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おもてなしの国のおもてなしの受け方 種本和雄 リオデジャネイロ

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おもてなしの国のおもてなしの受け方 種本和雄 リオデジャネイロ
おもてなしの国のおもてなしの受け方
種本和雄
リオデジャネイロオリンピック 2016 が終わり、いよいよ東京オリンピック 2020 に向け
ての準備が加速される実感を皆さんも持っておられることでしょう。招致プレゼンテーシ
ョンの時に滝川クリステルさんが使った「お・も・て・な・し」がキーワードになり国を
挙げてオリンピックの準備に進んでいく 4 年間になるものと思われます。レストラン、交
通機関、ホテルなどで提供されるホスピタリティ、配慮などは世界一になったと感じるこ
とは多いですし、特に海外から帰ってきたら「やっぱり日本が良いなあ」と皆さんしみじ
み思われるのではないでしょうか。「おはようございます」、「ありがとうございます」、「お
待たせしました」、「申し訳ございません」、「またお越しください」、「ごゆっくりお休みく
ださい」等々サービスを受けるときにかけられる言葉は素晴らしく行き届いており、それ
を使いこなす従業員の教育もしっかりとされています。
では、そのサービスを受ける側のマナーはどうでしょうか。現在、私は飛行機の中でこ
の原稿を書いていますが、飛行機に搭乗するときに CA さんから「おはようございます。搭
乗までお待たせいたしました。」と礼儀正しく声をかけられても、ほとんどの乗客は「おは
よう」と返すことなく無言で搭乗してきます。バスを降りるときの運転手との接触も同じ
です。レストランで会計をすませ、「ありがとうございました」の言葉に対して「ごちそう
さまでした」という言葉もあまり耳にすることがないように感じます。あれだけ気持ちの
良いおもてなしをできる店員が、客になったとたんに挨拶も返せない客となっているのが
現状でしょう。私自身の経験をお話しすると、10 年前に大学からの派遣でオックスフォー
ドに行かせてもらったことがありますが、バスを降りるときに子供が無言で降りようとし
たら、“Say Thank You!”と母親の厳しい声が飛んでいました。
“Where are your manners ?”
(お行儀はどこへ行ったの?)というような日本では久しく聞いたことのない言葉がしょ
っちゅう聞かれたのも印象的でした。少なくとも、おもてなしを受ける側のマナーは英国
の方が上のような気がします。
おもてなしは提供する側と受ける側が合致してこそ初めて完成するものです。日本のお
もてなしの心を世界に広めたいというのは日本人共通の希望であろうと思われますが、そ
れをさらにグレードアップするためにも、おもてなしを受ける側のおもてなしも我々はも
う少し磨いても良いのではないかと感じています。
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