその動きが一巡したように思われます。
経費面から見ると、外出ししたほうが安くつく
し、モノ作りだけなら商社でなくても容易にで
きます。しかし、アパレルやSPAの皆さんは
“情報”を付加価値として求められています。
この情報機能を大事にすることが顧客の皆さ
んのためにも重要で、機能を引き続き磨き続
けることが低価格競争という消耗戦からの脱
却につながると考えます。当社はファッション
アパレル部門のほか、OEMビジネスを遂行
する伊藤忠モードパル、三景など事業会社と
役割分担しながら、グループとしてアパレル、
SPA企業のニーズに対応できるよう機能強化
を図る考えです。
ところで、国内市場は厳しい状況が続きま
したが、海外市場の動向はいかがでしょうか。
欧米不振も中国好調
執行役員
繊維原料・テキスタイル部門長
小関 秀一
海外市場をみると、やはり中国の伸長が
特筆されます。世界に先駆けて中国の自動
車生産は回復し、2009年の生産高は1300万
台に達したもようです。これは世界ナンバー
ワンの規模です。年初は、金融危機を発端
にした世界同時不況と前年の四川大地震も
あって、消費マインドが低下し続けるとの懸
念もありましたが、政府の個人消費刺激策な
ど経済対策が奏功したようです。クルマは富
の象徴として若者たちのあこがれの対象でも
あり、2010年も好調さが持続する見通しです。
自動車の裾野産業も好調で、カーシート、エ
アバッグなどの需要も旺盛でした。
岡藤 消費地としての中国が一段と存在
感を増した一年といえるかもしれません。次
に商 社の中核ビジネスともいえるアパレル
OEMビジネスの動向はいかがでしたか。
OEMも
“低価格”
が影響
岡本 総合商社、繊維専門商社各社とも
にアパレル製品の低価格化の波を受けて苦
戦したのが実情です。低価格化とともに、コ
ストが低い中小の受注業者に注文が流れると
小関 米国は金融危機以降、厳しい環
境が続いています。失業率が10%レベルにま
で達し、メンズ分野がとくに不調でした。対
米輸出の不振は中国・アジアの生産国を直
撃し、繊維生産面で影響を与えたことは否
定できません。
米国で特徴的な動きを紹介すると、老舗
百貨店のJCペニーがスペインのSPA「マン
ゴ」と提携し、米国市場のインショップでの
独占販売権を取得、2010年から店舗展開を
始めることを発表しました。日本でも「ユニク
ロ」やファストファッションを導入する百貨店の
動きが伝えられていますが、米国でも同様の
動きがあるようです。この戦略が成功するの
かどうか今年の注目ポイントです。
欧州も低迷しましたが、そのなかで環境を
切り口とした商品は健闘したといえます。先
ほど紹介したインクマックスやオーガニックコッ
トンなどに動きがみられます。
岡藤 中国市場はいかがでしたか。
佐々 唯一成長したマーケットでしょう。国
内総生産(GDP)は2001年から2008年まで
年率10%強の成長を達成、2009年も第1四半
期こそ6.1%と伸びを欠きましたが、年間では
8%成長を達成したもようです。世界銀行の
予測では2010年の成長率は8.7%で、引き続
き世界経済をけん引していくものと考えます。
しかし、陰の部分もあります。それは企業
倒産の増加による失業者の増加問題です。
コスト競争力の低下、および世界市場の低
迷から輸出型企業を中心に整理淘汰が進み
ました。華南地区では2008年、約10万社が
倒産し、そのうち繊維企業は2割近くを占め
たとされます。2009年前半はさらに悪化した
ものの、後半は内需転換やリストラ一巡で倒
産が沈静化したようです。
衣料消費ですが、日本ではこの10年間、
年間10兆∼11兆円で推移してきました。中国
は2007年の段階で日本に追いつき、2010年
には20兆円市場に拡大する見通しです。高
い経済成長力を背景に、中間所得層が台頭
しており、彼らが消費をけん引していくことに
なります。
中国市場を語る場合、なかなか一つにくく
れません。地域、所得、天候、体格などそ
れぞれ異なり、中国市場全域にアパレルを売
り込んでいく場合、外資単独では限界があり
常務執行役員
ます。現地の有力パートナーとの連携が欠か
繊維カンパニーエグゼクティブバイスプレジデント
せません。
当社は昨年、杉杉集団に出資しました。
杉杉集団は繊維から誕生し今や複合企業と
して大きく成長しましたが、繊維においては
伊藤忠が持つブランド力、マーケティング力、
というわけではなく、消費者は「価格に見合
技術力などを生かせるパートナーです。こう
う価値がない」
「生産コストを下げている」と
した取り組みが今後の日中間のビジネスの代
見抜いています。例えば価格を下げようとす
表事例となるでしょう。
れば、どうしても素材や縫製のレベルを落と
岡藤 中国の市場としての可能性は確か
さざるを得ません。それによって「価格に見
に大きい。ただ、現地の有力企業オーナー
合っているか」と考えると、その答えは「ノー」
らによれば、成長性の高さは不動産や金融と
と……。また、とりわけ地方の店舗が苦戦し、
いった分野であり、繊維については悲観的な
見方をする人が多く、現実に収益でも昨年 “地域一番店”という存在がなくなる時代が来
るかもしれない、という声さえ上がっています。
は繊維で落としているようです。それだけに
一方、ラグジュアリーブランドも厳しい状況
日本の先進的な技術やブランドマーケティング
が続きました。2009年の売り上げが前年比で
力を必要としています。中国企業と強いパー
8掛け、
7掛けというブランドが少なくありません。
トナーシップで連携していくことが引き続き今
