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2 章 公共交通を取り巻く現状

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2 章 公共交通を取り巻く現状
2 章 公共交通を取り巻く現状
2.1 前橋市の現状と課題
2.2 他都市における参考事例
2.3 まちづくりに関する上位・関連計画の整理
2. 公共交通を取り巻く現状
2.1 前橋市の現状と課題
(1) 社会情勢の変化
① 合併による市域の拡大
平成 16 年度に大胡町・宮城村・粕川村、平成 21 年度に富士見村が合併し、面積
は合併前に比べ約 2.1 倍になりました。人口は約 34 万人となり、合併前の約 1.2 倍
になりました。
本計画では、前橋市都市計画マスタープランの地区区分に準拠し、「本庁地区」
「元総社・東地区」「清里・総社地区」「南橘地区」「桂萱地区」「芳賀地区」
「上川淵・下川淵地区」「永明・城南地区」「大胡地区」「宮城地区」「粕川地
区」「富士見地区」の 12 地域を単位としてアンケート調査等を実施しています。
※地区区分は、前橋市都市計画マスタープランにおける 11 地区と旧富士見村
図 2.1 合併による市域の拡大
5
② 人口動向
前橋市の人口は合併により増加していますが、合併地域を含めた人口動向をみる
と概ね横ばいの傾向となっています。
400,000
338,845
335,704
350,000
341,738
345,147
340,904
300,000
250,000
200,000
H16.12 大胡町、
宮城村、粕川村合併
150,000
H21.5
富士見村合併
100,000
50,000
0
平成 2年
前橋市
平成 7年
旧大胡町
平成12年
平成17年
平成22年
旧宮城村 旧粕川村 旧富士見村
参考:国勢調査、前橋市WEBサイト(上図中の「前橋市」は各年時点の前橋市を指す)
図 2.2 合併地域を含めた人口推移(平成以降)
③ 少子高齢化の状況
将来人口予測における年齢区分ごとの人口割合をみると、少子高齢化が年々進行
する予測となっています。平成 17 年時点で 20.5%であった 65 歳以上の高齢者割合
は、平成 42 年時点では 33.2%まで高くなると予測されています。
平成17年
14.2%
平成22年
13.4%
平成27年
12.2%
平成32年
11.0%
平成37年
10.2%
58.1%
31.7%
平成42年
9.9%
56.9%
33.2%
0%
65.3%
20.5%
63.1%
23.5%
60.4%
27.5%
58.9%
20%
40%
0~14歳
30.2%
60%
15~64歳
80%
100%
65歳以上
参考:「国立社会保障・人口問題研究所」WEBサイト公表の将来推計人口より算出
図 2.3 前橋市における年齢区分別の総人口に占める割合(平成 22 年以降は将来予測)
6
④ 人口及び世帯の分布状況
500m メッシュ人口をみると、JR前橋駅を中心とした市内西部の地域、JR両毛
線の南側の地域や国道 17 号線の沿線に人口の集中がみられます。
参考:平成 17 年国勢調査
図 2.4 人口分布図(総人口)
7
500mメッシュ人口
65 歳以上の高齢者についても、JR前橋駅を中心とした市内西部の地域、JR両
毛線の南側の地域や国道 17 号線の沿線に人口の集中がみられます。
参考:平成 17 年国勢調査
図 2.5
人口分布図(65 歳以上人口)
8
500mメッシュ人口
単身世帯数については、特にJR前橋駅を中心とした市内西部の地域に集中して
おり、JR両毛線の南側の地域や鉄道沿線にも分布している状況です。
参考:平成 17 年国勢調査
図 2.6 単身世帯分布図
9
500mメッシュ人口
世帯構成人数の分布図をみると、JR前橋駅を中心とした市内西部の地域から遠
ざかるにつれて、概ね世帯構成人数が多くなる傾向となっています。
参考:平成 17 年国勢調査
図 2.7 世帯構成人数分布図
10
1km メッシュ人口
⑤ 前橋市の土地利用
前橋市には、前橋・大胡・宮城・粕川・富士見都市計画区域、宮城準都市計画区
域が位置づけられています。そのうち、無秩序な市街化を防止し計画的な市街化を
図る「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」に区分(線引き)さ
れているのは、前橋都市計画区域のみとなっています。
また、建物の用途や規模を定める「用途地域」については、前橋・大胡・富士見
都市計画区域で指定されています。
大 胡
都市計画区域
宮 城
準都市計画区域
宮 城
都市計画区域
富士見
都市計画区域
粕 川
都市計画区域
前橋都市計画区域
図 2.8 線引きと用途地域の指定状況
11
⑥ 自家用車に対する依存度の高さ
前橋市の自家用車保有台数、運転免許保有者数は年々増加しています。全国平均
よりも相対的に高く、自家用車への依存が高まっています。
2.0
1.84
1.8
1.75
1.75
1.75
1.75
1.30
1.30
1.30
1.30
1.83
1.81
1.80
1.30
1.30
1.28
1.84
1.6
1.4
1.31
1.27
1.2
H13年
H14年
H15年
H16年
H17年
前橋市
H18年
H19年
H20年
H21年
※全国は参考値
全国
参考:(財)自動車検査登録情報協会WEBサイト、総務省自治行政局住民制度課WEBサイト
図 2.9 世帯あたりの保有台数の推移
72%
68%
64%
60%
56%
52%
H13年
H14年
H15年
H16年
H17年
前橋市
H18年
H19年
H20年
H21年
全国
参考:住民基本台帳、前橋市免許人口(警察提供)、警察白書、日本の統計 2010(総務省統計局)
図 2.10 運転免許保有率の推移
表 2.1 前橋市における高齢者の運転免許保有率
高齢者免許人口
高齢者人口
免許の保有率
平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年
22,153
23,776
25,223
30,322
31,917
52,204
53,911
55,111
63,881
65,775
42.4%
44.1%
45.8%
47.5%
48.5%
参考:第 8 次前橋市交通安全計画
12
(2) 公共交通の現状と課題
現状における本市の公共交通の課題を整理します。なお、下表に本市の乗合公共交
