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江陰市華西村視察ツアー 報告書 - 一般社団法人コンピュータソフトウェア

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江陰市華西村視察ツアー 報告書 - 一般社団法人コンピュータソフトウェア
CSAJ 中国ビジネス研究会主催
江陰市華西村視察ツアー
報告書
社団法人コンピュータソフトウェア協会
平成 21 年 9 月 30 日
【目次】
Ⅰ.視察メンバー ・・・・・・・・・・・・・
2
Ⅱ.訪問先
・・・・・・・・・・・・・
2
Ⅲ.視察報告
・・・・・・・・・・・・・
3
●今後が期待される華西村 (記:龚 欲晓 グリッド・リサーチ㈱)
●強く感じられた中国パワー (記:浅野 悦男 ㈱ビジネスアプリケーション)
●並はずれたインパクト (記:久守 徹 ㈱日立情報システムズ)
Ⅳ.おわりに
・・・・・・・・・・・・・
8
江陰市ツアー終了報告 (記:団長 竹原 司 ㈱デザイン・クリエイション)
江陰市招待昼食会において記念撮影
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
1
Ⅰ.視察団メンバー
氏名(敬称略)
会社名
団長
竹原 司
㈱デザイン・クリエイション
メンバー
張
長城コンサルティング㈱
メンバー
井口 一世
㈱井口一世
メンバー
龚 欲晓
グリッド・リサーチ㈱
メンバー
曲 燕斌
グリッド・リサーチ㈱
メンバー
中原 凡子
㈱セルパン
メンバー
小高 攻
コベルコシステム㈱
メンバー
浅野 悦男
㈱ビジネスアプリケーション
メンバー
本間 浩美
㈱オフィスプロデュース
メンバー
竹田 征郎
情報技術開発㈱
メンバー
久守 徹
㈱日立情報システムズ
事務局
光村 理恵
(社)コンピュータソフトウェア協会
佶
Ⅱ.訪問先
日時
9 月 12 日(土)
訪問先等
備考
華西村見学
江陰市工業開発区見学
長城コンサルティング㈱
昼食会
江陰市主催
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
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Ⅲ.視察報告
【今後が期待される華西村】
龚 欲晓 グリッド・リサーチ㈱
2009 年 9 月 12 日 CSAJ 中国ビジネス研究会一行(13 人)が中国では「天下第一村」と呼ばれた江
陰市華西村を視察致しました。EA フォーラム開催中である為、今回の視察は中ビ研以外のメンバ
ーよりも関心を集まっております。江陰市日本駐在事務所関係者のご案内で華西村の過去、現在及
び将来図を研究会一行に紹介して頂きました。
華西村は中国江蘇省江陰市(無錫市の東南)にあり、現在無錫に所轄された村の一つです。1961
年建村当時は面接が 0.96 平方キロメートルで、全村民の貯蓄は 1746 元(2009 年 9 月相場相当:
23,546 円)、1 人当たりの資産はわずか 53 元(2009 年 9 月相場相当:714 円)でした。そんな華西村
が改革開放のチャンスをつかんで発展し、1988 年には「億元村」になりました。
関係者の話によりますと、村には工業・農業・商業・観光業・建築業と産業の多角化を行い大き
な利益をあげ、村全体が近代化に転換されました。現在では人口 3 万 5000 人、村の年間経営収入
500 億元(約 6000 億円)
、税収 8 億元(約 110 億円)、一人当たりの平均資産額が 1 億元(約 14
億円)という超富裕村になりました。まさに、日本の高度成長期に至るスピードで発展してきた中
国の近代化農村です。現地関係者の紹介によりますと、99 年には中国(恐らく世界)では前例もない、
村名義で株式上場も果たしました。近代化の進みによって、農業が放置される懸念もある為、近年
には周辺の 20 の村が合併し、面積も 35 平方キロメートルに広がり、企業運営方式で、新たに農業
生産、経営理念も導入し、日本で最近はやり始めている農業の企業化が一足先に進んでいます。村
民は皆別荘のような一戸建ての住宅をもち、自家用車を所有、村には村民の豪華な住宅が整然と並
んでいるほか、北京の天安門などを模した建築の他、1996 年に 1 億 2000 万元を投資して作った高
さ 98 メートルの複合商業施設「華西金塔」がそびえたつという「天下一の村」を標榜するだけの
豪華な景観が広がっています。2011 年には高さ 342 メートル、74 階建ての「社会主義新農村ビル」
近代的なオフィスビルも建設中です。
建設中のビル・マンション群