服飾に限らず宝飾品も同様に苦戦しました。
年の課題となりそうです。
この背景には景気低迷があるわけですが、
こうした中国内需の急成長に比べ、日本
消費者のマインド変化も見過ごせません。
「派
ではこの10年で百貨店の衣料品販売高が
手な消費はおしゃれじゃない」という考え方
25%減、GMSでは50%減となりました。
が広がってきた、との指摘があります。エコ
の視点もあるかもしれません。日本から撤退
アパレル市場 大苦戦
するブランドが散見され、百貨店の1階の店
価値と価格のギャップ
舗を引き払う事例も相次ぎました。いかにし
て消費者の財布のヒモを緩ませるか。その
大津寄 百貨店の衣料品販売は11月まで
手法の確立が今年の大きな課題です。
29カ月連続で前年同月比マイナス、11月も2
岡藤 百貨店の場合、販売不振から納入
ケタ%の落ち込みとなっています。百貨店は
掛け率を引き下げる動きを強めたために、納
大手流通グループ4社体制に再編されました
入業者は掛け率に見合うコストで生産対応せ
が、今後もコスト構造を見直さざるを得ないと
ざるを得ず、結果的に“価格”に見合わない
考えます。
百貨店で販売されている商品について、 “価値”しか残らなかった。その悪循環の繰り
消費者は厳しく見ています。「値段が高い」 返しが29カ月連続の前年割れにつながった一
因と考えられるのではないでしょうか。
長らく百貨店は大衆のあこがれでした。
“デ
パート”を楽しむ層が確実に存在していまし
た。いま、百貨店はデパートらしさとは何かを
試行錯誤されているように思います。ショッピ
ングセンターで育った人たちをどれだけ呼び寄
せられるか、が今年のポイントになりそうです。
石井 “包装紙”に魅力を感じなくなった
層がかなり増えていると聞きます。中元、歳
暮となると、一流百貨店の包装紙が威力を
発揮した時代がありましたが、今はそんな時
代ではなくなったようです。百貨店には高級
路線を踏襲する一方で、ファストファッションを
導入して集客力を強化しようという動きもあり
ます。いずれが奏功するか注目されます。
また、百貨店といえば服飾雑貨もバロメー
ターの一つになりますが、2008年の年末商
戦まではスカーフ、マフラー、帽子などのい
わゆる“首回り”の商品が元気でした。ところ
執行役員
が、2009年はその分野も売れ行きが悪化し
ファッションアパレル部門長
ました。百貨店1階平場の代表的商品です
が、文化やストーリーを表現できる商品として
いかに立て直すかもカギです。
佐々 和秀
岡本 均
2010年の繊維・ファッションビジネス
に合致すれば評価される典型的な事例とい
場での商標権を所有しています。日本市場
えます。
以外ではナイキが商標権を保有しています
岡本 繊維カンパニーが抱える素材を活
が、昨年、同社製品の並行輸入を差し止め
用することで、これまでより一歩踏み込んだア
る画期的な判決が出ました。裁判所は並行
パレルOEMビジネスが展開できます。当部門
輸入を認める3要件として「商標の同一性」
でのTシャツ販売は実績ベースで1000万枚以
「出所の同一性」
「品質の同一性」を挙げて
上ですが、この販売力を生かして機能素材
います。ナイキ社製コンバース製品は、生産
であるアウトラストの商品展開のバリエーショ
している場も品質も全く異なり、並行輸入とは
ンを広げることに成功しました。また、抗菌
認められませんでした。日本で確かな品質を
防臭などの多機能素材「ミューファン」はユ
求めて地道にやってきたことが認められたもの
ニクロのタオルに採用され、2010年には大き
です。品質にこだわりぬいたコンバースの安
な成長が期待されます。
定成長は、ブランドを大切にしたモノ作りがい
石井 2010年はワールド杯の年です。当
かに大事かを裏付けています。
社は国際サッカー連盟(FIFA)と提携し、
今年からウォルマートを通じてFIFAブランド
中国はじめ販路開拓
の繊維製品を全世界で発売します。香港の
時代変化の先取りを
プロミネントアパレル(PAL)が中国で本格
ブランドマーケティング
生産を開始しており、W杯イヤーを迎えて話
佐々 ブランドといえば、昨年、興味深い
第一部門長
題となりそうです。
調査が明らかにされました。ワールドラグジュ
新規ビジネスでは高齢化とともに“介護” アリーアソシエーションの調べによると、中国
が大きなテーマですが、昨年9月、当社は病
の2007年のラグジュアリーブランド製品消費は
院向けリネンサプライ最大手のワタキューセイ
80億ドルで、世界全体の18%を占めていまし
モアと資本・業務提携を結び、同社の発行
た。それが2008年には86億ドル、25%に達し、
済み株式の25%を取得して持分法適用会社
米国を抜いて第2位に浮上したというもので
消費者マインドの変化も
としました。今後はヘルスケア事業で共同事
す。日本がトップで約1兆円規模ですが、日
業展開を進める計画です。繊維関連にとど
本を追い抜くのも時間の問題でしょう。とくに
岡藤 包装紙といえば昨年、こんな話を
まらず、食品分野をはじめ、全社横断的に
御三家と称されるルイヴィトン、シャネル、グッ
聞きました。歳暮用の5000円の食料品ギフト
取り組んでいく考えです。
チの伸びが著しいようです。
で、メーカーが異なる商品を5000円分詰め
中国の高級ブランド製品市場としての可能
合わせ、それを3500円で販売したところ飛ぶ
性は大きい。当社はこのほど、
「レノマパリス」
ように売れた、という話です。包装紙もごくご
ブランドを大切に
で日本のサブライセンシーとともに中国に進出
