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つくば研修レポート

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つくば研修レポート
つくば研修レポート
1
はじめに
今回の研修の目的は、理数科目について興味を深め、科学研究の心構えと探究的態度を学び、大学進
学へのモチベーションを高め、学部学科選択の参考とすることであった。理数科サイエンスコースは全
員参加であったが、私が興味のある最先端の科学・技術の施設に訪れることができるということで、高
い意欲をもって自主的な活動を行えたので目的を達成出来たと感じる。
私が楽しみにしていたことは高エネルギー加速器研究機構(KEK)の見学である。もともと素粒子物
理学には興味があったので、実際に生の実験施設を見ることを期待していた。
2
研修のまとめ
① (独)宇宙航空研究開発研究機構(JAXA)筑波宇宙センター
○概要
↓宇宙服
JAXA は宇宙科学研究所(ISAS)
、航空宇宙技術研究所(NAL)、
宇宙開発事業団(NASDA)が 1 つになり、宇宙航空分野の基礎研究
から開発・利用までを一貫して行う機関である。
その中でも筑波宇宙センターは 1972 年に創立されて以来、宇宙開
発の最先端分野の研究・開発・試験が行われており、日本の宇宙開発
の中枢センターとして多彩な活動を行っている。
○学んだこと・発見したこと
船外活動を行う際に着る船外活動服は、空気がなく宇宙放射線が飛
び交う厳しい環境に耐えるため、14 層からなり重さは 120 ㎏にもな
る。
背中には酸素やバッテリーなどの生命維持装置が付いていて最長
で 8 時間活動できるようになっている。サイズが存在し、1 着 10 億円する。長時間に及ぶ船外活
動をする際は、紙おむつを履かなければならない。ちなみに日本は船外活動服をもっていない。ま
た、宇宙船の中で着る普段着にも、洗わなくても臭いにくい素
材でできていたり、人体は無重力では前傾姿勢になるので後ろ
の丈が長いなどの様々な工夫がある。
宇宙で行う研究としては、宇宙から地球の温室効果ガスの濃
度や植生、水流などの調査による地球環境問題についての研究
や、宇宙では地上の老化に似た現象が起こるので、それを利用
して医学の研究などが行われている。
↑人工衛星
○感想
人工衛星に張られている断熱材がマジックテープで張られていることには驚いた。他にも、国際
宇宙ステーションは肉眼で見ることができるなど、意外と宇宙を身近に感じた。
宇宙にはもともと興味があったので、ロケットや人工衛星など貴重な展示物を見て、さらに宇宙
への興味がわき、宇宙に行きたいという思いが強くなった。
② (独)理化学研究所(RIKEN)筑波研究所
○概要
RIKEN は科学技術に関する試験及び研究などを総合的に行うことにより、科学技術の水準向上を
図ることを目的とした日本で唯一の自然科学の総合研究所である。
筑波研究所では、遺伝子の操作技術を駆使した最先端の研究・開発、また、培養細胞・遺伝子に加
え、動植物個体・各リソースに関する情報の収集・保存・提供ならびにこれらに関する技術開発を行
っている。
○学んだこと・発見したこと
ノーベル化学賞受賞の野依良治さんが理事長を務める。
バイオリソースとは研究者が生物実験をするために必要な実験体のこと。バイオリソースセンター
ができる以前は、実験に使うリソースが世界で共通でない、研究者がいなくなった後のリソースの管
理が行われないなどの問題があったが、リソースの収集・保存・提供を一貫して行う施設ができたこ
とにより、これらの問題が解消された。1つ 1 万 5000 円でリソースを販売している。
DNA が持つ設計図によって、アミノ酸の並び順が決まり、立体構造をもつタンパク質ができる。
DNA が突然変異をおこすと、アミノ酸の並び順が変わり、タンパク質の立体構造に変化が起きる
ので、タンパク質が正しい機能を起こすことができなくなる。
○感想
RIKEN を紹介する映像を見たが、その中で野依良治さんの「科学研究は果てしなく続く知の旅」
「旅をすることに意味がある」という言葉が印象に残った。
③ 筑波大学 理工学群応用理工学類
○概要
応用理工学類では、1・2 年生までは物事の本質を見抜く力を養成するために、自然科学に関する
基礎的科目を学習する。3 年生になると、さまざまな、先端的研究分野の中から、自分にあった専門
(主専攻)を「応用物理」
「電子・量子工学」
「物性工学」
「物質・分子工学」から選ぶことができる。
従来の枠にとらわれない分野横断的な教育により、今後ますます工学分野の技術者や研究者に要求
される、応用力や創造力、柔軟に対応できる力を養成する。
○学んだこと・発見したこと
2 つの原子が近付くと、原子核の間に働く引力(核力)が
静電気的な反発力(クーロン力)に打ち勝って 1 つに融合
し、新しい原子核が生まれることがある(核融合反応)。核
融合反応がおこるように原子核同士を近づけるには 1 億度
以上の温度が必要になる。しかし、このような高温まで気体
の温度を上昇させると、原子は陽イオンと電子に分かれる
(電離)
。電離によって生じた荷電粒子を含む気体をプラズ
マと言うが、プラズマ中では粒子間に強い電磁力が働くので
様々な新しい現象が現れる。