通を示し、次ページの図にはそれら乗合公共交通の路線配置状況を図示しています。
① 本市の乗合公共交通
表 2.2 本市の乗合公共交通一覧
分類
概要
鉄
上毛電鉄
・市を横断するように配置されており、本市からみ
どり市・桐生市へアクセス可能な鉄道
自主路線バス
・市の補助を受けずに、民間バス事業者の運営に
より運行しているバス路線
道
JR
・市西部を縦断する上越線と、市南部を横断する
両毛線が運行しており、高崎・東京方面へアクセ
スが可能な鉄道
バ
地域間幹線系統
・バス事業者が国等からの補助を受けて運行する
複数の市町村間を運行する広域路線バス
ス
・ タ
・市が民間バス事業者に運行委託し、欠損分を補
助することにより運行継続しているバス路線
委託路線バス
ク
シ
ー
マイバス
(中心部循環バス)
・地域間幹線系統(注)の要件を満たす系統は、バス
事業者が主体となり、国・県・沿線市町村と調整
し、国庫補助適用を見込む
・市中心部における循環バスで、1 周 1 時間程度
の循環線(平成 22 年度時点で北・南・西の 3 つ
の循環線が運行)
るんるんバス
・富士見地区内の巡回バス
(富士見地区巡回バス)
ふるさとバス
(デマンドバス)
・大胡地区・宮城地区・粕川地区で運行しているデ
マンド交通
(注)国の定める要件を満たすことで、国庫補助の対象となる系統
13
自主路線
委託路線
生活交通路線
るんるんバス路線
マイバス路線
ふるさとバス運行エリア
上毛電鉄
上毛線
JR両毛線
JR上越線
図 2.11 現状における前橋市の鉄道網及びバス路線網
14
② 公共交通不便地域の解消
「市街化区域
又は
区域区分が定められていない都市計画区域のうち、用途地
域の指定がある地域」(以下、都市地域)については、公共交通網の整備を優先的
に行うことが必要な地域と考えられます。都市地域内の鉄道駅勢圏(鉄道駅から1
km の範囲)及びバス停勢圏(バス停から 300m の範囲)をみると、本庁、上川淵・
下川淵、大胡地区では都市地域内の 90%以上の人口をカバーしています。一方で都
市地域内の人口の 60~70%程度と比較的割合が低い地域もみられます。
こうした地域では従来のバス車両を用いたサービスに拘らず、地域の需要特性に
合わせた運行サービス(本数、運行形態など)の導入など、解決策を検討します。
なお、公共交通不便地域の解消には、住民の主体的な取り組みを支援する仕組み
づくりが実効性を伴うことから、制度面での整備が必要です。
表 2.3 鉄道勢圏及びバス勢圏の面積・人口カバー率
地区
都市地域面積(k㎡)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域面積
都市地域面積に占める割合(%)
本庁
都市地域内の居住人口(人)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域人口
都市地域内の居住人口に占める割合(%)
地区
都市地域面積(k㎡)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域面積
都市地域面積に占める割合(%)
桂萱
清里・総社
地区
都市地域面積(k㎡)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域面積
都市地域面積に占める割合(%)
宮城
粕川
-
-
0
0
-
7.6
5.8
76.9%
32,676
24,794
75.9%
3.0
2.8
93.7%
6,364
6,109
96.0%
富士見
0.0
0.0
0
0
都市地域内の居住人口(人)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域人口
都市地域内の居住人口に占める割合(%)
1.4
0.6
41.4%
2,072
1,224
59.1%
大胡
5.7
3.7
65.3%
15,659
12,911
82.4%
0.0
0.0
芳賀
南橘
11.5
9.6
83.3%
41,967
36,418
86.8%
永明・城南
4.1
3.6
86.5%
10,278
9,235
89.9%
都市地域内の居住人口(人)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域人口
都市地域内の居住人口に占める割合(%)
4.4
3.3
75.5%
16,198
14,779
91.2%
元総社・東
2.0
1.6
78.4%
9,057
7,456
82.3%
都市地域内の居住人口(人)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域人口
都市地域内の居住人口に占める割合(%)
地区
都市地域面積(k㎡)
上記のうち鉄道駅及びバス停圏域面積
都市地域面積に占める割合(%)
上川淵・下川淵
12.2
11.3
92.4%
59,598
56,695
95.1%
2.6
1.8
67.6%
3,888
2,676
68.8%
合計
54.6
44.1
80.8%
197,758
172,297
87.1%
参考:平成 17 年国勢調査
15
指定地域(市街化区域及び
用途地域の指定がある地域)
鉄道駅1km圏域
路線バス バス停300m圏域
図 2.12 都市地域と鉄道駅勢圏及びバス停勢圏
16
③ 鉄道・バスの利用促進
市内鉄道駅における 1 日平均利用者の推移をみると、JR線についてはほぼ横ばい
となっていますが、上毛電鉄線については、大胡町の県立前橋東商業高等学校の閉校
の影響等により、過去 6 年間で約 1 割減少しています。
また市の委託バス路線については、民間路線の撤退や市町村合併に伴い路線数及び
利用者数は増加しています。ただし利用者の少ない路線が増加したことから、路線あ
たりの利用者は 10 年間で約 4 割減少しています。委託路線における利用者減少は欠損
補助を行う市の財政負担に直結します。例えば、本市の委託路線全体では、利用者一
回乗車あたりの補助金支出額は 248 円(平成 21 年度運行分)となりますが、富士見巡
回バス(るんるんバス)では、2,172 円となるなど、路線の運行地域や運賃設定などに
よって、差異が生じています。
公共交通の維持・強化や本市財政負担の抑制の観点から、公的な補助に極力依存せ
ず路線維持を図ることを理想として、運行サービスの向上や情報提供の充実等に加え、
モビリティマネジメントの実施など、中・長期的な取り組みの実施も視野に入れ、鉄
道・バスの利用促進を行うことが必要です。
1.10
1.00
1.00
1.03
