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皆さんへの問いかけ - 神戸大学大学院経営学研究科 神戸大学経営学部

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皆さんへの問いかけ - 神戸大学大学院経営学研究科 神戸大学経営学部
トップアスリートのキャリア・トランジションから学ぶ
問題提起:キャリアをデザインし、モティベーション
を自己調整するという視点
(および、補遺としてその他の諸理論)
2007年6月17日(日)
於 神戸大学
金井壽宏
トップ・アスリートの方と比べて、ふつうのひと
にありがちな感覚
z
どれひとつとして頂点(近く)を極めたことなく、中途半端
な自分
–
–
–
z
そこそこやっている
でも、打ち込みが足りない
ほんとうになにかを極めるまえに、ほかに目移りする
恥ずかしながら金井を例に
–
–
–
–
スポーツも楽器も、どれも中途半端
学問的にも、けっして頂点(近く)をかすらず
かといって、新境地をめざして、たとえば、大学をやめたりもしな
い
どこかで、不完全燃焼感がある。
本日のゲストが、トップアスリートとして生き
てこられた世界、今、生きておられる世界
z
z
本日のご案内、ご経歴などご覧ください。
また、後のパネル討議をお楽しみに。
大きな節目--特別な方のもの、だれものも
の
z
いったん、とことん打ち込み、そのときどき集中し、生き
抜いた世界があり、あるときにその世界(のかなりの部
分が)がなくなるとき
z
トップ・アスリートならではの問題--経験の深さ、達成
のとてつもなさ、特に今回ゲストで来てくださっている方々
z
他方で、だれもの問題として--それまで打ち込んでき
た世界と同じやり方では通用しなくなる瞬間、そういう節
目をくぐること。また、トップ・アスリートほどではなくても、
一度、打ち込んだ世界があれば、それをうまく自分の持
ち味として活かしたい気持ち
皆さんへの問いかけ
Q1 今日、参加者の皆さんのなかで、20代のひと、30代のひと、40代のひと、
50代以上のひと?
Q2 たとえば、中年と自覚しているひとにお聞きしますが、ある種の不完全燃
焼感があるひと?
Q3 学生時代に、(勉強でも、スポーツでも、バンドでも、なんでも)とことん打ち
込んだものがあるひと? それは、その後の自分が(どの世界にいっても)
なにかパーソナルアセット(自分の財産)になっていると思うひと?
Q4 転職経験者の方、起業経験者の方、すでにある世界からの引退や退職を
経験された方、おられますか?
Q5 それ以外のキャリアの大きな節目を、くぐったことのある方?
Q6 そういう節目をくぐるときに、つぎに来る世界が見えないので、適応に困っ
た、いったんモティベーションが落ちたという経験のあるひと、どれぐらいい
ますか?
Q7 まったく愚問のようですが、失恋経験のあるひと? 天地がひっくり返るほ
どつらい失恋経験のあるひと? それでも今、生きているのはどうしてです
か?どう乗り切りましたか?(同様に、入院する病気の経験のあるひと。大
病の経験のあるひとは、どれくらおられますか? ちょっとそのために人生
観が変わったりしていますか。より自分らしく生きようとしたり?)
