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表題紙 - 第3章 - 東京工業大学電子図書館
博士論文 ガスタービンサイクルにおける 熱交換器の新型流路開発 都築 宣嘉 目次 第1章 序論 1-1 はじめに 1-2 熱交換器の開発研究の現状 1-2 MCHE (Microchannel heat exchanger) 1-3 1-4 1 ································································· 2 ··················································· 6 本研究の目的 ························································································· 8 本論文の概要 ························································································· 6 参考文献 第2章 ································································································· ······························································································· 20 新型流路形状の開発 2-1 本章の目的 ··························································································· 25 2-2 従来の流路形状――ジグザグモデル ··············································· 25 2-3 計算モデル ··························································································· 25 2-4 従来モデルに対する解析結果 ··························································· 29 2-5 流路の新規開発 ··················································································· 30 2-6 新型流路形状――S 字フィンモデル ···················································· 30 2-7 伝熱流動特性の比較 ··········································································· 30 2-8 本章のまとめ ······················································································· 31 ······························································································· 38 参考文献 第3章 S 字フィンモデルに関する数値解析 3-1 本章の目的 ··························································································· 39 3-2 計算モデル ··························································································· 39 3-3 S 字フィンモデルにおける形状パラメータ 3-4 S 字フィンモデルの形状パラメータに関する計算結果 ················ 42 3-5 流路モデルの比較 ··················································································· 46 3-6 各流路モデルにおける流動挙動 ······················································· 48 3-7 各流路モデルにおける伝熱挙動 ······················································· 48 3-8 本章のまとめ ······················································································· 49 ······························································································· 72 参考文献 第4章 ···································· 41 再生熱交換器模擬試験体に対する実験 4-1 本章の目的 4-2 MCHE 試験体 ··························································································· 73 ······················································································· 73 i 4-3 実験 4-4 実験結果 4-5 試験体:S-fin と Zigzag の比較 4-6 実試験体の流路形状 4-7 実流路形状の及ぼす影響 4-8 CFD 計算結果との比較 4-9 高速度ビデオカメラによる流動挙動の観測 4-10 ······································································································· 74 ······························································································· 74 本章のまとめ 77 ··········································································· 77 ··································································· 78 ······································································ 80 ··································· 81 ····················································································· 85 ····························································································· 参考文献 第5章 ························································· 106 Nusselt 数相関式の作成および評価 5-1 本章の目的 ························································································· 107 5-2 擬似臨界点の影響 -エコキュート給湯器 ··································· 108 5-3 給湯器 計算モデル ··········································································· 109 5-4 給湯器 計算結果 ··············································································· 109 5-5 給湯器計算 考察 ··············································································· 110 5-6 再生熱交換器条件の計算 ································································· 115 5-7 再生熱交換器 計算結果と考察 ······················································· 116 5-8 Nusselt 数相関式の比較 ···································································· 117 5-9 本章のまとめ ····················································································· 118 ····························································································· 136 結論 ······································································································· 137 ······································································································· 141 付録 1 ···································································································· 142 2 ···································································································· 150 ······························································································· 153 参考文献 第6章 謝辞 業績目録 ii Nomenclature Alphabet A 伝熱面積, [m2] T 温度, [K] Ac 流路断面積, [m2] ∆TGMTD 一般平均温度差, [K] Cp 定圧比熱, [J/kg] ∆TLMTD 対数平均温度差, [K] Dh 水力等価直径, [m] U 総括伝熱係数, [W/m2K] f 圧力損失係数, [-] ui 速度成分, [m/s] G 質量流束, [kg/m2 s] v 流速, [m/s] 2 h 局所熱伝達率, [W/m K] V 流路体積, [m3] H(T) T [K]におけるエンタルピー, xi 座標 [J/kg] j Colburn の j ファクター, [-] k 乱流の運動エネルギー, [J/kg] C 低温側の値 もしくは熱伝導度, [W/m K] H 高温側の値 熱交換器の流れ方向の長さ wall 壁面部での値 l Superscript (=Lx), [m] L 熱交換器の長さ, [m] M 質量流量, [kg/s] corr 相関式からの計算値 N Number of thermal unit, [-] exp 実験結果からの計算値 Nu Nusselt 数, [-] i x-, y-, z-いずれかの座標軸 p 内圧, [Pa] P 圧力, [Pa] in 入口での値 ∆P 圧力損失, [kPa] out 出口での値 ∆P/l 単位長さあたり圧力損失, Subscript もしくはセクション i での値 [kPa/m] Pr Prandtl 数, [-] Q, q 伝熱量, [W] Q/V 単位体積あたり交換熱量, Greeks ε 乱流運動エネルギー(k)の 散逸速度, [m2/s3] λ 熱伝導度, [W/m K] [MW/m ] µ 粘度, [Pa s] R 円(弧)の半径, [m] ρ 密度, [kg/m3] Re Reynolds 数, [-] ρ0 円管の中心半径, [m] S エントロピー, [J/kg] σ 応力, [Pa] t 円管の肉厚, [m] φ 角度, [degree] 3 もしくは時間項 iii 第1章 1-1 序論 はじめに 現在の我が国の原子力発電の主流は軽水型炉が担っている。