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
整然と立ち並ぶ住宅
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視察団一行は現地政府関係者のご案内により、華西村の農業、商業施設を見学し、この数年につい
ての発展計画にも耳を傾けた。農業から工業、商業、観光業などに発展してきた村は、現在省外
投資にも積極的で、すでに台湾の台中市に総合商業ビル建設に台湾当局に合意し、江陰市より全国
への将来図を現実化しています。この激しい発展により、各分野に置きまして、IT 情報化により更
なる産業への促進も華西村の人々が考え始めているようです。衣料品や鉄鋼などを生産・販売し、
毎年 20%前後という驚くべき経済成長率を達成してきたが、
関係者によりますと、
今後新た CRM、
ERP、CAD などハイテック管理手法の導入もすでに検討されているようです。
まさしく、今後このようにハイテック領域で、華西村及び中国ほかの地域との交流を深め、日本
ソフトメーカにも他産業メーカと同様に、海外への事業展開にもたらせるのではなかかと確信して
おります。
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
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【強く感じられた中国パワー】
浅野
悦男 ㈱ビジネスアプリケーション
中国には何度か行った事がありますが、蘇州は初めて行った場所でした。
CSAJ主催の江陰市「華西村」のことは訪問ツアーに参加して知ったのですが、そこで協会の
ツアー参加者との名刺交換をし、情報交換も出来て非常に有意義でした。
バスの中で盛り上がるツアーメンバー達
ツアーのバスには、村の観光会社のガイドが迎えに来ていただき、いろいろ説明を受けました。
江陰市「華西村」は揚子江の一番狭い河口の畔で、中国では一番金持ちの村で有名だと言う事を
知りました。立ち寄った揚子江は、私は広い大河だと思っていましたが、この村の側の揚子江は
それ程広くなく対岸が見えるほどでした。
華西村は当初は貧しく、中国の中でも筆頭に入るほどの村だったと伺いましたが、今は中国全
土に知れ渡るほどの金持ちで一人当たりの資産額が日本円で一億円と聞いてビックリしました。
村の人の住宅も立派で、一戸建ての住宅が立ち並んでいて、車も各村民一台以上を持っていて、
ほしいものは何でも自分の財産の中から必要に応じて購入出来るそうで、この他に一年に一度広
場で、村民総出のパーティがあるそうで、そこには村民とそれに付随して村に住んでいる人々を
含めた2万数千人が一堂に集まるそうですが、実際の村民は1400人弱だそうです。最近では
近隣の村々も江陰市「華西村」に統合して、一緒になった村も多く、当初よりは広い面積になっ
ているそうです。
江陰市の開発区の江陰企画館の屋上から、村全体を見たら一軒家の住宅・高層住宅・工場・村
のビジネスに付随してきた人々の住宅・公園等が整然と見え、景気の良さが感じられましたし、
中国全土から見学に来ている人々の熱気も感じられました。
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
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江陰企画館の屋上から。華西村を一望しながら熱心に説明に聞き入るツアーメンバー達。
この日も多くの見学者が視察に訪れていた。
江陰市では、市の中に会社を作り社員を5百人採用すれば日本円で1億円くれると聞いてビッ
クリしました。
実際ツアーの参加者で長城コンサルティングの張社長はこれを利用しているそうで、この他に
事務所の経費も3年間タダだそうです。何故、こんな企画が出来るのだろうと考えますが、とに
かく中国、特に江陰市は元気があると感じました。
その後、江陰市の経済開発区の副主任のご招待で昼食をとりましたが、私らが普段食べている
中華料理と大分違い、珍しい料理も出て味も非常に美味しく、この他に土産までいただき出席者
一同堪能しました。フォーラムの開催都市である蘇州市も含めて、非常に元気を貰ったと感じる
ツアーでした。
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【並はずれたインパクト】
久守
徹
㈱日立情報システムズ
蘇州市より北西へ約 100km、バスで約 1 時間半の江陰市及び同市の行政管区にある中国内では
最もリッチな村として位置づけられる華西村を視察した。江陰市は北に揚子江、南に太湖がある揚
子江デルタ開発特区の中心都市であり、人口は僅か 120 万人規模で中国では小都市に分類されるが、