く一般的なもので、消費者はその“値打ち”
仕掛け勝負で支持拡大
することを決めました。中国現地のパートナー
を買ったわけです。このあたりにも消費者の
と組み、日本のサブライセンシーがモノ作りに
大津寄 4件紹介します。1つ目は「キット
購買動機の変化が読み取れそうです。
協力しながら中国で販売していこうとするもの
ソン」。米西海岸のセレブ御用達で知られる
先ほど話が出ましたが、2008年までの10
です。当社のブランドビジネスでは、約270社
ブランドですが、
「消費者の財布のヒモを緩
年間で日本の衣料消費は年間11兆円から10
の企業がサブライセンシーとして取り組んでい
兆円と1割程度しか減っていません。しかし、 めさせる」という点で、注目されたブランドで
ます。彼らと日本だけでなく中国でも取り組め
す。東京ガールズコレクションを主催するブラ
実感としてはそんなものではないでしょう。繊
る新しいビジネスモデルがいま始まろうとして
ンディングと提携し、カリスマモデルのブログ
維全体の市場規模は15年間で70兆円から35
います。
などで紹介してもらいながら口コミで広がりま
兆円まで半分になりました。これは、海外へ
岡藤 日本は資本主義国であり、競争が
した。3月に新宿ルミネ、9月にラフォーレ原
の生産地シフトや生産量の落ち込みなど、繊
大事なことは言うまでもありません。生き残り
宿に店舗をオープンしました。ルミネは50坪
維産業の構造自体が変化したことを表してい
ます。その間、百貨店の衣料品売り上げが (165平 方メートル)の売り場 面 積です が、 のためには熾烈な戦いのなかに巻き込まれざ
るを得ません。ただ、昨年のように“価格”
売り上げが初年度で10億円を達成しそうなほ
75%、GMSで50%に減っているのにこの1割
一辺倒に走るのはいかがなものか。あるジー
ど好調でした。
程度の減少で済んでいるのは不思議な気が
ンズのプロは格安ジーンズを指して「青い色
2つ目は「瞬足」
。アキレスのシューズブラ
します。
ンド「瞬足」は、
“コーナーで差をつけろ! ! ” の着いたズボン」と皮肉っていましたが、そ
佐々 ユニクロ、しまむらの台頭がありま
れが正しいのかどうかは別にして2009年は行
のキャッチコピーで子供たちの絶大な支持を
す。この両社で10年の間に6000億円強売り
き過ぎの部分が多々あったように思います。
得た、年間600万足を売り上げる怪物商品で
上げを増やしてきました。
石井 加えて郊外のショッピングモール、 す。当社は靴以外の分野
で商品化権を得ましたが、
駅ナカ、アウトレットなどの台頭があります。
岡 藤 百 貨 店とGMSで2兆円強 減らし、 昨年の売上高は年間20億
円規模に達しました。特筆
ユニクロ、しまむらに代表されるSPAや郊外
できるのは子供用の靴下
型モールの台頭、ネットをはじめとした通販な
で、年間120万足を売る大
どの成長と販売チャネルが広がり、今はその
ヒット商品となりました。ブ
構造変化の過渡期ともいえます。しかし、よく
ランドを大事にして、品質
よく考えてみればまだそこに10兆円のマーケッ
に心を配る事例です。
トがあり、素材からのバリューチェーンを再構
3つ目は Eコマースを含
築することで生きる道があるように思います。
めた無店舗販売です。
「ヴィ
暗い話が多かったなかで、明日につながる
ヴィアンウエストウッド」「レ
元気の出る話を。
スポートサック」など当部
門取り扱いブランドの無店
日本素材に再評価
舗 販 売 に お ける月商 は
機能打ち出しで生きる
3000万円近くまで増えてき
ました。レスポートサックは
小関 当社商品の事例で紹介すると、ス
アジア市場での販売を強化
トレッチ商品が好調です。「ベンベルグ」の
しています が、中国 人 観
スーパーストレッチデニムは対米輸出で爆発
光客を中心に好調で、今
的に成約できました。最近では欧州からも引
年は欧州での拡販を狙っ
き合いが寄せられています。もう一つはタイ
ています。販路の多角化、
のTTLインダストリーのポリエステル・レーヨ
市場のグローバル化に対
ン混ストレッチ織物が1メートル当たり4∼10ド
応しています。
ルという高値にもかかわらず米欧日、東南ア
最 後 は「コンバ ース」
。
ジア向けで好調な販売を記録しました。風合
当社は同ブランドの日本市
いや機能性を訴え、それが需要家のニーズ
2010年(平成22年)1月号
3
それを是正していくのが2010年の課題です。
勝ち組企業に見られる共通点は、「マー
ケットを的確にとらえる目」と「差別化」「仕
掛け」が優れていることです。差別化とは、
品質・価格・機能などすべての面を指し、
仕掛けとは購買意欲をいかに刺激するかに
尽きます。「今しか買えない」「どうしても欲
しい」「お得感が強い」など可処分所得の
減少により、「買い物で失敗したくない」と
の消費者心理が高まりつつあり、すべての
面においてシビアな商品開発が必要になり
ます。
大津寄 正登
ブランドマーケティング
第二部門長
石井 和則
繊維カンパニーは伊藤忠の祖業である繊
維産業に貢献する責務があります。時代の
変化と消費者のニーズを感じ取り、柔軟に対
応していけば道は開けます。今こそ素材の
重要性を再認識し、業界の皆さんと共に素
材開発に全力を挙げていきます。また、数々
の投資を通じて販路を開拓し、日本市場が
手詰まりなら海外へ、という取り組みも進めて
います。当社と皆さんとが相互に情報を提供
し合い、一体となって繊維業界を守り広げて
いきましょう。
4
ニュース・クリッピング/マーケット発進!