その軽水型炉ではウラン が主燃料として用いられているが、ウランの同位体の内、核分裂を起こすウラン 235 は 自然な状態では約 0.72% [1-1] しか存在せず、資源の枯渇が心配されている。それに対 して、高速炉では高速中性子によりウラン 238 からプルトニウム 239 への転換反応が発 生し、これによりウラン資源をより有効に用いる事が可能となる。アメリカ DOE の原 子力エネルギー科学技術局が提唱する GEN-4 の次世代原子炉として数多くの種類の高 速炉が挙げられているのも [1-2]、上記のような理由で高速炉に大きな期待が寄せられ ているためである。 現在日本で開発が行われている高速炉は主にナトリウム-水冷却型高速炉である。こ れは炉心の冷却には金属ナトリウムを、そして最終的に水を沸騰させた蒸気によりター ビンを回して発電するものである。そこで懸念されている事の一つが蒸気発生器におけ る事故である。ナトリウム-水反応は非常に激しく [1-3]−[1-5]、その両者が接近する蒸 気発生器において事故が発生した場合、ナトリウムと水が接触すれば多大な被害が出る 事は想像に難くない。そこで、水/蒸気系の代わりに二酸化炭素(CO2)を利用する、 Na-CO2 ガスタービンサイクル(図 1-1)が提唱されている [1-6] [1-7]。ナトリウムと CO2 の反応は遅いため [1-8]、仮に Na-CO2 ガスタービンサイクルで中間熱交換器の破断事故 が起こったとしても副次的な被害を最小限に抑える事ができ、水/蒸気系の場合と比較 して原子炉全体の安全性をかなり高めることができる。また、二次系のナトリウムルー プを削除できる可能性があり、建設コストの低減が期待できる。さらに、Na-CO2 ガス タービンサイクルは CO2 の臨界点付近で現れる圧縮仕事低減の効果を有効利用する事 で、サイクル効率を上げる事ができる[1-9]−[1-11]。すなわち、Na-CO2 ガスタービンサ イクルは性能面そして安全面で優れた次世代原子炉であり、注目に値する。 図 1-1 に示した Na-CO2 ガスタービンサイクルの各装置の中で、本論文では特に再生 熱交換器に注目した。再生熱交換器は、タービン出口のガスが持つ余熱を、圧縮機を出 た後のガスに移すための熱交換器である。高速炉の Na-CO2 ガスタービンサイクルの CO2 は最大圧力が約 20 MPa、最高温度約 800 K (527°C) に達し、その補器である再生熱 交換器にも高い信頼性が求められる。その高温に耐えられる材料しか用いることができ ず、また、その高圧に耐えられるように製造しなければならない。温度・圧力条件から は設計の難しい装置であると言える。 また、再生熱交換器がこのサイクル全体の効率に与える影響は大きい[1-12] [1-13]。 1 そして、この再生熱交換器においてさらに圧力損失を低く抑えられれば、圧縮機の仕事 量が低減され、さらなるサイクル全体の効率上昇につながる。 このように、再生熱交換器には、高耐圧性・高耐温性・高効率・低圧力損失が求めら れており、また、一般的な話として装置の小型化も求められている。非常に設計の難し い装置であると同時に、サイクル効率の上昇に大きく寄与できる装置であるとも言える。 本論文では、その高速炉に適用する Na-CO2 ガスタービンサイクルの開発を助けるべ く、再生熱交換器の性能上昇および設計効率の向上を目指して研究を行う。 1-2 熱交換器の開発研究の現状 (1) 熱交換器の分類 熱交換器は高温側流体と低温側流体を至近距離に接近させることにより熱交換させ るもので、様々な工業製品・工業ループに数多く用いられ、作業流体を目的の温度に導 く目的や、ループの熱効率を上昇させる目的で使用されている。 その分類法には様々な物があるが、熱交換器をその構造から分類すると、チューブ式、 プレート式、拡大面式、再生式に大別される。 (図 1-2 参照, [1-14]) 以下に、それぞれの熱交換器に関して述べ、さらに本論文で着目した、MCHE (マイ クロチャンネル熱交換器、Microchannel Heat Exchanger) の現状であると言える PCHE (プリント回路型熱交換器、Printed Circuit Heat Exchanger) に関して詳しく述べる。 (2) チューブ式 チューブ式熱交換器は、二重管型(図 1-3(a)) 、シェルアンドチューブ型(図 1-3(b)) 、 スパイラルチューブ型、パイプコイル型などに小分類される。一般的に構造がシンプル であるため、耐圧性・耐熱性に優れる。よって、高真空から高圧までの幅広い圧力条件 に適用され、温度に関しても幅広く適用可能である。 なかでもシェルアンドチューブ型は、多管円筒式とも呼ばれ、大きな円筒(シェル) の中に伝熱管(チューブ)を設置する。チューブのなかを通る加熱(もしくは冷却)体 と、その外側でシェルの中を流れる被加熱(被冷却)流体との間で熱交換するものであ る。 シェルアンドチューブ型熱交換器は特に広く用いられており、一般工業分野のみなら ず、その高い信頼性から、原子力分野でも蒸気タービンの蒸気発生器(図 1-4) ・再生熱 交換器(図 1-5)などに用いられている。 2 研究内容も幅広く、シェルとチューブの組み合わせ方(平行流・対向流・直交流の差、 シェル内でチューブを折り返す回数)や[1-17]−[1-19]、シェル側の熱伝達を向上させる ために配置するバッフルの構造・配置など[1-20]−[1-22]に関して研究が行われている。 一方、シェルアンドチューブ型を含むチューブ式熱交換器は、図 1-6 に示すようにそ のシンプルな構造ゆえに体積あたりの伝熱面積(伝熱面密度)の拡大が難しく、ゆえに 交換熱量に対して熱交換器の長さ・体積が非常に大きくなるという欠点を抱えている。 (3) プレート式 プレート式は主にプレートアンドフレーム型(以降、プレート型と省略)に代表され る。主に、薄くて凹凸のある金属プレートをガスケットを挟んで積層し、ボルトなどに よって固定して使用する(図 1-7) 。ガスケットとボルトによる固定では、使用できる温 度・圧力条件に制限があるため、場合によっては溶接やろう付けによりプレートを接合 する。 プレート型熱交換器はそのプレートに施す凹凸パターンの作り方によって伝熱性能 が変化する [1-23]。伝熱性能はチューブ式と比べれば高く、総括伝熱係数にして、約 3−5 倍である。その凹凸パターンは主にプレス加工で作成されるため、製作コストも安 い。軽量であり、特にボルトにより固定しているものでは、簡単に分解できるため、整 備性も高い。 一方、一般にプレート式の熱交換器は構造がシンプルであるがために、チューブフィ ン型と同じく伝熱面密度が小さい(図 1-6) 。チューブ式と同じく、交換熱量に対して熱 交換器の長さ・体積が大きくなる欠点がある。また、プレートの固定方式によってはあ まり高温・高圧には耐えられない。 また、このプレート式に分類される PCHE は、プレート式熱交換器の一般的な弱点で ある伝熱面密度の小ささと耐熱・耐圧面の弱点を克服したものであり、本論文での着目 点の一つである。よって、PCHE に関してはその詳細を本章(6)にて後述する。 (4)拡大面式 最も簡単に伝熱性能を向上させる方法は、その伝熱面積を増加させる事である。そこ で、シンプルな形状であるチューブ式・プレート式熱交換器にフィンを取り付けてその 伝熱面積を増加させたものが、それぞれチューブフィン型・プレートフィン型熱交換器 である。 3 チューブフィン型の熱交換器は主に気相と液相の熱交換に用いられ、相対的に熱伝導 効率の低い気相の伝熱をその拡大された伝熱面積で補う形で用いられる。そのフィン形 状は様々な形が試され(図 1-8 参照) 、その伝熱性能が計測されてきた [1-24]−[1-26]。 プレートフィン型の熱交換器は、図 1-9 に示すように仕切り板の間に波状のフィンを 設置し、伝熱面積の拡大を行っている。その波状フィンの形状に性能が大きく左右され る。チューブフィン型と同様、図 1-10 に示す様な様々なフィン形状が試され、性能測 定がおこなわれている [1-17] [1-28]−[1-31]。プレートフィン型の前身ともいえる平板を 用いたプレート型熱交換機から、フィン形状の変化による伝熱性能の変遷を図 1-11 に 示す。平板のプレート型熱交換器と比較すると、最近のルーバーフィン型熱交換器(右 から二番目)では同一の交換熱量に要する体積が約 1/4 となり、熱交換器の大幅なコン パクト化に成功している。また、フィン形状を複雑にすると、さらなる伝熱性能の向上 が期待でき、そのような研究も良く行われている [1-33]。 これら拡大面式熱交換器は、伝熱面密度に優れ(図 1-6)伝熱性能が高い一方、伝熱 性能を向上させるために細かい部品の取り付けを行う事で、加工に手間がかかる。加工 の手間は、製作コストの上昇につながり、また、耐熱・耐圧性能の低下を招く。 (5) 再生式 再生式は、蓄熱式とも呼ばれ、間欠運転またはマトリックスを回転させることにより、 各作動媒体や蓄熱部を時間的に分離して熱交換を行うものである(図 1-12, 図 1-13) 。 伝熱面密度は他の方式の熱交換器と比べ高い(図 1-6)ものの、作動する部品を含んで いるため、高温・高圧となる厳しい条件ではあまり採用されない。 (6) PCHE (Printed Circuit Heat Exchanger) 図 1-2 でプレート式熱交換器の一種として挙げられている PCHE は、英国の Heatric 社が持つ登録商標である[1-34]。流路を金属プレート上に化学エッチングにより作成し (図 1-14)、そのプレートを拡散接合により一体化して熱交換器を構成する。図 1-15 に PCHE の構造の一例を示す。高温側流体は天板の四隅に設けられた穴の一つから導入さ れる。穴は各プレートを貫通しており、高温側となるプレートでのみ高温側流体の流れ る穴が分配部と接続している。流体は分配部を通じて伝熱の主要部分であるパターン部 分に流れる。その際、熱交換器の長さの大部分を占めるパターン部分でほとんどの圧力 損失が生じるため、分配部は圧力損失があまり生じない簡単な構造でありさえすれば、 各プレートに均等に流量が配分されることとなる。パターン部分を過ぎた後、流体は導 入された穴の対角線に当たる穴から排出される。低温側流体も同様に、高温側流体と対 向流になるように導入され、低温側のプレートを通り、排出される。 4 PCHE では、その流路は金属板上に化学エッチングによって刻まれる。流路形状はレ ーザー加工されたマスクフィルムによって形成される。流路を機械的にではなく化学エ ッチングを用いて作成するため、流路径の小さい複雑な形状の流路パターンであっても 製作コストの上昇を招かずに作製可能である。 PCHE の示す高性能は、主に流路を小さくする事により得られたものである。水力等 価直径 Dh の変化により Colburn の j ファクターが変化しないと仮定すると、Dh の減少 に比例して必要熱交換長さ L が減少する [1-32]。 j= Dh 2 / 3 Pr N 4L (1-1) ただし、N : number of thermal unit N= Tout − Tin ∆TLMTD (1-2) また、一般に流路径が減少すると耐圧性も向上する。円管の場合、その内圧による応 力σ は σ= pρ 0 p ( D h + t 2) = 2t 2t (1-3) と表わされ(ただし、t は円管の肉厚、p は円管の内圧、ρ0 は円管の中心半径) 、一定の 内圧 p から受ける応力σ は、Dh にほぼ比例して減少する。他の流路形状であっても一 般的に流路径の減少は内圧による応力を減少させることが知られており [1-35]、流路断 面形状が半円状である PCHE にも流路径減少による耐圧性向上効果は同様に表れると 考えられる。 以上の結果より、流路径の減少は、伝熱性能・耐圧性能の両面を向上させることにな る。 また、それぞれの流路が刻まれた金属板は拡散接合によって一体化される。拡散接合 は、真空に近い環境下で、高温と高圧をかける事で金属板同士を完全に一体化する。そ のため、母材金属の特徴である高耐熱性・耐圧性、そして高伝熱性をそのまま PCHE の 特徴とすることができる。 すなわち、エッチングによる微細な流路と拡散接合の両手法から PCHE は高伝熱性 能・高耐圧性能を得られることとなり、非常に高性能となる事が期待できる。 