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【植物】中間トピック [PDFファイル/387KB]

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【植物】中間トピック [PDFファイル/387KB]
ふく し ま レッ ド リス ト ( 植物 ) 調査 中 間 報告 (H25~26 年 度 調 査)
■調査状況
維 管 束 植 物 班 ( 44 名 ) と 菌 類 班 ( 8 名 ) に わ か れ て 県 内 各 地 で 現 地 調 査 , 国 内 の 標 本
室 で 標 本 調 査 を 行 い ま し た 。維 管 束 植 物 は H25 に『 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク ふ く し ま 』
( 2002
年 発 行 ) で 未 評 価 と さ れ た 植 物 , H26 年 に 絶 滅 危 惧 I 類 と さ れ た 植 物 に つ い て 調 査 を 行
い ま し た 。 未 評 価 の 110 ヶ 所 の 生 育 地 , I 類 の 195 ヶ 所 の 生 育 地 に つ い て , 株 数 , 最 近
10 年 間 の 増 減 ,生 育 状 況 が 判 明 し ま し た 。こ れ ら の 情 報 を 元 に 種 類 ご と に 推 定 現 存 株 数 ,
最 近 10 年 間 の 減 少 率 を 算 出 し ,基 本 的 に 環 境 省 の 定 量 的 要 件 で ,そ れ が で き な い 場 合 は
定 性 的 要 件 で カ テ ゴ リ ー 判 定 を 行 い ま し た 。続 い て ,
「 判 定 会 」を 開 催 し ,こ の 判 定 を 専
門家が再検討(いわゆるエキスパート・ジャッジ)を行って,カテゴリーを確定しまし
た 。 旧 未 評 価 133 種 類 は 見 直 し の 結 果 IA 類 と IB 類 が 各 約 15%ず つ と な り , 実 際 に は 絶
滅のおそれの高い植物が多く含まれていたことが判明しました。
さらに,タンザワサカネランのように『レッドデータブックふくしま』作成後に県内
で 発 見 さ れ た 植 物 や , キ キ ョ ウ の よ う に 近 年 減 少 し た 植 物 な ど , 未 掲 載 の 植 物 約 100 種
類についてレッドリストに追加しました。
《トピック》
●津波跡地で今年も絶滅危惧植物が続々出現
津波跡地に塩生湿地や湿地が生じ,そこに絶滅危惧植物が繁茂していることが明らか
になっていますが。今年度の調査でも,新たな絶滅危惧植物が続々出現しました。相馬
市大浜の海岸防災林復旧事業予定地で発見され
た ツ ツ イ ト モ ( 福 島 県 新 レ ッ ド リ ス ト IA 類 予
定,旧レッドデータブック未掲載,環境省絶滅
危 惧 II 類 ) は , こ れ ま で 福 島 県 で 生 育 が 知 ら れ
ていなかった植物です。生育地の水たまりと周
辺の湿地は,保全のために残されることになり
ました。
(写真
ツツイトモの生育地
2014 年 9 月 30 日
黒沢高秀)
2014 年 8 月 3 日
加藤沙織)
●駒止湿原のオゼノサワトンボの発見
オ ゼ ノ サ ワ ト ン ボ ( 福 島 県 新 レ ッ ド リ ス ト II 類
予定,旧レッドデータブック未評価,環境省絶滅危
惧 II 類 ) が 駒 止 湿 原 で 発 見 さ れ ま し た 。 北 海 道 で
は海岸近くの湿原など数カ所で知られていますが,
本州では青森県の海岸近くの湿原と尾瀬に次いで 3
ヶ所目の生育地です。氷期の遺存と思われる植物
の,過去の分布の変遷を考える上で興味深い新産地
の発見です。
(写真
オゼノサワトンボ
●標本室は絶滅危惧植物情報の宝の山
日本では,植物に関してさく葉標本と呼ばれるいわ
ゆ る 「 押 し 葉 標 本 」 が , 1870 年 代 か ら 作 成 さ れ , 全 国
の主要な標本室に保管されています。その中には,遠
い昔に消滅してしまい,現在は生育していたことすら
誰も知らなかった植物があります。マメダオシ(福島
県新レッドリスト絶滅指定予定,旧レッドデータブッ
ク 未 掲 載 , 環 境 省 絶 滅 危 惧 IA 類 ) は マ メ 科 植 物 等 に
巻きついて寄生するつる植物ですが,日当たりの良い
野原や海岸の草地の消滅とともに全国的に姿を消して
います。福島県では知られていませんでしたが,東京
大 学 理 学 研 究 科 附 属 植 物 園 ( 小 石 川 植 物 園 ) に 1879 年
8 月 8 日に「會津」で採集された標本があることが調査
によりわかりました。
福 島 県 で 絶 滅 と 判 定 さ れ た 植 物 は 10 種 類 程 度 で 同 じ
方 法 で 判 定 し て い る 近 隣 の 山 形 県 や 群 馬 県 が 40 種 以 上
を指定しているのに較べて,とても少ないです。これは
他県のように県内の博物館などで標本を収集し,研究してこなかったため,遠い昔に消
滅してしまった植物の情報がないことも理由と思われます。このような植物の存在を明
らかにするためには,かろうじてまだ県内に残っている標本を早急に収集し,研究する
とともに,他県の標本室をめぐって,地道に標本調査を続けるしかなさそうです。
(写真 マメダオシの標本 根本秀一)
【コラム】絶滅危惧植物の植栽は遺伝的多様性を撹乱するので慎重に。
絶滅危惧種を植栽するということは,今でもしばしば美談として報道される。県内でもラン
の仲間やユリの仲間が地域おこしを兼ねて大々的に植栽されたり,海岸の復旧事業でシャリン
バ イ( 福 島 県 新 レ ッ ド リ ス ト 絶 滅 危 惧 II類 予 定 ,旧 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 絶 滅 危 惧 II類 )や ハ マ ナ
ス( 福 島 県 新 レ ッ ド リ ス ト 絶 滅 危 惧 IB類 予 定 ,旧 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 絶 滅 危 惧 II類 )な ど が 植 え
られることがある。遺伝的多様性を調べ,専門家の関与のもと慎重に行う場合以外, 絶滅危惧
植物の自生地やその付近での植栽は, 残念ながら自然破壊につながる可能性が高い。 よかれと
して行っていることが多いので,何ともやりきれないことである。 他所からの株では,その地
域にない形態や遺伝子を持った個体を導入する
ことになり,逸出したり交雑したりして,その
地域独特の形態や遺伝子構成が失われることに
つながるからである。その地域の株から増やし
たものであっても,かなり深い配慮をしないと
,特定の少数個体の子孫の割合を増やしてしま
う。一部の防災緑地では,ガイドラインを作成
し,原則的に絶滅危惧植物等は植えないことを
明記している。このような先進的な取り組みが
,県内に広まることを期待したい。
( 写 真 : 天 然 記 念 物 の 自 生 地 か ら 2km程 の 場 所 に 大 量 植 樹 さ れ た シ ャ リ ン バ イ
黒沢)
2015年 2月 1日
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