2010年(平成22年)1月号
ボルネオ島熱帯林再生ならびに
生態系保全プログラム・植林体験ツアー実施
伊藤忠グループの植樹エリアに設置されたサインボード
2008年、伊藤忠商事は創業150周年を迎
え、これを記念する社会貢献活動として「ボ
ルネオ島の熱帯林再生及び生態系保全活動
への支援」と「伊藤忠奨学金制度の新設」
の2つのプログラムを推進することとしました。
「ボルネオ島の熱帯林再生及び生態系保
全活動」は、ボルネオ島マレーシア国サバ州
において、開発により劣化が進み、天然更
失われた熱帯林
マーケット
発進
ブランドマーケティング第二部門
ブランドマーケティング第三部
ブランドマーケティング第四課
加賀見 紀行
伊藤忠商事は、イタリアの本格派スポーツ
ブランドである「ロット(Lotto)」の全世界展
開を行うロットスポーツイタリア(Lotto Sport
Italia S.p.A.)社と、ライセンス権および輸入
販売契約を結び、2010年春夏からカジュア
ルウエア(メンズ・レディス・キッズ)、アンダー
ウエア、ホームウエア、ソックスなどトライアル
展開を開始します。2010年秋冬には取り扱
新による再生が望めない熱帯林を植林によっ
て再生し、オランウータンをはじめとする固有
生物種の生息地の確保を行うことが目的。
対象地域への植林、幼木管理、オランウー
タン生息状況のモニタリングなどを行うもの
で、伊藤忠商事はグループ会社と協力し、
このプログラムへの支援として2009年度から5
年間で総額2億5000万円を(財)世界自然
保護基金ジャパン(WWFジャパン)に寄付
します。
また、社員ならびにグループ会社社員がプ
ログラムの意義や自然保護の重要性を理解
することを目的に、ボランティアの植林体験ツ
アーも開催します。
2009年11月19日から23日に第1回目のボル
ネオ植林体験ツアーが実施され、伊藤忠グ
ループ会社、海外ブロック社員を含む計16人
が参加しました。成田から直行便で夕方マ
今月の
商 品
レーシアのボルネオ島コタキナバルに到着した
一行は、翌日WWFマレーシア事務所スタッ
フによるレクチャーを受け、ボルネオ島におけ
る森林破壊の状況や保全地域におけるオラ
ンウータンの生息状況などについて説明を受
けた後、植樹地に近いラハダトゥに移動しま
した。
3日目にようやく植樹地であるウルセガマへ
四輪駆動車で約90分掛けて移動し、30度を
超える気温と炎天下のなか、4班に分かれて
植樹作業を体験しました。WWFのスタッフか
ら、現地の土壌に即した種を選定し、この日
のために植樹に最適な大きさまで育てられた
苗木を受け取り、1本1本「大きく育て」と心
を込めて植樹しました。この苗木が大きく育
ち、オランウータンが安心して暮らせるような
森林となるためにはまだ多くの時間が必要で
すが、その第一歩を踏み出しました。
この活動を通じ、伊藤忠グループが支援
偶然遭遇した野生のオランウータン
1本1本「大きく育て」
と願いながら植樹
する967ヘクタールを含む、サバ州北ウルセ
ガマの約2400ヘクタールの保全地域が森林
として再生し、オランウータンを始めとする動
植物の生存、再生に役立てればと願ってい
ます。
WWFスタッフならびに現地スタッフと
問い合わせ先 伊藤忠商事株式会社 繊維経営企画部 電話:06-6241-2027
イタリアの本格派スポーツブランド
「ロット
(Lotto)
」展開
いアイテムを一挙に拡大し、総合的な本格展
開をいたします。
「ロット」は、1973年イタリア北部のトレビゾ
州モンテベルーナにおいてサッカー、テニス
に特化したシューズメーカーとして創業しまし
た。世界で初めて、しかも唯一紐なしのスパ
イクシューズを開発するや、
「飽くなき機能の
探求とデザイン革命」を掲げる「ロット」の
企業ポリシーが全世界に証明されました。ブ
ランドマークの「ダブルダイヤモンド」は最高
峰の証として広く認知されています。
近年では、「ロット」の製品はサッカー、テ
ニスのみならず、フィットネスやランニングの世
界にも広がり、また、カジュアルウエアの展開
にも本格的に取り組んでいます。
今回伊藤忠は、パフォーマンス関連アイテ
ムを除く全アイテムについて、日本市場でのラ
イセンス権および輸入販売権を取得し、カジュ
アルウエアをはじめ、ゴルフウエア、バッグ、
眼鏡、サングラス、ベルト、手袋、マフラー、
革小物、腕時計、
タオル、
アンダーウエア、ホー
ムウエア、
ソックス、
ステーショナリー、
ランチボッ
クスなどライフスタイル全般について展開アイ
テムを広げる方針です。
販路は、カジュアル専門店、
GMS、セレク
トショップ、カタログ販売、ネット販売などを予
定し、カジュアルウエアとバッグ以外のアイテ
ムについてはスポーツ流通とも積極的に取り
組んでいく予定です。
そして、さらなる認知度向上と市場浸透の
ために、2010年秋冬から、高感度ナンバー