2007 年度には全国県域経済トップ 100 の第 1 位に選ばれ、2003 年以来トップの座を維持している。
街区は非常によく整備されており、クリーンで建物は新しく、経済力のある街を印象付ける。
(GDP は 1.5 万$/人で上海と同じくトップレベル。日本は 3 万$/人)
同市はベンチャー企業の誘致、育成に力を入れており、同市所有のオフィスビルはベンチャー企
業に対して 3 年間無償貸与、500 人規模の企業に成長した時点で 1 億元(約 15 億円)の奨励資金を
提供するなど、厚い優遇措置を取っている。今回、同市の案内役となった長城コンサルティング㈱
張社長(日本在住 23 年)はすでに同市よりオフィスの無償貸与を受けている。
同市へは日本から富士通のほか、中小ソフトハウス数社が進出している程度。上記のような海外
ベンチャーに対しても優遇措置はあるものの、同市の日本での知名度が低く、また空港を持たない
ため、日本からは、上海の空港からクルマでの陸路アクセス(片道約 3 時間)しかない。また、同
市の手前には上海の巨大市場や蘇州工業園区/国際科学技術園のような国際レベルに整備された
企業誘致エリアがあり、これらを乗り越えて同市に進出するには相当なアドバンテージの提示が求
められる、と考える。
同市行政管区にある 342 村のひとつである華西村は、50 年前一人当たりの年平均所得は 53 元で
あったが、1990 年代の改革・開放を期に農閑期の家内工業(秘密裏の農機具生産等)で蓄えた技術・
資金を活かし、鉄鋼業、紡績業、旅行業の産業を興し成功、中国で一番リッチな村として中国内外
から見学者が絶えないとの事。有料の村内見学で年間 1 億元の収入を上げている。農家とは思えな
い規格された家屋、街並は、遅れている中国の地方農家の見学者には大きなインパクトがあると思
う。村内に高炉を2基有する鉄鋼生産工場があり、そこから吐きだされる煙とクルマの廃棄ガスで
スモッグが漂い、住民の健康状態が懸念されるように感じた。
農村とは思えない、立ち並ぶ豪邸群に圧倒。
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
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Ⅳ
おわりに
【江陰市ツアー終了報告】
団長:竹原 司
デザインクリエイション(株)
いまや世界経済を牽引する中国の成長は、一部で言われるように、脆弱な基盤の上に成り立つ一
時的なバブルなのか、それとも、欧米に替わって経済の主役を担う実体ある成長か。
本ツアーは、アジア EA フォーラムでの訪中の一環として、中国ビジネス研究会で企画されまし
た。きっかけは、去年、蘇州近郊の地方都市、
「江陰」
(こういん)から、IT 企業誘致の使節団が来
日し、そこに当研究会のメンバーが参加したことでした。
江陰は日本では知られていない地方都市ですが、県(中国で言うところの地方都市)のレベルで
は、全中国で最高の GDP を8年連続達成している地域で、さらに、その中にある「華西村」
(かせ
いそん)は、これまた、村のレベルでは、中国でもっとも豊かといわれる村です。
この中国一と言われる二つの地域を見れば、中国経済の実態と先行きについてある確度を持った
感触が得られるのではないか、そう考えての訪問でした。
今回、私は、2年ぶりに蘇州を訪問しました。2年前に比べて、新しく開発されたソフトパーク
などを含む新街区は、整然と整備された高層ビルが並ぶ未来都市になっていました。水とみどりに
彩られた町は、夜間には街路灯からビルの壁面にいたるまで、全体が見事にデザインされたイルミ
ネーションに輝き、さながら、セカンドライフの中のバーチャル都市(クオリティ浦社長の感想)
そのままの美しさでした。50年代のピークを極めたアメリカが、アジアに移って21世紀に蘇っ
たような印象でした。
数年前までは、電力事情が逼迫し、夜間の照明は控えられていたようですが、山峡ダムの完成も
あって、この地域の電力事情は飛躍的に改善し、一晩中輝く新しい街を生み出したそうです。
末端に開放された自由競争経済と、中央集権の強力な政治体制が、奇跡的な相乗効果を起こし、
機能不全に陥った欧米の自由主義経済を尻目に、一気に世界経済の主役の座に躍り出た。輝く街は
その証明のように思えました。
今回は、この新街区にある出来たばかりの5星ホテルに宿泊しました。部屋は、広大なスィート
ルームですが、1泊7000円ほど。日本のビジネスホテル並みの値段です。
今回、訪問したソフト会社の社長さんも話していましたが、今の中国のビジネス上の最大の困難
は、これだけの成長を遂げているにもかかわらず、企業間で激しい競争が続いており、その結果、
