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高効率熱電変換モジュール・システムの開発
財団法人エンジニアリング振興協会 熱電発電フォーラム(2005.10.31) 高効率熱電変換モジュール・システムの開発 ㈱小松製作所 佐野 精二郎 Seijiro SANO Key Words : 熱電モジュール, カスケード, コージェネレーション, 沸騰・凝縮 ■ねらい コージェネ用ディーゼルエンジン等から発生する排 気ガスの熱エネルギーを一部回収し、電気エネルギ ーに変換するシステムは、特に熱電発電の適用が 有利な分野です。しかしながら、従来試みた結果は 熱電変換効率 1.5%と低く、実用にはほど遠いもので した。この理由は、以下の 2 点です。 1)熱電変換モジュールの性能が低いこと 2)システムでの熱抵抗が大きいこと 本開発では実用化に向かって上記2点を解決す るために下記の開発を実施しています。 1)高効率熱電変換モジュールの開発 2)沸騰・凝縮器を用い、画期的に伝熱促進を図 る高効率熱電変換システム開発 低温度域は、Bi-Te 系モジュールを使用します。 熱電発電では実用化されている冷却モジュールより 高温で性能がよい必要があり、性能の高温シフトが 重要なため、新組成の開発を行いました。 高温度域は、シリサイド系モジュールを検討しまし た。シリサイド系の材料は安価で環境に優しい材料 であり、性能面でも優れた特徴を有しています。 ■開発の目標 モジュール効率 熱電変換器効率 システム効率 発電出力 中間目標 12%(達成) 58%(達成) 3.4%(達成) 1KW(達成) 最終目標 15%目処 77% 4.3% 3KW ■期待効果 これらの開発が成功すると以下の展開が広がり、 エネルギー問題に大きく貢献できます。 1)電気炉・炉壁やガスタービン発電機からのエ ネルギー回収 2)建設機械の排気ガスエネルギーの回収 3)将来的にはより CO2 削減効果の大きい自動車、 トラックなどの排ガス発電 ■カスケードモジュールの研究成果 低温側 Bi-Te 系モジュールの性能向上を進めて きた結果、現在、実験室的な 23.5mm□モジュール で、8.2%(低温側 30℃、高温側 280℃)の効率が得ら れています。これは、市販品の Hi-Z モジュール (4.5%)の 2 倍近い効率です。実用的な 44.5mm□で は 7.2%、出力密度 1.14W/㎠が得られています。 同様に高温側シリサイド系モジュールの性能向上を 進めてきた結果、現在、実験室的な 23.5mm□モジ ュールで効率 8.3%(低温側 30℃、高温側 550℃)と いう高い値が得られています。 低温度域 Bi-Te 系モジュール、高温度域シリサイド 系モジュールを使用したカスケードモジュールの効 率測定結果を図2に示します。図中の写真は計測中 のモジュールです。23.5mm□ですが世界最高レベ ルの変換効率 12.1%(低温側 30℃、高温側 550℃) が得られています。 ■カスケードモジュールの開発 図2 カスケードモジュールの性能 ■沸騰・凝縮型システムの開発 従来、コージェネレーションなどへの熱電変換シ ステムの試みは、フィンで排ガスから熱を集めてモジ ュールに熱を伝え、冷却部は水冷熱交換器を取り付 けるものがほとんどでした。しかしながらこの方式で は排ガスからモジュールへの熱抵抗が大きく、熱電 変換器効率も 50%以下でした。これを大幅に改善す るために沸騰・凝縮型の熱電システムを開発しまし た。沸騰・凝縮型とは液体の潜熱を熱伝達に利用 するという革新的な方法であり、熱交換器の性能 を大幅に向上させることができます。沸騰・凝縮 型熱交換機の原理を図3に示します。 図1 カスケードモジュール 排ガスを利用して発電する場合、排ガス温度 580℃から室温 30℃までの広い温度領域を使用す ることになります。現在、この広い温度領域にわたっ て特性の良い材料はないため、数種の材料を組み 合わせて使用することになります。本開発では温度 域の異なる熱電モジュールを2段に重ねたカスケー ドモジュール(図1)を開発しています。 15 財団法人エンジニアリング振興協会 熱電発電フォーラム(2005.10.31) ◆システム効率の向上 蒸発器と凝縮器を組み立て、熱電変換モジュー ルとして量産試作型 Bi-Te 系モジュールを使用し運 転テストを実施しました。量産試作型 Bi-Te 系モジュ ールの性能は変換効率 6%程度であり、今後は本開 発で試作した高性能 Bi-Te 系モジュールを使用する ことによりシステム効率の向上が図れます。 図3 沸騰・凝縮型熱電システム ■沸騰凝縮システムの研究成果 ◆蒸発器の性能向上 蒸発器の性能向上の例を図4に示します。等管径型 (b)は等しい径の蒸発管を均等に並べたものです。 これに対して均一熱流束型(c)は、 排ガスの流れに 沿って上流から下流まで熱流束が一様になるように 蒸発管のサイズと密度を変化させたものです。この 均一熱流束型蒸発器(a)で 60%の蒸発器効率が得 られました。 図6 テストベンチ テストベンチを図6に示します。高温の空気はヒー ター加熱され、3∼20 ㎥/min、平均 500℃、最高 800℃で供給されます。これはディーゼルエンジンの 排ガスを想定したものです。得られた沸騰・凝縮型 熱電変換システムの性能結果を図7に示します。空 気温度 500℃で熱電変換器効率 60.5%、モジュール 変 換 効 率 5.6% 、 総 合 的 な シ ス テ ム 効 率 は 3.4% (60.5%×5.6%)が得られています。この値は他社の 前例に比べて倍以上の値であり、実用化へ一歩近 づいたと考えられます。 図4 熱電変換器の効率 ◆凝縮器の性能向上 凝縮器の性能向上を図5にまとめます。凝縮器の熱 抵抗、絶縁材料の熱抵抗、絶縁材料の界面の接触 抵抗ならびに水冷板の熱抵抗の改善を実施し、初 期の熱抵抗の 1/10 まで低減できました。凝縮器の 熱抵抗については凝縮器表面の形状、性状を改善 することにより大幅にさせました。接触抵抗は製造工 程の見直しにより改善できました。絶縁層材料につ いては各種の酸化物などを試み、最適材を見出しま した。水冷板の熱抵抗は水冷板のフィンを微細化す ることにより改善できました。 沸騰・凝縮型実績 図7 沸騰・凝縮熱電変換システムの性能 ■まとめ 1)新開発のカスケードモジュールで変換効率 12%を 超える世界最高レベルの性能を達成しました。 2)沸騰凝縮型システムを採用することにより、従来 の倍以上の 3.4%のシステム効率が得られました。 今後実用化に向かってさらなる性能向上の開発を継続 するとともに、モジュール・システムの耐久性向上、 信頼性向上、さらにコスト低減の開発を実施し、熱電 変換システムの経済性を実証する予定です。 図5 凝縮器の性能改善 16