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資料8 風力発電施設と景観に関するヒアリング 議事概要

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資料8 風力発電施設と景観に関するヒアリング 議事概要
資料8
風力発電施設と景観に関するヒアリング
議事概要 (発言順)
※各項目のA,Bはその項目での発言順を指すものであり、同一委員を指すものではない。
○(株)ユーラスエナジージャパン 事業開発第二部長 高畠 哲 氏
【発表要旨】
・
(株)ユーラスエナジージャパンが所属している日本風力発電協会では、自主規制の実施徹
底により現在の状況の改善を図るため、新たに風力発電環境影響評価規程を策定中。
・NEDO マニュアルでは事業者によって中身の解釈が異なることがあったため、そのようなこ
とがないように意思統一を図っていく考え。
・従来の NEDO マニュアルの手続に追加して、アセス手続開始及び手続終了直前において地
域住民の同意を得るなど、地域住民とのコミュニケーションの徹底を図る。
・NEDO マニュアルでは、景観を評価項目として「選定することが望ましい」とされていたが、
規程では「明らかに影響が認められない場合を除き、評価項目として選定する。
」とする。
・調査は、主要な眺望点、景観資源の状況、主要な眺望景観の状況について行い、景観資源の
予測は、完成予想図やフォトモンタージュを利用して視覚的な表現方法で行う。
・風力発電は風通しのよい場所に建設するために、周りから見通しのよいところに建てること
になる。施設の大型化に伴い遠景を含め様々な地点から視認され、景観に対する配慮の必要
性が高まっていると認識しているが、景観は主観的な議論がされることが多く、評価が難し
い。
・島根県の出雲市では、当初計画では隣接する松江市の宍道湖夕日スポットから視認される6
基について、視認されない位置に移動させた。
・青森県の岩屋では、建設直後は地肌が露出していたが、自然と調和し、景観にも配慮するよ
う緑化を実施した。
・国定公園内に設置した例では、ある眺望点からは自然景観豊かな地域に競合すると判断され
る可能性があるが、別の眺望点からは他の大型施設等が背景にあるという状況。
・福島県郡山布引では、眺望の妨げとならないよう展望台から風車まで一定の距離を確保する
とともに、道路脇に設置する送電線も、周辺と調和するよう柱を濃茶色とした。
・最近ではテレビ CM でも風力発電所が多数とりあげられ、景観との共生を図っている。今後
も、景観との共生を図り、風力発電事業を実施したい。
【質疑】
(A検討員)可視域を分析すると、周辺市町村とも検討しなければならない部分が出てくるが、
周辺市町村との協議について、どう考えるか。風力発電設備のデザインの配慮についてど
う考えるか。ランダム配置となる要因は、複数事業の結果によることが多いと思われるが、
複数事業の場合はどのような配慮をしていくべきと考えているか。
(B検討員)国立公園等の中に建設された場合の建設経緯を教えてほしい。
(C検討員)電柱を濃茶色にし、周囲の景観に調和させた例があったが、このことによってバー
ドストライクの危険性はないのか。
(D検討員)景観とバードストライクについて、相容れない面があるが、この点についてどうか。
1
30km 以上離れた場所から視認でき、近づくとみえないといった郡山布引のような事例が散
見されるが、眺望点を設定するに当たっての考え方を教えていただきたい。
(E検討員)緑化に当たり、どういう目標設定をし、そのためにどういう配慮をしているか。
【質疑に対する発表者回答】
 新出雲の事例でも、出雲市に建設したものだが、眺望点について隣の松江市や県からも聞い
ている。眺望点は地元自治体から聴取して選定している。
 風車のデザインについては、風車メーカーに聞いてから回答したいが、基本的には今の形を
大幅に変更することは難しいと思う。
 1事業者としては当然景観に配慮するが、事業者が複数にわたったときについては、協会で
検討してから回答したい。
 国定公園内に設置した熊本県の例では、風車の位置を稜線から下げて、主要な眺望点から見
えにくくしたこと、総容量は変えずに、1基当たりの容量を上げて基数を減らしたことで景
観へ配慮した。
 バードストライクと景観の関係については、どちらかを優先すべきということではなく、極
力両方の影響を減らせるよう総合的に配慮すべきことと認識している。
 郡山布引の事例は、当方が設置したものではないため、協会で検討してから回答したい。
 緑化に当たっての配慮については、協会で検討してから回答したい。
【検討員からの追加コメント】
(D検討員)眺望点の設定は地元市町村との協議で設定しているとのことなので、郡山布引の事
例についての回答は不要。
2
○島根県環境生活部環境政策課 課長 松浦 芳彦 氏
【発表要旨】