1.00
1.00
1.01
1.00
0.98
0.95
0.90
0.93
JR線合計
0.88
上毛線合計
0.80
0.86
※JR線は市内各駅の乗車数合計、
上毛電鉄線は市内各駅の乗降者数合計を
対象に、平成 17 年度に対する比率を図示
0.70
H17年度
H18年度
H19年度
H20年度
H21年度
H22年度
参考:前橋市提供資料、JR東日本WEBサイト
図 2.13 前橋市内駅の鉄道利用者の推移
1.0
0.9
0.8
1.00
0.88
0.84
0.84
0.86
0.7
0.62
0.6
0.63
0.58
0.5
0.55
0.4
※平成 11 年度に対する比率を図示
0.59
0.3
H11年度 H12年度 H13年度 H14年度 H15年度 H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度
路線あたり利用者数
参考:前橋市提供資料
図 2.14 前橋市委託路線バスの利用者の推移
17
④ 広域交通サービスの向上
鉄道は広域移動手段として重要な役割を担っています。「群馬県の鉄道活性化に
向けた提言」(以下、鉄道活性化提言)では、鉄道を中心とした公共交通のシーム
レス化や運行サービスの向上、駅の魅力向上について改善の提言が行われており、
その中には本市の広域交通サービスに関する事項も含まれています。
本市の公共交通の課題として参考になるため、鉄道活性化提言の概要及び本市に
関連する内容を以下に整理します。
項
目
発行者
発行年月
主旨
計画の期間
表 2.4 群馬県の鉄道活性化に向けた提言
内
容
群馬県鉄道網活性化研究会
平成 21 年 3 月
本提言は、県内に張り巡らされた鉄道網をストックの有効活用の
観点から見直すとともに、地球環境問題や福祉政策への対応等の社
会的要請も視野に入れ、より便利で快適な交通機関として再生させ
るために必要な取り組みについての検討結果を示したものである。
特になし
本提言では、「Seamless」、「Service」、「Station」の3つを
柱に掲げている。
■Seamless:公共交通全体のネットワーク化を図りドア to ドア
の「つなぎ目のない」公共交通による移動の実現を目
指す。
■Service:既存ストックを有効に活用するとともに、沿線の都
市集積等を踏まえた効率的投資による、乗車時間、運
行間隔、運行時間帯、運賃等の鉄道の基本的サービス
の向上を目指す。
■Station:駅を魅力ある都市の拠点と位置づけ、都市間競争力
や広域連携の強化等の観点から重要となる主要駅にお
けるシンボル性や機能の向上を目指す。
提言の内容
1.Seamless(シームレスな公共交通の提供)
1.1 県内の鉄道ネットワークの機能強化
①両毛線を中心としたJR路線間の接続改善
・新前橋駅での両毛線と上越線の同一ホーム乗換え
②鉄道事業者間の接続改善
・上毛電気鉄道中央前橋駅とJR前橋駅の連携、連絡
(LRT化も視野)
・上信電鉄のJR両毛線への乗り入れ
1.2 東京方面へのアクセス向上
・高崎線の前橋駅乗り入れ本数の増加
・主要駅での高速(長距離)バスとの連携強化
1.3 他の交通機関との連携強化(フィーダー交通の充実)
・それぞれの都市や地域にふさわしい駅前広場の整備
及びアクセス道路等の周辺整備(前橋駅等)
・P&R 用駐車場の整備
・バス等他の公共交通機関との接続
・駅近隣からのアクセスを考慮した無料駐輪場の整備
1.4 情報提供の充実・強化
・バス等他の公共交通機関と連携した運行情報の提供
18
2.Service(輸送サービスの向上)
2.1 県内の鉄道ネットワークの機能強化
・各路線における運行頻度の向上
JR両毛線、上毛線(中央前橋駅~大胡駅)
2.2 パターンダイヤ化
・各路線における利用者がわかりやすいパターンダイヤ化推進
・複線化等による両毛線のパターンダイヤ化
(朝夕 10 分、日中 15 分間隔程度)の推進 など
2.3 運賃設定の柔軟化
・JR特急水上・草津号の特定区間・時間帯における割引運賃
の設定
2.4 速達性の向上
・上毛電鉄の運行頻度向上を前提とした快速列車運行
2.5 乗り心地の向上
・着席可能なサービスの提供
・冬季におけるドアの自動または手動開閉の適切な運用による
車内保温
2.6
使いやすい運賃収受方式の整備
公共交通に関連
・特定地域の鉄道、バス等の公共交通機関で共通使用できる
する事項
地域内ICカードの導入
(本市に関連する
事項のみ抜粋)
3.Station(駅の魅力向上)
3.1 まちづくりとの一体性
・都市や地域の特性を考慮した玄関口にふさわしい
駅への改良(前橋駅等)
3.2 地域の情報拠点化
・地域資源に関する情報提供
・行政サービス情報及び防災情報等の提供
・バス等他の公共交通機関と連携した運行情報の提供(再掲)
3.3 地域の交流拠点化
・駅での待ち時間を快適に過ごせるような待合室、ベンチ等
の整備(特に冬季や乗り継ぎ駅においては重要)
・エキナカ等賑わいをもたらす施設の整備
・広域観光資源と連携した利用促進策の検討
3.4 駅施設のバリアフリー化
・バリアフリー化の推進
(特に、利用人数の多い幹線である両毛線、上越線の優先整備)
19
⑤ 交通結節点における交通機関の連携
鉄道活性化提言では「シームレスな公共交通の提供」が提言の三本柱の一つとし
て掲げられていますが、交通結節点における鉄道相互あるいは鉄道とフィーダー交
通(バス、タクシー、自家用車、自転車)との連携強化は大きな課題です。
また、高崎や東京方面からのアクセスでは、湘南新宿ラインの運行開始のみなら
ず、2013 年度(平成 25 年度)には東北縦貫線の開通が予定されるなど、運行形態
の構造的な変化が見込まれるため、結節性など駅機能を強化して利便性の向上を図
り、利用客を増加させることが課題となっています。
このことから、鉄道と路線バスの連携に関しては、JR新前橋駅での連携強化が
解決策の一つと考えられます。JR新前橋駅はJR前橋駅よりも高崎方面への鉄道
運行本数が多く(平日上り:前橋駅 64 本、新前橋駅 108 本)、市の玄関口としての
役割を担っていますが、駅に結節するバス路線数はJR前橋駅に比べ圧倒的に少な
い状況です。
また、複数事業者のバス路線が運行している交通結節点において事業者間での連
携が図られていないケースがみられます。本市では現在 7 社のバス会社が運行して
いますが、下写真のように同一バス乗り場で複数のバス停ポールが乱立し、時刻表
の形式も統一されていない状況であり、わかりやすさの向上が課題となっています。