長いキャリアのアップダウン
「人生、山あり、谷あり」 z
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z
z
トップ・アスリートのキャリア・トランジションにおける非連
続と、連続。
かつて生きた世界と、今生きておられる世界の間で、根
本から違ったこと(たとえば、現役プレーヤーではない)、
根っこでは通底していること(どこかでスポーツにまつわ
ることにしっかりかかわっている)。
z
たとえば、ライフライン(イキイキチャート)、ずっ
と高いひとも、ずっと低いひともいない。
ライフライン(イキイキチャート)の下降局面、上
昇局面、転換点は、どうして折れ曲がっているの
か、本人がたいてい説明できる。
生きているとは、ダイナミックはアップダウンがあ
るということだ。ずっと高いともたないし、ずっと
低いと生きていることにならない。
トップ・アスリートでなくても、普通に働くひと
にもある節目
z
もうこの会社やめようかと思うようなとき
はじめて大勢の部下をもつライン長になるとき
海外経験
病気
左遷(トヨタの奥田さんでさえあった)
退職
z
後述する、夢(希望)と不安(緊張)
z
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トップ・アスリートでなくても、
普通のひとも、モティベーションの調整があ
るが、
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z
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トップ・アスリートの場合には、集中、集中の持
続、コンディショニングも含め、大切な試合にむ
けて、その試合のなかで、ここぞという場面、瞬
間に、最高の状態にもっていくことが必要。
ロッカールームを出る前に、涙のラグビー選手。
最高の状態に、個人を、ペアを、チームをもって
いく。
金井がモティベーションの諸理論をレビュー
してみつけたのは、やる気の理論の系統は、
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緊張
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希望
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関係
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持論(自己調整)
時間幅を、10年、20年でなくて、日々、1週、
シーズン、1年とかでモティベーションをみて
も、やっぱり
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アップダウンがある。
われわれは、佐藤栄哲さんのイニシャティブで、
モティベーションのデータをデイリー(日々)で集
めているが、モティベーションにもアップダウンが
ある。
なにがきっかけでアップし、なにが契機でダウン
するか、やはり本人が語れる。語れるということ
は、自己調整もできるということ
キャリアの節目のキーワードは、
D.レビンソンによると
z
夢
z
不安
キャリアの節目はとまどうものだ。不安があり。し
かし、そこから先を描く夢もある。
次のペアに注目したい
キャリアの節目
モティベーションのアップ、ダウン
z
不安
z
緊張
z
夢
z
希望
ご参加の皆さんも、自分の節目を思
い起こしてください。たとえば、就
職も節目。退職も節目。イキイキ
チャートで、そこは折れ線でしょう。
ご参加の皆さんも、昨日のこと、この
1週間のことを思い出してください。
あのクレームには緊張したとか、
納期通りに終える希望が出てきた
とか。アップダウンの折れ線。
さきほどの唐突な問、失恋経験、天地がひっ
くり返るほどの大失恋経験
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歌の歌詞ではないですが、「分かれても好きなひと」 前の世界への未練。そのひとなしで、生きていけるかと
いう不安、ある程度の緊張。
その歌の替え歌で、「分かれたら、いやなやつ」 無理し
て未練を断ち切る。思えば、ひどい男だった。振り返ると、
きびしい練習だったなぁ。
もうひとつの替え歌の歌詞で、「分かれたらつぎのひと」
もっといいひとがいるかもしれない、きびしい練習と試
合の連続で犠牲にしていたことが、これからはできると
いう希望、展望。
それでも、いったん、大きな穴があく。
それでも、節目を乗り越えて生きているのと
いうのは、
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自己調整力
節目のデザイン力
人間がもつ弾力性(リジリエンス)
それでも、自分を貫いているもの(アイデンティティ)
まわりの支援、サポート、メンターの役割
同じ経験をくぐるひととのつながり、対話
節目をくぐる経験についてのドキュメンテーション
節目をくぐる経験の生き方のセオリー(研究者の理論と、
節目を苦労しながらもなんとかくぐったひとの持論)
死と再生のテーマを含む、やる気のアップダ
ウンの持論の例(田中さんの場合)
田中さんの生の言葉
気づく
過去を認める
出す
成功、確立したと勘違いする
失敗する
学ぶ
昇る
落ち着く
つまらなくなる
10. 捨てることにする
(田中ウルヴェ京さん 金井の『働くみんなのモティベーション論』NTT
出版、第3章付録より、その以前にメールいただいたもの)
シンクロを始める10歳までは、「死ぬのが恐い」ということ
が生きるための軸だった。シンクロをはじめてからは、
「昨日の自分ができなかったことが今日できるようになっ
た」の連続という向上感が軸。しかしその軸によって、ど
んどん競技において勝ち続けるうちに、その軸が変化し
ていく。「他人に勝つ」「社会に認めてもらいたい」「もっと
偉くなりたい」「トップになりたい」という方向だ。その軸に
よって、いったんは、極める。極めたつもりになる。198
6年にソロで日本チャンピオンになった時に、極めたと誤
解する。同じモティベーション軸では、まったく機能しなく
なる。そして徐々にシフトする。
田中さんの生の言葉(つづき)
林さんに、同志社ラグビー部のOB会に招か
れたときにお聞きしたこと。
1.
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3.
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7.
8.
9.
