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国立国会図書館の書庫(PDF: 811KB)
国立国会図書館の書庫 国立国会図書館には、日本で発行された出版物を納本制度によって広く集め、永 く保存する役割があります。その蔵書は、国会の図書館として、また唯一の国立の 図書館として行うさまざまなサービスの基礎となっています。 納本などの方法により収集された資料は、東京本館、関西館、国際子ども図書館 の3施設に分散して保管されています。資料の保存と利用を両立させるために、資 料の大部分を書庫に収め、請求に応じて出納する「閉架式」の利用方法をとってい ます。書架の総延長距離は約 585km、東京から岡山県までの距離とほぼ同じです。 書庫には、大切な蔵書を後世に伝えるためのさまざまな工夫がなされています。 蔵書の増加に対応した書庫の確保は、国立国会図書館の絶えざる課題です。 書 庫 の 新館 本館 東京本館 :書庫部分 東京本館断面図 ■東京本館 本館書庫■(表紙写真左) 昭和 36(1961)年第一期工事、昭和 43(1968)年第二期工事完了。書庫は1辺 45m の正方形。2階分の高さを鋼鉄の 支柱で3層に分割し、17 層の積層書庫としています(1~5層は地下部分)。支柱には棚板を取り付けるための穴が開け られており、5~9段の棚板を渡して書架とするほか、地図やマイクロフィルムを収納するためのキャビネットを吊り下 げています。 ■東京本館 新館書庫■(表紙写真右) 昭和 61(1986)年完成。外気の影響が少なく地震の揺れが少ないことから、すべて地下に設 けられており、東西に 135m、南北に 43m、地下8階(深さ約 30 m)まであります。浸水を防 ぐため、地下の外壁と地上1階の床に防水を施しています。また、書庫内で働く人に安心感を与 ひかり にわ えるため自然光が地下8階まで届く「光庭」を設けています。 書架には、固定書架、集密書架、レコードを保管する音盤架、 マイクロ資料を収めるキャビネットや電動回転ファイルがあり ます。 このほか、書庫内にマイクロ保存庫と貴重書の専用書庫を設 けています。貴重書書庫は、床、壁、天井が板張りになってお り、木製の書棚に資料を平置きして保管します。壁と気密扉で 仕切られ、気圧が高く保たれており、扉を開けても塵埃が入り にくくなっています。また、人の出入りを他の場所より厳格に 貴重書書庫 制限しています。 光庭 書 庫 の ■消火設備■ 国立国会図書館の書庫には、水を用いるスプリンクラーではなく、不活性ガス による消火設備を設置しています。例えば関西館では、窒素ガスを放出し酸素の 濃度を 12 ~ 13%に下げて消火します。 ■書籍搬送設備■ 東京本館における書籍搬送設備では、書庫内のステーションと資料の受け渡し をするカウンターとを、水平コンベアと垂直コンベアを組み合わせて結び、資料 を運びます。 書籍搬送設備 の 構 造 ■関西館■ 平成 14(2002)年完成。地下2階から地下4階を 書庫とし、防水を施しています。固定書架、集密書 架、電動回転ファイルとマイクロ保存庫を設置し、地 下3階と地下4階の北側にある吹き抜けに自動書庫を 設けています。 自動書庫は、1点ずつ ID ナンバーを付与した資料 をコンテナに収め、クレーン 関西館 を使ってコンテナごと出納す る仕組みになっており、固定 書架に比べて約4倍の収蔵能 力 が あ り ま す。 現 在、30 ~ 50 冊収納できるコンテナが 㧦ᦠᐶㇱಽ 㧦⥄േᦠᐶ 約2万 8,000 個あります。 自動書庫 関西館断面図 ■国際子ども図書館■ 明治 39(1906)年に開館した帝国図書館の建物を、免震レトロフィット工 法により耐震性を向上させ、平成 14(2002)年に全面開館(レンガ棟)。帝国 図書館で書庫として建設された部分を、集密書架が設置できる強度と防火性を 確保するために作り直し、2階から上を6層の書庫としました。児童書専門 図書館としての機能強化のため、平成 27(2015)年に完成したアーチ棟では、 地下1階から地下2階を書庫とし、書庫内に紙芝居用の書架を設けています。 国際子ども図書館(レンガ棟) :書庫部分 レンガ棟断面図 アーチ棟断面図 の 設 備 ■集密書架■ 資料を取り出すために必要な書架を動かして開ける集密書架は、固定書架と比 べて約2倍の収蔵能力があります。 東京本館の新館書庫と関西館書庫では約半数、国際子ども図書館の書庫では大 部分が集密書架です。 電動式集密書架 書庫内の環境 ■温湿度■ 書庫内は温度約 22℃、湿度 55%程度を目安に、年間を通じて大きな変化がないよう調整しており、温湿度データを定 期的に採取しチェックしています。 マイクロフィルムは、紙資料に比べて、乾燥した涼しい環境で保管することが望ましいため、保存用のネガフィルムは 温度 18℃、湿度 25%のマイクロ保存庫に保管しています。 ■照明■ 書庫内の照明はセンサーで自動点灯・消灯するなどし、必要なときだけ点灯します。光のエネルギーはさまざまな化学 的な劣化を進めるので、資料を長期的に保存するためには光に当てないことも必要だからです。また、光の中で最も高い エネルギーを持つ紫外線の影響を減らすため、主に低紫外線タイプの蛍光灯を使用しています。 ■塵埃対策■ 塵埃(ちり、ほこり)が資料に付着すると、有害な化学変化の原因になっ たりカビや害虫の温床になったりすることがあります。塵埃が多量に持ち込 まれることを防ぐため、書庫への出入りは制限されています。また、空気中 の塵埃を取り除く集塵装置を設置しています。 ■虫害対策■ 虫害を受けやすい和紙の資料の多い書庫区域を中心に粘着トラップをしか けて、定期的に観察しています。また、新規に資料を受け入れる際は、必要 に応じて殺虫処理を行っています。 低酸素濃度殺虫法により 処理中の資料 数字で見る国立国会図書館の書庫 施設名 東京本館 敷地面積 本館 新館 関西館 国際子ども図書館 29,812㎡ 82,665㎡ レンガ棟 アーチ棟 7,733㎡ 床面積 書庫面積 収蔵能力 74,911㎡ 32,185㎡ 450 万冊 72,942㎡ 45,861㎡ 750 万冊 59,311㎡ 23,926㎡ 600 万冊 6,671㎡ 1,159㎡ 40 万冊 6,090㎡ 1,955㎡ 65 万冊 〒 100-8924 東京都千代田区永田町 1-10-1 TEL 03-3581-2331(代表) ホームページ http://www.ndl.go.jp/ 平成 27 年 10 月