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1 章 公共交通マスタープラン策定の背景と目的
1 章 公共交通マスタープラン策定の背景と目的 1.1 背景 1.2 目的 1.3 対象区域及び目標年次 1. 公共交通マスタープラン策定の背景と目的 1.1 背景 (1) 国内の公共交通 我が国では、大都市圏を除く多くの地方都市圏で、自動車の普及による公共交通か ら自家用車への利用転換と、自家用車による利便性やアクセス性が享受できるよう都 市構造の変化(既存市街地の低密度化・郊外化)が進行しています。また、高校生な どの若年人口の減少や、高齢者ドライバーの増加という、公共交通を取り巻く状況は 構造的に変化しており、長期的には利用者は減少傾向にあります。 公共交通機関は、鉄道等の軌道交通、バスや新たに公共交通として位置づけられた タクシーなどの自動車交通に分類できます。 鉄道に関しては、我が国の旅客鉄道輸送人員は、新線整備や既存ストックのネット ワーク化等により従来は増加傾向が続いてきましたが、少子高齢化に伴う人口減少等 により、近年、横ばい傾向に転じています。 地域別に輸送人員の動向をみると、首都圏では増加傾向が続いていますが、地方鉄 道を取り巻く状況については、前述の通り、少子高齢化やモータリゼーションの進展 等に伴って極めて厳しい状況が続いており、平成 21 年度には約 8 割の事業者が鉄軌道 業の経常収支ベースで赤字を計上するに至っています。地方鉄道は、地域住民の通 学・通勤などの足として重要な役割を担うとともに、地域の経済活動の基盤であり、 移動手段の確保、少子高齢化や地球環境問題への対応、まちづくりと連動した地域経 済の自立・活性化等の観点から、その活性化が求められている重要な社会インフラで す。鉄道は一旦廃線になってしまうとその復活が極めて困難であるため、地方鉄道の 存続に向けた、長期的な視点での取り組みが必要とされています。 またバス交通に関しては、モータリゼーションの進展によって、全国的に不採算の 民間路線バスの廃止や減便が進み、その結果、高齢者等の生活交通手段確保のため、 行政の運行委託によるバス運行やバス事業への補助による路線維持が拡大し、地方公 共団体等の財政を圧迫しています。地方公共団体が運行するバスの運行形態について は、定時定路線型にとらわれずにデマンド交通の工夫がなされ、車両サイズではワゴ ン車や乗用車も導入されており、効率的な運行形態への取り組みがみられます。しか し、安易なデマンド型の導入により、来街者が利用できなくなる場合や公共交通とい う性格から福祉目的に限りなく近い場合もみられ、さらに、地元要望に無原則に応じ てしまい財政的に困窮する場合など新たな問題もみられます。 平成 18 年 10 月「道路運送法」の改正、平成 19 年 10 月「地域公共交通の活性化及 び再生に関する法律」の施行、また、平成 23 年 3 月には交通基本法が閣議決定される など、国と地方が関わる公共交通政策は新たな段階に入ったともいえます。公共交通 を利便性の高い持続的な移動手段として、将来にわたって維持していくためには、地 域公共交通の「めざすべき姿」を定め、目標の実現に向けた着実な取り組みが必要と なっています。 1 (2) 前橋市における公共交通の必要性 本市の高齢化率(65 歳以上人口の割合)は平成 17 年時点で 20.5%ですが、今後は 全国や群馬県の平均を上回るペースで増加し平成 42 年時点では 33.2%と予測されてお り、高齢により自家用車を自分で運転できなくなる人の増加が懸念されています。ま た、高齢者単身世帯の比率は平成 12 年から平成 17 年にかけて 1.3%増加しており、単 身世帯者は家族に送迎を依頼することができないことから、公共交通に頼らざるを得 ない人は年々増加するものと考えられます。 一方で本市の現状をみると、自家用車保有率や運転免許保有率が全国平均に比べて 高くなっています。平成 21 年から本市では、高齢者を対象とした運転免許返納支援事 業を開始していますが、自家用車に依存する生活習慣が定着しているため、多くの人 が自身の移動や家族の送迎のため高齢になっても運転せざるを得ず、免許を返納した くてもできない状況にあります。 ●前橋市の将来予測における高齢化率推移(左図)と高齢者単身世帯率の比較(右図) 35.2% 36% 34% 前橋市 群馬県 全国 前橋市 33.2% 8% 31.7% 32% 30.2% 30% 27.5% 28% 増 加 6.4% 6.1% 6% 5.5% 全国 7.8% 7.4% 6.7% 5% 26% 4% 23.5% 24% 7% 群馬県 3% 22% 20.5% 20% 2% 1% 18% 0% H17 H22 H27 H32 H37 H42 H47 H12 参考:「国立社会保障・人口問題研究所」WEBサイト公表の将来推計人口 H17 参考:平成 12 年及び平成 17 年国勢調査 ●前橋市内における四輪車運転中の交通事故件数 3500 0 1 0 0 3000 0 0 2500 2000 3105 3162 3127 2939 2756 2748 215 247 234 256 279 285 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 1500 1000 500 0 65歳以上 16~64歳 15歳以下 参考:群馬県警察提供データ 2 近年、高齢者による交通事故件数は増加しており、高齢者による自家用車運転の危 険性については認知されつつありますが、その上で高齢者が運転免許を返納できない 状況を踏まえると、公共交通サービスの向上を図り、市民の「安全・安心」な移動手 段を確保することが求められます。交通事故によって生活基盤を失う危険性は、高齢 者に限ったことではありません。市民の方々の自家用車に依存したライフスタイルは、 自家用車を運転する方、運転しない方にとっても事故の危険性が高まっているという ことを、市民の皆さんが認識することも必要となります。 また、自家用車に依存する社会では、地球環境や沿道環境への負荷が大きくなって しまいます。例えば、自家用車で 1 人を 1km運ぶためのCO2 排出量は、バスの 3 倍 以上、電車の 9 倍以上と言われており、公共交通に比べて自家用車の環境負荷は大き なものとなっています。本市においても、赤城山麓をはじめ豊かな自然環境を守り育 て、将来に引き継ぐため、一人一人が自家用車利用から公共交通利用への転換を意識 し、環境負荷の低減に努めることが重要です。 以上のことから、市民の皆さんに対して、公共交通の積極的な利用を推進するため に、本市における公共交通サービスの向上が必要不可欠となります。 ●群馬県実施のエコ通勤事業PR 3 1.2 目的 本市の現状として過度に自家用車に依存したライフスタイルが定着しているため、公共 交通の利用者が減少し、減便や路線廃止など公共交通の衰退がみられます。しかしながら、 バスをはじめとした公共交通は、高齢者はもとより、市民の皆さんにとって重要な移動手 段であり、さらなる高齢社会に対応するためにも必要不可欠なものです。 これらのことから、鉄道その他多様な交通モードの交通結節点での機能強化や、バス路 線の再編成など、持続性・機能性の高いまちづくりに取り組むための指針を示し、本市の 公共交通の将来像を明らかにすることを本マスタープラン策定の目的とします。 1.3 対象区域及び目標年次 対象区域:本計画は、前橋市全域(311.64k㎡)を対象とします。 目標年次:本計画は、概ね 10 年後の前橋市を見据えた計画とします。 また、公共交通のあり方を示し、実現可能な施策から段階的かつ着実に取り 組みます。直ちに実施できないものについては、実現に向けて検討していき ます。 4