最終的に1988年のソウル・オリンピックまでにあった軸は「自己の限
界への挑戦」だった。その言葉をまさに日記に毎日書き、客観的に
自己認識しようとつとめた。無という文字を脳裏につねに描いたりし
ていた。一生懸命とか、努力とか、猛練習というものの先には、冷静
とか淡々とか無とかというものが、究極にはあるような気が何となく
していた。ただ、そのころは、オリンピックでメダルを死んでも取りた
いという欲が非常に大きかったので、果たして、本当にモティベーショ
ン軸が「自己の限界への挑戦」だけだったのか、という点においては、
未だに理解できない。おそらく社会的な成功とか、スポーツでの勝
負においては、究極のちょっと手前で、とっても泥臭く人間くさい状
態でいないと、社会においての成功という「世俗的な成功」を達成す
ることはできないのかもしれない。
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「引退を決めたときに、ぽっかり大きな穴が空いたみたいなところが
あったので、なにかしたいと思って、OB会をきちんと組織化して、こ
ういう会合をやるようになっています」とか言われた(林さん、すみま
せん、金井の記憶がまちがっていたら、直してください)。
それ以前に、神鋼ヒューマン・クリエートさんではじめてご紹介され
たときにお聞きしたこと→ご自分の希望で、会社のなかでも人材教
育を扱っている部門へ異動。
師と仰ぐひととともにつくられた研修、自ら研修の講師に立たれ、そ
して、NPOでリーダー。
「感じること即ち動き」「感情、感動が大事」「泣くことはすばらしい」
「やる気はわき出るもの」というモティベーションの持論を、この『ビジ
ネスインサイト』ワークショップでのお聞かせいただきました。
西野さん
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後述するキューブラー・ロスのプロセスがそのままあて
はまるわけでないが、現役引くと大きな喪失感があり、
スカウトに始まり、サッカーの球団の経営に必要な部署
を経験するように機会を与えられるも、ぽっかり空いた
大きなもの(喪失感)がそれでは埋まらない。
そこから、住むところとしては過酷だったが、サッカーの
マネジメントでMBAがあった(ビートルズの街でもある)リ
バプールへ。
サッカーそのものに持論を持つだけでなく、MBAでサッ
カーのマネジメントについて、理論も学ばれた。
長いキャリア全体をデザインできないので、
節目だけはデザインするという発想
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z
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デザイン=選んでいるというとかっこいいが、同
時に、とまどっている、迷っているということ。節
目は。大きな節目は、とまどっている場合です!
ドリフト=流されている、ともとれるし、勢いに乗っ
ているともとれる。現役のときに、引退のことを
考えないほうがいいという側面がある!!
キャリア・デザインとは、たかだか節目のデザイ
ン
「がんばれ」はいつもいい励まし言葉か?
やる気が落ち込んでいる理由が、
z
単なるモティベーション喚起の問題ではなくて、
z
キャリアの大きな節目をくぐるのに難航しているときがあ
る。
不安と夢、緊張と希望という
ペアがもつ深い意味→非常に深いものがある
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たとえば、現役時代にがんばり通したひとが、引退して、
しばし無気力になっているときのアドバイスは、「がんばっ
てね」ではない。がんばるというレベルは超越するぐらい
がんばってきたひとだ。
不安と希望が裏あわせというのは、人間存在の根幹にかかわること。
脳(前頭葉)のある部分が損傷を受けると、落ち着く(不安がなくなるが)、計
画もできなくなる。anxietyと plan は、ともに、thinking about futureとかか
わっている。Later(後で)というのが、意識できなくなる。
希望をもつが、同時に不安をもつというのは人間性の根っこ。
サルトルの『実存主義とはなにか』。あるところである、あらぬところであらぬ
存在。あるところであらぬ、あらぬところである存在。ナイフとひと。
もう少し時間幅の短い、モティベーションもで
きることなら、自責で生きたい。
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自己原因性
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原因自分論
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自責
