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池田高校における観点別学習状況の評価導入の取組 北海道池田高等
池田高校における観点別学習状況の評価導入の取組 北海道池田高等学校 教諭 村中 譜佐朗 1 はじめに 池田高校は平成15年度から総合学科に転換し、今年度は13期生を迎えている。総合学科スタ ート時は4間口だったが、現在は2間口となっている。 小規模総合学科である本校の課題は、2間口であっても学科の特色を最大限に生かした教育課程 の充実と、本校教職員の共通理解となっている基礎学力の定着と学習意欲の向上である。そこで、 小規模総合学科の新たな魅力づくり推進事業において、実践テーマを「確かな学力の育成等に向け た教育課程や指導方法の改善・取組」とし、研究主題は「小規模総合学科における授業改善と教育 課程改善に向けた取組」とした。具体的には、観点別学習状況の評価を推進し授業改善を図る取組 と、本校の新たな教育課程を編成する取組の2本柱で事業を実施することを決定した。今回は、そ の取組の一つである池田高校における観点別学習状況の評価推進の取組について報告する。 2 学校概要 (1)生徒数 1年66名、2年73名、3年50名、計189名 (2)クラス数 1年2クラス、2年2クラス、3年3クラス 計6クラス (3)出身中学校 池田、豊頃、浦幌、幕別、音更、帯広、十勝管外 (4)系列 人文・国際系列、理数・自然科学系列、ビジネスメディア系列 健康・スポーツ系列、生活・芸術系列 (5)科目数 3 1年 13科目、2年 35科目、3年 39科目 観点別学習状況の評価導入の取組 本校では、基礎学力の定着と学習意欲の向上が最大の課題となっている。そのためには教育課程 の充実も必要だが、各授業が基礎学力の定着と学習意欲の向上につながるものでなければならない。 これまで授業改善として「授業評価アンケート」、「公開授業週間」を実施してきた。今年度はそ の課題を克服するために「小規模総合学科等の新たな魅力づくり推進事業」において「観点別学習 状況の評価」による授業改善をスタートさせた。 (1)観点別学習状況の評価による授業改善 授業改善を「観点別学習状況の評価」の観点から実施するため、校内研修、視察研修、公開授 業週間などで研修を進めた。 ① 校内研修(6月実施、十勝教育局高等学校教育指導班主査を講師に説明・演習を行った。) 学力の三要素、学力の三要素と評価の観点、授業改善のため単元の指導計画作成 ② 視察研修(7月、A高等学校) A高等学校における観点別学習状況の評価導入の取組について視察研修を行った。 A高校では教務部が組織的に「観点別学習状況の評価」推進の、綿密な計画とその実施 を行っていた。 ア 「観点別学習状況の評価」を導入するための取組 (ア)平成24年度、校内研修(1月)、「新学習指導要領」への移行準備として「評価につ いて」研修 (イ)平成25年度、校内研修(8月)、 「観点別評価」について研修 (観点別評価の疑問・問題点 A高校評価の問題点) (ウ)平成26年度、校内研修(8月)、 「観点別評価」の具体的な導入手順について研修 (単位制5年を終えて学習指導の振り返りと授業改善のための 観点別評価) イ 実施の状況 (ア) 「年間学習指導計画」に観点欄作成 (イ)定期試験問題に観点を明記、答案に観点別の小計を作成依頼 (ウ) 「観点別評価」による評価・評定づけを各教科で必ず1科目は実施するよう依頼 ウ 成果 (ア)年間学習指導計画が全科目提出。観点が明記された。 (イ)学力向上、授業改善の方向が見えてきた。 (ウ)思考力・判断力・表現力を向上させるアクティブラーニングを意識した授業転換の方 向が見えてきた。 エ 課題 (ア) 「年間学習指導計画」に観点欄を作成したが、評価と指導の対応が十分ではない。 (イ)定期試験に観点を明記するよう依頼したがすべての科目で実施にはいたっていない。 (ウ)具体的な評価・評定をつける取組が不足している。 オ 視察の感想 観点別学習状況の評価を実施するため、教務部が丁寧に準備や説明をして進めていると 感じた。また、観点別学習状況の評価に対する準備不足から、取り組み状況には各教科・ 担当でばらつきがあることも伺った。視察から観点別学習状況の評価を進めていくために は、スモールステップで進めていくことが良いと感じた。そこで、本校では、まず観点別 の学習状況を意図的に作り出すことから評価の研修を積むことが良いのではないかと方向 づけた。 ③ 公開授業週間(10月3週目実施) ア 実施方法 (ア)観点別学習状況について、各教科4観点~5観点のうち、1時間の中で 1 つの観点に 焦点を当て研究授業を行う。 (イ)なるべく生徒が主体的に活動するようなものを考える。 (ウ)実施後、どんな実践をしたのか簡単な用紙に記入し、教務に提出。 事前に指導案を作成した場合は、指導案を提出。 (エ)公開授業週間のうち、2コマの時間で実施。 (オ)週間前にどの授業で実施するか決定し、掲示する時間割の該当授業に○をつける。 イ 教務への提出用紙 (ウ)実施後のアンケート ・評価(成績)に結びつけていくのが、どうしたらいいの・・・という感じです。△ ・このテーマは良いとおもいます。私の場合は、結局いつもの授業でしたが、このような 形でたまに意識する機会が出来ると思います。○ ・観点をテーマに授業を導入展開していることは十分に考えられたが、それを評価へ活か すという部分にはまだ到達できていなかったので今後の課題にしたい。△ ・私自身がまだ観点別学習状況をくわしく理解できていないので、観点を評価する段階ま でにいたっていません。シラバスをもう一度見直していく必要があると感じました。△ ・意識して授業をすることができました。また、見学の際も見る観点をしぼって見られま した。○ ・この時間はこの観点のみとして授業を行うと、少し心に余裕が生まれました。毎回評価 するのは確かに大変だと思います。○ ・他教科の評価の観点がよくわかりませんでした。勉強不足でした。△ ・意識して取り組めたので、テーマが決まっていたのが良かったです。○ ・普段と変わらぬ授業に中から観点別に評価できるものは何かを考えて授業を実施した。 評価の新しい見方を感じた。○ ・日常的にあまり意識していませんでしたが、いざ実施するとなると、生徒の人数が多く なるほど、個人評価が難しくなると思いました。評価を記録すると授業の流れを止めて しまうし、記憶に頼るのは正しい評価になりにくいからです。△ ・テーマがあることはとても良いと思います。○ ・ 「基準」がはっきり設定されないまま、授業者としては「規準」をきめて展開しなければ ならず、根本的には観点別が理解されないままの授業となった。× ・見学者としては、授業者の意図を知った上で授業をみたい(ただ授業者の負担がひとつ 増える・・・)× ・いつもとちがう工夫を考えたことで、自分の普段の授業の振り返りにもなりました。自 分の授業の幅を広げる良い機会になりました。○ ○・・・今回の研修に肯定的 ×・・・今回の研修に否定的 △・・・観点別学習状況の評価への悩み ④視察研修(11月、B高等学校) B高等学校では、同規模の教育課程の編成と観点別学習状況の評価について視察研修を 行った。 ア 観点別学習状況の評価の状況 (ア) 今年度からシラバス様式を一部改定、教員が評価の観点の意識を高められる工夫。 (イ) 今年度、3回の研修実施 1回目 評価のあり方と方法各教科1科目以上取り組む 2回目 各教科から実践中間報告 3回目 各教科からの実践とまとめ イ 観点別学習状況の評価の課題 各教科に任せる形で観点別学習状況の評価を進めているため、各教科、各教員に取り 組みの差がある。 ウ 視察の感想 観点別学習状況の評価は、今年度から各教科1科目以上取り組むとして実施。実施状 況は各教科で差があるようだが実施することで理解が進み改善されているようであった。 ⑤校内研修(2月) 小規模総合学科研究事業のまとめとして実施。年間学習指導計画に新たに評価規準の欄を 加える。校内研修では評価規準について、また、まとまりごとの評価規準の作成方法を説明。 来年度に観点別学習状況の評価を各担当で少しでも進められるように計画した。 学習指導要領か ら 国立教育政策研 究所「評価規準 の作成、評価方 法等の工夫改善 のための参考資 料」を参考 年間学習計画の「単元名」や「具体的な学習内容」 の欄は、現在のシラバスのものを活用する。 新たな欄で「評価規準」。まとまりごとの評価規 準の作成 4 おわりに 本校の現在の課題である基礎学力定着と学習意欲向上を実践していくにあたり、今回の推進事 業は有意義なものであった。 特に2校の視察は、観点別学習状況の評価についての取組を研修することができ大変参考にな った。また、これまで本校は組織としてほとんど取組むことができていなかったが、今年度は教 務部が主導して研修を行い、組織的に取組むことができた。今後は、各教員が観点別学習状況の 評価をより充実したものにするためシラバスの改善や年間学習指導計画の充実も含めて実践を行 っていくこと、また、観点別学習状況の評価の観点から授業改善を進められるよう教務部が新た な取組を提案することが必要と考える。