・島根県には、貴重な景観を守り育てることにより豊かさを実感できる県土づくりを目的とし
たふるさと島根の景観づくり条例があり、大規模行為は届出が必要となっている。
・出雲市に計画された新出雲ウィンドファームによる風力発電施設については、県の景観条例
に基づく事業者からの届出に先立ち、平成 18 年 1 月に事前協議書が県へ提出された。
・風力発電施設の規模・数量が大きい、周辺自治体への影響、関係団体からの意見を考慮し、
慎重な判断を要することから、平成 18 年 3 月より景観審議会を開催。
・風車が設置される出雲市、周辺市町である松江市及び斐川町へ意見照会したところ、出雲市
は影響なし、松江市が夕日スポットから見えないように指導を、斐川町からは関係団体との
合意形成をという意見が提出された。
・現地調査及び4回の審議を踏まえ、平成 18 年 7 月、審議会から①計画地は景観条例に基づ
く宍道湖景観形成地域の後背地にあたり歴史的景観の観点からも特に配慮すべき地域とし
て景観への影響が強く懸念される、②施設の位置や規模、配置について見直しを行う必要が
ある、特に夕日スポットから視認される風車は十分検討が必要。といった答申をいただいた。
・事業者の事前協議に対する県の回答としては、①宍道湖景観形成地域の景観に与える影響を
限りなく小さくするよう施設の位置や規模、配置を十分検討していただきたい、尐なくとも
夕日スポットから見える6基は視認できないようにしてほしい、②作業道法面の緑化等、③
運転終了後の速やかな撤去、という3つの助言・指導を行った。
・事業者においては、①夕日スポットから見えないようタワーの移動や高さを低く、②緑化に
ついても配慮、③運転終了後の撤去について関係者と覚書を締結、といった対応がなされた。
・本件については、景観だけではなく、CO2 削減、地域振興、地元市や隣接市町からの意見、
県議会からの意見等の様々な観点を総合的に勘案して判断したと考えている。
【質疑】
(座長)島根県は温暖化対策、地域振興も含めて総合的判断という説明があったが、この点は山
形県では考慮されなかったのか。島根県は、コメントあるか。
(A検討員)複合事業により、基数が増え、圧迫感が増すということはあるのではないか。かた
まりとして立地する場合に、目安となる上限値のようなものがあるか見解を伺いたい。ま
た、先行的に設置された風車の近くに、また別の事業として風車が設置される場合、既存
施設も含めて総合的に環境影響を評価した事例があるか。
【質疑に対する発表者回答】
 松江市は夕日スポットからの景観を一番大切にした。出雲市は、工事道路が林道にも使用で
きるといった地域振興の観点もある中で、歴史的景観に関しては、地元から見えるが、緑化
等色々な配慮がなされ、建設反対とはならなかった。このように様々な観点から、このよう
な結果に至った。
 島根県では既存施設の近くに設置された事例がないため回答できない。
【検討員からの追加コメント】
(B検討員)福島県も既存施設の近くに設置された事例はないが、1つの山から左右90度の範
囲に2箇所風車が設置されている事例はある。
3
○山形県生活環境部みどり自然課 課長補佐 渡邊 潔 氏
【発表要旨】
・県立自然公園普通地域内の歴史的な背景のあるクロマツ砂防林に風車を設置する計画につい
て、自然公園条例に基づく届出に先立ち、県の審査指針に基づき平成 21 年 6 月に事業者か
ら事前協議を受けた。
・計画地は、平成 12 年にも風車の設置計画があったが、酒田市や市民の意見を踏まえ、自然
公園条例に基づき中止命令が出されていた地域。
・今回の事業計画は、高さ 119m、2,250kW の風車8基を海岸沿いの砂丘地から砂草地に約2km
弱の延長で設置する計画であったが、シミュレーションの結果、相当威圧感があると想定さ
れた。
・審査に当たり、
「建設には慎重を期すべき」という酒田市の意見等を参考にして、県の環境
審議会自然環境部会に諮ったところ、景観の観点から設置を認めないといった意見が大勢を
占め、風致景観に著しい影響を及ぼすため認められないとされた。
・理由は、長い年月(300 年)と膨大な労力を費やして造成され、微妙な生態系のバランスの
上に成り立つ「砂丘植生とクロマツ林」の景観の維持を図るうえで重大な支障を及ぼすおそ
れがある等。
・本案件は、地域住民・自治体の意見を踏まえ、県において総合的な観点から検討したもので、
関係者すべての意見を踏まえ、地域の重要な景観保全につなげた事例と考えている。
・計画中止となったのは最上川の南側であるが、最上川の北側には風力施設が建設されている。
風車が景観に与える影響について今後とも注視していきたい。
【質疑】
(A検討員)最上川の北側と南側ではどういう議論・状況の違いがあったのか。
(座長)島根県は温暖化対策、地域振興も含めて総合的判断という説明があったが、この点は山
形県では考慮されなかったのか。
(B検討員)複合事業により、基数が増え、圧迫感が増すということはあるのではないか。かた