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持論をもつ
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無気力なっても、またやる気をリゲインする自信があれ
ば、落ち込むのもOK。
西宮のホールでの村上ポンタ秀一
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Daniel Gilbert 不安と計画
Martin Heideggar 憂慮、ゾルゲ
Jean Paul Sartre 投企と実存主義的不安
不安と夢(D.レビンソン)→だから節目のデザイン、緊張と希望(金井)→だ
からやる気の自己調整 というペアには、心理学的にも、哲学的にも、非常
に深い意味がある。
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今津中学のブラスバンド部、得津先生に学ぶ。
厳格な家庭。
西宮で演奏すると、昔の先生や先輩がいっぱいくる。
フロアからの、「がんばれ」という声に、
もう「がんばれ」という境地ではないんですけど、と言って笑ったポン
タ。今日の演奏は今日のやる気の自己調整の問題ではなく、久々
のお膝元だから、もう30年も太鼓たたき続けた人間として、ここにい
るという気持ち。
しかし、「フォワード、がんばれ」とおしり持ち上げた先輩に、感動す
る林さん。いつまで経っても、がんばることが使命感とつながるとき
には、強い。
モティベーション問題とキャリア問題が交錯
するとき
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うつのひとに、「がんばって」は、いいアドバイスではないというのは
よく知られるようになったが、
キャリアの節目でとまどっているひとへのアドバイスも、「がんばって」
ではない。
節目だから、いったん落ち込むものだ。ただし、希望、夢は忘れずに。
という言い方。
加護野先生 「30歳は落ち込め」と言ったほうが励ましになる、と。
わたしの『働くみんなのモティベーション論』の第3章における、イー
ライ・リリー・ジャパンの山下さんの持論(モティベーションで落ち込
むときに、キャリア上の見通しをオーバーラップさせることでやる気
を取り戻す)。
こんなセカンド・キャリアもある
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伊能忠敬は、45歳で引退を願い出るが許されず。1979
年49歳で隠居。10歳年下の高橋至時 の弟子となり、新
たなスタート。実測図を創るための奥州や蝦夷の第1次
測量は、55歳のとき。1804年(59歳)以降は、幕府の事
業として西日本の測量。1816年(71歳)にやっと、「大日
本沿海與地全図」 に着手。73歳でなくなった3年後
(1821年)、「大日本沿海與地全図」完成 。
伊能忠敬のライフワークとは。シュリーマンにとって、古
代への情熱とは?
現代でも、たとえば、元ヤマハ常務の和智正忠さんのラ
イフワークとは。
このままでは終わりたくないとよく言う、50代の学者。た
とえば、・・・
いったん打ち込んだことがある、
とことんやり抜いた世界がある
スポーツによってはこの引退という節目が早
い
z
z
たとえば、サッカー
Jリーガーの引退平均年齢は25.6歳
あとでお聞きしますが、
z 林さんは、何歳のとき。同志社のラグビーのOBの集まりを組織化し
たとおっしゃっていました。
z 田中さんは、メダルを手にしたあと引退。トップアスリートのだれもが
これをくぐるのに、日本ではその研究も支援体制もないことから、留
学へ。
z 西野さんは、球団がいい条件を出してくれて、スカウトとして残って
いても、かつて選手として打ち込んでいた大きな部分は埋められな
いという気持ち。新境地を、リバプールに。
節目だけはキャリアをデザインするという発
想
z
やる気は、アップダウンの理由させわかってい
れば、しめたもの。
z
そのうえで、時間展望の心理学、希望の心理学。
z
たとえば、夢と時間幅。近接目標と遠隔目標。野
茂やイチローの小学校のときの夢、伊能忠敬の
中年(49歳は、当時なら老年か?)のときの夢。
企業のなかでも
z
これは、スポーツでも、勉強でも、稽古事でも、楽器でも、一生の財
産だ。
z
大学院を出て、開発がしたくて、企業の研究所に入り、研究一筋で
きたひとが、
z
ひとつの山を登れば、・・・・・。すべての山はその山しかないという意
味でユニークだけど。
一度、深くひとを愛することができたひとは、・・・・すべての男性は
(女性は)そのひとしかいないという意味で、ユニークだけど。
一度、ある世界でとことん打ち込んだことがあるひとは、どこにいっ
ても。
そのどこにいくかの土俵そのものをもう一度、選ばざるをえないキャ
リアの節目が、引退というトップアスリートのだれもがくぐる節目
z