ワンの女性タレント、ベッキー、人気俳優の
塚本高史を起用した販促プロモーションを意
欲的に展開していきます。
2010年春夏から展開するイタリアの本格派
スポーツブランド
「ロット
(Lotto)
」
問い合わせ先
ブランドマーケティング第二部門 ブランドマーケティング第三部 ブランドマーケティング第四課
加賀見 紀行 電話:03-3497-2502
海外報告
中国の中の「自由都市」香港
海外報告
するアジアの各地区と5時間以内でアクセスで
その競争力の源泉は?
market report
プロミネントアパレル取締役 澁
谷 均
ンズは傘下にデパートチェーン「ザ・ベイ」
や商業施設「ゼラーズ」、台所・浴室用品
専門店「ホーム・アウトフィッターズ」などを
抱える。この競争力の源泉は、第一に香港
の環境適応能力の高さ、第二に香港の「自
由都市」機能にあると言われている。
スターフェリーは今も昔も庶民の足
1997年7月1日、香港は英国から中国に返
還された。香港の正式名称は、中華人民共
和国香港経済特別区で、面積は1103平方キ
ロメートルと東京都の約半分。ここに約700万
人がひしめく世界有数の人口密集地だが、
その面積の実に約40%が国立公園や国定公
園などに指定され、いくつものハイキングコー
スが広がっている。気軽で安上がりということ
で、ハイキングは香港人には人気が高い。
香港が歴史の舞台に登場するのは今から
170年前のことである。1840年にアヘン戦争
が勃発し1842年8月の南京条約で香港島は
正式に英国に譲り渡され、英国植民地香港
が誕生した。当時の香港の人口は7450人と
言われている。上海から南の沿岸地域で、
水深が10メートル前後あるスケールの大きな
港は香港しかない。そんな天然の良港に恵
まれ、香港は発展した。香港島の中環から
対岸の九龍半島の尖沙咀までは1キロメート
ルもなく、現在でもスターフェリー(天星小輪)
が中環と尖沙咀を約10分で結ぶ。観光客に
は人気のフェリーも朝夕の通勤時には市民の
足となる。出勤時にけだるい潮風にあたり、
または帰宅時に100万ドルの夜景を見ながら
通勤するのもなかなか乙なものだ。
大陸にのみこまれる香港
戦後の香港は大陸が混乱するたびに生み
出される大量の難民、避難民を受け入れてき
た。その後上海を中心とする企業の資本と技
術、販売力などが香港経済を復活させ、香
で見る
市況
したたかな香港人と
自由都市香港
日本人駐在員にも人気のハイキング
アヘン戦争で始まり
大陸難民が発展させた
目
港の新しい産業を生んだ。当時香港に生ま
れつつあった加工貿易もこれらの安い労働力
に支えられて発展していった。労働集約型の
繊維産業もこうした環境の下で成長したが、
その後香港の工場はより安い労働力を求めて
広東省などに拠点を移すことになる。こうして
香港は、広東省などの生産機能を背景にア
パレル製品OEMの事業拠点として1990年台
半ばまでは全盛を誇るが、やがて中国の成
長そしてチャイナプラスワンとしてのアセアンの
台頭により、アパレル製品ビジネスは縮小の
一途をたどる。現在では、香港の域内総生
産(GDP)は既に90%がサービス業となって
いる。もちろんサービス業といっても小売りだ
けを意味するのではなく、商社的なビジネス
TOビジネスもサービス業に含まれるが。
このように香港の繊維業界の空洞化が進
行する中で、グローバル・サプライチェーン
の構築、ブランドへの進出、M&A等の新し
いビジネスモデルを身につけ、爆発的に成長
を続けている香港企業もある。その代表的な
会社はリー&フン(利豊)である。
リー&フンはサプライチェーン・マネジメント
機能を核に40カ国以上に70カ所の生産拠点
を持つグローバルなトレーダーとして成長し、
連結売上高は1兆円を超え、2008年12月期
には純利益約270億円を稼いだ。2009年度
には、米国の有名ファッションブランド「カル
バンクライン」「ティンバーランド」などの販売
権を持ち、米国国内で販売店を展開してい
る「WearMe」を約4億200万米ドルで買収
すると発表した。
また、北米で事業展開する小売会社「ハ
ドソンズ・ベイ・トレーディング・カンパニー」
と製品調達分野での提携も発表した。ハドソ
(USセント/LB)
80.00
NY綿花
75.00
70.00
65.00
8
1
9
10
10
15
11
29
12
29
おしゃべり好きな香港人は変化する環境へ
の適応力が高く、現実的な対応をする。発
想も柔軟で、スピードが速い。状況変化に
敏感で軌道修正も素早い。チャンスに飛び
つき、逃げるのも早い。日本人はどちらかと
言えばその逆である。また、香港は通常の
国家が有している規制が極めて少ない「自
由都市」であり、自由競争社会である。例
えば、多少驚かれるかもしれないが、香港
の雇用条例(日本の労働基準法に相当)で
は「法定労働時間」が定められておらず、