まりとして立地する場合に、目安となる上限値のようなものがあるか見解を伺いたい。ま
た、先行的に設置された風車の近くに、また別の事業として風車が設置される場合、既存
施設も含めて総合的に環境影響を評価した事例があるか。
【質疑に対する発表者回答】
 川の北側と南側の違いは3点ある。1点目は、南側は自然公園内、北側は当初、自然公園内
に設置要望があったが、それを避けて設置したこと。2点目は、南側の酒田市の住民意見は
NO、北側の遊佐町は一応 OK であったこと。3点目は、酒田市は景観審議会があるが、遊佐町
はないため充分な審議がなされない部分があったかもしれないこと。この3点からこのよう
な結果となったと推察する。
 自然エネルギーの導入が全くだめということではなく、今回、計画された場所がどうしても
設置できない場所であったということだと理解している。
 先ほど報告した事例では、時期を変えて2回設置要望があったがいずれも認められなかった。
譲れない場所は譲れないということではないか。
4
○東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 下村 彰男 氏
【発表要旨】
・景観評価は、論理的に解を得ることができるもの。立脚点を明確にして、価値軸を適切に設
定すれば、共通した反応を得ることができる。
・調和性に関しては、山などの背景と鉄塔などの主対象とのスケール比が大きくなるほど、景
観が主対象によりディスターブされているとの評価が多くなる。
・背景が緑の場合、低明度、低彩度でないと調和がとれにくい。
・距離や大きさよりも角度が重要なポイントである。対象をはっきり見ることのできる角度は
1~2°(100m 位の構造物だとだいたい5~6km)以上と言われている。
・人は景観をぼんやりと平面的に見ているのではなく、注視点から得られる情報を統合して視
覚像を構成している。注視点が集まりやすいという意味でスカイラインは目立ちやすい。
・人が首を動かさずに注視点を飛ばせる角度は限定されている(おおむね水平角 20°、垂直角
10°)
。首を動かさないと上が見えないものには迫力や圧迫感を感じる。
・景観の影響評価は諸要素との関係で決まり、特に主対象と対象場との関係が重要なポイント
となる。その関係として調和性が問題となる視覚論的な話と、目立つことによる景観の意味
の変容が地域住民に許容されるかどうかが問題となる意味論的な話がある。
・自然公園や重要文化的景観の選定地域では、その保全が国民から負託されているため、意味
論以前の問題であり、視覚上の調和(同化の程度)により判断される。
・酒田や出雲の例は、歴史的・文化的な要素が含まれており、視覚論のみならず意味論的な検
討を行い結論が導かれたものである。
・景観の影響の検討は専門的な知見が必要であり、専門家を加えしっかりとした影響評価を行
い、それをもとに住民を含めて地元とのコミュニケーションを十分にとって結論を導く必要
がある。
【質疑】
(A検討員)景観に関わる影響評価の共通因子の指標など共通的に言えるものがあれば教えてい
ただきたい。
(B検討員)景観としての鳥のいる景色を考慮する必要があると思うがどうか。
(座長)景観は、客観的・科学的に分析可能であるという説明は理解できたが、どこから見るか、
例えば、首を動かさなければ見られない場所とそうでない場所もあるので、その点での相対
性は避けがたいという理解でよいか。
(C検討員)風車は動くため目立つのではないか、という印象を持っている。
【質疑に対する発表者回答】
 景観の評価の共通指標としては、角度に関するものは、熟視角が1~2°という知見を含め、
一般的な視覚特性と結びついており共通指標として扱うことができる。その他の色彩、大き
さ、形状、輝度など、主対象の属性に関する指標については、景観が複数の要素の関係で成
立しているという性格上、どれも相対的な評価となる。
 また、人間尺度も定量基準としての性格を持っており、区画街路は 100m を超えると非常に疲
れて見える、高さは 30m を超えるとかなりスケールを逸脱しているという認識がある。
 鳥のいる風景については、地域にとって鳥との関わりがどうかということがポイント。歴史
的に関わりが深く生活文化として地域に位置づけられるケースでは、慎重に扱う必要がある。
 景観は視点と対象との関係で成立しており、視点による相対性は生じる。しかしながら視点
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の重要性も評価でき、人が多く集まるか、多くの視対象をしっかり見られるか、シンボルが
適切な形で見られるかなどの項目によって、どういう視点なのかも評価される。
 風景の絵画を見せると動く人や風で揺れる木々など動きがありそうなところに注視点が集ま
るので、静止しているものよりは、動きがあるものが目立つと推測はできる。
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