駅施設のバリアフリー化や駅周辺駐車場整備等のハード整備に加え、運行ダイヤ
の見直しや情報提供の充実等のソフト施策実施により、改善を図ることが必要です。
表 2.5 駅別日運行本数
新前橋駅
群馬総社駅
前橋駅
中央前橋駅
普通 快速 通快 特急 合計 普通 快速 通快 特急 合計 普通 快速 通快 特急 合計
普通
上り
平日
下り
上り
土日祝日
下り
上り
平日
下り
JR吾妻線
上り
土日祝日
下り
上り
平日
下り
JR両毛線
上り
土日祝日
下り
上り
平日
下り
上毛電鉄
上り
土日祝日
下り
JR上越線
※
94
21
93
21
-
14
-
14
-
59
-
59
3
-
9
2
-
-
-
-
-
1
-
4
3
-
-
-
-
-
-
-
-
4
-
-
8 108 35 - - -
35
-
21 21 - - -
21
7 109 35 - - -
35
2 25 21 - - -
21
-
0 - - - -
0
3 17 14 - - -
14
-
0 - - - -
0
4 18 14 - - -
14
-
0
4 68
-
0
※上り合計値には
3 66
上越線、吾妻線、
両毛線からの本数
が集約されている。
54
3
3
4
41 - - -
53
7 -
3
41 - - -
64
41
63
41
37
37
37
37
JR東日本WEBサイト上の時刻表(平成 23 年 5 月時点)をカウントし、整理した
参考:JR東日本WEBサイト
写真 2.1 事業者毎に異なる形状で設置されるバス停(左:新前橋駅)と時刻表(右:県庁前)
20
⑥ 運賃の適正化
路線バスの運賃が対キロ区間制であるのに対し、マイバスの運賃は一回大人 100 円
の定額制となっています。そのため、路線バスとマイバスが同じ二点間を結ぶ区間
(以下、競合区間)においては運賃の不均衡が生じています。例えば前橋駅~第二団
地間は競合区間の一つであり、この区間の運賃はマイバス 100 円、路線バス 390 円と
なっています。同様に、上毛線と路線バスの競合区間においても運賃の不均衡が生じ
ている区間があります。中央前橋駅~片貝駅間について、上毛電鉄の運賃は 220 円で
すが、路線バス(中央前橋駅前~片貝)の運賃は 190 円です。
また、大胡・宮城・粕川地域で運行しているふるさとバスは、概ね旧 3 町村地域全
域をカバーする広域なエリアをサービス対象としていますが、一回大人 200 円の定額
運賃となっています。このため、エリア内の停留所間であればどれだけ長い距離(エ
リアの端から端まで利用すれば 15km の移動が可能)を利用しても運賃は 200 円であり、
長距離乗車した場合には乗車距離に対し運賃が安価となっています。当路線は欠損補
助を受け運行していることから、補助金投入に対する費用対効果を上げるため移動距
離に見合った運賃の設定について検討が必要です。
以上より、公共交通という枠組みの中で、多様な交通手段が共存するためには、競
合区間やデマンドバスについて運賃の適正化を図ることが課題となります。
自主路線
委託路線
生活交通路線
るんるんバス路線
マイバス路線
ふるさとバス運行エリア
上毛電鉄
上毛線
中央前橋駅
片貝
前橋駅
JR両毛線
JR上越線
第二団地
図 2.15 前橋市におけるバス路線網
21
⑦ 行政支出の適正化
本市における公共交通への補助金として最も規模が大きいのは、委託路線に対する
欠損補助です。合併による引き継ぎや新規委託路線によって、その補助額は増大し、
平成 21 年度(平成 20 年度運行分)には約 2.6 億円の補助金を支出しています。公共
交通維持のための財政負担については、市民アンケートの結果からも市民から概ね理
解が得られていると考えられますが、収入減に伴う赤字分を財政負担ですべて補い続
けるには限界があります。
現在は路線の維持・見直しについてのルールがないため、民間路線が撤退する際、
住民要望によって、市が委託路線として運行を継続する事態になれば、その路線の欠
損補助分に対して更に財政負担が増加します。また、路線の新設について住民要望が
あった場合にも、路線新設に関する基準や役割分担のルールが存在しないため、現時
点では、公的な財政負担で対応している状況です。
従って、路線の新設・維持及び見直しについてルールを設け、行政支出の適正化を
図ることが喫緊の課題となっています。
(千円)
300,000
マイバス運行開始
(西循環)
デマンドバス運行開始
(H19 年度補助はH19.1~3 の 3 ヶ月分)
250,000
H16.12 大胡町、宮城村、粕川村
合併により委託路線増加
200,000
マイバス運行開始
(北・南循環)
18,881
150,000
17,411
18,886
167,505
106,532
121,110
112,091
117,463
26,679
17,493
19,113
22,270
12,591
15,840
176,837
171,376
175,266
183,303
15,907
17,530
100,000
50,000
21,096
28,648
7,489
15,387
18,888
15,900
16,864
10,672
124,554
0
H12年度 H13年度 H14年度 H15年度 H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度
一般委託路線
マイバス北循環
マイバス南循環
デマンドバス
マイバス西循環
参考:前橋市提供資料
図 2.16 委託路線の欠損補助推移
現状を維持するべき
55.6%
増額するべき
18.5%
わからない
18.1%
減額するべき
財政負担への理解
4.8%
廃止するべき
財政負担反対
2.4%
0%
10%
20%
30%
N=2,745 人
40%
50%
60%
参考:「前橋市市民アンケート調査」(平成 19 年)
図 2.17 今後の公共交通維持のための財政負担
22
(3) 本市における公共交通に関する施策一覧
これまで、市内で実施されている公共交通に関する主な施策を以下に整理します。
表 2.6 本市における公共交通に関する施策一覧
項目
バス運行
バスの定時性
確保及び
速達性向上
バス・タクシー
の待ち環境
運賃割引
公共交通の
利用促進
走行規制
情報提供
PR・イベント
運行支援
施策・取り組み名称
概要
駅や中心市街地周辺を循環運行するコミュニティ交通で、運賃は大人100
マイバスの運行
円。平成14年6月より運行を開始し、現在3路線(北・南・西)で運行中であ