耐久性と伝熱性能に関しては、500−1000 bar 程度の耐圧性と 900°C までの耐温性を示 し[1-36]−[1-40]、98%以上の効率を持って従来の熱交換器と比較して大きさが 1/4−1/6 と なるとされている。 PCHE は、小さな流路径により高伝熱性能、高耐熱・耐圧性能という利点を持つ一方、 5 その小さな流路径により摩擦損失が大きくなり高圧力損失を生じる傾向にあることが 課題として挙げられる。圧力損失は熱交換器にとって重要な特性の一つであり、圧力損 失が高いとポンプ等に余剰の負荷がかかる。ポンプへの余剰の負荷は、ポンプ自体の寿 命を縮める事や、高圧力損失に耐えられるポンプへの仕様変更を引き起こす事が考えら れ、経済的な負担を増す可能性が高く、それゆえに高圧力損失の熱交換器は使用箇所が 限られることになる。PCHE は特に伝熱面で高性能であるにも関わらず、これまでの工 業目的での導入例が目立たないのは、この高圧力損失の問題に起因すると推測される。 また、PCHE はエッチング・拡散接合を用いて製作されるため、全てを金属材料とす る必要があるために熱交換器が重く、高価となる。 1-3 MCHE (Microchannel Heat Exchanger) PCHE は伝熱性能に関しては高性能であるが、その代償として圧力損失増大の傾向に ある事、そして、重量が重い、高価であるという欠点を抱えている。その欠点を解消す るべく、拡散接合や金属材料の使用に拘らない MCHE という新たな熱交換器の分類を 考案した。 流動の分野ではマイクロチャンネル (Microchannel) という用語は、浮力や重力の影響 を無視しうる、流路径 100−数百µm の流路に対して用いられことが多い。ただし、マイ クロチャンネルという用語も定義が厳密に定まってはおらず、およそ 1 mm 程度の流路 径を持つ熱交換器に関してもマイクロチャンネルとして扱われる場合がある[1-41] [1-42]。一方、化学エッチングによる流路作成では 1 mm から 100 µm 程度の流路直径を 容易に作成可能である。新規に作成する熱交換器の分類でも化学エッチングによる流路 の生成を考えている事から、その熱交換器はマイクロチャンネルという言葉を用いて MCHE(Microchannel Heat Exchanger)という呼称で表記することとした。 MCHE では前述したように PCHE と同様に化学エッチングにより金属板上に微細な 流路を作成する。一方、その金属板の接合方法に関して、PCHE のように拡散接合に限 定することなく、様々な接合方法を適用する事を考える。その熱交換器の作動条件によ り、拡散接合のみならず、溶接・ろう付け・ボルト締めなどを利用して一体化する事で、 製作コストの増加を抑える。また、外周部など伝熱への寄与が小さい箇所にプラスチッ ク等の軽量・安価な材料を利用する。これにより、さらなる低価格化、そして、軽量化 に期待する事ができる。 また、将来的には、伝熱に大きく寄与する箇所にも高伝熱性プラスチックの適用など 6 を考えている。一般的にプラスチックの熱伝導度は 1 W/m K 以下であるが、それにカ ーボンナノチューブを混入することなどでその熱伝導度をおよそ 40 W/m K まで向上さ せる事が可能と見られている [1-43]−[1-45]。 熱伝導度 40 W/m K という値は金属材料から比較すれば小さい。一方、熱交換器内部 では高温側流体周辺から低温側流体周辺へという伝熱の他に、温度の高い高温側入口 (低温側出口)から高温側出口(低温側入口)への流れ方向の伝熱がある。熱交換器本 体の熱伝導度が高いと、この流れ方向の伝熱も促進される。 計算コードにより解析を行った場合の研究で[1-46]、一次元的な計算(高温側から低 温側のみの伝熱計算)では材質の熱伝導度が向上すると伝熱効率も向上するが、二次元 的な計算(流れ方向の伝熱も加えた計算)では図 1-16 に示す様に伝熱効率が最大とな るのは、熱伝導度がおよそ 11 W/m K となる場合である。それより熱伝導度が大きくな っても、流れ方向の伝熱が促進されて高温側から低温側への伝熱は減少し、熱交換器の 性能向上にはつながらない。実際の熱交換器は三次元であり、伝熱経路がさらに複雑と なる。三次元の計算形状を用いて行った別の研究では図 1-17 に示すように 110 W/m K 付近で伝熱性能が最大となったという報告もあり [1-47]、いずれによっても数十から 100 W/m K 付近で伝熱性能が極大となっている。したがって、熱伝導率 40 W/m K の高 伝熱性プラスチックを用いることができれば、金属材料を用いた場合に充分に匹敵する 伝熱性能を示す熱交換器が作成できる可能性がある。 現在の高伝熱性プラスチックはその強度や成形性に難があるが、それらの問題が解決 されれば、全プラスチック製の MCHE も作成可能となる事が期待できる。マイクロチ ャンネル流路をプラスチック板に加工できれば、化学エッチングによる流路作成も不要 となるため、軽量化に加えてさらなる低価格化に期待する事ができる。そうなれば、 PCHE で問題であった重量・価格の問題は解決され、残る問題は圧力損失のみとなる。 以上の事から、MCHE を「微少な径の流路を刻んだプレートを積層して一体化した熱 交換器」として定義することで、PCHE の長所である高伝熱性能を生かしながら、同時 に PCHE の短所である重量・価格の問題を解決し、非常に高性能な熱交換器の分類とな ることが MCHE には期待できる。そして、本論文では、その MCHE に残る圧力損失増 大の問題を解決するため、流路形状の改良を行う事を主な目的として、研究を行う。 MCHE(および PCHE)は現在試作品として研究開発されている状態であり、その製 造コストが高いため、MCHE の流路最適化の際に試作品での試験を繰り返す方法では非 常にコストが高くなる。よって、本論文では数値解析によって流路を最適化する事を選 択した。 7 また、数値解析の方法としては、三次元伝熱流動解析コード (Three dimensional-computational fluid dynamics, 3D-CFD) 、 直 接 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン (Direct simulation)、Large eddy simulation (LES) などが用いられることが多い。本論文の目的は CO2 を利用する熱交換器の流路形状の開発であり、中-大規模の範囲で、一般的な流体 の挙動に関しての解析である。LES は莫大なコンピュータリソースと時間を要し、中- 大規模の解析には向かない。また、本論文の目的は一般的な流体に対する挙動を得る事 である。そのような一般的な流体に対する計算は CFD を用いて行われる事が多く、数 多くの解析実績があり精度にも問題がないと思われた事から、本論文でも CFD による 解析を選択した。CFD コードとしては FLUENT [1-48] や STAR-CD [1-49]、PHOENICS [1-50] 等が代表的な物として挙げられるが、 本論文ではその中で FLUENT を選択した。 これは、非構造メッシュを用いた解析に関して FLUENT はその他のコードと比較して 精度面で優れる傾向にあり、複雑な流路形状を作成する MCHE の解析には的確である と判断したためである。 1-4 本研究の目的 高耐温性・高耐圧性・高耐腐食性と優れた性能を示し、Na-CO2 ガスタービンサイク ルの再生熱交換器とするのに極めて適した MCHE に関して、その欠点となる圧力損失 増大の傾向を解消する為の研究を行う。従来の MCHE(PCHE)で一般的に用いられた 流路形状に対して、3D-CFD を用いて、熱交換器の流路内部での流動挙動を解析する。 その結果から従来の流路形状の欠点を把握し、圧力損失の少ない新型の流路を開発する。 CFD を用いて新型流路形状の詳細を解析した後、その流路形状を適用した試験体を製 作する。こうして、新型流路形状の伝熱流動特性への影響を数値解析的に、そして、実 験的に検証する。こうして、新型流路形状の有効性が確認されれば、さらなる設計の簡 便化を目指して、新型流路形状を対象とした Nusselt 数相関式を作成し、その精度を確 認する。 以上のように、Na-CO2 ガスタービンサイクルの再生熱交換器に関して、数値解析に より圧力損失の低減を主とした最適な熱交換器を提案し、実験との比較によりその精度 を明らかとし、さらにその設計を相関式の作成により省力化する事が本論文の目的であ る。 1-5 本論文の概要 本論文は以下の 6 章にて構成される。 8 まず第 2 章では、MCHE の従来品である PCHE に適用された流路に関して解析を行う。 高圧力損失の原因を探り、その問題点を解消するために流路に変更を加える。その結果、 「S 字フィンモデル」流路形状に辿り着くまでの開発の経緯を示す。 第 3 章では、S 字フィンモデル流路に関して、その S 字型フィンの形状に関する詳細 な考察をシミュレーション計算により行う。 S 字型フィンの形状による伝熱流動挙動への影響を明らかにするため、フィンの形状 を支配するパラメータを逐次変化させて、その伝熱性能・圧力損失性能の変化をまとめ る。 第 4 章では、前章にて数値解析により新規開発された S 字フィンモデル流路と、従来 の MCHE に一般的に用いられてきたジグザグモデル流路の実験的な比較を行い、S 字 フィンモデルの効果を研究する。 それぞれの流路形状を用いた MCHE 試験体を製作し、 それらの試験体を用いた実験を行い、その結果を示す。実験データの整理を行い、S 字 フィンモデルとジグザグモデルの伝熱性能および圧力損失性能の比較を行う。また、該 当する流路に対する CFD 計算結果との比較を行い、CFD 計算結果と実験結果との流路 モデル間(S 字フィンモデルとジグザグモデル)の伝熱性能・圧力損失性能の傾向を明 らかとする。 また、実際に作成した S 字フィンモデル試験体の流路を光学測定した結果より、実際 のフィン形状とその設計形状との差を明らかにした上で、 その形状差を含めた形で CFD 計算結果に補正を加え、シミュレーション計算による性能予測の精度を明らかにする。 この章ではさらに、S 字フィンモデル以外の流路形状に関しても形状パラメータを変 化させて、S 字フィンモデルとの違いを検証する。それにより S 字フィンモデルの流動 状態の特徴を詳細に把握する。S 字フィンモデルでは低圧損・高伝熱が実現されている が、詳細な流動状態を把握する事でその要因を見つけ出すことを目的とする。また、 CFD で計算される流れが実際の流路で起きるのか確認するために、高速度ビデオカメ ラを用いて CO2 の二相流における各流路モデルでの流動挙動を観測する。 第 5 章では、熱交換器設計に広く用いられる Nusselt 数相関式を S 字フィンモデルの MCHE に対して作成する。 実際に Na-CO2 ガスタービンサイクルで用いられる再生熱交換器および中間熱交換器 の条件は最大圧力 20 MPa, 最高温度 800 K と非常に高温・高圧であり、その条件を実 験で再現するためには大規模な実験装置が必要となり、費用も高くなる。一方、CFD による数値解析では圧力の設定は自由であり、高温・高圧の条件下でも作業流体の物性 9 値が既知であれば計算が可能である。そこで、CFD を用いて実機の作動条件と本論文 で実験を行った条件とを含む広範囲を対象として Nusselt 数の相関式を作成することで、 実機の設計を容易にすることを目的とする。 その際、広範囲の計算条件内に擬似臨界点が含まれる。擬似臨界点では流体の物性値 が急激に変化する。そのため、CFD による計算では収束性やその精度が悪化する事が 懸念される。そこで、流体が入口から出口までに受ける温度変化が小さくなるようにシ ミュレーション計算の条件を設定し、入口条件を変化させて複数得る計算結果を多変量 解析でまとめる事によって Nusselt 数の相関式を求める。入口から出口までに受ける温 度変化が小さいため、流体はほぼ一定の物性値を持つと仮定できるため、擬似臨界点の 影響を回避できる可能性がある。こうして、再生熱交換器用の相関式に求められる計算 範囲よりも影響を受ける度合いが大きい、家庭用 CO2 ヒートポンプ(エコキュート)の 給湯器の条件を用いて擬似臨界点の影響を確認する。そして、擬似臨界点の影響を回避 できる事が確認した後に、再生熱交換器用に Nusselt 数の相関式を求め、その精度を第 4 章の実験結果から明らかにする。 以上のようにして、MCHE の圧力損失低減を目指して、数値解析を用いた新型流路形 状の開発と詳細な解析を行い、実験による検証を行う。そして、その新型流路形状を用 いた熱交換器の設計を簡便化するために、Nusselt 数相関式を作成する。