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自動車におけるシックハウス予防調査報告書
平成17年度 生活科学研究ネットワーク推進事業 自動車におけるシックハウス予防調査報告書 平成18年 5月 神奈川県県民部消費生活課 目 Ⅰ 次 調査の概要 1 目的 1 2 調査期間 1 3 共同研究機関 1 4 調査内容 1 Ⅱ 調査結果 1 自動車における揮発性有機化合物の使用実態 (1) 自動車の利用実態 (2) 揮発性有機化合物を使用している可能性のある部品 2 研究機関による分析調査 (1) 分析機関 (2) 対象とした自動車 (3)分析した物質 (4)分析方法 (5)分析結果 3 Ⅲ Ⅳ アンケート調査結果 考察 まとめ 1 調査結果 2 注意事項 3 相談窓口(健康被害の連絡、相談) 2 3 8 9 10 Ⅰ 調査の概要 1 目的 最近、住居で発生するいわゆるシックハウス症候群が問題となっているが、そ の原因物質のひとつとして揮発性有機化合物が挙げられている。 一方、住居と同様に自動車室内は、プラスチックや合成皮革など様々な材料 で構成されており、また塗料や接着剤等の化学物質も一部使用されている。そ のため、揮発性有機化合物が自動車室内においても発生する可能性が心配さ れるところである。 そこで、自動車室内の揮発性有機化合物を調査し、今後の予防対策の一助 とすることにより、安全で安心できる消費生活の実現を図る。 2 調査期間 平成17年4月から平成18年3月まで 3 共同研究機関 神奈川県衛生研究所 4 調査内容 (1) 対象 自動車(国産、外国産、自家用、営業用を問わない) (2) 調査事項 ア アンケート調査 調査研究にあたり消費生活eモニターを対象に、自動車についての 実態等について調査を実施した。 イ 自動車における揮発性有機化合物の使用実態調査 協力を得られた消費生活eモニターの自動車について室内にどのよ うな揮発性有機化合物が使用されているかを調査した。 ウ 分析調査 揮発性有機化合物について分析した。 -1- Ⅱ 調査結果 1 自動車における揮発性有機化合物の使用実態 (1) 自動車の利用実態 平成17年度における、バス、トラックなどを含む四輪車の国内生産台 数は1,000万台を超える *1 と言われていることから、自動車を利用する 人がかなりの数に上ると思われる。 消費生活eモニターを対象に実施したアンケート調査によると、自分 又は家族がマイカーを所有している人は81.2パーセントであった。 (2)揮発性有機化合物を使用している可能性のある部品 自動車は2万~3万点の部品で組み立てられている *1 といわれている。 しかしながら揮発性有機化合物が発生する可能性のあるものはそのうち のごくわずかと考えられる。以下にそれを挙げてみた。 (*1:日本自動車工業会ホームページ) 自動車部品 部 品 名 車室内の内張り用 繊維 発生する可能性のある揮発性有機化合物 ホルムアルデヒド 合成皮革 ホルムアルデヒド 皮革 ホルムアルデヒド 塗料 トルエン、キシレン 自動車部品以外のもの(外から持ち込まれる可能性のあるもの) 品 名 発生する可能性のある揮発性有機化合物 タバコの煙*2 ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、 トルエン ガソリン *3 トルエン、キシレン、エチルベンゼン 防虫剤 パラジクロロベンゼン 衣料品 ホルムアルデヒド (*2:平成11-12年度 たばこ煙の成分分析について(概要)厚生労働省) (*3:環境省ホームページ) -2- 2 研究機関による分析調査 (1) 分析機関 神奈川県衛生研究所 (2) 対象とした自動車 国産9件、外国産1件の自動車を対象とした。 メーカー名 調査件数 トヨタ 4 日産 3 ダイハツ 1 スズキ 1 外国メーカー 1 計 10 -3- (3) 分析した物質 以下の揮発性有機化合物7件について分析を実施した。 分析物質 1 物 ホルムアルデヒド 質 説 明 生体への影響 塗料、合板の接着剤などに使 眼 、 鼻 、 呼 吸 器 用。防縮等のため衣類繊維に使 な ど を 刺 激 。 皮 用。自動車の排気ガスやたばこ 膚 炎 の 原 因 と な の煙に含まれる。 2 トルエン ることもある。 油性塗料や接着剤などの溶剤と 中枢神経へ影響 して使われる。接着剤や塗料の うすめ液として使用。 3 キシレン 油性塗料や接着剤、インキなど 眼 、 の ど な ど を の溶剤として使用される。ガソ 刺 激 、 中 枢 神 経 リンや灯油にも含まれる。 4 に影響 パ ラ ジ ク ロ ロ ベ ン 衣類の防虫剤やトイレの防臭剤 動 物 実 験 に お け ゼン に使用。 