プラズマ核融合では水素の同位体を燃料として、効率よく
電気エネルギーを取り出せる。
↑核融合実験装置
○感想
今回は応用理工学類の紹介を受けた後、磁石についての模擬講義を受け、「夏の 1 日体験教室」の
「未来のエネルギー源・プラズマ核融合の話と、核融合実験装置見学」に参加した。日本のエネルギ
ー自給率が低い状況を打破するために期待されているプラズマ核融合について興味深い話を詳しく
聞けた他、プラズマを利用した簡単な実験、大規模な実験装置を見学させていただき、とてもおもし
ろかった。
④ 高エネルギー加速器研究機構(KEK)
○概要
加速器(電子や陽子などの粒子を加速して高いエネルギーの状態を作り出す装置)を使って基礎科
学の研究を行い、自然界に働く法則や物質の基本構造、宇宙の起源、生命の根源を探究する。
○学んだこと・発見したこと
加速器では電磁波を使い粒子を加速し、高エネルギーにしたところで衝突させ、規模の小さいビッ
グバンを作ることで、宇宙の初期状態を再現している。
粒子は物質を構成する最小単位である。現在、さまざまな粒子が発見されているが、さらにそこに
も基本的な構造があるかもしれない。素粒子を 1 種類に、力を 1 種類に統一することが理想である。
粒子には電荷が逆である以外は性質が同じ反粒子が存在し、粒子と対生成、対消滅をする。しかし
ビッグバン時に粒子と同じ数だけできたはずの反粒
子が現在はどこにも存在していない(対称性の破れ)
。
現在 KEK の加速器である KEKB はスーパー
KEKB にアップグレード中である。スーパーKEKB
は KEKB の 40 倍の性能をもつ。また、この加速器
の能力向上に伴い、Belle 測定器はデータ収集のシス
テムを新しくし、並列化とパイプライン化によって
データ処理の効率化をするために BelleⅡ測定器に
変身する。BelleⅡ測定器は電子・陽電子の衝突事象
を 1 秒間に 3 万回以上測定する。
↑Belle 測定器(改造中)
○感想
予想以上に加速器の規模が大きく驚いた。しかもただ大きいだけでなく、とても小さな電子や陽電
子をナノスケールで制御できるというから、研究の内容も常識を超えていれば、研究のための機械も
常識を超えている。
新潟高校出身である鈴木厚人機構長による講義では、ビッグバン以前の宇宙の予想やひも理論につ
いての話など、まるで空想のようでとてもおもしろかった。
⑤ CYBERDYNE STUDIO(サイバーダインスタジオ)
○概要
CYBERDYNE 社の未来テクノロジー拠点。ロボットスーツ HAL や最先端福祉機器の展示・体験
施設として展開している。
HAL とは体に装着することによって身体機能を補助・増幅・拡張することができる世界初のサイ
ボーグ型ユニット。
○学んだこと・発見したこと
ロボットスーツを開発した筑波大学大学院の山海嘉之教授が代表取締
役 CEO を務めている。HAL は装着者の皮膚表面に張り付けられたセンサ
で微弱な生体電位信号(筋肉を動かそうとする信号)を読み取り、それを
もとにパワーユニットを制御し、装着者の筋肉の動きと一体的に関節を動
かす。
○感想
ロボットスーツを見ていると、未来にいるようでとても興奮した。
今まで工学にはそこまで興味がなかったが、知識や技術を応用して社会
の役に立てるようにするのは理学ではなく工学なので、工学もおもしろそ
うだと感じた。
3
↑ロボットスーツ HAL
研修の成果
・感動したこと
高エネルギー加速器研究機構には、物質の根源や宇宙の起源など基礎科学を研究している方々がたく
さんいらっしゃった。基礎科学はすぐに社会の利益や実用化に結びつくものではないが、それでも研究
を続ける科学者の方々の、科学的好奇心や子孫のために少しでも人類の知の財産を増やしておこうとい
う気持ちの大きさに感動した。また逆に、筑波大学の応用理工学類や CYBERDYNE 社には現在の社会
の問題を解決するために研究を行う方々がいらっしゃった。自分の知識や技術、研究の成果を社会に還
元しようとする科学者の方々の心意気にも感動した。
・全体を通しての感想
最近は、科学についての評論文を読むとその未来に冷たい視線が注がれているが、実際にこうして現
場に訪問してみると、たくさんの方々が科学の発展のために尽力されており、少しずつではあるが着実
に科学が進歩していることを感じることができた。そして、科学にはまだまだのびしろがあり、限界な
どには全く到達していないことが分かった。また、こうした施設で最先端の科学や技術に触れることが
できたので、科学に対する興味・関心が今まで以上に深まった。
・今後の自分にどのように生かしていくか
まず、科学への興味が深まったので、科学についての知的好奇心が強くなった。だから、現在の気持
ちを理数科目学習のモチベーションにし、さらに勉強に励みたいと思った。そして、科学誌を読むなど
して、今回訪問した施設はもちろん、世界の研究施設での研究成果にアンテナを張り、科学の現状につ
いて理解を深めておくようにしたい。今回の研修で学んだことを実生活に還元し、行動に移したときに
初めてこの研修の価値は生まれると思うので、これらを言葉や思いだけにせず、確実に行動に移してい
くようにしたい。
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