新型開発流路 を用いることにより圧力損失を低減した高性能 MCHE を再生熱交換器として利用する ことで、注目されている Na-CO2 ガスタービンサイクルが高効率を達成し、次世代原子 炉として活躍する一助となる事を期待するものである。 10 タービン 圧縮機 20 MPa, 340 K 中間熱交換器 原子炉 350 K 7.3 MPa, 697 K 再生熱交換器 658 K (温度・圧力は一例) 図 1-1 Na-CO2 ガスタービンサイクル 系統図 チューブ式 二重管 シェル& チューブ スパイラル チューブ パイプ コイル プレート式 プレート& フレーム スパイラル 拡大面式 プレート フィン 図 1-2 プレート コイル PCHE 再生式 ロータリー チューブ フィン 固定マト リックス 回転 フード 熱交換器の構造による分類(出典 参考資料[1-4]) 11 流体 1 伝熱面 流体 2 (a) 二重管型 衝突板 流体 2 出口 流体 1 入口 シェル チューブ バッフル支え ベント 流体 2 入口 バッフル 流体 1 出口 (b) シェルアンドチューブ型 図 1-3 代表的なチューブ式熱交換器(出典 ともに [1-15]) 12 蒸気出口ノズル 上部鏡 上部胴 給水入口ノズル 円錐胴 中間胴 下部胴 管板 水室 一次冷却材 出入口ノズル 図 1-4 図 1-5 蒸気発生器モデル図 泊原子力発電所 再生熱交換器(出典 [1-16]) 13 再生式 プレートフィン型 チューブフィン型 プレート型 シェルアンドチューブ型 50 100 500 1000 5000 伝熱面積/体積, [m2/m3] 図 1-6 図 1-7 各種熱交換器の伝熱面密度(数値出典 [1-23]) プレート式熱交換器 14 模式図(出典 [1-23]) 10000 図 1-8 様々なチューブフィン(出典 [1-24]) 図 1-9 プレートフィン型熱交換器模式図(出典 [1-27]) 15 図 1-10 プレートフィン型熱交換器のフィン形状(出典 [1-27]) プレート型 直線フィン 直線フィン(分散型) ルーバーフィン 平滑 体積比 ルーバーフィン MCHE 溝付き 内側溝付チューブ 小流路径 半円形流路 年 図 1-11 プレートフィン型熱交換器の進歩(出典 [1-32] 一部改編) 16 (a) 軸流形 図 1-12 図 1-13 (b) 半径流形 ロータリー型熱交換器(出典 [1-27]) 固定マトリックス型熱交換器(出典 [1-27]) 17 図 1-14 化学エッチングによる流路の作成例 低温側流体 高温側流体 図 1-15 MCHE プレート構成 18 Efficiency, [-] λwall [W/m K] 図 1-16 熱交換器の材質熱伝導度と伝熱効率(出典 [1-46]) 通常のプラスティック 機能性プラスティック 1700 1650 22 U, [W/m OHTC [W/m K] K] 1600 1550 Max (112.5, 1670.8) 最大値 1500 1450 1400 1350 Al SS 1300 0 50 100 150 200 Cu 250 300 350 400 Conductivity [W/mK] wall λ 図 1-17 , [W/m K] 三次元形状における材質の熱伝導度と総括伝熱係数(出典 [1-47]) 19 参考文献 [1-1] J. 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はその流路直径が 1 mm 程度である。その内部での流動挙 動を確認するべく、Reynolds 数をおおまかに見積もった。 25 Reynolds 数,Re を Re = v Dh M Dh = (µ / ρ ) Ac µ (2-1) と定義する。ただし、v は流速 [m/s]、Dh は水力等価直径 [m]、µ は粘度 [Pa s]、ρ は 密度 [kg/m3]、M は質量流量 [kg/s]、Ac は流路断面積 [m2]である。 従来型 PCHE の設計値から質量流束 G (= M/Ac) を 100 [kg/m2 s] のオーダーとすると、 CO2 の粘度は再生熱交換器の条件で 10-5 [Pa s] のオーダーであることから、Dh が 1 × 10-3 [m]の時、Reynolds 数は 104 のオーダーとなる。ここでの計算は大まかなものであるの で、範囲を広めに見て Reynolds 数が数千になることも考慮し、流路内の流動挙動は乱 流、もしくは、遷移領域に近い乱流とみて、低 Reynolds 数でも適用可能な乱流モデル の検討を行った。 乱流モデルに関しては k-ε モデルの使用を前提に検討を行った。k-ε モデルは計算機の メモリの使用量が少なくても比較的精度の良い計算結果を得られる効率的なモデルで ある。また、本研究では熱・流動ともに高精度が求められていることから、作業流体の 実効熱伝導度をより正確に評価する RNG (ReNormalization Group) k−ε モデルを中心に 考えた。k-ε モデルは、運動の Navier-Stokes 方程式を k とε に関する二つの輸送方程式 によって解く手法であるが、RNG k-ε モデルでは、その k とε に関する二つの輸送方程 式を改良する事で、より膨張流や渦流れに関して正確に解くモデルである。 FLUENT の RNG k-ε モデルでは、k とε に関する輸送方程式を次のように表す [2-1]。 ∂ (ρk ) + ∂ (ρkui ) = ∂ ∂t ∂xi ∂x j ⎛ ⎞ ⎜α k µ eff ∂k ⎟ + Gk + Gb − ρε − YM + S k ⎜ ∂x j ⎟⎠ ⎝ (2-2) ∂ (ρε ) + ∂ (ρεui ) = ∂ ∂t ∂xi ∂x j 2 ⎛ ⎞ ⎜αε µeff ∂ε ⎟ + C1ε ε (Gk + C3ε Gb ) − C2ε ρ ε − Rε + Sε ⎜ ∂x j ⎟⎠ k k ⎝ (2-3) ここで、Gk は平均流速の勾配による乱流エネルギーの生成を表し、Gb は浮力による 乱流エネルギーの生成を表す。YM は圧縮流が部分的に膨張した時の全体の乱流粘性比 に対する寄与を示し、Sk と Sε はユーザーが追加できる補正項である。xi, xj は座標を、 ui は速度の x, y, z いずれかの一成分を示す。C1ε, C2εは定数(FLUENT のデフォルトでは C1ε = 1.42, C2ε = 1.68、変更可能)である RNG k-ε モ デ ル と 他 の k-ε モ デ ル と の 違 い は 、 主 と し て Rε 項 に よ る 補 正 と 26 Renormalization Group Theory(RNG 理論 [2-2])により求められる実効粘性係数µeff にあ る。 Rε は次の式(2-4)で表わされる。 Rε = C µ ρη 3 (1 − η η 0 ) ε 2 1 + βη 3 (2-4) k ただし、η = S k/ε, η0 = 4.38, β = 0.012 急激に流れが曲げられると、η > η0 となり、Rεはε に対して負の補正を加える。この 補正の為に、流れの向きが急激に曲げられる場合には RNG k-εモデルはより正確にその 流動挙動を評価する。 µeff は RNG 理論により、無次元化された形 νˆ (≡ µeff/µ)で以下の式から求められる。 ⎛ ρ 2k d⎜ ⎜ εµ ⎝ ⎞ νˆ ⎟ = 1.72 dνˆ ⎟ 3 ˆ 1 ν C − + ⎠ ν (2-5) ただし、Cν ≈ 100。 これにより、低 Reynolds 数領域や壁近傍においてより正確に流動挙動を評価するこ とができる。 また、αk, αe はそれぞれ次の式で表わされる k, ε に対する実効 Prandtl 数の逆数であ る。 α − 1.3929 0.6321 a0 − 1.3929 α + 2.3929 α 0 + 2.3929 0.3679 = µ mol µ eff (2-6) ここで、α0 = 1.0 である。 エネルギーに関しては RNG k-ε モデルでは以下の輸送方程式を解く。 ⎛ ∂ (ρE ) + ∂ [u i (ρE + P )] = ∂ ⎜⎜ k eff ∂T + u i (Tij ) eff ∂t ∂xi ∂x j ⎝ ∂x j ⎞ ⎟ + Sh ⎟ ⎠ (2-7) ここで E は全エネルギー、keff は有効熱伝導度であり、P は圧力、T は温度を示す。(Tij)eff は偏差応力テンソルで下の式で定義される。 ⎛ ∂u j ∂ui (Tij ) eff ≡ µ eff ⎜ + ⎜ ∂xi ∂x j ⎝ ⎞ 2 ⎟ − µ eff ∂u k δ ij ⎟ 3 ∂xk ⎠ (2-8) また、keff は次の式で計算される。 k eff = α C p µ eff (2-9) 27 α= α − 1.3929 0.6321 a 0 − 1.3929 ただし、α 0 = 1 Pr = α + 2.3929 α 0 + 2.3929 0.3679 = µ mol µ eff (2-10) k µC p これらの式は液体金属のように低い Prandtl 数(Pr ≈ 10-2)からパラフィン油のような 高い Prandtl 数(Pr ≈ 103)の領域まで成り立つ。このαが変化する事により、RNG k-ε モ デルは低 Reynolds 数の領域でも他のモデルと比較してより正しい伝熱評価を行うこと ができる。 主として上記の補正により、RNG k-ε モデルは流れの曲がりが急である場合や低 Reynolds 数の領域で他のモデルと比較してより正確な伝熱流動評価を行うことができ、 本研究の解析に適していると判断した。 その RNG k-ε モデルの精度を確認する為に、図 2-2 に示す曲げられた円管の圧力損失 を、RNG k-ε model と RSM(Reynolds stress model)の両乱流モデルを用いて計算した。 RSM は渦粘性が等方的であるという仮定を用いずに、Reynolds 応力に関する、より多 数の式を仮定して Navier-Stokes 方程式を解くモデルであり、k-ε モデルとの比較には適 していると考えた。 この両者計算値との比較には Weisbach の求めた実験式を用いた。圧力損失係数は式 (2-11)で定義する形で計算した。 ⎛ l ⎞⎛ ρ v 2 ⎟⎜ ∆P = f ⎜⎜ ⎟⎜ ⎝ Dh ⎠⎝ 2 ⎞ ⎟ ⎟ ⎠ (2-11) 図 2-3 に示すように、RNG k-ε モデルは曲げられた円管の圧力損失を、曲げ角度 60° 以下の範囲で良く再現している。よって、本論文では乱流モデルとして RNG k-ε モデ ルを用いる事とした。また、空間の離散化には二次精度を用いた。 また、CO2 等の流体の物性値に関しては PROPATH [2-3] を元に定圧と仮定した物性 値表を作成し、温度に関して内挿して物性値を決定する方式をとった。 メッシュサイズに関して、その妥当性を見るために、0.2 mm を基本サイズとし壁近 傍には最少厚み 0.015 mm とする 5 層の境界層を配置したものと、その半分のメッシュ サイズである、0.1 mm を基本メッシュサイズとし壁近傍には最少厚み 0.0075 mm とす 28 る 5 層の境界層を配置したもの、二種類のメッシュサイズの異なる形状を作成し、同一 の計算条件を用いて計算を行った。メッシュ分割の様子を図 2-4 に示す。 計算の結果を表 2-1 に示す。メッシュサイズを 0.1 mm にした場合でも、0.2 mm の時 と比べて伝熱量の差は 0.2%以下であり、圧力損失は約 3%の違いに留まった。これは充 分に小さいものであるので、計算時間と計算機のメモリ容量の面から、以降の計算に用 いるメッシュサイズは(a)と同様、0.2 mm を基本サイズとし、壁近傍には最少厚み 0.015 mm とする 5 層の境界層を配置したものとした。 計算モデルの形状寸法はモデルによって異なるが、約 120×10×4.8 (mm)、メッシュ数 はおよそ 300 万である。DELL Precision460 ワークステーションの Intel Xeon プロセッサ ー4 個を用いた並列計算で、収束までに 1 ケース当たり約 2 日費やした。 2-4 従来モデルに対する解析結果 図 2-1 に示したジグザグモデルに関して、その設計条件を用いて解析計算を行った。 図 2-5 に流路の中央の深さで見た、一般的なジグザグモデル流路形状での流れのベク ター図を示す。矢印の長さと色はその矢印の根元の位置における流体の速度の大きさを 表し、矢印の向きは流れの方向を示す。 このモデルでの流れの特徴として、流体の大部分は流路の一部のみを流れ(その部分 は主流と呼ばれる)、残りの部分では流速が小さく、場所によっては主流に対する反流 として逆流が発生している事が挙げられる。 流路の一部のみで主流が発生し他の部分では逆流が発生している状況は、流路の全体 が効率良く利用されていない事を意味する。この点を改良し、作業流体が流路全体を均 等に流れるような流路形状を作成すれば、圧力損失を低減できると考えた。 