る。低床式(ノンステップ)の小型車両で運行している。
平成20年10月から富士見村内で本格運行を開始した巡回バス。運賃は
るんるんバスの運行
大人200円。
大胡・宮城・粕川地区で区域運行しているデマンドバス。運賃は大人200
ふるさとバスの運行
円で、回数券(1,100円分)も販売している。
JR前橋駅、上毛電鉄中央前橋駅の2地点間を結ぶシャトルバス。運賃は
シャトルバスの運行
大人100円。
バス事業者の廃止意向を受けて引き継いだ廃止代替路線や、市町村合
委託路線バスの運行(上記以外)
併で継承した路線など、上記以外の委託路線(18路線 H22年末現在)
一部の国道においてPTPS(公共車両優先システム)が導入され、バス運
PTPS(公共車両優先システム)の導入
行時間の短縮を図っている。
バス優先レーンの設置
市中心部でのバス専用レーン・優先レーンを設置
前橋中央地区バス路線フレッシュアップ計画に基づいた施策で、本町二
ハイグレードバス停の整備
丁目バス停がハイグレードバス停として整備されている。
平成15年10月より試験運用が行われてきたが、平成21年度末でサービス
バスロケーションシステムの導入
終了となっている。
平成20年2月から前橋駅北口バス乗り場を方面別に整備し、複雑な乗り
バス乗り場の方面別整備
場の改善による利用者の利便性向上を図っている。
市有施設内でのタクシー乗り場の確保
保健所や総合福祉センターなど、市有施設でのタクシー乗降環境の改善
公共交通機関やタクシー等の
障害者手帳などの提示によって、JR、バス、タクシー等の運賃・料金の割
運賃の障害者割引等
引される制度。
運転免許自主返納者のタクシー運賃割引
運転経歴証明書の提示によって、タクシー運賃が1割引となる制度
前橋中心商店街協同組合が発行。バス運賃100円分として利用できる
Qのまちバス乗車補助券
サービス。
前橋駅からの近距離バス運賃の割高感を解消するため、前橋駅から約1
前橋駅周辺における共通バス運賃制度
kmの範囲は100円、約1.5kmの範囲は150円と利用しやすい料金設定と
している。
駅から観タクン
定額料金制のタクシー。市内の観光名所巡りをコース設定。
上電マイレール回数乗車券
金額式の回数乗車券。発売額は5,000円で使用可能額は5,500円。
バス車内後部に自転車積載スペースを設置することで、バス利用者の増
自転車積載バスの運行
加等を図った施策。自転車の持ち込み料は不要。
路線バス等の公共交通の利用促進及び高齢者の交通安全対策として、
運転免許証自主返納支援事業
運転免許証を自主返納した本市在住65歳以上の方に共通バスカード等を
贈呈する取り組み。
上毛線のいくつかの駅にパーク&ライド無料駐車場を設置し、上毛電鉄
パーク&ライド無料駐車場の設置
の利用者増加を図っている。
社会実験として、下川淵公民館・南橘公民館・城南公民館の駐輪施設を
サイクル&バスライド無料駐輪場の設置
利用したサイクル&バスライドを実施している。
路線バス網等を周知し、バス利用の促進を図る施策。ふるさとバスのチラ
前橋市路線バスMAPの作成
シやマイバスで行こう!などの案内も作成されている。
上毛電鉄の車内に無料で自転車を持ち込むことができるサービス。また、
サイクルトレイン
上毛電鉄利用者に限りレンタサイクルを無料で実施している。
レンタサイクル
前橋中心商店街やJR前橋駅、上毛線の駅などでレンタサイクルを実施し
(マエチャリ、まちなかレンタサイクルなど)
ている。料金は無料または200円。
バスの利便性を向上させるため、各社共通に利用できるバスカードのこ
と。群馬県共通バスカード(ぐんネット)については、関越交通・群馬バス・
共通バスカード、敬老共通バスカード
上信電鉄・群馬中央バス・日本中央バス・永井運輸の各路線で利用でき
る。販売額より使用可能額が多くなる価格設定である。
以前から歩行者天国であった中心市街地(銀座通り)にマイバスを乗り入
銀座通り(歩行者専用道路)での
れている。結果として、一般車両を制限し、道路を歩行者と公共交通機関
マイバス乗り入れ
に開放するトランジトモール施策と同じような様相を呈している。
群馬県バス協会WEBサイト「バスねっとGUNMA」にて、バスの時刻表及
び運賃情報を掲載。
WEBサイトでの情報提供
群馬県WEBサイト「バスQ(バス乗りお助け情報マップ)」にて、路線バス
の経路やバス停の位置、運行時刻等が検索可能。
車両デザインの市民公募
マイバスを導入した際に、その車両デザインを市民公募にて決定。
上毛電鉄におけるイベント
春夏秋冬にあわせて、上毛電鉄大胡駅電車庫でイベントを実施。
9月20日のバスの日にあわせて、バス協会とバス事業者がイベントを開
バス日イベント
催。
平成21年10月18日(日)より、LED電球二万八千個を使ったイルミネーショ
上毛電鉄大胡駅におけるイルミネーション点灯
ンを実施。
輸送対策事業費補助金、鉄道基盤設備維持費補助金、鉄道軌道整備費
群馬型上下分離方式による上毛電鉄の支援
補助金による運行支援。
23
PTPS導入区間
(本町~関根町)
荒牧小学校
17
バス優先レーン設置区間
(本町~荒牧町)
群馬大学
医学部
バス優先レーン設置区間
(本町~三河町)
バス優先レーン設置区間
(本町~大手町)
群馬県庁
中央前橋駅
バス優先レーン設置区間
(朝日町~天川大島町)
前橋市役所
バス専用レーン設置区間
(表町~本町)
50
前橋駅
図 2.18 本市のPTPS導入区間及びバスレーン設置区間
24
桃瀬小学校
2.2 他都市における参考事例
公共交通の課題解決に向けて、本市にも適用可能である循環バスやゾーンバスシステム
等について検討するため、他都市における参考事例を以下に示します。
(1) 市内循環バス見直し事例(群馬県高崎市)
高崎市では平成 20 年度に市内循環バス「ぐるりん」について見直しを行っており、
その中で実施されたアンケート調査のサービス満足度分析結果を下図に示しています。
サービス満足度分析とは、各項目の満足度と全体の満足度に与える影響度(独立変
数)の関係から、全体の満足度を向上させるために有効な改善項目を示す分析方法で、
グラフのより右下に位置する項目が最も有効な改善項目とされます。これをみると、
最も改善度が高いのは「運行本数」であり、次いで「運行経路や行き先」が挙がって
います。ぐるりん利用者が運行経路について問題視する結果等を踏まえ、高崎市では、
1 周に 2 時間を要する大循環路線の分割、小循環路線である都心循環線の新設といった
見直しを行っています。
サービスの改善度 ぐるりん利用者
80.0
現状維持
重点維持
運賃
運賃
バス停までの距離