40歳で、営業に回ってねといわれたとき、これからは、自分で研究
するより研究所のマネジメントをやってねといって、落ち込んだとき、
z
そして、そのひとが、研究開発の世界では、とことんがんばりきった
という自負があれば、
z
ここで生じている心理は、トップアスリートのセカンドキャリアと構造
的には等価な部分がある。
z
z
z
そんなことを、今日は、すばらしいゲストたち
から、
経営学のなかでは味わえないような感動や、
経営学のなかではなかなか経験できないレベルの集中力や、
z 経営学の想定する職場のチームより極限を極めたチームスピリット
(ペアを含む)、
z 経営学でも、野球よりも、ゴールをめざしてボールが動き続けるラグ
ビー型、サッカー型の組織が手本だと言われるようになったが、ほ
んとうにそういう世界で活躍した方から、
z また、経営学をしていて、オリンピックのメダリストにお会いすること
はないのですが、そういうピークを極めたひとから、
要するに、今日は、そういうとてつもなくすばらしいゲストから、節目の
適応問題について、深い学びをめざしたいです。
z
いろんな幸せな巡り合わせ
このワークショップに至るまでのハップンス
タンス(悦ばしい偶然)
z
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補遺
引退というような大きなキャリアの節目の落
ち込みと回復を考えるための諸理論
最初に感じたこと
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1994年ごろから、神鋼ヒューマン・クリエートさんでいろんな研究会や
CREOの編集・取材のお手伝い。林さんがご本人の希望で、SHCに異動。
それ以来、いろんなコンタクト。金井ゼミにも、会社の研修にも、神戸大学の
会合にも。
西野さんの同期の 八十さんがいた神戸大学経営学部海運論の宮下ゼミ
のコンパと、金井ゼミのコンパが居合わせた一こま。
八十さんの新聞記事。
西野さんのご活躍も知り、神戸大学でのプロジェクトなので、まずは、神戸
大学を出てJリーガーだったおふたりにインタビュー。
その西野さんが、田中さんがなさっているスポーツ選手のセカンドキャリア
の研究会にゲスト出演。
金井の本を読んでくださっていた田中さんが、さっそくにも、神戸大学を訪ね
てくださる。
その間、高橋さんは、小川千里さんというすばらしいインタビュアーを得て、
元Jリーガーのキャリアの調査をどんどん推し進めて、
わたしの盟友の、ギデオン・クンダ氏も来日の期間には、サッカーの例をいっ
ぱい出すほどに興味をもってくれました。
そして、今日、この日に至る。
いったんその世界で、とことんまでがんばってきたひとな
らではの、オーラーがありつつ、
引退のあと、それぞれにまた、すばらしい活動の場をお
持ちになていることに、
お会いしたときに、わたしも感銘しました。
時間があれば、問題提起
のときに、
なければ、パネル討議の
ときに
今日は、そういう最初の感動、感銘をまた、大切にしな
がら、高橋さんの司会で、パネル討議で深い議論、元気
の出る議論ができたらと思っております。
最後にあとでの議論へのインプットとして、
Some theories(いくつかの理論)
0.節目のキャリア・デザイン論とモティベーション
の自己調整論(金井) すでにご説明済み
1.トランジション論(W.ブリッジズ)
2.プラスの不確実性論(H.B.ジェラット)
3.「死の瞬間」理論(E.キューブラー・ロス)
4.希望の心理学(C.P.スナイダー)
5.時間展望の心理学(多数の論者-レビュー中)
6.ストレスフル・イベント(ラーエ=ホルムズ)
1.トランジション論(W.ブリッジズ)
z
終焉→中立圏→開始
z
中立圏(終わってもないし、始まってもいない宙ぶらんり
な時期)を積極的に過ごすことの大切さ。
z
再び、大失恋の場合 すぐにだれかれとなく声かけない
引退の場合 空中ブランコでも、前のブランコから手が
離れているのに、つぎのブランコに手が届いていない状
態がある
節目一般で 中立圏を見てないから開始に本気がない。
z
z
2.プラスの不確実性論(H.B.ジェラット)
z
z
キャリアの節目で、つぎのステージについて、そこがどういう世界か
わからずに、不確実性に起因する不安に陥るより、まず不確実性の
プラス面を見る(cf.,サルトルの、ナイフではない人間)
情報があればあるほど、ほんとうに決めやすくなるか。
3.「死の瞬間」理論(E.キューブラー・ロス)
z
z
z
z
z
再び、大失恋の場合 別れたらつぎのひとがどういうひとか、わから
ないからワクワク
引退の場合 引退したら、つぎの世界は、よくわかなくて当たり前。
(情報収集が大事でないと主張しているわけではないが)いつまでも
(まだ情報不足=まだ不確実だ、と言って、情報収集ばかりしてい
れば、埒があかない。
節目一般で J.クランボルツとともに、偶然を活かし、動き始めるこ