使用者が残業手当を支払わなければならな
いという法的義務もない。香港においては労
働時間、残業および残業手当について労使
間で自由に契約することが可能なのである。
つまり極端な話「午前8時から午後8時ま
で、休憩なしの12時間労働とする。また残
業手当は一切なし」という雇用契約を結んだ
としても、雇用条例上は問題ないということに
なる。なにか無法地帯のようにも思えるが、
英国統治時代に確立された法制度をはじめ
として、西洋的なビジネスインフラはしっかりと
整備されている。税法もシンプルかつ低廉と
いうのも有名な話だ。関税・消費税がない
だけでも大分違う。加えて、広東省という大
きな市場に隣接し、世界人口の約半分を有
観光客でごった返すクリスマスのイルミネーション
きるという地理的条件が整っており、香港が
アジアビジネスの拠点として地域戦略上重要
な拠点であることは間違いない。
リーマンショック以後低迷していた香港経
済だが、ようやく第3四半期から回復の兆し
が見えてきた。第4四半期の経済成長率は
0.9%とプラス転換する見通しで(今年度はマ
イナス3%)、IMF(国際通貨基金)によると
来年はプラス5%程度と大胆な予想をしてい
る。10月の貿易統計では、輸出は前年同月
比13.1%減の2408億香港ドルだった。減少幅
は9月(8.6%)から拡大、再び2ケタ台に悪
化している。しかしながら10月の小売売上高
は前年同月比9.8%増の228億香港ドル、また
10月に香港を訪れた旅客数が前年同月比
9.0%増の276万人、うち中国からの旅客数は
167万 人(全 体の61.1%)と2.8%も増 加し、
街は中国人観光客でごった返している。香
港経済はまさに中国本土の力強い経済成長
の恩恵を受けているといっても過言ではない。
香港とワイン
─ イベント上手な香港
香港では最近ワインがブームになっている。
わずか3年前までワインの関税は80%だった
が、翌年に40%となり、2008年2月にはアルコー
ル度数30%以下の酒類についての関税がす
べて撤廃された。その背後には、今後巨大
市場として発展が見込める中国大陸の存在と
とともに、香港政府の「アジアにおけるワイン
の貿易・流通のハブを目指す」貿易戦略構
想もある。香港はアジア随一の貿易中継地点
だ。世界的に景気の回復が遅れる中で、香
港には英米のオークションハウスが進出し、
好調な売り上げを記録している。サザビーズ
は2009年に香港で開いた3回のオークションで
合計1430万米ドルを売り上げた。最近はとく
に中国のバイヤーが目立つという。香港で落
札したワインを中国に持ち込む際には関税が
かかるので、レンタルセラービジネスも拡大し
ていると聞く。我々サラリーマンとは比較にな
らない資金力を誇る中国人富裕層が高級ワイ
ンを香港で楽しむ、そんな時代が訪れている。
100万ドルと称される香港の夜景
(AUSTセント/KG)
900
(円/US$)
85.00
850
90.00
800
95.00
750
60.00
55.00
5
2010年(平成22年)1月号
700
100.00
豪州羊毛 M/I
10
19
11
3
11
18
12
3
12
18
105.00
為 替
10
16
10
31
11
15
11
30
12
15
今季2009/10年度世界綿花需給は、季初在庫減、消費
11月19日、
EMIが850AUC/787USC/703円だった豪
米国の低金利政策長期化への思惑からドル売り基調とな
増に伴う季末在庫減が特徴。生産高は1億270万俵と前季
州羊毛価格は、その後EMIのUS$ベースで8ドルを挟んで
るなか、ドバイ発信用不安により避難先として円買いが強ま
を4%下回る見通し。生産高は3年連続の減少。中国の生
小動きに終始し、12月16日のクリスマス前最後の競売は
り、ドル円は14年4カ月ぶりの円高水準となる84円82銭を
産高は3150万俵と前季比14%減。米国は1260万俵、前
879AUC/790USC/708円で納会となった。中国向け輸出
つけた。しかし、その後は米11月雇用統計で失業率が予想
季比では2%減。世界的な景気回復を背景に消費高は1億
量は、7 ∼ 10月の4カ月で前年同期比17%増、
シェアは76%
外に低下したことで米利上げ観測からドル円は90円台後半
1450万俵と前季比3%増。中国、インド、ベトナムなどで
となっている。一方、総輸出量は2%減で、中国のシェアが
まで反発した。今後もドルが強含みドル円は底堅く推移する
消費が拡大する。輸出も一部輸入国による需要増を背景に
前年同期の67%から大幅に上昇した。
展開を想定するが、高値圏では本邦輸出企業のドル売りも
3390万俵となり、この結果、季末在庫は季初比15%減の
予想される。ドルのトレンドを確認するうえで、米12月雇用
5180万俵と3年連続減の見通し。
統計に注目が集まる。 (12/21)
6
ファッションリポート
