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吸収合併における営業許可の承継と登録免許税

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吸収合併における営業許可の承継と登録免許税
Vol. 94
考 察
吸収合併における
営業許可の承継と登録免許税
洛南支部
第1 はじめに
德 田 康 敏
しょうか。
先日、吸収合併と商号変更を同時申請するとい
う依頼を受けました。色々と調べていたときに、
2 明文規定が存在する場合
ふと、
「もし吸収合併したら、消滅会社で受けてい
営業許可の承継について、個別の行政法規で
た営業許可って存続会社にそのまま引き継がれる
規定が設けられていることがあります。この場
んかなぁ?そんなわけないわな」と、本件では全
合には、各規定に従って手続をとることで問題
く問題とならないことを考えていました。
「まぁ、
は解決できます。
問題にならへんしいいか」と思ったまま手続が完
例えば、飲食店を営まないX社(存続会社)が、
了し、今まで忘れていましたが、会報の原稿作成
飲食店を営むY社(消滅会社)を吸収合併し、
を機に思い出しましたので、一度勉強してみよう
Y社の飲食店営業を承継して新たに飲食店を営
と思いました。また、吸収合併と商号変更の同時
む場合を見てみます。本来、飲食店営業を営も
申請のときには、登録免許税についても注意しな
うとする者は、都道府県知事の許可を受ける必
ければならないことを思い出しましたので、これ
要があります(食品衛生法52条1項)
。ただ、同
も付け足して書いてみたいと思います。
53条1項の規定により、X社は、Y社の許可営
私自身、消化不良で曖昧になっている部分もあ
業者たる地位を承継しますので、改めて都道府
り、知識・理解不足を曝け出しております。この
県知事の許可を受ける必要はありません。なお、
点は、片目をつぶりながら読んでいただけると幸
X社は、遅滞なく、都道府県知事への届出をす
いです。
る必要はあります(同53条2項)。
同様に、風俗営業等の規制及び業務の適正化
第2 吸収合併における許可の承継
等に関する法律(風営法)7条の2や、興行場
1 消滅会社の権利義務の承継
法2条の2等にも、合併による許可の承継の規
吸収合併とは、二つ以上の当事会社が合併契
定が設けられています。
約を締結して行う行為であって、当事会社の一
部が解散し、
「解散会社(消滅会社)の権利義務」
3 明文規定が存在しない場合
の全部が清算手続を経ることなく存続会社に一
例えば、建設業法等のように、合併による営
般承継される効果を持つものをいいます。存続
業許可の承継の規定がない場合には、存続会社
会社に承継される「消滅会社の権利義務」とは、
は、消滅会社の許可を受けた地位を「消滅会社
消滅会社の資産や負債、取引先との契約等を指
の権利義務」として当然に承継するのでしょう
します。
か。
では、消滅会社で受けていた営業許可は、「消
営業許可等は、講学上の「行政行為」に該当
滅会社の権利義務」として存続会社に承継され
します。「行政行為」とは、行政の活動のうち、
るのでしょうか、それとも、承継されずに存続
具体的場合に直接法効果をもってなす行政の権
会社は新たに許可を受けなければならないので
力的行為をいいます。この「行政行為」を機能
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Vol. 94
の観点から分類すると、私人に対して作為・不
る場合には、申請件数が1件として、登録免許税
作為を命ずる命令行為、私人に対し法的地位を
が金3万円となります。
設定する形成行為、法律関係を確定させる確定
行為に分類されます。営業許可は、営業が自由
第4 おわりに
にできるという地位を法的に認め、本来の営業
色々と調べているうちに、だんだんと混乱して
の自由を回復するという形成行為に該当します。
きてしまい、本稿作成後も非常に不安が残ってお
この形成行為には、本来の自由を回復するとい
ります。この不安を解消すべく、これからも勉強
う法効果しかなく、権利付与や義務賦課という
し日々精進していきたいと思います。
法効果はありません。そうすると、営業許可に
よって、消滅会社に権利義務が生じることはあ
参考文献
りませんので、営業許可を受けた地位は、
「消滅
江頭憲冶郎(2015)
『株式会社法』
〔第6版〕有斐閣、
・
会社の権利義務」には含まれません。
843頁∼ 888頁
よって、営業許可等を付与する根拠法規に合
松井信憲(2015)『商業登記ハンドブック』〔第
・
併による承継の規定がない場合には、存続会社
3版〕530頁∼ 570頁
は、消滅会社の営業許可を受けた地位を承継す
金子登志雄他(2012)
『商業・法人登記300問』
〔初
・
ることができず、新たに自ら営業許可を受ける
版〕332頁∼ 371頁
必要があります。
鈴木龍介(2012)『商業・法人登記先例インデッ
・
クス』商事法務、186頁∼ 187頁
第3 登録免許税
塩野宏(2005)『行政法Ⅰ』〔第4版〕有斐閣、
・
存続会社が吸収合併により消滅会社の事業を承
100頁∼ 112頁
継し、新たにこの事業を行う場合には、存続会社
桜井敬子・橋本博之(2013)『行政法』
〔第4版〕
・
において目的変更の登記をする必要があります。
弘文堂、77頁∼ 88頁
また、吸収合併を機に、存続会社の商号を変更し
宇賀克也(2007)
『行政法概説Ⅰ 行政法総論』
〔第
・
て、心機一転を図るということもあると思います。
2版〕有斐閣、74頁∼ 99頁、273頁∼ 28 2頁
この場合、合併と同時に目的変更や商号変更の登
記を申請するということがあります。
先例によれば、合併と同時にされた定款の変更
による登記(商号変更、目的変更、発行可能株式
総数の変更等)については、それぞれ別途登録免
許税が加算されるとされています(昭34・1・8
民事四発第2号民事局第四課長心得回答)
。登録免
許税法上の課税根拠が、吸収合併(登録免許税法
別表第一24(1)へ)と、登記事項の変更(同ツ)
とで異なるため、当然の結論であるといえます。
ただ、吸収合併における存続会社の変更登記に
おいて「資本金が増加しない」場合には、登記事
項の変更として、登録免許税法別表第一24(1)
ツが適用されます。そうすると、登録免許税法上
の課税根拠が、目的変更・商号変更等と同じにな
ります。よって、
「資本金が増加しない」吸収合併
登記と、商号変更・目的変更登記を同時に申請す
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