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第1章 新しい都市づくりの必要性

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第1章 新しい都市づくりの必要性
第1章
第1節
新しい都市づくりの必要性
背景
1.横浜を取り巻く社会経済情勢の変化
開港 150 周年を迎え、あらためて横浜の歴史を振り返り誇りを持つ機会とするととも
に、これを契機に次の 50 年を見据え、これからの時代にふさわしい新たな横浜の将来
像を描く必要がある。
しかしながら、取り巻く社会経済情勢としては、人口減少、少子・高齢化社会に突入
しつつあるとともに、かつて経験したことのない厳しい経済状況にある。
今後、労働力人口の減少に伴う一層の経済規模の縮小や、社会資本整備の維持管理費
の増大に伴う新規投資余力の減退のおそれも想定される。
産業構造の変化や社会経済分野におけるアジア諸国の台頭、地方分権社会における大
都市経営のあり方の模索や行政課題の広域化、地域住民・企業との協調・協働・共創に
よる新たな行政運営方策の推進、家族構成・地域社会の変容など、従来とは異なる課題
への対応が求められている。
また、地球規模でみると、環境問題が深刻化しており、過去 100 年の気温上昇は、全
国の中小都市の平均が約 1.0 度である一方、横浜市は約 2.6 度上昇している。また、市
内の温室効果ガスの総排出量は、様々な取り組みを重ねているにもかかわらず、平成 15
年度は 2,148 万トンと、京都議定書の規定による基準年の平成 2 年度より約 26%も増加
している。さらに、市内の緑は減少を続けており、市民意識調査では、身近な水・緑環
境の保全の要望が高くなっている。このような状況を踏まえ策定した「CO-DO30」、「み
どりアップ計画」を着実に進める必要がある。
2.「都市づくり」に係るこれまでの取組及びその効果
1859 年(安政 6 年)の開港以来、横浜は、国内外に開かれた、日本の産業・文化を牽
引する大都市としての歩みを進めてきた。また、横浜は、開放的で進取の気風に富む市
民とともに、国際性豊かな文化や個性あふれる横浜を築いてきた。
横浜市はこれまで、大さん橋の建設に代表される港湾整備期(1890 年代)、関東大震
災からの復興都市計画(1920 年代)、第二次世界大戦による壊滅的な打撃からの戦災復
興(1940 年代)、5大戦争(ごみ、道路交通、環境破壊、水資源、公共用地)と6大事
業(みなとみらい 21 など都心部の強化、金沢地先埋立、港北ニュータウンの建設、高
速道路の建設、ベイブリッジの建設)
(1960 年代)、
「よこはま 21 世紀プラン」等による
街づくりの多様な対応・事業展開(1980 年代)、と時代の変遷にあわせて都市的な機能・
魅力を高める様々な戦略を打ち出し、実行に移してきた。
しかしながら、首都圏という観点で見ると、戦後復興期を経て、高度経済成長の時期
から一貫して東京中心部への人口、産業等が過度に集中しているという状況もいまだ解
消されずにある。
1
横浜市の市内総生産は、平成 17 年には 12 兆 6,934 億円と、政令指定都市では大阪市
に次ぐ第二位の規模であり、都道府県と比較すると、10 位静岡県と 11 位広島県の間に、
OECD諸国と比較すると、24 位ポルトガルと 25 位チェコの間に位置している。また、
市内での就業者数は 142 万人にのぼり、そのうち約 35 万人が市外から横浜に通勤して
いる。市内への流入従業者数は東京 23 区、大阪市、名古屋市に次いで多く、横浜市は
東京圏の中において一定の経済的求心力を持ち、社会資源が高密度に集中している大都
市といえる。
一方で、横浜市の昼夜間人口比率の推移を見ると、近年は漸増・停滞傾向にあるとは
いえ、平成 17 年では、横浜市全体で 90.4、東京都区部で 135.1 となっており「東京一
極集中」の流れを大きく変えるには至っていない。
昨今の国の道州制議論の動向を踏まえ、横浜市では新たな大都市制度の検討を進め、
道州と同格の都市州を目指すこととしたが、都市州にふさわしい今後の大都市横浜の都
市づくりの方向性を検討する必要がある。
3.新たな都市づくりの研究・目標時期
以上のような社会経済情勢、これまでの取組を踏まえ、改めて、都市の物理的な成長
を前提としない持続可能でコンパクトな都市構造のあり方を探り、中長期的な視点から
横浜市の都市づくりの方向性について検討する。
中長期的視点に立った都市づくりを展開することの重要性を踏まえ、2050 年を見据え
つつ、2025 年(平成 37 年=長期ビジョンの目標年次)を目標とした取組の方向性を示す
ものとする。
図表 1
6大事業計画位置図
4.横浜市の総合計画における
都市構造の位置付け
(1)6大事業
昭和 40 年の「横浜の都市づくり将
来計画の構想」より、6大事業として、
①都心部の主要な地区において再開発
や文化的市民施設の整備を進める「都
心部強化」、②都心部に散在する工場の