バス停までの距離
満足率偏差値
バスへの乗り降り
バスへの乗り降り
50.0
定時性
定時性
所要時間
所要時間
始発便の時間
始発便の時間
情報のわかりやすさ
情報のわかりやすさ
運行経路や行き先
運行経路や行き先
最終便の時間
最終便の時間
バス停の環境
バス停の環境
乗り継ぎ
乗り継ぎ
運行本数
運行本数
満足度が低い
改善 影響が強い 重点改善
20.0
20.0
50.0
独立係数偏差値
80.0
重点改善項目(特に重点的に改善を行う項目)
満足度が低いため改善を要し、サービス全体
の満足度を向上させる効果が大きい
満足率 ・・・アンケート調査結果の「満足」、
「やや満足」、「どちらでもない」、
改善項目(必要に応じて改善を行う項目)
「やや不満足」、「不満足」の合
満足度が低く改善を要するが、サービス全体
の満足度を向上させる効果は小さい
計に占める「満足」、「やや満足」
の割合。
重点維持項目(重点的に現状維持を図る項目)
満足度が高く維持すべきであり、サービス
全体の満足度を向上させる効果も大きい
独立係数・・・サービス全体の満足度を向上さ
せるための重要度を示す指標。
現状維持項目(現状維持で十分な項目)
満足度が高く維持すべきであるが、サービス
全体の満足度を向上させる効果は小さい
25
(2) 循環バス見直し事例(群馬県伊勢崎市)
伊勢崎市では、運賃を収受しない(無料)の路線バスを委託運行しています。市町
村合併等に伴いバス路線の見直しを行っており、その中で実施されたアンケート調査
のサービス満足度分析結果(利用意向の有無別)を下図に示しています。
これをみると、利用意向の有無に拘わらず「バスの運行本数」、「バスの乗車時
間」及び「バスの運行距離」の改善度が高いことがわかります。当時の伊勢崎市にお
けるバス路線のほとんどは循環線でしたが、中心部へ行く場合には乗り継ぎが生じて
おり、乗車時間の長時間化、不便な遠回り運行が課題として挙げられていました。市
街地は伊勢崎駅を中心に 3~5km圏内と比較的コンパクトであることから、伊勢崎市
では循環線を廃止し、郊外部から中心部へ直接アクセス可能な放射状のバス運行形態
に改善しています。
独立係数
偏差値
29.1
42.5
63.6
56.9
59.9
52.0
54.5
47.1
53.3
57.2
61.2
42.2
38.7
41.9
36.5
項目
バス停までの距離
バス停までの経路環境
バスの運行本数
バスの乗車時間
バスの運行距離
到着の正確性
バス路線のわかりやすさ
バス停での待ち時間
バスの運行情報の提供
バスへの乗降環境
鉄道や他のバスとの乗継ぎ
バスの車内環境
バス停の環境
バスの運転
運転手の応対
80.0
利用意向あり
満足率
改善度
偏差値
68.5
-28.99
55.9
-10.31
39.5
15.76
41.2
10.32
45.3
8.57
58.6
-3.12
45.2
6.44
41.6
2.56
41.4
6.80
51.4
2.79
37.0
16.34
61.5
-12.25
49.9
-5.61
63.1
-13.16
62.1
-18.78
改善度
ランク
2
3
4
6
8
5
7
1
-
独立係数
偏差値
31.3
37.2
63.2
55.0
62.1
52.3
55.9
53.0
34.6
47.9
45.9
55.8
46.4
59.4
54.4
利用意向あり
利用意向なし
満足率
改善度
偏差値
73.3
-27.76
63.0
-18.17
42.2
12.89
40.2
8.78
45.6
9.27
53.3
-0.46
44.3
8.14
39.6
7.38
43.9
-4.31
50.6
-2.84
39.3
3.07
56.6
-0.37
50.2
-5.29
58.0
0.62
55.7
-0.56
利用意向なし
バス停距離
バス停距離
経路環境
運転手の応対
バスの運転
車内環境
満足率偏差値
経路環境
正確性
バスの運転
車内環境
運転手の応対
正確性
バス停環境 バス停環境
50.0
情報提供
乗降環境
乗降環境
運行距離
運行距離
路線のわかりやすさ
路線のわかりやすさ
情報提供
運行本数
待ち時間
乗車時間
乗車時間
運行本数
乗継ぎ
待ち時間
乗継ぎ
20.0
20.0
50.0
独立係数偏差値
26
80.0
改善度
ランク
1
3
2
4
5
6
7
-
(3) ゾーンバスシステム事例(広島県福山市)
福山市では、郊外部から多くの路線が同一区間を介して都心に集中しており、非効
率な運行となっていました。そこで郊外部に結節拠点を設け、幹線と支線に分けるゾ
ーンバスシステムへの再編を行っています。
ゾーンバスシステム導入前
ゾーンバスシステム導入後
27
(4) 鉄道駅におけるフィーダーバス導入事例(宮城県仙台市)
仙台市では、主要拠点間を概ね 30 分で移動できることを目標に、速達性、定時性、
輸送力に優れた軌道系交通機関を基軸、バスをその補完交通として、市域を面的にカ
バーする公共交通体系の構築を目指しています。軌道系を有効に活用するために、地
下鉄東西線の整備、既存の軌道系の機能強化を促進するとともに、駅結節機能の強化
拡充とフィーダーバス網を組み合わせ、軌道系圏域の拡大を図っています。
<現況の公共交通体系>
○結節機能の未整備な駅
○市街地の大半を都心直結バスがカバー
都心直結バス
サービス圏域
鉄道(駅)
主な幹線道路網
自動車専用道路網
<目指すべき公共交通体系>
○軌道系を基軸とした公共交通体系の形成
○駅アクセス道路と結節点整備により
鉄道フィーダーバス網を形成
都心直結バス
サービス圏域
鉄道(駅)
主な幹線道路網
自動車専用道路網
28
鉄道フィーダーバス
サービス圏域
(5) 地域住民と行政が協働する公共交通の導入・運営
石巻市稲井地区で導入されている乗合タクシー「いない号」は、導入時より経費の
一部を地域住民が負担しています。
稲井地区は、地域全体が水田地帯の周囲に集落が点在している典型的な農村地帯で
あり、市内中心部から遠距離地までは約 20kmに位置しています。一部地域を除き、
公共交通機関は廃止代替バス(委託路線バス)のみ運行していたものの、財政負担に
よりその廃止代替バスも廃止することとなったため、住民意向を踏まえたうえで定時
定路線の乗合タクシーを導入する方針を決定しています。
計画策定にあたっては、稲井地区内の 18 の行政区長会が中心となって稲井地域の廃
止代替バスの廃止後の対応について協議を重ねるとともに、域内全世帯にアンケート
調査を実施しています。その結果、「地域の足は地域自らが確保し、共に支えあう」