また、図 2-5 に示されている通り、鋭角的な流路形状では流れの剥離が見られる。流 れが剥離すると乱流が促進され、伝熱性能が向上すると考えられる。従来よくジグザグ モデルの流路が適用されてきた事には、この流れの剥離による伝熱性能向上も目的の一 つとしていると推測されるが、流れの剥離は圧力損失の増大を招くため、新規開発の流 路形状では鋭角的にはせず、別の方法で乱流の促進を図る事とした。 29 2-5 流路の新規開発 新型流路の開発は、図 2-5 に示した結果と比較を容易にするため、図 2-5 の流路形状 と同一のフィン長さ・フィン幅・フィン間隔を用いて行った。 従来良く用いられてきたジグザグモデル流路(図 2-6(a))では流れの剥離による乱流 の促進によって伝熱は増大するものの、流路の一部に逆流が発生し圧力損失が増大する ことが明らかとなった。流れを剥離させないために、流路を滑らかな曲線で構成するこ とを考えた。滑らかな曲線としてサインカーブを選び、作成したのが (b) に示すサイ ンカーブモデルである。サインカーブモデルは圧力損失の低減を実現することはできた が、図 2-7 に示すように流れがフィンとフィンの間を最短距離をつなぐ線上に集中し、 他の領域では流れが停滞した。その結果、伝熱性能が低下する [2-4]。 サインカーブモデルにおける流れの停滞を改善するために、フィンを中断して不連続 的な配置とすることを考えた。すなわち、サインカーブの山と谷でフィンを中断し(図 2-6(C))その中断したフィンの半数の位置をずらしてオフセット配置とした(同(d))。 そしてフィン先端の形状を圧力損失面を考慮して滑らかな形状として(同(e))、新型の 流路形状『S 字フィンモデル』を考案した。サインカーブそのままの形状から S 字フィ ンモデルを作成すると、流れから見たフィンの背面などで流れが剥離する状況が見られ たため、細かい形状を修正して最終的な S 字フィンモデルの形状が完成した。 2-6 新型流路形状――S 字フィンモデル 前掲図 2-5, 2-7 と同じ流体条件を用いて計算された、一般的な S 字フィンモデルの流 路形状における流れのベクター図を図 2-8 に示す。 前述のジグザグモデルで改良すべき点として挙げた流れの剥離や渦が、この S 字フィ ンモデルにおいては見られない。流路全体をほぼ均等に流体が流れ、極端に流れの速い 領域が無い、効率の良い流れがこの S 字フィンモデルで実現できることが明らかとなっ た。 2-7 伝熱流動特性の比較 ジグザグモデルと S 字フィンモデルとで、伝熱流動特性、具体的には単位長さ当たり の圧力損失(∆P/l)と単位体積あたりの熱交換量(Q/V)を比較した。流体の入口条件 30 は両モデルで同一とした。結果を図 2-9 に示す。 ここで示したジグザグモデルと S 字フィンモデルを比較すると、伝熱性能を示す Q/V はほぼ同等、圧力損失面を示す∆P/l では大幅な低減に成功した。すなわち、S 字フィン モデルの開発によって、ジグザグモデルと比較してほぼ同等の伝熱性能を持ち、かつ、 大幅な圧力損失低減を実現する熱交換器を製作できる可能性が示された。 2-8 本章のまとめ 従来用いられてきたジグザグモデルは高い伝熱性能と引き換えに大きな圧力損失と いう欠点を抱えていた。そこで、圧力損失を低減するための新型流路形状の開発を行い、 最終的に S 字フィンモデルと名付けた流路形状を作成した。その流路形状では渦や逆流 の発生が抑えられ、その結果ジグザグモデルと比較して同等の伝熱性能、大幅な圧力損 失低減を実現できる事が CFD 計算結果から示された。 31 ≈ 3.4 mm 0.8 mm 4.8 mm 図 2-1 ジグザグモデル(青い部分が流路、灰色の部分はフィン) l2 - 円管中心の長さ (a) 全体図 図 2-2 (b) 曲がり部分 拡大図 乱流モデル精度比較計算 形状図 32 Pressure drop coefficient, [-] 1.5 Weisbach実験値 k-ε RNG k-e RSM 1 0.5 0 0 20 40 60 80 100 Angle, [degree] 図 2-3 異なる乱流モデルでの圧力損失係数比較 フィン 流路 (a) 基本メッシュサイズ 0.2 mm 図 2-4 (b) 基本メッシュサイズ 0.1 mm 異なるサイズでのメッシュ分割 33 流れ方向 フィン 主流 流路 流れの剥離 逆流 図 2-5 ジグザグモデルでの流れのベクター図 34 フィン 流路 (d) 中間モデル 2 (a) ジグザグモデル (e) S 字フィンモデル (b) サインカーブモデル (c) 中間モデル 1 図 2-6 S 字フィンモデル開発の過程 (黒の部分がフィン、白の部分が流路) 35 流れ方向 澱み 主流 図 2-7 サインカーブモデルにおける流れのベクター図 流れ方向 図 2-8 S 字フィンモデルの流れのベクター図 36 Q/V, [MW/m3] 30 20 10 S字フィン モデル サインカーブ モデル ジグザグ モデル 0 0 50 100 150 200 ∆P/l, [kPa/m] 図 2-9 流路モデルと S 字フィンモデルの特性比較 37 250 表 2-1 異なるメッシュサイズにおける熱水力性能計算結果 高温側 (a) (b) 低温側 (a) (b) 入口温度 K 552.7 552.7 入口温度 K 381.5 381.5 出口温度 K 425.6 425.7 出口温度 K 486.6 486.5 流量 -4 × 10 kg/s 1.872 1.872 流量 -4 × 10 kg/s 4.083 4.083 圧力損失 kPa 4.55 4.67 圧力損失 kPa 5.31 5.44 交換熱量 W 49.88 49.82 交換熱量 W 49.88 49.82 参考文献 [2-1] ANSYS Inc., Fluent 6.3 User’s guide 12.4.2, ANSYS Inc., Lebanon, NH (2006). [2-2] V. Yakhot, S. A. Orszag, “Renormalization Group Analysis of Turbulence: I. Basic Theory,” Journal of Scientific Computing, 1 (1986), 1−51. [2-3] PROPATH group, PROPATH: A Program Package for Thermo-physical Properties of Fluids, Version 10.2, Corona Publishing Co., Tokyo (1990). [2-4] B. Sunden, M. Faghri, Computer Simulations in Compact Heat Exchangers, Computational Mechanical Publications, UK (1998). 38 第3章 3-1 S 字フィンモデルに関する数値解析 本章の目的 MCHE 用に開発された S 字フィンモデル流路は、従来のジグザグ流路に比較して伝 熱性能はほぼ同等のまま圧力損失を抑える働きがあることが、第 2 章の基礎計算によっ て明らかとなった。一方、実際の再生熱交換器の設計時には、例えば、ポンプの性能値 から熱交換器での圧力損失に上限値が定められる事や、装置の設計上から熱交換器全体 の大きさに上限値が定められる事などの、設計上の条件が与えられることが多い。それ らの条件を満たすことができなければ、熱交換器としては実用性が低い事となる。よっ て、熱交換器としての設計の柔軟性を高め、熱交換器自体の実用性を上げるため、S 字 フィン流路モデルの熱水力特性に関してさらに詳細な情報を得ることは非常に有用で ある。そこで、本章では 3D-CFD による、フィンの形状に対する詳細な数値解析を行い、 S 字形フィンの形状パラメータによる熱交換器の伝熱流動性能への影響に関する研究 を行う。 まず、5 つある S 字フィンの形状パラメータ、フィン角度・フィン幅・フィン長さ・ フィン先端の配置(周方向・径方向)を一つずつ変化させて、伝熱性能・圧力損失に与 える影響を明らかにする。それぞれの形状パラメータに関して、CO2 ガスタービンサイ クルの再生熱交換器としての使用を前提とした最適値を選定する。また、エッチングの 際に生じる事が避けられない丸みの伝熱流動特性への影響に関しても同様に明らかに する。 続いて、S 字フィンモデルと他 3 種類の流路形状モデルを比較することで S 字フィン モデル流路に特徴的な高伝熱・低圧力損失の要因を探る。流路の局所的な流速分布・ Nusselt 数分布を示し、S 字フィンモデルの特徴を明らかにする。 3-2 計算モデル 本章では CFD により数値解析を行う。計算コードは第 2 章と同じく FLUENT を用い、 他の条件も前章と同様に、乱流モデルや壁関数も同様に RNG k-ε モデル、Enhanced wall treatment とし、倍精度にて計算を行った。運動量等の離散化は全て二次精度を用い、流 体の物性値は PROPATH を用いて作成した表から内挿して計算する方式をとった。 熱交換器では交換熱量が低温側・高温側で等しくなり、本論文の再生熱交換器では流 39 体が高温側・低温側どちらも同じ CO2 であることから、高温側と低温側の質量流量はほ ぼ同じとなる。一方、本論文の条件では、高温側と低温側で圧力が大きく異なり(高温 側 2.5 MPa, 低温側 7.4 MPa)、そのため、比容積が高温側と低温側とで大きく異なる(前 記の例で高温側は低温側の約 5 倍)。高温側と低温側で流路数を同一とすると、高温側 の流速が低温側の流速に比べて高くなり、高温側の圧力損失が極端に大きくなる。それ を避けるために、高温側流路を低温側の約 2 倍に増やした。そうすることで、例えば前 記の比容積が約 5 倍異なる場合には、流速が高温側 2.5 倍、比容積は変わらず低温側が 5 倍であることから、圧力損失が流速の二乗と密度(すなわち比容積の逆数)に比例す るとした簡単な計算上では(2.52:5 ≈ 1.25:1)かなり近くなる。そのため、本論文の 熱交換器としては高温側流路数を二倍とするため図 3-1 に示すダブルバンキング方式を 適用することとした。 ダブルバンキングの流路の一部を切り出した形として、計算に用いる流路は図 3-2 に 示すような形とした。すなわち、z 軸方向(厚さ方向)には高温側・低温側・高温側流 路を配置し、その境界面は等価値の高温側流路の中間となる事から、上下面は断熱条件 とした。また、側面には周期境界条件を用いて、同様の流路が y 軸方向に無限に並んで いる状態として境界条件を設定した。入口は質量流量で設定し、出口は圧力条件で定義 した。 後に実験で計算結果を確認する事を考慮し、流体の入口条件は高温側が 2.5 MPa, 280°C, 低温側は 7.4 MPa, 108°C とした。流量も後の実験の事を考慮し、入口/出口断 面における流束を高温側:34.15 kg/m2 s、低温側:74.49 kg/m2 s として各計算形状の流 量を算出した。 また、熱交換器の性能は以下の様に算出する。 圧力損失は計算結果の圧力損失, ∆P を計算形状の長さ, l (図 3-2 に示す流れ方向長さ Lx)で割った∆P/l の形で表す(式(3-1)) 。 伝熱性能は、総括伝熱係数 (Overall heat transfer coefficient, OHTC), U(式(3-2))と Q/V (式(3-3))の二種類を用いて評価する。U は交換熱量, Q, 対数平均温度差, ∆TLMTD、さ らに伝熱面積, A として濡れ縁面積を用いて定義する。また、S 字フィンモデルの流路 形状は複雑であるため、典型的な水力等価直径, Dh や平均流路断面積, Ac の定義では算 出が困難である。そこで、Dh や Ac の算出には長手方向へ拡張された形の定義式 (3-4) (3-5)を用いる [3-1]。 (∆P/l) = ∆P / Lx (3-1) 40 U= Q A ∆TLMTD Q /V = (3-2) V Lx × L y × Lz (3-3) 4V A V V Ac = = l Lx Dh = (3-4) (3-5) 熱交換器の高温側が失う熱量には放熱分が含まれるが、低温側が受け取る熱量は放熱 分の影響の割合が小さい。また、圧力損失に関しても密度の大きい低温側の方が摩擦損 失等で受ける影響が大きい。従って、本研究では性能を比較する際には全て低温側の数 値を用いる。以降、特に表記が無ければ低温側の値を用いて計算された値である。 3-3 S 字フィンモデルにおける形状パラメータ S 字フィンモデルにおけるフィン形状の拡大図を図 3-3 に示す。S 字形フィンはサイ ンカーブを模した形状をしており、そのフィン形状を決定するパラメータは以下の 5 つ である。 − (1) フィン角度, ϕ (2) フィン幅, df (3) フィン長さ, lAB フィン先端の位置 ・(4) 円弧の長さ方向 ・(5) 円弧に対して垂直方向 また、フィン形状作成の際にエッチングを用いる事により (6) フィン先端の丸み が 生じる事が考えられる。これらのパラメータを個別に変化させ、それぞれが熱交換器の 熱水力特性に与える影響を明らかにする。 再生熱交換器の作動条件を元にした流体条件でシミュレーション計算を行う事によ り、フィン形状パラメータに関して再生熱交換器としての最適値を決定する事ができる。 以降、各パラメータに関して最適値を決定し、後に試験体を製作する際にその最適値を 用いた S 字フィンモデルを適用する事とする。 41 3-4 S 字形フィンの形状パラメータに関する計算結果 (1) フィン角度 フィン角度, ϕ を ϕ = 0, 20, 30, 34, 38, 42, 45, 48, 52, 54, 57(°) と変化させて、熱水力特 性を評価したものを図 3-4 に示す。前述の通り、性能の比較はすべて低温側の数値で行 い、グラフに示すデータも全て低温側の数値である。丸印が Q/V、四角が∆P/l、三角が U である。また、点線は、単一の曲げをもつ滑らかな円管に対して Weisbach が求めた 圧力損失の実験式(3-6)(出典 [3-2])から、平均流速 2.0 m/s、平均密度 15 kg/m3 として 計算した値である。 dP = ρ v 2ς (3-6) 2 ⎛ϕ′ ⎞ 4⎛ ϕ′ ⎞ ⎟ + 2.047 sin ⎜ ⎟ 2 ⎝ ⎠ ⎝2⎠ ζ = 0.946 sin 2 ⎜ ただし ϕ' は曲げ角度である。 また、その結果を高温側の値も含めて、表 3-1 に示す。 図 3-4 および表 3-1 からわかるように、 フィンの角度が大きくなると伝熱性能 (Q/V, U) は上昇する。流れの曲がる角度が大きくなる事で、より大きく流れが乱れることで伝熱 が促進されたと考えられる。また、圧力損失(∆P/l)はフィンの角度に従って伝熱性能 より急激に上昇する。その変化量は後述する他のパラメータと比較して大きい。その圧 力損失は図 3-4 に示した 0−55°の範囲内で Weisbach の実験式(3-6)の傾向とほぼ一致する。 すなわち、S 字フィンモデルでの圧力損失はほぼ流れの曲げによるものであって、他の 要因(縮流・拡流によるもの等)による圧力損失の増大はほとんど無いことが明らかと なった。 角度の増加によって急激な圧力損失上昇が発生する。伝熱性能と圧力損失性能の割合 を考慮して、Weisbach の実験式からの乖離が小さい範囲にあるϕ = 52°を再生熱交換器 条件での最適な角度とした。 (2) フィン幅 もし構造的な強度を考慮しなければ、フィン幅が小さくなれば、相対的に流路体積が 増加し、単位体積あたりの伝熱面積が増加する。一方、フィン幅が小さくなるとともに、 フィンの根元における熱流束が大きくなることでそこを通過する伝熱は抵抗を受ける。 今、θ をフィンとその周りの流体との温度差、θb をフィン根元における温度とその周り の流体との温度差とすると、フィン効率, η は以下のように定義できる [3-3]。 42 ∫ η= Af 0 θ dA (3-7) θb Af フィン幅が小さくなると、フィンの根元における熱流束が大きくなり、フィン効率が 下がることとなる。過去の研究で、藤掛はプレートフィン型熱交換器におけるフィン効 率に関する考察を行い、フィン幅の縮小によりフィン効率が小さくなることを導いた [3-4]。すなわち、フィン幅の減少によって、体積あたりの伝熱面積増加とフィン効率の 減少が起こる。前者は伝熱性能を増加させ、後者は伝熱性能を低下させるという、相反 した効果が同時に発生するため、フィン幅の変更による伝熱性能の予想は困難である。 そこで、 流路幅は変更せずにフィンの幅だけを S-fin 試験体で用いられた df = 0.8 [mm] から、0.2, 0.4, 0.6, 1.0 mm と変化させて流路を作成し、CFD によるシミュレーション計 算を行った。結果を図 3-5 および表 3-2 に示す。 図 3-5 から、U はフィン幅が小さくなる程低下しており、フィン効率の減少を反映し ているものと考えられる。一方、Q/V はフィン幅が小さくなるに従って増加する。Q/V にはフィン効率低下と伝熱面積増加が同時に影響することから、前述の相反する二つの 効果の影響は、フィン効率の低下による効果よりも、単位体積あたりの伝熱面積が増加 する効果の方が大きいことが明らかとなった。 また、フィン幅が減少すると、長さ当たりの圧力損失も減少する。これはフィンが細 くなることで、フィンの先頭で流れが分割される時の曲げ角度が小さくなることに起因 すると考えられる。すなわち、圧力損失の面でもフィン幅は小さくする方が良い。一方、 フィンを細くすると熱交換器の S 字フィンパターン部分の強度が低下し、耐圧性能が減 少する。また、熱交換器製作の際の拡散接合時に強度不足からフィンが倒壊することも 考えられる。 上に挙げた強度上の理由から、再生熱交換器試験体としてはフィン幅は流路深さと同 程度とするのが望ましいと判断し、フィン幅の最適値は流路深さ (0.94 mm) と同程度 となる df = 0.8 mm とした。 (3) フィン長さ フィン長さを S-fin 試験体標準の lAB = 4.8 [mm] から 2.4, 6.0, 7.2, 9.6 [mm]と変化させ た時の熱水力特性を求めた。図 3-6 および表 3-3 にその結果を示す。 フィン長さが長くなるに従って伝熱性能は Q/V, OHTC とも低下する傾向にあり、圧 力損失は伝熱性能と比較すると大きく低下する。これはフィンの長さが長くなるに従っ 43 て単位長さ当たりのカーブの数が減るためである。カーブの数が減少する事によって、 流れを乱す事による伝熱促進も減少してしまうため、伝熱性能も悪化している。また、 長さ 2.4 mm の時のみ圧力損失が高く、OHTC が大きく減少しているが、これは流動状 態によるものである。図 3-7 にフィン長さ 2.4 mm の場合の流速分布図を示す。フィン の長さが短すぎるために、S 字フィンモデル特有の流路全体を流れる平均的な流れが実 現されず、フィンとフィンとの間に澱みができている。そのために圧力損失が増加し、 伝熱が低下すると考えられる。 平均的な流れが実現できる事が確認された最低フィン長さは 4.8 mm であり、この時 に最も良い伝熱性能を得る事が期待できる。 (4) フィン先端位置(Y 軸方向) フィン先端位置は流れを分岐させる位置を直接的に決定し、流れの分配に深く関わる ものである。そのフィン先端位置はフィンの位置全体を主流方向とは垂直方向に動かし た Y 軸方向の効果と、S 字フィンの弧の長さ方向の効果、二つに分割して検討した。 Y 軸方向のフィン先端位置効果は、フィンをその上下のフィン位置の中央に置いた場 合を標準とし、そこからフィン全体を 0.1 mm ずつ Y 軸方向に動かす事で検討した。そ れぞれの結果同士の差が小さいので、フィンを標準の位置に置いた場合の数値を 100% として規格化した値を用いたグラフを図 3-8 に示す。 わずかではあるが、標準位置にフィンを置いた時に、圧力損失の極小値が得られる。 S 字フィンは流れの向きが変わる部分に設置され、流れを曲げるのを助け、剥離を防ぐ という点で、案内羽根と同様の働きがあると考えられる。案内羽根を曲がり流路の適正 な位置に配置する事で、そのカーブにおける圧力損失が 1/2 以上低減することが示され ている[3-5]。単一のカーブにおける案内羽根の位置と圧力損失に関しては Ito がさらに 詳しい解析を行っている[3-6]。それによると、カーブの内径を Ri、外径を Ro とした時 に、圧力損失を最も低減する案内羽根位置, Rs は Rs = (Ri Ro)1/2 (3-8) となる。標準の S 字フィンモデルに関して、Ri を実際の流路形状から 1.60 mm、Ro は Ri に平均流路幅 1.31 mm を足して Ro = 1.60 + 1.31 = 2.91 [mm] として式(3-8)から Rs を求 めると、 Rs = (Ri Ro)1/2 = (1.60 × 2.91)1/2 ≈ 2.16 [mm] となり、標準の位置からは 0.1 mm ほど内側に入った位置となる。 今回の結果は Ito の結果とは異なるものである。Ito は単一のカーブにおける案内羽根 44 位置を求めたが、S 字フィンモデルは案内羽根と同様の働きをする S 字フィンが連続に、 交互に逆の方向に現れるため、Ito の結果と異なる、より流れが平均化する中央の位置 すなわち標準位置の方がより圧力損失を低減する結果となったと考えられる。 再生熱交換器試験体用の最適値としては、圧力損失を最も低減する標準位置を選択し た。 (5) フィン先端位置(弧の長さ方向) フィンの弧の部分の長さを短くして、それぞれ 100%から 70%, 50%に変化させた (A), (B), (C)の各モデルを作成し、 (図 3-9 参照)これまでと同様に CFD 計算によってそれぞ れの熱水力特性を得た。その結果を図 3-10 および表 3-5 に示す。 体積あたりの交換熱量はモデル(A)が最も高く、(B), (C)の順に下がってゆく。また、 圧力損失はモデル(A)が最も低く、(C), (B)の順で上がってゆく。このケースでの高温側 流路での流束分布を図 3-11 に示す。 図 3-11 より、モデル(A)では渦・逆流や流れが遅くなっている領域が見られないが、 (B)ではフィンの後端付近に、(C)ではフィンの後背部に流れが遅くなっている領域(澱 み)が見られる。(B), (C)では S 字フィンモデルの特徴である、渦や逆流の無い流路全 体に平均的な流れが実現されず、伝熱性能の低下、圧力損失の増大が起こっていると考 えられる。 伝熱性能の低下がないままに圧力損失を低減するという S 字フィンモデルの長所は、 今回の結果に見られるように、流路全体の平均的な流れを実現するという事に依るとこ ろが大きい。フィン形状の設計のみでなく、その形状を試験体に再現する際にも注意を しなければ、不要な圧力損失の増大や伝熱性能の低下を引き起こす事が判明した。 ここで比較した三つのモデルでは、モデル(A)が伝熱性能・圧力損失性能どちらも高 く、最適値としてもモデル(A)を選択した。 (6) フィン先端丸み 図 3-12 に S 字フィンモデル流路の試験体形状と、設計形状の比較を示す。 エッチングでの流路製作は、化学反応によるものであるために、流路形状が一部丸み を帯びる事を避けられない。エッチングによる流路形成の様子を見るために製作された 試作品でもフィン先端が丸みを帯びる事でフィン形状が変化している事が窺えた。そこ で、フィン先端の丸みに対する熱水力特性の変化を明らかにする。 45 計算に用いたフィン形状を図 3-13 に示す。モデル(A)は設計形状であり、(C)は図 3-12 から読み取った試作品のフィン形状を模擬した物である。モデル(B), (D)および(E)はそ れぞれ丸みの半径を 0.05, 0.2, 0.37 mm としたものである。また、モデル(C)の丸み半径 は 0.1 mm に相当する。図 3-13 に示したフィン先端形状をフィンの両端とした流路形状 に関して計算を行った。その熱水力特性を図 3-14 に示す。 丸みの半径が大きくなると、伝熱性能への影響は小さいが、圧力損失は大きく変化す る。傾向として、丸み半径が大きくなると圧力損失が増大しているが、(D)では(C)より も圧力損失が低下している。それぞれのフィン先端近くの速度ベクター図を図 3-15 に 示す。 図 3-15(a)に示したモデル(C)ではフィンの先端で流れがうまく分岐しておらず、一部 に全体の流れに逆らって戻るような流れが見られるが、モデル(D)ではそのような流れ が見られず、フィンの先端で流れがスムーズに分岐している。この影響により、(C)と (D)では圧力損失が逆転していると考えられる。 図 3-14 に示した結果より、設計形状モデル(A)と試作フィン形状(C)の比較では、圧力 損失が低温側で約 20%増加する事が判明した。エッチングにより流路形成をする際に、 できるだけ鋭いフィン形状を再現する事で圧力損失を低減できる事が明らかとなった。 鋭いフィン先端形状をエッチング加工の際に製作できるようにすることが今後の技術 的な課題であることも明らかとなった。 3-5 流路モデルの比較 S 字フィンモデルの特性をさらに明確にするために、比較対象として他の 3 つのモデ ルを加えた計 4 つの流路モデルを選定し、それらのモデルに関して CFD 計算を行い、 その熱水力特性の比較を行う。比較対象となるそれぞれのモデルでの熱水力特性におけ る傾向を示し、S 字フィンモデルにおける傾向ではそれらのモデルと比較してどのよう な長所・短所があるのかを明らかにする。 ここで使用する流路モデルを図 3-15 に示す。