移転及び住宅地の整備などにより工業
機能の環境を向上する「金沢地先埋立
事業」、③計画的な開発により乱開発を
防止し良好な市街地の形成を進める
「港北ニュータウン建設事業」、④郊外
区の人口急増地域と横浜市の都心部と
のアクセスを強化し市民生活の利便性
2
(出典)港町・横浜の都市形成史(横浜市企画調整局)
を図る「高速鉄道建設事業」、⑤④とともに都市の骨格を形成し、業務交通や通過交通
を分離し都市内の交通を円滑化する「高速道路網建設事業」、⑥都心部における通過交
通を処理することにより交通混雑の緩和をはかり、また新しい横浜のシンボルを形成す
る「横浜港ベイブリッジ建設事業」を掲げ、推進してきた。
これにより、都心部をはじめとした市街地の整備による都市機能の強化、市民生活や
市民活動の質の向上が進められ、道路や鉄道など都市基盤の整備により、都市の骨格の
形成や広域的な交通ネットワークの構築が進められ、市民のみならず来街者に対しても、
広域的に利便性の機能強化が進められた。
(2)「よこはま 21 世紀プラン」(平成元年 11 月策定)
ここからは、平成以降に策定された総合計画について概観する。
まず、平成元年の「よこはま 21 世紀プラン」では、計画冒頭部にある「新たな課題
と方向」の1項目として「バランスの取れた都市構造」を挙げ、市域のバランスある発
展のため、中域生活圏、郊外部の街づくり、既成市街地の環境改善、市域の一体化の促
進、などの方向性を示している。また、横浜を首都圏の核都市として主体性を発揮する
方向性を示している。
これを受けた「事業計画」の中で、都心の強化(MM21 事業の推進、既存都心部の強
化、新横浜第二都心の整備)、副都心・地域拠点の整備(副都心4、主要な地域拠点8
など)、臨海部の再編成(4ゾーン)、総合交通体系の確立、などを示している。
(3)「ゆめはま 2010 プラン」(平成6年 12 月策定)
計画の冒頭の「リーディングプラン 11」の中で、「快・速・安・信ネットワークプラ
ン」、「特色ある都市拠点強化プラン」、「水と緑のトライアングルプラン」、「みなとまち
快遊プラン」等を示している。
「特色ある都市拠点強化プラン」では、都心臨海ビジネスベルトの形成、新横浜都心
の拡充、副都心の整備促進(上大岡・戸塚・二俣川鶴ヶ峰・港北NT・鶴見)、京浜臨
海部の再編整備、を挙げている。
「快・速・安・信ネットワークプラン」では、最寄駅まで 15 分の交通体系整備、都
心まで 30 分の交通体系整備、などを挙げている。
また、計画の中段の「豊かな暮らしをつくる
図表 2
横浜市の将来都市構造
プラン 32」の中で、地域別の土地利用計画とし
て、都心部、副都心、地域拠点、臨海部、都心
周辺部、郊外部、市街化調整区域の7区分に分
けて土地利用の誘導方針を示している。
(4)「中期政策プラン」(平成 14 年 12 月
策定)
冒頭部の重点戦略の一つの「安全で便利な地
域の生活環境の形成」の中で、駅を中心とした
生活利便性向上や、最寄駅まで 15 分道路の整備
3
( 出 典 ) 横 浜 市 中 期 政 策 プ ラ ン ( 2002 年 12 月 )
などを挙げている。
また、分野別主要事業のうち「豊かな街をつくる市街地の整備」として、都心・新横
浜都心の整備、副都心の整備(上記5地区)、京浜臨海部の再編整備、地域拠点の育成
(再開発事業など)、郊外部の計画的整備(港北ニュータウン、いずみ田園文化都市な
ど)を挙げている。
また、同じく「市民の活動を支える交通」として、市内の交通体系の整備、全国や世
界を結ぶ交通体系の整備、交通マネジメントシステムの確立などを挙げている。
(5)「横浜市中期計画」(平成 18 年 12 月策定)
図表 3
将来都市構造イメージ
(市域レベル)
冒頭部の「横浜市が目指す都市像」の中で、
「2
地域レベルのまちづくり」として鉄道駅
を中心とした、コンパクトで持続可能なまちづ
くり、などの理念を述べている。
「3
都市レベ
ルのまちづくり」では、横浜都心、新横浜都心、
鉄道駅周辺、産業拠点ゾーン(京浜臨海部・臨
海南部・内陸北部・内陸南部)の方向性を述べ
ている。
「4
交通ネットワーク」では、空港(羽
田)
・港湾、道路、鉄道、バス等地域交通、に触
れている。
今後5か年の「重点政策」では、重点政策4
「駅力・地域力戦略」として、拠点駅周辺の整
備促進、いえ・みち
まち改善事業、道路ネッ
トワーク形成(3環状10放射など)、鉄道ネッ
トワーク形成、地域交通サポートなどを挙げて
いる。重点政策5「横浜経済元気戦略」で、横
浜型企業誘致・産業立地戦略など、6「ヨコハ
マ国際戦略」で、横浜駅周辺大改造、新横浜都
心の整備、横浜環状道路等整備、スーパー中枢
港湾、羽田空港国際化推進など、7「環境
行動都市戦略」で緑アップや温暖化対策な
どを、それぞれ挙げている。
4
( 出 典 ) 横 浜 市 中 期 計 画 ( 2006 年 12 月 )
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