る肝臓や腎臓な どへの影響 5 エチルベンゼン 塗料や接着剤、インキなどの溶 動 物 実 験 に お け 剤として使用されている混合キ る 肝 臓 や 腎 臓 へ シレンの中の一成分。ガソリン の影響 にも含まれる。 6 スチレン 合成ゴム、塗料、発泡スチロー 動 物 実 験 に お け ルの原料として使用。 る脳や肝臓への 影響 7 アセトアルデヒド 自動車の排気ガスやたばこの煙 動 物 実 験 に お け に含まれる。合板の接着剤に使 る鼻への影響 用される。 (参照:平成14年2月7日厚生労働省通知、環境省ホームページ) -4- (4) 分析方法 以下の方法により分析し確認検査を実施した。 車のドアおよび窓を閉鎖し、エンジン停止状態で主として夜間に8時間 以上サンプリングを行った。 ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド:ポンプによる気体の吸引等を行 わないパッシブサンプラー(DSD-DNPH)により捕捉し、アセトニトリル で抽出、液体クロマトグラフで分析した。 その他の揮発性有機化合物:パッシブサンプラー(VOC-SD)から吸着 剤を取り出し、二硫化炭素で抽出し、ガスクロマトグラフ質量分析計によ り分析した。 なお、車室内の数値と比較するため、車室外(外気)も同時に分析した。 (5) 分析結果 自動車室内における揮発性有機化合物調査結果は以下の表のとおり。 測定時期 物質名 夏 冬 検出率(%) 平均値 (注1) 3 検出率(%) (参考) 平均値 3 (μg/m ) 室内濃度 (μg/m ) 指針値 ホルムアルデヒド 100 46 40 <5(注2) 100 アセトアルデヒド 100 26 100 10 48 トルエン 100 102 100 28 260 キシレン 100 72 90 12 870 パラジクロロベンゼン 70 27 20 11 240 エチルベンゼン 90 19 20 0 3800 スチレン 20 <5 0 0 220 平均温度(℃) 28.0 5.7 平均測定時間(h) 14.0 17.4 平均自動車使用月数 18.8 24 注1:検出率とは10検体中どれくらいの割合で検出されたかを示す 注2:<5という検査データは0として算出した -5- ア 揮発性有機化合物の検出状況 夏(平均値) 冬(平均値) 自動車室内での揮発性有機化合物検出状況 ホルムアルデヒド 46 0 アセトアルデヒド 26 10 トルエン キシレン 12 パラジクロロベンゼン 11 エチルベンゼン 0 0 0 スチレン 0 イ 102 28 72 27 19 20 40 60 80 100 120 (μg/m3) 自動車使用月数と揮発性有機化合物検出状況 以下の図のとおりであった。図は、夏における自動車室内トルエンの検 出状況を以下に示す。 ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、キシレンも同様な傾向を示した。 自動車使用月数とトルエン濃度 700 3 濃度(μg/m ) 600 500 400 300 200 100 0 0 10 20 30 自動車使用月数 -6- 40 50 ○ 今回の調査においては10件中、すべてにおいて検出されているのが自動車 部品に含まれていると思われるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トル エン、キシレンであった。 ○ 厚生労働省は、住居室内において安全と言われる揮発性有機化合物濃度の 目安を室内濃度指針値として示している。この指針値を超えたのは、測定時 期の夏に1台で、物質はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエンの 3物質であった。 ○ ○ 自動車使用月数による明確な違いは見られなかった。 夏(自動車室内平均温度28℃)における揮発性有機化合物の検出値は、 冬(自動車室内平均温度5.7℃)におけるものよりも全体的に高い傾向が 見られた。 なお、すべての項目で車室外(外気)より車室内が高い値を示した。 -7- 3 アンケート調査結果 「自動車におけるシックハウス予防調査」 平成17年6月24日から7月4日まで、消費生活eモニター200名を対象に、自動 車におけるシックハウスについての実態や意識を調査したところ、その結果は 以下のとおりであった。