を「いない号」の基本理念とし、石巻市からの運行補助金に加えて、約 1,800 の全世
帯が年間約 100 万円(世帯当たり 546 円/平成 18 年度)を負担することとなっていま
す。また経費削減のため、予約業務・配車業務等のシステム構築が必要なデマンド方
式を採用せず、廃止代替バス時代のバス停を活用した定時定路線の乗合タクシー方式
を採用しています。そのため、運行経費については廃止代替バス運行時の運行経費年
間 2,300 万円に対し、半分以下の 1,008 万円の経費となっています。
このように、地域住民と行政が協働し、維持費負担を分担することにより、持続可
能な公共交通体系の実現を図っています。
29
(6) 参考事例の整理
参考事例で着目した各バスシステムの導入条件を以下に整理します。
① 循環バスの導入条件
・大循環線の場合、乗車時間の長時間化が課題となる可能性がある。また、1 周
あたりの所要時間が長くなれば運行本数が少なくなり、それに伴い車両台数の
増車といったサービス向上策の検討も必要となる。
・均一運賃制を採用した場合は、移動距離が大きくなるほど、対距離制の他の路
線バスとの運賃格差が増加し、自主路線を圧迫する可能性が高まる。
・目的地への遠回り運行となると利用抵抗が生じる可能性があるため、移動需要
に見合った路線設定が必要である。
② 郊外部から中心部へ直接アクセス可能な放射状バスの導入条件
・幹線バスとして速達性の確保が求められるため、導入区間の道路形状は直線的
であることが望ましい。
・循環バスとは異なり線的な路線形状であるため、沿線需要の多い区間への導入
が必要であり、需要を踏まえた導入区間の取捨選択が必要である。
③ ゾーンバスシステムの導入条件
・ゾーンバスシステムの効果的な導入のためには、複数バス路線に一定距離の重
複区間があることが必要である。
・乗り継ぎをしたバスの乗車距離が短いと乗り継ぎ抵抗が生じる可能性が高いた
め、中心部と乗り継ぎ拠点間はある程度の距離が必要である。
・バスの転回や時間調整ができる乗り継ぎ拠点が必要である。
④ フィーダーバスの導入条件
・乗り継ぎをした鉄道の鉄道乗車距離が短いと乗り継ぎ抵抗が生じる可能性が高
いため、中心部よりある程度距離の離れた鉄道駅が対象となる。
・鉄道とバスのダイヤ調整等、乗り継ぎ円滑化策が必要である。
⑤ 地域住民と行政が協働する公共交通の導入・運営条件
・持続可能な公共交通の導入・運営には、単に要望を挙げるだけではなく、地域
が主体的に導入検討に参画し、責任分担を図りながら行政等と協働する必要が
ある。
・継続的、発展的な協議が図られるよう、地域住民の有志からなる地域組織を形
成し、地域の代表者をある程度固定する必要がある。
※今後の公共交通の方向性(P72)にて再掲
30
2.3 まちづくりに関する上位・関連計画の整理
公共交通マスタープラン策定において整合を図るべき上位・関連計画を以下に示します。
(1) 第六次前橋市総合計画
項
目
発行者
発行年月
主旨
内
容
前橋市
平成 20 年 3 月
本計画は、社会経済情勢の変化に強い「持続可能な都市」の実現
を図り、市民、地域、行政が力を合わせた「協働のまちづくり」に
取り組むための指針として策定されたものである。
計画の期間
平成 20 年度~平成 29 年度(10 年間)
計画の内容
本総合計画は、「基本構想」、「基本計画」、「実施計画」の 3
層で構成されている。
■基本構想:基本構想は、前橋市の将来都市像を掲げ、それを実
現するために取り組む基本的な枠組み(施策の大
綱)を示したものである。
■基本計画:基本計画は、基本構想で掲げた将来都市像を具体的
に示すとともに、それを実現するために優先的に進
めていく取り組みや具体的な取り組み、また計画を
着実に推進していくための考え方や具体的な成果指
標を示したものである。なお、社会経済情勢や市民
ニーズの変化などを踏まえ、5 か年経過時点で見直
すこととしている。
■実施計画:基本計画で示した取り組みを推進するために実施す
る具体的な事業や目標、スケジュールなどを示した
ものである。計画期間については、前期実施計画は
平成 20 年度から平成 24 年度、後期実施計画は平成
25 年度から平成 29 年度としている。
公共交通に関連
する事項
※本プランに関
連する事項のみ
掲載しているた
め、見出し番号
は必ずしも連続
しておりません
【基本計画(分野別計画)】
第1章 快適で暮らしやすいまちづくり(都市基盤・安全安心)
■第1節 良好な都市基盤を整備します
○快適な都市空間の創出
・軌道駅周辺整備事業(駒形・前橋・群馬総社・新前橋)
○人にやさしい道路・橋りょう・交通施設等の整備
・交通バリアフリー特定事業(前橋駅周辺事業など)
・交通安全関連施設の整備
■第2節 円滑な都市交通網を構築します
○広域幹線道路の整備促進
・国直轄事業の促進(国道・バイパス整備など)
○都市内幹線道路の整備
・道路事業(新市域道路建設事業など)
○地域に応じた公共交通体系の整備
・軌道交通の活性化(JRや上毛電鉄の活性化事業など)
・バス交通網の整備(バス交通網整備事業など)
■第3節 安全で安心して暮らせるまちづくりを推進します
○交通安全の向上
・交通安全事業(交通安全指導など)
・車両対策事業(迷惑駐車等対策事業など)
31
(2) 前橋市都市計画マスタープラン
項
目
発行者
発行年月
主旨
内
容
前橋市
平成 21 年 3 月
本計画は、「第六次前橋市総合計画」の将来都市像「生命都市い
きいき前橋」の実現に向け、ひとつの都市として市全体が地域とと
もに発展する「コンパクト」なまちづくりをめざして策定されたも
のである。
計画の期間
平成 37 年(概ね 20 年間)
計画の内容
本計画は、「基本方針」、「全体構想」、「地域別構想」の 3 つ
を柱として構成されている。
■基本方針:基本方針は、本市の将来都市像「生命都市いきいき
前橋」や将来都市構造など、本市が目指す都市づく
りの最も基本的な方向性を示したものである。
■全体構想:全体構想は、基本方針に基づき政策テーマ別や分野
別のそれぞれの構想から見たまちづくりの方向性に
ついて市全体を対象に示したものである。
■地域別構想:市域をまちづくりの単位となる 12 地区に分け、都
市づくりの基本方針、全体構想を基本とした地域
別のまちづくりの方向性を示したものである。
公共交通に関連
する事項
※本プランに関
連する事項のみ
掲載しているた
め、見出し番号
は必ずしも連続
しておりません
【全体構想(2.分野別構想)】
(2)交通体系の整備の方針