とを、強調
4.希望の心理学(C.P.スナイダー)
z
目標、意志力、経路力 ポジティブ心理学の代表的理論のひとつ
で、希望とは、目標に向かって進んでいく意志の力と、そのときの努
力の投入が目標に向かう経路として適切などうかを見極める力(経
路力)によって決まってくるという説
z
z
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z
z
再び、大失恋の場合 いったん希望そのものがなくなるので、(喪
の期間をくぐったあとは)つぎに希望をつなぐ(「別れたら、つぎのひ
と」♪)
引退の場合 近接目標がいったんなくなるから、前の世界でやり
抜いた意志力が強くそのまま残存していても、どこにむかっていい
かがわからず、経路力も弱まる。 節目一般で たとえば、担当者からはじめて大勢の部下を持つラ
インマネジャーになったときも、引退の節目と同じようなメカニズム
が働く。ひとを通じてことを成し遂げるという方法を学ばないといけ
ない時期となる。
z
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Cantorの方法: ライフ・タスクの階層カテゴ
リー分析
PM理論みたいな例になりますが、
z
z
大学に入った学生に4年をどう過ごすか、ライフ・タスク
z
学生生活の課題 達成課題 1.学業をきちんと
2.将来の目標を設定する
3.時間をうまく管理する
対人課題 4.友だちをつくる
5.独立する(より自律的になる)
6.同一性(関係のなかでの自分らし さ)を確立する
Little パーソナル・プロジェクト(近接目標として、学生の間にやりたいこと)
Emmons パーソナル・ストライビング(個人が実現しようとしている目的「ボー
イフレンドに依存的になるのをやめよう」→遠隔目標は、自分らしく生きる、
かもしれない)
Nuttinの方法: I hope…; I wish …; I yearn for …;;I really don’t want…;
I am afraid that…;I fear that …というように、ポジティブな刺激文とネガティ
ブな刺激文で20文作成してもらい、その内容分析。
Cantorの方法: ライフ・タスクの階層カテゴリー分析 つぎのスライド
Marcus 可能自己(possible selves)
階層構造の測定・分類方法は、キャリアの節目で、近接目標と遠隔目標を
再度つなげるのに有益だと、金井はみていて、この分野にすごく興味をもっ
ています(共同研究者募集中です、とくに生涯発達の心理学の専門家)
再び、大失恋の場合 この失った恋愛の長期の展望はなんだったのか。
引退の場合 今の時点で、いったん近接目標がなくなっているので、長期
的に可能な自分の姿から、最初の一歩を、リトルやエモンズの方法で探る
節目一般で キャリア研究に時間軸を、近接目標、遠隔目標という観点か
ら導入。
6.ストレスフル・イベント(Holmes and
Rahe, 1967)
z
z
再び、大失恋の場合 引退の場合
節目一般で 5.時間展望の心理学(多数の論者-Little, B.R.,
Emmons, R.A., Nuttin, J., Cantor, N., Marcus, H.,
Carver, C.S. 甲南大学の尾形さんとレビュー論文予定)
z
z
個人差はあるが死ぬことがわかっている病気で
死に向き合うプロセスの諸段階
①否認→②怒り→③取引→④抑鬱→⑤受容
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おなじみのリスト(ストレス・イベントで重たい順に並べたもの)。病院での入
院患者5,000名対象に、入院する以前に起こった人生のできごとで、スト
レスをもたらした出来事を収集して、ストレスフルな度合いでリスト作成)。
第1位、配偶者の死、第2位、離婚。全リストを当日までに探せていません。
ポイントは、人生において生じた出来事がストレスフルである程度と、その
出来事の一定期間での数によって、2年以内で入院する確率が高まる。
引退のランキングを金井は調べられていないけれど、ポイントは、自分の人
生で大きな位置を占めていたものがなくなるという出来事とあわせて、同時
発生的に、転職、地理的移動、などほかのストレスイベントが発生するのが
節目。
金井篤子さんによると、ほとんとの節目のストレスは3年は続かない。しかし、
3年以上続いたら、命レベルが危ないと思ったほうがいい、と(ご自分のお
父様の引退の例を出されながら)
再び、大失恋の場合
別れたときに、泣き面に蜂みたいな出来事があると、たいへん 引退の場合 引退そのものがストレス度が高いうえに、同時に生じること
節目一般で 一部の節目は、多重節目となる。就職のとき結婚して引っ越しもしたとか。
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