本論文の研究対象である S 字フィンモ デルと、従来型流路であるジグザグモデル、そして、その中間モデルとしてルーバーフ ィンモデルとサインカーブモデルを対象に加えた。ルーバーフィンモデルは 2-5 章で S 字フィンモデル開発の途中に表れた中間モデル 1(図 2-6(d)参照)に似た、フィンを不 連続に配置した流路モデルであるが、中間モデル 1 とは異なる直線状のフィン形状をし ている。すなわち、S 字フィンモデルとサインカーブモデルは流れをスムーズに導く滑 46 らかな形をしており、ルーバーフィンモデルとジグザグモデルはフィンが直線状である。 また、S 字フィンモデルとルーバーフィンモデルでは不連続のフィンが多数配置されて おり、サインカーブモデルとジグザグモデルとはフィンが入口から出口まで繋がった連 続型である。よって、この 4 つのモデルを比較する事で、フィンを滑らかな形状とする 事の効果とフィンを不連続配置にする事の効果を確認する事ができる。なお、図 3-16(a)−(d)に示したものはどれもフィン角度が等しい。ここで、フィン角度は流れの主 流方向とフィンがなす最大の角度とする。 3-4 章で行った S 字フィンモデルでの解析から、形状のパラメータとしてはフィン角 度が最も大きな影響を及ぼす事が明らかとなったので、それぞれのモデルに対してフィ ン角度を変化させながら熱水力性能の解析を行い、各流路モデルの傾向を明らかにする。 (1) S 字フィンモデル 図 3-17 は 3-4 章(1)で示した S 字フィンモデルの角度依存性の結果より、本項での比 較に用いるフィン角度 38°, 45°, 52°に該当するデータのみを抜き出したものである。 (2) サインカーブモデル フィン角度を 38°, 45°, 52°としてそれぞれのフィン角度に対するサインカーブモデル における総括伝熱係数、体積あたり交換熱量、長さ当たり圧力損失をプロットしたのが 図 3-18 である。 45°以下の低角度では圧力損失が S 字フィンモデルを下回るが、フィン角度増加によ る圧力損失の上昇が大きく、52°では S 字フィンモデルの値を若干上回る。一方、伝熱 性能を示す Q/V は角度を増加させた時の向上量が S 字フィンモデル程大きくないため、 サインカーブモデルが S 字フィンモデルより有利である条件はほとんどないと考えら れる。 (3) ルーバーフィンモデル 図 3-19 に、ルーバーフィンモデルのフィン角度に対する総括伝熱係数、体積あたり 交換熱量、長さ当たり圧力損失を示す。 このフィン角度 38−52°の範囲内で、S 字フィンモデルと比較して圧力損失が 5−6 倍程 度大きいにもかかわらず、伝熱性能は Q/V で 10%程高いのみである。伝熱性能の増加 はフィン角度の上昇でも得る事ができ、S 字フィンモデルであれば Q/V の 10%上昇でも 大きく見積もって圧力損失が二倍になる程度である。このルーバーフィンモデルに対し ても S 字フィンモデルの優位性が認められる。 47 (4) ジグザグモデル ジグザグモデルのフィン角度に対する総括伝熱係数、体積あたり交換熱量、長さ当た り圧力損失を図 3-20 に示す。 伝熱性能に関してはルーバーフィンモデルとほぼ同等であるが、フィン角度上昇によ る圧力損失の増加はルーバーフィンモデルよりさらに大きい。伝熱性能・圧力損失面で はジグザグモデルはルーバーフィンモデルに及ばないと言える。このモデルが Heatric 社の PCHE に多く用いられてきたのは、その構造の単純さと、第 2 章にも記したように、 乱流の促進を流れの剥離により起こし、伝熱性能を向上させるためだと推測される。一 方、S 字フィンモデルでは流れの分散・合流を流路の至る所で実現することで乱流を促 進させで伝熱性能の向上を実現している。 (5) 各モデル間の比較 まず、モデル間の比較として OHTC, Q/V, ∆P/l をモデルごとにまとめたグラフを、そ れぞれ図 3-21−23 に示す。 OHTC(図 3-21) 、Q/V(図 3-22)ではルーバーフィンモデルおよびジグザグモデルで の値が高く、フィン形状を直線状とする事で伝熱性能に関して大きく有利になる事がわ かる。また、S 字フィンモデルとサインカーブモデルの比較で明らかなように、不連続 フィンと連続型フィンでは不連続フィンの方が伝熱性能が向上する。特に体積当たり交 換熱量では S 字フィンモデルは直線状フィンであるルーバーフィンモデルおよびジグ ザグモデルに匹敵するほどの伝熱性能を示している。 また、∆P/l(図 3-23)に関しては、直線状フィンのルーバーフィンモデル・ジグザグ モデルは曲線状フィンの S 字フィンモデルおよびサインカーブモデルと比較して著し く高く、熱水力特性上不利となっている。一方、不連続フィンと連続フィンとの間に大 きな差は見られない。 図 3-24 に横軸を単位長さ当たりの圧力損失、縦軸を単位体積あたり交換熱量として プロットした各流路モデル間の比較を示す。S 字フィンモデルの点がグラフの左上に集 中している事から、S 字フィンモデルが他のモデルに比べて低圧力損失・高伝熱性能の 傾向を示している事がわかる。また、S 字フィンモデルは同じフィン角度の変化量(38° から 52°)でも横軸(圧力損失)の変化量が少なく、縦軸(伝熱性能)の変化量が大き い。他のモデルに比べてフィン角度の増加で、圧力損失の増加はより小さく、伝熱性能 増加はより大きくなるという結果となり、S 字フィンモデルの優位性がここにも認めら れる。 48 3-6 各流路モデルにおける流動挙動 S 字フィンモデルでは、平均的な流れが流路全体を澱みなく流れており、他の流路モ デルで発生する死領域などがほぼ発生しない。 図 3-25 に低温側流路中央での S 字フィンモデルにおける速度分布図を示す。赤色は 速度が大きく、青色は速度が小さい事を示す。 図 3-25 より、S 字フィンモデルでは青色で表わされる速度の小さい領域(死領域)が 他のモデルのフィン角度 52°の場合(図 3-26 − 図 3-28)に比べて大幅に少ない事が明ら かである。また、速度の大きな領域も少なく、非常に平均的な流れが実現されている事 がわかる。 3-7 各流路モデルにおける伝熱挙動 CFD による流路モデルごとの計算結果から、流路内での細かい伝熱挙動を解析し、S 字フィンモデルの利点に関して詳細な考察を行う。図 3-29(a)−(d)に CFD による数値解 析結果から得た、各流路モデルでの流路底面および側面における Nusselt 数のコンター 図を示す。 S 字フィンモデルでは全体的に一様な Nuseslt 数の分布が示されているが、比較的 Nusselt 数が大きくなっている箇所は、流れが分離するフィン先端部と流れが合流する フィン中央部付近にあり、フィンの分散配置により伝熱が促進されることが明らかとな った。S 字フィンモデルでは流れの分離・合流により乱流の促進を起こし、伝熱性能の 向上に繋げる事を意図して設計されたものである。それが実現されている事が示された。 また、流れの剥離は圧力損失の増大を引き起こすが、流れの分離・合流は圧力損失の増 大をほとんど引き起こさない(3-4 章(1)参照)ため、S 字フィンモデルは他のモデルに 比べて圧力損失面で有利であることは明らかである。 また、3-4 章(2)でも説明したとおり、形状の一部で熱流束が大きくなれば、そこを通 る伝熱は不利になる。S 字フィンモデルは伝熱面全体で平均的に伝熱が行われており、 熱流束に偏りが無いためその面で有利となる。それら二つの事柄が平均流速が低下して も伝熱性能が低下しない理由であると結論した。 また、S 字フィンモデルでは伝熱面密度が他のモデルに比べて大きい。 各モデルの 1 m3 中の伝熱面密度は以下の通りである。 49 S 字フィンモデル 1462 m2/m3 サインカーブモデル 1317 m2/m3 ルーバーフィンモデル 1376 m2/m3 ジグザグモデル 1333 m2/m3 S 字フィンモデルでは死領域の無い分平均化された Nusselt 数は他のモデルと同等程 度となる。よって、伝熱面積の増加分 S 字フィンモデルでは伝熱量として有利になる。 また、ルーバーフィンモデルにおいてもジグザグモデルと比較して伝熱面積が向上して いる事から、フィンの分散配置は、乱流の促進のみではなく、伝熱面積を増加させる事 でも伝熱性能の向上に寄与する事がわかった。 3-8 本章のまとめ MCHE 用の流路形状である S 字フィンモデルに関して、その設計の柔軟性と実用性 を高めるためにフィン形状が熱水力特性に与える影響をパラメータ解析を行う事によ って明らかとし、そして、S 字フィンモデルと他の流路モデルとの比較を行うための CFD を用いた詳細な数値解析を行った。それらの結果から、S 字フィンモデルが高伝熱 性能・低圧力損失の傾向にあることを示し、その理由を考察した。 S 字フィンモデルのフィン形状に関して、(1) フィン角度, (2) フィン長さ, (3) フィン 幅, (4) 円周方向, (5) 径方向のフィン先端の位置, (6) 先端の丸み ―― の 6 点の形状パ ラメータをあげ、それぞれが熱水力特性に及ぼす影響を CFD を用いた計算により求め た。 上に挙げた 6 つの形状パラメータの中で、最も影響の大きいのはフィン角度による影 響であり、次いでフィンの幅・長さの順で影響が大きい。伝熱性能にはフィン角度以外 の形状パラメータが及ぼす影響は小さいものの、圧力損失にはどのパラメータも影響を 及ぼす事が明らかとなった。また、これらの結果から、CO2 ガスタービンサイクルの再 生熱交換器として適用する S 字フィンモデルの MCHE として最適と思われる形状パラ メータを決定した。 また、S 字フィンモデルにジグザグモデル・サインカーブモデル・ルーバーフィンモ デルを含めてモデル間での特性を明らかにするために、それぞれのモデルに関して伝熱 性能に一番影響を与えるフィン角度を変化させて解析を行った。その結果から熱水力特 性を無次元数により比較すると、S 字フィンモデルは他のモデルに比べて高伝熱性能・ 50 低圧力損失の傾向にあり、優位であることが明らかとなった。 また、モデル間で流動挙動・伝熱挙動を比較した。S 字フィンモデルでは他のモデル では見られない、渦や逆流の発生を抑えた平均的な流動・伝熱が実現されている。流れ の剥離によらない乱流の促進を流れの分離・合流により実現し、伝熱性能の向上に繋げ ていることが示された。流れの剥離を起こさないことで大幅な圧力損失低減ができる。 加えて、不連続モデル、特に S 字フィンモデルでは従来の連続モデルに比較して伝熱面 積が大きくなり、さらに伝熱上有利となる。このような S 字フィンモデルが持つ低圧力 損失かつ高伝熱性能の特徴の原因が明らかとなった。 51 流路 高温側 低温側 プレート板 図 3-1 ダブルバンキング 模式図(赤−高温側プレート、青−低温側プレート) 周期境界条件 断熱境界条件 (下面も同様) 低温側 入口 高温側 入口 Lz ( = 4.8 mm) Ly ( ≈ 10 mm) Lx ( ≈ 120 mm) 流れ方向 z x y 図 3-2 計算モデル模式図 52 ・ A (3) lAB (1) ϕ (5) (4) B ・ (2) df S 字形フィンの形状パラメータ Q/V dP ∆ P/l U 80 1200 60 900 40 600 20 300 0 0 0 20 40 Fin angle, [degree] 図 3-4 フィン角度に対する熱水力特性 53 60 U, [W/m2K] Q/V, [MW/m3]; ∆ P/l, [kPa/m] 図 3-3 1000 80 800 Q/V dP ∆P/l U 60 600 40 400 20 200 0 U, [W/m2K] Q/V, [MW/m3]; ∆P/l, [kPa/m] 100 0 0.0 0.5 1.0 Fin Width, [mm] フィン幅に対する熱水力特性 100 1000 80 800 60 600 Q/V dP ∆P/l U 40 400 20 200 0 0 0 2.4 4.8 7.2 9.6 Fin Length, [mm] 図 3-6 フィン長さに対する熱水力特性 54 12 U, [W/m2K] Q/V, [MW/m3]; ∆P/l, [kPa/m] 図 3-5 流れ方向 澱み 図 3-7 フィン長さ 2.4 mm の場合の速度分布 110 Q/V dP_c ∆P/l U Ratio, [%] − Y-shift + 105 100 95 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 Y-shift, [mm] 図 3-8 フィン先端の Y 軸方向位置に対する熱水力特性 55 (a) 弧の長さ 100%(モデル(A)) (b) 弧の長さ 70%(モデル(B)) (c) 弧の長さ 50%(モデル(C)) フィン先端の周方向位置 変化モデル 120 1200 (A) (B) (C) 1000 100 Q/V ∆P/l dP U 80 60 800 