a.高速道路・広域幹線道路・幹線道路
・高速道路、広域幹線道路、幹線道路の改良・整備の推進
b.地区幹線道路・生活道路
・地区幹線道路、生活道路の計画的な整備
c.公共交通
・総合的な交通需要マネジメント施策の展開
・路線バスとマイバス・ふるさとバスの連携による
バスの利便性向上
・JR駒形駅、群馬総社駅周辺整備等による鉄道の利便性向上
・上毛電鉄駅周辺整備などによる利用増進、活性化の促進
・既存のバス路線網の維持存続施策の検討
・主な市街地における空白地域の解消などに配慮した
バス路線網の見直し
d.駐車場
・一時使用的な駐車場の集約化による中心市街地における
総合的かつ計画的な駐車場確保
・迷惑駐車等の防止による円滑な交通の確保
e.歩行者・自転車
・自家用車以外の移動増加を図り、公共交通利用を促進する
地域核
(新前橋)
都心核
放射都市軸
内環状
(環状都市軸)
地域核
(大胡)
外環状
(広域都市軸+環状都市軸)
地域が連携を持ちながら、
それぞれ発展することによ
り、市全体の発展を促す。
32
地域核
(前橋南部)
(3) 前橋市中心市街地活性化基本計画
項
目
発行者
発行年月
主旨
計画の期間
内
容
前橋市
平成 22 年 5 月
本計画は、第六次前橋市総合計画の基本的な考え方を踏まえ、
「新たな前橋の魅力」「新たな都市の恵み」を創出していくための
取り組みや事業を、「暮らし」「にぎわい」「豊かさ」という 3 つ
の視点に沿って整理し、展開していくために策定しているものであ
る。
平成 23 年 4 月~平成 28 年 3 月(5 年間)
前半では住民ニーズや旧基本計画の進捗状況といった現況把握、
後半では基本方針や目標、想定される事業について述べている。
1.中心市街地の現況及び特性
2.地域住民等のニーズ
3.中心市街地活性化基本計画の進捗状況と事業効果
4.中心市街地活性化の基本方針
5.中心市街地の区域
6.中心市街地の活性化の目標
7.中心市街地活性化のための事業
計画の内容
活性化区域の将来構造図~多様な回遊軸と 3 核の形成
公共交通に関連
する事項
※本プランに関
連する事項のみ
掲載しているた
め、見出し番号
は必ずしも連続
しておりません
7.中心市街地活性化のための事業
・ 交通バリアフリー特定事業
・ 前橋駅北口広場整備事業
・ マイバスの利便性増進事業
・ その他のバス路線の利便性増進事業
・ 上毛電鉄利用促進策等活性化事業
・ JR両毛線駅活性化促進事業
・ レンタサイクル事業
・ 自転車利用振興事業
33
(4) 前橋市観光基本計画(案)
項
目
発行者
発行年月
主旨
計画の期間
内
容
前橋市
平成 23 年度予定(時点修正あり)
平成 16 年及び平成 21 年の合併によって本市の観光を取り巻く環
境が変化したこと、今後の本市の観光振興・発展には観光に携わる
関係者が共通認識を持つための進むべきビジョンが必要であること
から、本計画を策定することとなった。
平成 23 年度~平成 27 年度(5 年間)
本計画は、国内の観光需要の変化や需要の動向を踏まえつつ、上
位・関連計画実現のための地域計画であり、その基本的方向を示す
ものである。
計画の内容
1章
2章
3章
4章
5章
計画の策定にあたって
前橋市の観光の現状と課題
前橋観光の基本方針
テーマ別前橋観光の取り組み
計画の進め方
■ターゲット
東京都内及び関越自動車道沿線の埼玉県を主要範囲とし、北関東
自動車道全線開通を見越し、栃木県・茨城県も前橋観光のターゲッ
トの範囲とする。
4 章 テーマ別前橋観光の取り組み
4-3「おもてなしの心に根ざした行動」(ホスピタリティ)
向上計画
②観光従事者への意識啓発
・ 二次交通機関における観光従事者意識の向上
(二次交通機関:バス、タクシー・レンタカーなど)
公共交通に関連
する事項
※本プランに関
連する事項のみ
掲載しているた
め、見出し番号
は必ずしも連続
しておりません
4-5 交通計画
③二次交通整備
・ 主に駅から観光目的地まで結ぶ二次交通の重要性
・ 来訪者の観光需要に適った提案ができる
観光タクシーの確立
・ 前橋駅の観光案内所での情報提供力の強化
④駐車場対策
・ イベント時の交通渋滞を緩和するパーク&ライド
(駐車場からシャトルバスや自転車への乗り継ぎ)
・ 環境にも優しいレンタサイクル事業
⑤自転車及び「歩く」への対策
・ 赤城山大沼周辺や都市部でのレンタサイクル
・ 自転車積載バス
⑥「ふるさとバス」システム活用の検討
・ 路線を前提としない「ふるさとバス」の観光への展開
4-6 広域連携計画
③高崎市との連携
・ 観光分野における連携・取り組み
(例:前橋駅からの高崎市内へのバス路線設定)
34
(5) 前橋市障害者福祉計画
項
目
発行者
発行年月
主旨
計画の期間
内
容
前橋市
平成 18 年度
本計画は、本市が将来都市構造として掲げている「生命都市いき
いき前橋」構想の具現化を図る中で、「障害者計画」「障害福祉計
画」の両計画の要素を含んだ障害者施策推進の基本となる計画とし
て策定されたものである。
平成 18 年度~平成 27 年度(10 年間)
本計画は、障害者基本法に基づく「障害者計画」、障害者自立支
援法に基づく「障害福祉計画」の 2 つを柱として構成されている。
1章
2章
3章
4章
5章
計画の内容
計画の策定にあたって
障害のある人をめぐる状況
施策の展開
障害福祉計画
計画の推進
■障害者計画(1~3 章、計画期間:平成 18~27 年度)
障害者計画は、市が地域における行政の中核機関として、地域
の様々な資源の総合的な連携体制を構築し、障害のある方々一
人ひとりに対して、適切なサービスが提供される基盤を作るこ
とを大きな目的としている。
■障害福祉計画(4 章、計画期間:平成 18~20 年度)
障害福祉計画は、障害福祉サービスに関する 3 年間の実施計画
的な位置づけとして策定するものであり、「サービス見込量
(目標量)」の設定が中心的な内容となる。現在は、第 2 期障
害福祉計画(計画期間:平成 21~23 年度)を策定済である。
公共交通に関連 3 章 6 項 誰もが安心して暮らせるまちづくりのために
する事項
(3)交通・移動手段の整備
具体的な施策
・交通バリアフリー基本構想に基づく移動環境の整備
※本プランに関
・リフト付きバス、低床バス等の導入促進
連する事項のみ
・福祉有償運送の充実
掲載しているた
め、見出し番号
は必ずしも連続
しておりません
35
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