回収191名(回収率95.5%) 問1 「シックハウス」という言葉を知っていたかをたずねたところ「知って いた」が95.3%、「知らなかった」が3.7% 問2 今までに自動車に乗った時に臭い(ガソリンの臭いも含む)が気になった ことがあるかをたずねたところ「ある」が72.3%、「ない」が15.2% 問3 (1) どのような状況で臭いを感じたかをたずねたところ「新車に乗った直 後」が59.4%、「車(購入後6ヶ月以上)に乗った時」が18.1% (2) 車内の臭い対策をしたことがあるかをたずねたところ「ある(脱臭剤、 換気等)」が80.1% (3) いつ頃から、臭いが気にならなくなったかをたずねたところ「乗り始 めて6ヶ月以内で慣れた」が48.6%、「乗り始めて1年程度で慣れた」 が29.5% (4) 乗車して体調に異常を起こしたことがあるかをたずねたところ「な い」が81.6%、「ある」が18.4% (5) どのような症状だったかたずねたところ「吐き気」が86.2%、「頭 痛」が48.3%(複数回答可) 問4 自動車をどのような時に利用するかをたずねたところ「買い物」が39.8%、 「レジャー」が33.5% 問5 自動車に乗っている時間は一日平均どれくらいかたずねたところ「30分 ~1時間未満」が31.9%、「自動車に乗ることはほとんどない」が28.8% 問6 自分又は家族でマイカー(自家用車)を持っているかたずねたところ 「持っている」が81.2%、「持っていない」が18.8% -8- 問7 問6で「持っている」と回答された方に、エネルギー節約や環境に配慮 して、マイカーを利用する際はどのようなことに心がけているかをたずね たところ「短い距離の移動に際しては、なるべく徒歩や自転車を利用する ようにしている」が60.6%、「急発進・空ぶかしの抑制」が60.0% (複数回答可) 問8 仮に、排気ガスやシックハウス等の環境対策が十分とれ、燃費、速度等 その他の機能は従来と同じ車が出現した場合、どうするかをたずねたとこ ろ「価格が従来と同じなら購入」が39.8%、「価格が1割未満高い程度な ら購入」が36.1% 問9 自動車に関連して安全性、省エネルギー等の他消費生活上、日頃感じて いることをたずねたところ125件のご意見をいただき「アイドリングスト ップ等の省エネに努める」が19.2%、「ハイブリッド車、燃料電池車等の 環境対策、省エネ車を優遇し普及させる」が18.4% Ⅲ 考 察 今回の調査においては自動車10台中、すべてにおいて検出されているの がホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレンであった。 また、エチルベンゼンも自動車10台中9台に検出されている。 これらはいずれも自動車部品に使用され、発生する可能性のある揮発性 有機化合物物質である。 一方、スチレンは塗料等に使用されるものであるが、今回は夏、冬とも ほとんど検出されなかった。 揮発性有機化合物は、高温になるほど発生しやすく、また、時間が経過 すれば発生濃度が減少すると言われている(大阪府立公衆衛生研究所報告)。 今回の調査において、一年において最も温度の高い夏と、最も温度の低い 冬に分析を実施しているが、自動車室内における揮発性有機化合物の発生状 況は夏が多く、冬が少ないという傾向が現れている。 しかしながら、今回は使用月数で1ヶ月から53ヶ月(4年6ヶ月)の自動車 について調査したが、使用月数と揮発性有機化合物の発生状況との関連にお いて、明確な傾向は認められなかった。使用月数が36ヶ月(3年)を超えた 自動車からもホルムアルデヒドやトルエンの発生が認められた。 自動車室内で発生する揮発性有機化合物対策としては、夏、冬の冷暖房時 等に窓を閉めたままにせずに、時々開けて換気を十分実施するよう心がける ことが望ましい。 -9- Ⅳ まとめ 1 調査結果 ○ 今回の調査においては10件中、すべてにおいて検出されているのが自 動車部品に含まれていると思われるホルムアルデヒド、アセトアルデヒ ド、トルエン、キシレンであった。 ○ 厚生労働省が目安としている、室内濃度指針値を超えたのは1台であ った。 ○ 自動車使用月数が36ヶ月を経過しても、揮発性有機化合物が検出され る車が存在した。 ○ 自動車使用月数による揮発性有機化合物の検出状況において、明確な 違いは見られなかった。 ○ 夏(自動車室内平均温度28℃)における揮発性有機化合物の検出値は 冬(自動車室内平均温度5.7℃)におけるものよりも全体的に高い傾向が 見られた。 なお、すべての調査物質で車室外(外気)より車室内が高い値を示し た。 2 注意事項 ○ 夏等、温度の高い時には、化学物質の発生に特に注意し、車室内は換 気に留意する。 ○ 冬等、温度の低い時期であっても、化学物質の発生がないわけではな いため、臭い等が気になる場合は、車の窓を開ける等換気をすることを 推奨する。 ○ 体に異常を感じた場合は、医師に相談する。 ことなどが重要である。 3 相談窓口(健康被害の連絡、相談) 神奈川県の各保健福祉事務所 横浜市の各福祉保健センター 川崎市の各保健福祉センター 横須賀市、藤沢市及び相模原市の各保健所 -10-