2010年(平成22年)1月号
ファストファッションが生むもの
No.553
ファッションリポート
2010年のファッションはどうなるのか
伊藤忠ファッションシステム株式会社
リーテイルマーケティンググループ リーテイルソリューションチーム
2009年は、デフレ、ファストファッション、アウトレットなど、
「価格」の話題が多く聞か
れる一年だった。価格の低下は何をもたらすのか、それを切り口に2010年を占ってみたい。
世はデフレ。低価格のものしか売れないと
いうことで、価格を下げることで売り上げを確
保しようとする動きが様々な業態で行われた。
しかし、目論見どおりにいったという話はあま
り聞かない。実際に考えると、1万円の商品
を7000円で売ろうとすると、これまでと同じ売
り上げを確保するには、1.4倍の販売数が必
要である。しかし、消費者は単純な価格ダ
ウンでは反応せず、少し数量が増えるだけで、
売り上げそのものは従来を下回る結果にな
る。このやり方が通用するのは消費意欲が
旺盛なのにもかかわらず、可処分所得だけ
が減少するような時期だけである。現在はそ
のような状況ではなく、消費意欲が減退して
いる時期に、可処分所得の減少が上乗せさ
れているのである。
また、周りを見渡せば、価格が安くて価値
が高い商品はたくさんある。それらの商品よ
りも価値が上回らなければ“買う価値なし”と
判断されてしまう。その基準=スタンダードと
なりつつあるのが「ユニクロ」である。ユニ
クロよりも安い、ユニクロよりも品質が悪いな
ど、ユニクロを“ものさし”として買う価値が
判断される。
“ものさし”としてのユニクロは、
消費意欲の減退・可処分所得の減少という
逆風をよそに成長を続けている。「ユニクロ
は実用衣料だから、不況でも安定している」
という意見も聞かれるがそうではない。実用
衣料の象徴であるGMSの衣料品は、「この
ままこの状態が続くと撤退か?」とまで噂され
るほどの不振にあえいでいる。
一方で付加価値商品の集積である百貨店
は、消化仕入れが主体で自ら価格コントロー
ルすることが難しい。そのため、集客で売り
上げを確保しようという手段に出た。これまで
の百貨店のイメージからは考えられない下取
りクーポンを導入し、話題を呼んだ。このやり
方はすべて成功とまではいかなかったもの
の、ある程度の効果をもたらし、客足と話題
が遠のきつつあった百貨店に消費者の足を
向けさせることになった。
また、アウトレットも好調を持続している。
高額品が売れるという状況はアウトレットのみ
では残っている。もちろん、お得に買えると
いう条件付きではあるが。これまで郊外中心
の展開だったアウトレットの出店も、12月には
東京・青海のヴィーナスフォートの一部がア
ウトレット施設としてリニューアルされるなど、
ついに都心の至近距離の場所にまで及んで
いる。さすがにラグジュアリーブランドの出店
はないものの、このアウトレットが売れると都
心近くへのアウトレット出店が進展する可能性
はある。
ファストファッションは2008年後半にH&M、
2009年4月にFOREVER21が 上 陸、いずれ
も好調である。ファストファッションとは一線を
画すが、12月にアバクロも上陸を果たした。
これまで“日本上陸”で話題になるのは、ラ
グジュアリーブランドと相場が決まっていたが、
状況が一変した。状況が一変したといえば、
原宿と銀座である。原宿・表参道はこれま
で高感度ファッションやラグジュアリーブランド
が中心だったが、今やファストファッションとス
ポーツブランドの街に変化しつつある。また、
銀座といえばラグジュアリーブランドが競って
出店する街だったが、予定していた出店を
断念するブランドが続出。代わって出店で話
題をとっているのがファストファッションとなって
いる。銀座もファストファッションの街になって
しまうのだろうか。
迎え撃つ日本のファストファッションである109
系もバロックジャパン(マウジー、スライ等を展
開)を中心に好調である。ティーンズやヤング
を中心顧客にするため、価格は安く、トレンド
をいち早く取り入れ、商品の追加生産よりも、
矢継ぎ早に新商品を投入し、店頭を新鮮に
保つというビジネスモデルは、まさにファスト
太 田 敏 宏 [email protected]
ファッションである。バロックは都心・地方都
市のファッションビル、百貨店、郊外型SCなど
展開ブランドを変えながら出店を加速。大手
アパレルが脅威に感じるほどの成長である。
おそらく、このファストファッションやアウトレッ
トなど低価格の流れは2010年も続いていく。
既存のブランドを低価格化させるのはリスクが
あるものの、低価格ブランドや低価格セレクト
ショップなどが増加すると予測される。ひとつ
の大きな理由は可処分所得が上昇するような
機運がないということだが、もうひとつは109
系や低価格の郊外ブランドで育ったヤング層
が高いものを買わなくなっているということも大