どんどん、物価が下がっていることだと話していました。しかし、これがまた、中国の国際的な強
さの源泉にもなっており、また一方では、大学を出ても就職先が無いという、国内的な弱さにもな
っています。
さて、前置きが長くなりましたが、9 月 12 日の朝、この豪華ホテルをバスで出発し、高速道路
で1時間、江陰の近郊にある華西村に向かいました。「中華第一村」というのが華西村の称号で、
中国人なら誰でもが知っている中国一、豊かな村とのことです。多少、ショールーム的な要素もあ
るのでしょうが、40年前に、このあたりでも、もっとも貧しかったこの村では、貧しさを克服す
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
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るため、改革開放政策の始まる前から、農具を密かに製造し、周囲の村に販売して生計の足しにし
ていたそうです。改革開放後は、このアドバンテージを最大に生かして、他の村々に先駆けて、事
業を起こし、工業化を達成し、現在の豊かさを手にしたそうです。村の村長さんは、今でも、その
40年前の村長さんと同じ人です。村全体が1つの株式会社となっており、村が上場しています。
村民は社員のような存在で、村から住居と生活費を至急され、車も全村民に支給されています。ま
さに、人民公社の企業版です。
村に入ると、整然とした区画の中に、アメリカの高級住宅とそっくりな瀟洒な豪邸が並んでいま
す。これが村民の平均的な住居とのことで、プールがないことを除けば、アメリカの豪邸とほとん
ど同じレベルです。村民一人当たりの資産(共有財産なので、村の資産ですが)は、日本円で1億
円に達するとのこと。村には、30社の上場企業があり、その内、9社は海外でも上場しています。
村の中には、いくつもの工場がありますが、最大の工場は、高炉を2基保有する製鉄会社です。農
具の生産のために、鉄を自前で作る必要に迫られて作った製鉄所が、今では、日本の新日鉄に匹敵
する鉄鋼を生産し、中国全土に供給しています。高層ビルに高速道路、鉄道建設が続く中国には、
まだまだ、鉄の需要が旺盛で、今後10年以上、その需要は続くとのことです。
村の中心には、大きな広場があり、年末には、そこに村民全員が集まって忘年会を開くそうです。
また、その同じ広場に村民全員に配布する数千台の車を並べて授与する場にもなるとか。広場の中
には、10年以上前に立てられた古城風の巨大ホテルがあり、その屋上の展望台から、農業地区、
工業地区、居住区に分けられた村全体が一目で見渡せました。村長さんも、このお城のそばの住居
の1つに今でも住んでいるそうです。
展望台からは村が一望できる。
展望台から見える村の光景
また、この展望台からは、現在、建設中の村の新しいシンボルとなる高層ビルがすぐそばに見え
ます。総工費350億円を投じて、高さ315メートルの超高層ビルになるとのことで、これは世
界で11番目の高さだそうです。
村民3万人ほどの村が、1つの会社として機能し、このような豊かさを実現していることは、他
の国では見られない特異な成功だと思いましたが、驚くべきことに、このような村は、この地域に
他にも幾つもあるとのことです。かつて話題になった「郷鎮企業」
(村興し企業)の発展形として、
これらの村々が、中国経済の底辺を支えているとのことでした。
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
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華西村を後にして、江陰の中心部に移動します。さすがに、中国一豊かな都市で、街はごみ1つ
落ちていない美しさです。中国の街では、人件費の安さもあって、清掃や、街路樹、公園の整備な
どは、日本では考えらないくらいの人数をかけて頻繁に行われ、街の美しさを保っています。 ま
た、それは失業対策や樹木の購入による農村への支援という意味もあるのです。
江陰では、まず、ソフトパークを訪問。中国ビジネス研究会のメンバー企業の長城コンサルティ
ングが最近借りたオフィスを視察しました。今、工業化を一通り終えた中国の地方都市では、製造
業の誘致を控えて、ソフトウェアやコンテンツなどのサービス業の誘致に熱心です。大きな土地も
要らず、廃棄物も出さず、たくさんの人を雇用するサービス産業を国を挙げて誘致しようとしてい
ます。
江陰も同様であり、ソフト会社には、3年間無償でオフィスを貸してくれます。さらに、一定の
審査に通れば、開業補助金として、600万円∼1500万円を出してくれます。これは、借り入
れでも資本金でもなく純粋な補助金です。日本での価値にすれば、2∼3000万円に匹敵します。