600 40 400 20 200 0 0 -1 (A) 0 (B) 1 (C) 2 3 Model 図 3-10 フィン先端の弧の長さ方向位置に対する熱水力特性 56 U, [W/m2K] Q/V, [MW/m3]; ∆P/l, [kPa/m] 図 3-9 流れ方向 (a) 図 3-9 のモデル(A) 流れ方向 澱み (b) 図 3-9 のモデル(B) 流れ方向 (c) 図 3-9 のモデル(C) 図 3-11 各ケースの高温側流路における流束分布図 57 (a) 全体図 実際の形状 設計形状 (b) 拡大図 図 3-12 S 字フィンモデル流路 58 設計形状と試作品形状 比較 (E) 120 (A) (B) (C) (C) (B) (A) フィン先端丸み試験形状 (D) (E) 1200 100 1000 80 800 60 600 40 400 20 Q/V dP ∆P/l 200 U 0 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 Roundness radius, [mm] 図 3-14 フィン先端形状による熱水力特性の依存性 59 U, [W/m2K] Q/V, [MW/m3]; ∆P/l, [kPa/m] 図 3-13 (D) (a) モデル(C) 図 3-15 (b) モデル(D) 丸み変更モデル(C)および(D)における速度ベクター図 (a) S 字フィンモデル (b) サインカーブモデル (c) ルーバーフィンモデル (d) ジグザグモデル 図 3-16 MCHE 流路の主なモデル 60 1000 40 800 30 600 20 400 Q/V dP/l ∆P/l U 10 U, [W/m2K] ∆P/l, [kPa/m]; Q/V, [MW/m3] 50 200 0 0 31 38 45 52 59 Angle, [degree] S 字フィンモデルにおける熱水力性能のフィン角度依存性 50 1000 40 800 30 600 20 400 Q/V dP/l ∆P/l U 10 U, [W/m2K] ∆P/l, [kPa/m]; Q/V, [MW/m3] 図 3-17 200 0 0 31 38 45 52 59 Angle, [degree] 図 3-18 サインカーブモデルにおける熱水力性能のフィン角度依存性 61 1400 300 1200 250 1000 200 800 150 600 Q/V dP/l ∆P/l U 100 50 U, [W/m2K] ∆P/l, [kPa/m]; Q/V, [MW/m3] 350 400 200 0 0 31 38 45 52 59 Angle, [degree] ルーバーフィンモデルにおける熱水力性能のフィン角度依存性 350 1400 300 1200 250 1000 200 800 150 600 Q/V dP/l ∆P/l U 100 400 200 50 0 0 31 38 45 52 59 Angle, [degree] 図 3-20 ジグザグモデルにおける熱水力性能のフィン角度依存性 62 U, [W/m2K] ∆P/l, [kPa/m]; Q/V, [MW/m3] 図 3-19 1400 U, [W/m2K] 1200 1000 800 600 S-fin Louver Sine Zigzag 400 200 0 31 38 45 52 59 Fin angle, [degree] 図 3-21 各流路モデルの総括伝熱係数 30 Q/V, [MW/m3] 25 20 15 10 S-fin Louver Sine Zigzag 5 0 31 38 45 52 Fin angle, [degree] 図 3-22 各流路モデルの単位体積当たり交換熱量 63 59 ∆dP/l, P/l, [kPa/m] 300 S-fin Louver Sine Zigzag 200 100 0 31 38 45 52 59 Fin angle, [degree] 図 3-23 各流路モデルの単位長さ当たり圧力損失 30 Q/V, [MW/m3] 25 20 S-fin Louver Sine Zigzag 15 10 5 0 0 50 100 150 200 250 300 ∆P/l, [kPa/m] 図 3-24 単位長さ当たり圧力損失と単位体積あたり交換熱量 64 350 流れ方向 図 3-25 S 字フィンモデルの速度分布図 流れ方向 図 3-26 サインカーブモデルの速度分布図 65 流れ方向 図 3-27 ルーバーフィンモデルの速度分布図 流れ方向 図 3-28 ジグザグモデルの速度分布図 66 流れ方向 (a) S 字フィンモデル (b) サインカーブモデル 図 3-29 各モデルにおける Nusselt 数分布 67 (c) ルーバーフィンモデル (d) ジグザグモデル 図 3-29 各モデルにおける Nusselt 数分布(続き) 68 S 字フィンモデルのフィン角度依存性 表 3-1 ϕ degree x 方向長さ, Lx mm y 方向長さ, Ly mm 高温側 質量流束 高温側 高温側 出口温度 高温側 ∆P/l 45 48 52 54 57 8.1 8.3 8.6 9.4 9.6 9.9 10.3 10.9 11.5 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 431.8 429.0 427.7 425.0 425.3 425.6 425.6 424.7 426.0 481.5 483.7 484.8 487.0 486.9 486.5 486.5 487.4 486.3 kPa/m 低温側 42 381.6 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 K 低温側 30 552.7 552.7 552.7 552.7 552.7 552.7 552.7 552.7 552.7 K 低温側 20 153.6 149.7 144.3 133.0 130.3 125.8 121.0 114.1 108.6 kg/m2 s 低温側 入口温度 0 2 8.07 10.3 12.9 24.2 26.7 30.6 38.8 50.7 64.4 9.19 11.6 14.5 27.8 30.8 36.0 45.1 59.3 74.4 U W/m K 606.0 668.5 710.8 852.9 863.1 885.8 945.0 1013 1048 Q/V MW/m3 18.7 26.8 27.9 表 3-2 19.7 20.7 22.9 23.3 24.1 25.0 S 字フィンモデルのフィン幅依存性 df mm 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 x 方向長さ, Lx mm 121.0 121.0 121.0 121.0 121.0 y 方向長さ, Ly mm 7.6 8.5 9.4 10.3 11.1 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 552.7 552.7 552.7 552.7 552.6 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 433.8 428.9 427.1 425.6 425.5 479.7 483.8 485.3 486.5 486.6 36.6 36.8 37.8 38.8 44.1 41.4 42.1 43.9 45.1 47.4 780.0 871.8 913.7 945.0 944.5 31.6 29.4 27.1 25.0 23.2 質量流束 入口温度 出口温度 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 ∆P/l 低温側 U Q/V kg/s m2 K K kPa/m 2 W/m K 3 MW/m 69 表 3-3 S 字フィンモデルのフィン長さ依存性 lAB mm 2.4 4.8 6.0 7.2 9.6 x 方向長さ, Lx mm 121.0 121.0 122.9 124.8 121.0 y 方向長さ, Ly mm 10.3 10.3 10.3 10.3 10.3 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 552.7 552.7 552.7 552.7 552.7 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 425.6 425.6 426.0 427.1 429.9 487.1 486.5 486.3 485.4 483.0 59.5 38.8 37.8 34.5 30.7 63.0 45.1 43.0 38.3 33.7 質量流束 入口温度 出口温度 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 ∆P/l 低温側 kg/s m2 K K kPa/m 2 U W/m K 907.3 945.0 929.4 902.7 855.7 Q/V MW/m3 25.1 25.0 24.6 24.0 24.2 表 3-4 S 字フィンモデルのフィン先端位置(Y 軸方向)依存性 フィン Y 方向位置 mm -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 x 方向長さ, Lx mm 121.0 121.0 121.0 121.0 121.0 y 方向長さ, Ly mm 10.3 10.3 10.3 10.3 10.3 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 552.7 552.7 552.7 552.7 552.7 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 426.6 426.0 425.7 425.5 425.5 485.7 486.2 486.4 486.7 486.6 39.0 38.9 38.7 39.9 40.8 44.4 44.8 44.8 46.0 46.6 924.6 936.7 941.9 949.7 948.3 24.9 25.0 25.0 25.1 25.1 質量流束 入口温度 出口温度 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 ∆P/l 低温側 U Q/V kg/s m2 K K kPa/m 2 W/m K 3 MW/m 70 表 3-5 S 字フィンモデルのフィン先端位置(弧の長さ方向)依存性 モデル 121.0 121.0 121.0 y 方向長さ, Ly mm 10.3 10.3 10.3 68.4 68.4 68.4 74.5 74.5 74.5 552.7 552.5 552.6 381.5 381.6 381.6 425.7 424.8 431.7 486.4 487.2 481.4 38.7 45.4 43.8 44.8 53.0 57.0 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 出口温度 低温側 高温側 ∆P/l 低温側 kg/s m2 K K kPa/m 2 U W/m K 941.9 948.8 829.9 Q/V MW/m3 25.0 24.4 23.9 表 3-6 S 字フィンモデルのフィン端丸み依存性 モデル名(丸み半径) mm A(0) x 方向長さ, Lx mm y 方向長さ, Ly mm 出口温度 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 低温側 高温側 ∆P/l 低温側 OHTC Q/V C mm 入口温度 入口温度 B x 方向長さ, Lx 質量流束 質量流束 A B(0.05) C(0.1) D(0.2) E(0.37) 121.0 121.0 121.0 121.0 121.0 10.3 10.3 10.3 10.3 10.3 68.4 68.4 68.4 68.4 68.4 74.5 74.5 74.5 74.5 74.5 552.7 552.6 552.7 552.6 552.6 381.5 381.5 381.5 381.5 381.5 425.6 426.2 426.9 426.7 426.3 486.5 486.1 485.5 485.6 486.0 38.8 43.2 48.4 47.8 65.0 45.1 49.3 54.3 52.7 74.0 W/m K 945.0 952.6 953.5 967.4 994.3 3 25.0 24.9 24.8 24.8 24.9 kg/s m2 K K kPa/m 2 MW/m 71 参考文献 [3-1] J. 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