きい。高いものを無理して買うよりも安いもの
を沢山買って自分なりにコーディネイトを楽しん
だ方がいいという積極的選択である。ファスト
ファッションも一時期の不況で売れているとい
うよりも、ヤングの消費マインドに合致したとい
う理由の方が大きい。こうなるとヤングやヤン
グを卒業したヤングファミリー向けでは、ます
ます低価格なものを強化しようとするブランド
やショップが増加する。
ここまで安価なものばかりが盛り上がりを見
せると、日本のファッションはどのようになって
しまうのか。低価格化は日本のファッションを
ダメにするという論調も多いが、悪い面だけ
ではない。ひとつは企画・生産・調達技術
が発達する。価値あるものを安く提供しなけ
れば結局売れないので、どこでどのように作
るのか、企画∼店頭まで無駄なものはないの
かというコスト意識も高くなる。また、店頭を
高回転させ、鮮度の高い商品を次々投入す
るのであれば、企画と物流はますます高度
化する。SPAがここまで定着したのはバブル
後に起きた低価格ブームのおかげだと思って
いる。今また、同じような状況が起きている。
状況が違うとすれば企画・ファッション性を高
度に保ち、店頭の雰囲気も重視しつつ、低
価格を保つ必要があることだ。単なるローコ
ストオペレーションでは売れない。低価格時
代であるのにGMSが不振なのは、低価格以
上の価値を打ち出せていないからだ。ユニク
ロをまねた素材訴求はGMSの社内的には成
功として考えられているが、消費者はあまり
その価値を認めていない。高感度低価格+
付加価値、これらの技術が取得できれば、
景気が好転し、高いものも売れるようになっ
た際に、余裕が出た部分をプロモーションや
ブランディングに充てることも可能である。
また、一方で高い商品、昔からある良い
商品が絶滅危惧種になるという意見もある。
しかし、これも逆の見方をすれば、今をチャ
ンスに変える可能性もある。可処分所得が
減っているのだから、購買点数は減る。これ
までにようにたくさんは要らないから、いいも
のを少しというマインドを持つ消費者も多いは
ずだ。ヤングやヤングファミリー以外ではこの
マインドは高い。可処分所得が減れば、モノ
を吟味するようになる。これまで高くて良いも
のを数年間のラグジュアリーブームで見てきた
はずだ。ブームは去ろうがラグジュアリー=上
質な心地良さを求める気持ちは変わらない。
過度な装飾性は要らないものの、商品・ブ
ランドの奥にある背景や世界観、モノづくりの
姿勢などはちゃんと評価をしているのである。
良いものを少し、良いものを丁寧にという価
値を掘り起こしていければ心配する必要はな
い。ラグジュアリーなものがブームになったり、
急成長する時代の方がおかしいのである。
街にセレブがあふれるなんてことは作りだされ
たイメージに過ぎない。これからが当たり前
の時代であり、本領を発揮すべき時代なの
である。
低価格なものしか売れない、ファストファッ
ションが時代の中心になるなんて異常事態だ
ということを憂うよりは、この状況を一般庶民
はなるべく安くていいもの、安くてファッション
性の高いものを求めるという「正常の状態」
だと前向きに受け入れ、技術を磨く方が得策
だと考える。おそらく、この危機的な状況を
乗り越えたものが日本のファッションの主流を
作る勝者になるものと考える。
新世紀のはじめの10年は、助走とも言われ、これからが本当の意味での21世紀!
新しい10年に期待をこめて…
伊藤忠ファッションシステム株式会社 代表取締役社長
新年明けましておめでとうございます。
昨年6月に、社長に就任いたしました内堀でございます。
旧年中は、大変お世話になり、心より御礼申し上げます。
相変わらず、景気の良い話は聞こえてこず、新年早々明る
い話題をお話しできず、心苦しいかぎりです。
だからといって暗い話をしていては、華やかなファッション産業
は盛り上がりません。
当社も長年ファッションマーケティングに携わり、まもなく40年に
なります。これほどまでに混迷の時代は過去にもなかったかもし
れません。
内堀 眞史
当社の50年目に向けたこの新しい10年のはじまりに、大いに
期待もこめて、今こそくすぶっている消費の火種に火をつけるお
手伝いをしていきたいと、心新たにしております。
この時代にあっても売れに売れているファストファッションなる低
価格商品も、その火種の一つではあると思っております。
上記太田が言いますように低価格のものしか売れないと嘆くよ
り、これを、くすぶっている消費の芽として、ファッション産業を
はじめ、あらゆる消費財に良い飛び火となることを祈願し、新年
のご挨拶に代えさせていただきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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