社員が増えれば、それに応じて、より大きなオフィスを無料で貸してくれます。
開業資金に、無償のオフィス、さらに、人件費も上海などの大都市に比べて、格段に安くなりま
す。これらの優位を生かして、中国やアジアにどのようなビジネスを展開するか、後は知恵しだい
という状況です。長城コンサルティングのオフィスは、まだ、家具を入れただけの状態で、これか
ら、揚子江流域の中国でもっとも豊かな地域に向けての、新しい形の IT サービスの提供を綿密に
計画中とのことでした。
長城コンサルティング㈱江陰市オフィスの様子。江陰市より無償でオフィス貸出されている。
CSAJ 中国ビジネス研究会主催 江陰市華西村視察ツアー報告書
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オフィスを後にして、市のご招待の昼食の前に、江陰のすぐ傍を流れる揚子江を見ることにしま
した。川の近くの公園から、かつて、国民党軍が揚子江から上陸してくる人民解放軍を迎え撃つた
めに掘ったという弾薬を運ぶ地下道を抜けて、揚子江の岸辺に出ました。このすぐ近くに、彼の有
名な「太公望」が釣り糸をたれたという場所があり、そこに残る鐘楼まで歩いて揚子江を眺めまし
た。山峡ダムができてから、この地域の気候が変わったとか、この日も、上流に降った雨のせいか
揚子江は黄土色の濁流になっていました。向こう岸が見えない広大な川幅を、幾艘もの貨物船が埋
めています。上海から上流の重慶に至るまで、ここは中国の物資の大動脈になっています。
揚子江の様子。河とは思えない広大さ。
昼食は、江陰市のご招待で、すばらしい広州料理をいただきました。市の幹部の方々も出席され、
いつものように、乾杯の連続です。お昼なので、さすがに白酒は抜きでビールでの乾杯でしたたが、
回数と量は相当のものでした。料理はいずれもすばらしく、特に中国の人でも、めったにお目にか
かれないという揚子江の「時魚」という大きな淡水魚は、鱗がソフトシェルクラブのように柔らか
く、鱗のまま食べるのですが、油の乗った白身と、鱗をかみ締めて出る滋味が入り混じって、これ
まで食べた魚の中で、もっともおいしいと全員が感嘆する味でした。
和やかな雰囲気で進む昼食会風景。すばらしい広州料理の数々に一同感嘆。
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江陰と華西村への視察ツアーの話はここまでですが、蘇州で訪問したソフト会社の話を1つだけ、
付け加えておきます。
この会社は、もともと、北京にあったのですが、蘇州市の熱心な誘致に応じて、本社を北京から
蘇州に移しました。このとき、ソフト会社を誘致したい蘇州市は、日本円にして6億円の補助金を
100名ほどのこの会社に与えたそうです。この会社は、この資金を開発に投じ、2次元 CAD を
開発します。この CAD は、アメリカ製のデファクトの CAD ソフトと同等の機能、性能を有した
もので、開発に数年を要しましたが、いまでは、本家の CAD に比べて4分の1の価格で、中国全
土で販売。さらに、世界各国の言語に対応し、すでに、65カ国に出荷され、社員は300名に達
しているとのことでした。北京大学や精華大学から優秀な学生を大量に採用したそうです。この海
外での販売先は欧米や日本ではなく、インド、ロシア、ブラジル、アフリカなどの発展途上国なの
です。これらの国で求められる、充分な性能を持ちながら安価なソフトウェア製品を供給すること
で、この企業は成功しました。胡錦涛主席もこの会社を訪問されたそうです。いずれ、この会社の
CAD ソフトが、欧米と日本を除く地域で、デファクトになる可能性は極めて高いと思われます。
ここに、中国企業の成功のパターンが見えてきます。政府の支援と、安価で優秀な人材、欧米で
成功した製品の研究、中国及び途上国市場向けの安価な価格設定。このビジネスモデルは、中国や
アジア、アフリカなどの途上国での消費が増加し続ける限り、有効に機能するでしょう。通貨「元」
が、これらの国々に対して、大幅に上昇しない限りは、まだ、10年以上、このモデルは機能し続
けると考えらます。
これらの状況を踏まえて、日本企業の戦略はどうあるべきか。高度な製品を、高価で販売する日
本企業。中国企業と同等の戦略は取れないが、その技術的なアドバンテージを生かして、どういう
差別化、ポジションの違いを打ち出すかが、最大のポイントと思われます。しかし、その方向は、
ターゲット市場、ユーザー層、販売方法などによって、大きく異なるもので、それぞれの条件と現
在の手持ちの資源に応じた最適な戦略を自ら考え出すことが、我々にとっての最重要課題であると
言えるでしょう。
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